民法第420条
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条文
[編集](賠償額の予定)
- 第420条
改正経緯
[編集]2017年改正により、第1項の以下の文言を削除。
- この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
- 当該文言により、約定された賠償額の予定については裁判所も介入できないものとなっていた。しかしながら、改正前にあっても、極端に高額なのものである場合、公序良俗に反する行為(暴利行為)として無効であり(第90条)、判決により適用を回避できた。又、不動産取引や割賦販売など「違約金」によるトラブルが発生しやすい分野においては各業法などで特則を設けこれに対処した(例. 宅地建物取引業法第39条 - 取引予定額の20%を上限、割賦販売法第6条 - 商品価格等に法定利率を乗じたものを上限)。又、金銭の消費貸借については、利息制限法により、賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が同法第1条に規定する率の1.46倍を超える部分は無効とされている(同法第4条)。このように、実務上柔軟な対応ができないと解され、2017年改正において削除された。
解説
[編集]第1項
[編集]損害賠償額の予定は、賠償額の争いを避けるため、現実の損害額に関わらず賠償を認める制度。
損害賠償額の予定は、債務不履行があったときの賠償額を定めたものであるから、債務不履行が成立しなければ、予定された賠償額を支払う必要はない。一方、債務不履行があったことさえ証明すれば、損害の発生や損害額の立証をしなくても、予定された賠償額を請求できる(大判大正11.7.26)。損害額の算定、証明の困難さから争いを避けるために損害賠償額の予定をしているからである。
逆に、債権者に発生した損害額が予定の賠償額を超えた場合はどうか。通常は、予定された賠償額を請求受領の上、発生した損害額を証明し、受領した予定賠償金との差額について請求することができると考えられるが、賠償額の予定そのものが、当事者間で賠償額の争いをしない旨の特約であると解釈もでき(債務者は、債権者側の損害発生と無関係に一定額の支払いが発生するのであり、それによって、債権者に利益が生じても考慮されない)、債権者は差分の損害発生のリスクを受け入れていると解されるおそれもある。契約実務においては、契約書に「違約金の予定額を超過する損害が発生したときは、その額を請求することができる」等の文言を加え、差額の請求権を確保している。
第2項
[編集]- 履行の請求
- 民法第414条(履行の強制)
- 解除権の行使
第3項
[編集]実際の契約では、「違約金」と「損害賠償額の予定」は同じ意味で解釈されるケースも多い。そのため、「違約金」という言葉の意味について、契約でその意味を明示しなかった場合、違約金は損害賠償額の予定であると推定する規定を置いた。そのため、本来の意味での「違約金」を定める場合には、契約書にその旨を明示しておく必要がある。
「違約金」と言った場合、違約金を支払うことにより、債務者側から契約の解除ができると言う意味合いのものも多い。
参照条文
[編集]- 債務不履行に基づく損害賠償請求
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