日本国憲法第81条

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条文[編集]

【違憲審査制】

第81条
最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

解説[編集]

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参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 食糧管理法違反(最高裁判決 昭和23年12月1日)
    違憲の主張のあつた法令を適用するに当り特に判断を明示しなかつた場合と憲法適合の判断判示の有無
    所論の如く裁判所は、法令に対する憲法審査権を有し、若しある法令の全部又は一部が、憲法に適しないと認めるときはこれを無効として其適用を拒否することができると共に、有罪の言渡をなすにはその理由において、必ず法令の適用を示すべき義務あるものであるから、当事者においてある法令が憲法に適合しない旨を主張した場合に、裁判所が有罪判決の理由中に其法令の適用を挙示したときは、其法令は憲法に適合するものであるとの判断を示したものに外ならならと見るを相当とする。従つて原審における所論の主張に対し、特に憲法に適合する旨の判断を積極的に表明しなかつたとしても、所論の如く判断を示さない違法があると言い得ない。
  2. 食糧管理法違反(最高裁判決 昭和25年2月1日)
    下級裁判所の違憲審査権と憲法第81条文
    憲法は国の最高法規であつてその条文規に反する法律命令等はその効力を有せず、裁判官は憲法及び法律に拘束せられ、また憲法を尊重し擁護する義務を負うことは憲法の明定するところである。従つて、裁判官が。具体的訴訟事件に法令を適用するに当り、その法令が憲法に適合するか否かを判断することは、憲法によつて裁判官に課せられた職務と職権であつて、このことは最高裁判所の裁判官であると下級裁判所の裁判官であることを問わない。憲法第81条文は、最高裁判所が違憲審査権を有する終審裁判所であることを明らかにした規定であつて下級裁判所が違憲審査権を有することを否定する趣旨をもつているものではない。それ故、原審が所論の憲法適否の判断をしたことはもとより適法であるのみでなく、原審は憲法適否の判断を受くるために最高裁判所に移送すべきであるとの所論は、全く独断と云うの外はない。
  3. 日本国憲法に違反する行政処分取消請求(警察予備隊違憲訴訟 最高裁判決 昭和27年10月8日)
    具体的事件を離れて最高裁判所は抽象的に法律命令等の合憲性を判断できるか
    最高裁判所は、具体的事件を離れて抽象的に法律、命令等が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有するものではない。
    • 現行の制度の下においては、特定の者の具体的な法律関係につき紛争の存する場合においてのみ裁判所にその判断を求めることができるのであり、裁判所がかような具体的事件を離れて抽象的に法律命令等の合憲牲を判断する権限を有するとの見解には、憲法上及び法令上何等の根拠も存しない。
  4. 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第3条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反(砂川事件 最高裁判決 昭和34年12月16日) - 詳細は憲法第98条判例節参照
    日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(以下安保条約と略す。)と司法裁判所の司法審査権
    安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。
  5. 土地賃貸借契約等無効確認請求(最高裁判決 昭和35年2月10日)憲法第14条憲法第29条
    1. 農地法第20条と憲法第14条、第29条
      農地法第20条は、憲法第14条、第29条に違背しない。
    2. 当該法律関係と直接関係のない規則またはその属する法律全体の違憲性を理由とする違憲主張の適否。
      ある法規(例えば農地法第20条)の適用される法律関係(例えば同条第1項の知事の不許可処分)の違憲を主張するのに、その法規の属する法律中当該法律関係と直接関係のない法規(例えば同法第3条)またはその法律全体(例えば農地法)の違憲性を理由とすることは、上告理由として許されない。
  6. 衆議院議員資格並びに歳費請求(苫米地事件 最高裁判決 昭和35年6月8日)
    衆議院解散の効力に関する裁判所の審査権限。
    衆議院解散の効力は、訴訟の前提問題としても、裁判所の審査権限の外にある。
    • 本件解散無効に関する主要の争点は、本件解散は憲法69条に該当する場合でないのに単に憲法7条に依拠して行われたが故に無効であるかどうか、本件解散に関しては憲法7条所定の内閣の助言と承認が適法に為されたかどうかの点にあることはあきらかである。しかし、現実に行われた衆議院の解散が、その依拠する憲法の条章について適用を誤つたが故に、法律上無効であるかどうか、これを行うにつき憲法上必要とせられる内閣の助言と承認に瑕疵があつたが故に無効であるかどうかのごときことは裁判所の審査権に服しないものと解すべきである。
    • 直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。
  7. 地方自治法に基く警察予算支出禁止(最高裁判決 昭和37年3月7日)
    法令審査権と国会の両院における法律制定の議事手続
    裁判所の法令審査権は、国会の両院における法律制定の議事手続の適否には及ばないと解すべきである。
    • 両院において議決を経たものとされ適法な手続によつて公布されている以上、裁判所は両院の自主性を尊重すべく同法制定の議事手続に関する所論のような事実を審理してその有効無効を判断すべきでない。
  8. 地方公務員法違反(最高裁判決 昭和44年4月2日)
    地方公務員法37条及び61条4号の合憲性
    地方公務員法37条は憲法28条に、地方公務員法61条4号は憲法28条、31条、18条に違反しない。
    • 法律の規定は、可能なかぎり、憲法の精神にそくし、これと調和しうるよう、合理的に解釈されるべきものであつて、この見地からすれば、これらの規定の表現にのみ拘泥して、直ちに違憲と断定する見解は採ることができない。すなわち、地公法は地方公務員の争議行為を一般的に禁止し、かつ、あおり行為等を一律的に処罰すべきものと定めているのであるが、これらの規定についても、その元来の狙いを洞察し労働基本権を尊重し保障している憲法の趣旨と調和しうるように解釈するときは、これらの規定の表現にかかわらず、禁止されるべき争議行為の種類や態様についても、さらにまた、処罰の対象とされるべきあおり行為等の態様や範囲についても、おのずから合理的な限界の存することが承認されるはずである。かように、一見、一切の争議行為を禁止し、一切のあおり行為等を処罰の対象としているように見える地公法の前示各規定も、右のような合理的な解釈(合理的限定解釈)によつて、規制の限界が認められるのであるから、その規定の表現のみをみて、直ちにこれを違憲無効の規定であるとする所論主張は採用することができない。

前条:
日本国憲法第80条
【下級裁判所の裁判官、任期、定年、報酬】
日本国憲法
第6章 司法
次条:
日本国憲法第82条
【裁判の公開】
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