高校受験古文
高等学校受験において古文は「国語」の問題に含まれる。古文の扱いについては都道府県や学校(私立や国立)ごとに異なる。例えば、東京都立高校の古文は現代文との融合問題として出題されるため、教科書レベルの単語や文法をおさえれば現代文との対応で判断できるため難しくはない。また、私立高校の中には古文を出題しない高校もある。しかし、他の公立高校や難関私立では一部の難解な語に注がつく程度で古文の読解をしなければならないものがある。どの教科にも共通して言えることだが、自分の志望する高校の国語ではどの程度の古文が出題されるかを過去問でチェックしておくべきである。
古文の学び方
[編集]まず教科書に出てくる文章を正確に音読できることが大切である。古文に限らないが、読めないものを理解することはできない。その上で現代語などと比較して大まかに意味を理解していこう。その過程で現代とことなる意味の言葉(古語)や言い回しをチェックしていく。こうして古語の意味を覚え、古文特有のリズムを身につけるとよい。そして、古文特有の表現や価値観を知っておくとさらに理解しやすくなる。
まず表現について見てみよう。ただ「花」といった場合、奈良時代や平安時代始めの文章なら梅の花だが、それ以降は桜のことである。主語は省略することが多いので、行為や発言を誰が行ったのかをストーリーを元にとらえかえす必要がある。
価値観については以下のことをおさえておこう。まず、「をかし」「あはれなり」という美意識が重要視される。「をかし」とは「趣がある」ことに感動する心である。そして、「あはれなり」は「しみじみと(心の内からわきおこるような)感動」である。これらは自然現象や風景の面白さ・不思議さ・美しさ、他の人の気づかいや人情に対する感心や機転・機知への賞賛などに使われる言葉である。このことから「風流であること」「気配り」「とっさの知恵」が大切にされていたことを知ると格段に文章を理解しやすくなる。
もう一つは無常観である。仏教が伝来してから私たちの祖先はこの考え方を取り入れてきた。その中でも特に広く共有されたものが、世の中は全て移り変わるという価値観である。これは平家物語の冒頭で示される「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」に代表される。こうした世界の変化を筆者や作者がどのように捉えているのかを考えてみるのも大切である。また、神や仏に対する信仰心は今とは比べ物にならないほど強いことも念頭に置こう。
最後に現代の笑い話はシャレや話の切り返しのうまさなどに注目すること、教訓話はどのようなことをしたからこうなったのかを理解しながら筆者の考えを見つけることができるようにしよう。
古典文法
[編集]中学校では古典文法をあまり習わないので基本的なことをおさえておけばよい。特に以下の点には気をつけよう。
- かなづかい
- 単語のはじめ以外の「はひふへほ」は「わいうえお」と読む。「む」は「ん」と読むものがある。現在使われていない「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」と読む。「くわ」「ぐわ」は「か」「が」と読む。もっとも気をつけなければならないのはローマ字のつづりが「au」の言葉は「ō」と読み、「iu」なら「yū」、つづりが「eu」なら「yō」となる。例えば「買ふ」は「かうkau」なので「こーkō」、「ひさしうhisasiu」は「ひさしゅーhisasyū」、「せうと(兄)seuto」は「しょーとsyōto」と読む。
- 係り結び(かかりむすび)の法則
- 文中に「ぞ」「なむ」「や」「か」ある場合、文末は連体形(れんたいけい)になる。文末は終止形にはならない。例えば普通の文なら「花見す」と終止形だが、「ぞ」などが入ると「花見ぞする」というふうに連体形になる。
