刑法第197条
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条文
[編集](収賄、受託収賄及び事前収賄)
- 第197条
- 公務員が、その職務に関し、賄
賂 を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、7年以下の拘禁刑に処する。 - 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、5年以下の拘禁刑に処する。
改正経緯
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
[編集]- 単純収賄罪
- 受託収賄罪
- 枉法収賄罪(第197条の3)
参照条文
[編集]判例
[編集]- 偽造公文書行使、公文書偽造、詐欺、収賄(最高裁判決 昭和25年02月28日)
- 公務員の職務執行と密接な關係にある行爲に對する金品の收受と賄賂罪の成立
- 權限に屬する職務執行に當其職務執行と密接な關係を有する行爲を爲すことにより相手方より金品を收受すれば賄賂罪の成立をさまたげるものではない。
- 収賄(最高裁判決 昭和27年7月22日)
- 賄賂罪における請託の意義
- 刑法第197条第1項後段の請託とは、公務員に対して、その職務に関して一定の行為を行うことを依頼することであつて、その依頼が不正な職務行為の依頼であると、正当な職務行為の依頼であるとを問わない。
- 収賄、贈賄幇助(最高裁判決 昭和30年7月5日)
- 単純収賄の訴因につき請託収賄の事実を認定するには訴因変更手続を必要とするか
- 単純収賄の訴因につき請託収賄の事実を認定するには訴因変更手続を経ることを要する。
- 贈賄、横領、加重収賄、収賄、詐欺(最高裁判決 昭和37年5月29日)
- 「其職務」の意義
- 「其職務」とは、当該公務員の一般的な職務権限に属するものであれば足り、本人が具体的に担当している事務であることを要しない。
- 熊本県八代地方事務所農地課勤務の事務吏員の職務権限
- 熊本県八代地方事務所農地課勤務の事務吏員は、日常担当しない事務であつても、同課に属する農地および農業用施設等災害復旧工事につき事業主体のなす工事請負契約締結の方法、競争入札の実施、その際における予定価格の決定などを指導監督する職務権限をも有する。
- 「其職務」の意義
- 収賄(最高裁決定 昭和33年9月30日)刑法第198条
- 賄賂と職務行為との関係
- 賄賂は職務行為に関するものであれば足り、個々の職務行為と賄賂との間に対価的関係のあることを必要とするものではない。
- 収賄(最高裁決定 昭和41年4月18日)刑法第197条の2
- 公務員が保証人となつている債務の立替弁済と刑法第197条第1項の収賄罪の成否
- 公務員が、その親族の金銭債務の保証人となつている場合において、自己の職務に関し、右債務の立替弁済をさせたときは、刑法第197条第1項の収賄罪が成立する。
- 贈賄(最高裁決定 昭和58年3月25日)刑法第198条
- 一般的職務権限を異にする他の職務に転じた公務員に対し前の職務に関して賄路を供与することと贈賄罪の成否
- 一般的職務権限を異にする他の職務に転じた公務員に対し前の職務に関して賄路を供与した場合であつても、贈賄罪が成立する。
- 収賄、贈賄(最高裁決定 昭和59年5月30日)
- 大学設置審議会委員の職務に密接な関係のある行為にあたるとされた事例
- 大学設置審議会及びその歯学専門委員会の委員である被告人が、歯科大学設置の認可申請をしていた関係者らに対し、教員予定者の適否を右委員会の審査基準に従つて予め判定してやり、あるいは同委員会の中間的審査結果をその正式通知前に知らせた行為は、右審議会及び委員会の委員としての職務に密接な関係のある行為として収賄罪にいわゆる職務行為にあたる。
- 受託収賄(最高裁決定 昭和60年6月11日)
- 市議会議員の会派内における議長候補者選出行為が市議会議員の職務に密接な関係のある行為に当たるとされた事例
- 市議会議員が、現職議員によつて構成される会派内において、市議会議長選挙に関し、所属議員の投票を拘束する趣旨で、投票すべき候補者を選出する行為は、市議会議員の職務に密接な関係のある行為として収賄罪にいわゆる職務行為に当たる。
- 収賄(最高裁決定 昭和61年6月27日)
- 市長の再選後に担当すべき職務に関し受託収賄罪が成立するとされた事例
- 市の発注する工事に関し入札参加者の氏名及び入札の執行を管理する職務権限をもつ市長が、任期満了の前に、再選された場合に具体的にその職務を執行することが予定されていた市庁舎の建設工事の入札等につき請託を受けて賄賂を収受したときは、受託収賄罪が成立する。
- 贈賄(最高裁決定 昭和63年4月11日)刑法第198条
- 衆議院の委員会で審査中の法律案に関し同委員会に所属しない同院議員に対する贈賄罪が成立するとされた事例
- 衆議院議員に対し、同院大蔵委員会で審査中の法律案につき、関係業者の利益のため廃案、修正になるよう、同院における審議、表決に当たつて自らその旨の意思を表明すること及び同委員会委員を含む他の議員に対してその旨説得勧誘することを請託して金員を供与したときは、当該議員が同委員会委員でなくても、贈賄罪が成立する。
- 証券取引法違反、贈賄(最高裁決定 昭和63年7月18日) 証券取引法第203条,刑法第198条1項
- 新規上場に先立ち株式を公開価格で取得できる利益が贈収賄罪の客体になるとされた事例
- 証券取引所への新規上場に先立つ株式の公開に際し、上場時にはその価格が確実に公開価格を上回ると見込まれ、一般には公開価格で入手することが極めて困難な株式を公開価格で取得できる利益は、それ自体が贈収賄罪の客体になる。
- 収賄被告事件(最高裁決定 平成14年10月22日)
- 中央省庁の幹部職員の不作為について収賄罪における職務関連性が認められた事例
- 中央省庁の幹部職員が,積極的な便宜供与行為をしていなかったとしても,同省庁が私人の事業の遂行に不利益となるような行政措置を採らずにいたことに対する謝礼等の趣旨で利益を収受したときは(判文参照),収賄罪における職務関連性が認められる。
- 外国為替及び外国貿易管理法違反、贈賄、議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律違反被告事件(最高裁判決 平成7年2月22日 ロッキード事件)刑事訴訟法第317条
- 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることと賄賂罪における職務行為
- 内閣総理大臣が運輸大臣に対し民間航空会社に特定機種の航空機の選定購入を勧奨するよう働き掛けることは、内閣総理大臣の運輸大臣に対する指示として、賄賂罪の職務行為に当たる。
- 収賄被告事件(最高裁決定 平成17年3月11日)警察法第64条
- 警視庁A警察署地域課に勤務する警察官が同庁B警察署刑事課で捜査中の事件に関して告発状を提出していた者から現金の供与を受けた行為につき収賄罪が成立するとされた事例
- 警視庁A警察署地域課に勤務する警察官が,同庁B警察署刑事課で捜査中の事件に関して,告発状を提出していた者から,告発状の検討,助言,捜査情報の提供,捜査関係者への働き掛けなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら,現金の供与を受けたときは,同警察官が同事件の捜査に関与していなかったとしても,刑法197条1項前段の収賄罪が成立する。
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