刑事訴訟法第411条
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条文
[編集](原判決破棄の判決2)
- 第411条
- 上告裁判所は、第405条各号に規定する事由がない場合であっても、左の事由があって原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるときは、判決で原判決を破棄することができる。
- 判決に影響を及ぼすべき法令の違反があること。
- 刑の量定が甚しく不当であること。
- 判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があること。
- 再審の請求をすることができる場合にあたる事由があること。
- 判決があった後に刑の廃止若しくは変更又は大赦があったこと。
解説
[編集]参照条文
[編集]判例
[編集]- 殺人、強姦致死、強姦、窃盗(最高裁判決 昭和23年11月16日)
- 警察における取調の違法と上告理由
- 仮に警察の取調が「脅迫強問」によつて為されたとしても、その取調の結果を記載した書類は、原判決において証拠として採用されてはいないのであるから、そのことは適法な上告理由とはならない。
- 国家公務員法違反(最高裁判決昭和32年10月9日)裁判所法第4条,刑訴法第406条,刑訴法第357条
- 控訴審の差戻判決は上告審を拘束するか
- 第一次の控訴審が第一審判決の法令解釈に誤りがあるとしてこれを破棄、差し戻し、第二次の第一審及び控訴審が右判断に従つた場合においても、上告審たる最高裁判所は右第一次の控訴審の法律判断に拘束されるものではない。
- 最高裁判所が上告受理の申立を理由ありとして原判決を破棄する場合の法条
- 最高裁判所が刑訴第406条により上告審として事件を受理し、申立を理由ありと認めた場合は、刑訴第411条第1号によつて原判決を破棄すべきものである。
- 想像的併合罪の関係に立つ二罪のうち一罪につき免訴の裁判があつた場合と上級審への移審の効力
- 想像的併合罪の関係に立つ二罪のうち一罪について、第一審判決が主文において免訴を言渡し、被告人から控訴、上告がなされたような場合には、右免訴部分は上級審に移審していないものと解するを妨げない。
- 控訴審の差戻判決は上告審を拘束するか
- 窃盗、常習特殊窃盗(最高裁決定 昭和39年7月9日)刑法第45条
- 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在した場合における罪数。
- 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在しても、そのためにその常習犯が二個の常習犯に分割されるものではないと解すべきである。
- 右常習犯と確定裁判を経た罪とは併合罪か。
- 右の場合、その常習犯は別罪の裁判確定後に終了したものであるから、右確定裁判を経た罪とは刑法第四五条の併合罪の関係に立つものではない。
- 刑事訴訟法第411条第1号に当らないとされた事例。
- 原判決が、刑法第45条の適用を誤り二個の刑を言い渡すべきであるのに一個の刑を言い渡した場合には、その違法は判決に影響を及ぼすこと明らかであるが、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。
- 常習犯の中間に別罪の確定裁判が介在した場合における罪数。
- 強盗殺人(最高裁判決昭和43年10月25日)裁判所法第4条,刑訴法第400条,刑訴法第328条
- 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理な点があるとして刑訴法第411条第3号により破棄された事例
- 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理なところがあるときは、刑訴法第411条第3号により原判決を破棄しなければならない。
- 破棄判決の破棄の理由とされた事実上の判断の拘束力の有無
- 破棄判決の破棄の理由とされた事実上の判断は、拘束力を有する。
- 破棄判決の拘束力を有する判断の範囲
- 破棄判決の拘束力は、破棄の直接の理由、すなわち原判決に対する消極的、否定的判断についてのみ生ずるものであり、右判断を裏付ける積極的、肯定的事由についての判断は、なんら拘束力を有するものではない。
- 証人の尋問終了後に作成された同人の検察官調書と刑訴法第328条
- 公判準備期日における証人の尋問終了後に作成された同人の検察官調書を、右証人の証言の証明力を争う証拠として採証しても、必ずしも刑訴法第328条に違反するものではない。
- 犯行と被告人らとの結びつきに関する原判決の事実認定に不合理な点があるとして刑訴法第411条第3号により破棄された事例
- 収賄(最高裁判決 昭和50年4月24日)
- 学校教諭が父兄からギフトチエツクを反覆収受した事案につき収賄罪認定に誤認、審理不尽ありとされた事例
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- 原判決は、疑問点を解消すべき事情について審理することなく、たやすく第一審判決の賄賂性の認定を是認したものであつて、原判決には、右の点について審理を尽さずひいては重大な事実を誤認した違法の疑いがあるといわなければならず、これを破棄しなければ著しく正義に反する
- 強制わいせつ被告事件(最高裁判決 平成21年4月14日)
- 上告審における事実誤認の主張に関する審査の方法
- 上告審における事実誤認の主張に関する審査は,原判決の認定が論理則,経験則等に照らして不合理かどうかの観点から行うべきである。
- 被告人が満員電車内で女性Aに対して痴漢行為をしたとされる強制わいせつ被告事件について,被告人が一貫して犯行を否認しており,Aの供述以外にこれを基礎付ける証拠がなく,被告人にこの種の犯行を行う性向もうかがわれないという事情の下では,Aの供述の信用性判断は特に慎重に行う必要があり,Aの供述する被害状況に不自然な点があることなどを勘案すると,Aの供述の信用性を全面的に肯定した第1審判決及び原判決の認定は不合理であり是認できない。
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