民法第915条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第5編 相続 (コンメンタール民法)
条文
[編集](相続の承認又は放棄をすべき期間)
- 第915条
- 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
- 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
解説
[編集]- 相続人は、相続の開始(被相続人の死亡)を知ってから3ヶ月以内(熟慮期間)に、①単純承認、②限定承認、③相続放棄のいずれかを選択しなければならない。明治民法第1017条を継承。この期間中に限定承認又は相続放棄のいずれかを選択しない場合、単純承認したものとみなされる(民法第921条 法定単純承認)。
- 相続の承認又は放棄は熟慮期間内であっても撤回できない(民法第919条)。
- 相続開始は、一般的には被相続人の死亡と解するが、相続財産の状況について知ることができなかったことに相当の理由がある場合、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのを相当とするのが判例である。
- 相続人が複数あって、相続開始について知る時期が区々である場合や相続財産の調査が完了しない場合などには、利害関係人等の請求により家庭裁判所が熟慮期間を伸長させることができる。
- 熟慮期間にあっては、相続の承認又は放棄を決定するため、相続財産の調査をすることができる。
- 限定承認は熟慮期間内に共同相続人間で合意し、相続財産の目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述しなければならない(民法第924条)。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 相續放棄無効確認等請求(最高裁判決 昭和29年12月21日)民法第938条,家事審判法第9条甲類29号,家事審判規則114条
- 相続放棄の申述は、申述者が申述書に自署することを要するか
- 相続放棄の申述書には、申述者が自署するのを原則とするが、自署でなければ無効であるということはできない。
- 貸金等(最高裁判決 昭和59年4月27日)民法第921条2号
- 民法915条1項所定の熟慮期間について相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当であるとされる場合
- 相続人において相続開始の原因となる事実及びこれにより自己が法律上相続人となつた事実を知つた時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかつたのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部若しくは一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。
参考
[編集]明治民法において、本条には後見監督人に関する以下の規定があった。趣旨は、民法第851条に継承された。
- 後見監督人ノ職務左ノ如シ
- 後見人ノ事務ヲ監督スルコト
- 後見人ノ欠ケタル場合ニ於テ遅滞ナク其後任者ノ任務ニ就クコトヲ促シ若シ後任者ナキトキハ親族会ヲ招集シテ其選任ヲ為サシムルコト
- 急迫ノ事情アル場合ニ於テ必要ナル処分ヲ為スコト
- 後見人又ハ其代表スル者ト被後見人トノ利益相反スル行為ニ付キ被後見人ヲ代表スルコト
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