- また、「こそ」があると現代の仮定形と同じ形の已然形(いぜんけい)になり、「花見こそすれ」となる。
- ぞ・なむ・や・か → 連体形
- こそ → 已然形
- 係り結びがある場合、意味にも気をつけよう。「ぞ」「なむ」「こそ」は強意という意味があり、「や」「か」には疑問・反語という意味がある。強意は無理に訳さなくともよいが、疑問・反語はちゃんと訳さなければならない。疑問は「何々だろうか」でよいが、反語は「何々だろうか。いや何々ではない」という意味で言いたいことは「いや何々ではない」の方にある。とはいえ、「いや何々ではない」の部分はカッコに入れることが多いので、迷ったら「~だろうか」と訳すのが無難だ。
- 現代と異なる意味の言葉
- 一部の動詞・助動詞・助詞
重要古語
[編集]以下の古語は現代語と意味がことなる上、入試にも出やすい。まずはこれから覚えておこう。
- あさまし:意外だ・あきれる・興ざめだ
- あ
は れ:しみじみとした情緒がある - あやし:不思議だ・異常だ・身分が低い
- ありがたし:めったにない
- いと:とても
- いみじ:ひどい・はなはだしい・すごい
- うつくし:かわいい・愛らしい
- おぼゆ:思われる
- かなし:いとしい・かわいい
- つぎ
づ きし:につかわしい - つとめて:早朝・翌朝
- なかなか:かえって
まうづ :参る・参上する・参詣する- めでたし:すばらしい・けっこうだ
- やがて:そのまま・その場ですぐに・すなわち
- ゆかし:心が引かれる・見たい・知りたい
を かし:趣がある・風情がある・興味が引かれる
主要な作品
[編集]傾向としては随筆や説話が多い。
上代
[編集]難解なものが多いためあまり出題されない。ただし、和歌の問題として『万葉集』から出題されることがある。
平安時代
[編集]- 清少納言『枕草子』
- 高等学校国語総合/枕草子(・雪のいと高う降りたるを)
- 『今昔物語集』(・観音様のご利益)
- 高等学校国語総合/土佐日記(・門出 ・忘れ貝 わすれがい ・帰京)
鎌倉時代~安土桃山時代
[編集]- 『宇治拾遺物語』(うじしゅういものがたり)
- 高等学校国語総合/宇治拾遺物語(・児のそら寝 ちごのそらね ・絵仏師良秀)
- 『平家物語』
- 高等学校国語総合/平家物語(・木曾の最期 きそのさいご ・富士川 ・祇園精舎(参考))
- 高等学校古典B/平家物語(・先帝入水 ・忠度の都落ち ただのりのみやこおち ・能登殿の最期 )
- 『沙石集』(しゃせきしゅう)
- 鴨長明(かものちょうめい)『方丈記』(ほうじょうき)、『発心集』(ほっしんしゅう)
- 高等学校古典B/方丈記(・ゆく河の流れ ゆくかわのながれ ・養和の飢饉 ・日野山の閑居 )
- 兼好法師『徒然草』
- 高等学校国語総合/徒然草(・亀山殿の御池に ・丹波に出雲といふ所あり ・奥山に猫またといふもの ・花は盛りに、)
- 御伽草子(おとぎぞうし) ※ 浦島太郎や一寸法師などの作品集
江戸時代
[編集]- 本居宣長(もとおり のりなが) 『うひ山ぶみ』『玉勝間』 (たまかつま)
- 高等学校古典B/玉勝間(・師の説になづまざること ・兼好法師が詞のあげつらひ )
- 高等学校国語総合/奥の細道(・立石寺 りゅうしゃくじ ・旅立ち ・平泉)
- 松平定信『花月草紙』
その他
[編集]- 高等学校古典B/大鏡(おおかがみ) (・三船の才 ・道長と伊周の競射 ・花山院の出家 ・道真の左遷 ・肝だめし ・雲林院の菩提講(※序文) )
- 高等学校国語総合/伊勢物語(いせものがたり)(・芥川 ・東下り ・筒井筒 ・あづさ弓 ・さらぬ別れ)
- 高等学校古典B/堤中納言物語(・虫めづる姫君 )むしめづるひめぎみ
- 伊曽保物語(いそほ ものがたり) ※ イソップ童話の江戸時代初期ごろの和訳