民法第116条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第1編 総則 (コンメンタール民法)
条文
[編集]- 第116条
- 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
解説
[編集]無権代理の追認の効力についての一般的な規定である。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和33年06月05日)民法第113条
- 甲を代理して締結された売買契約について乙のなした追認が有効と認められた事例
- 家督相続開始の当時、被相続人の長男甲はすでに戦死しており、法律上、被相続人の長女乙が相続人であるにかかわらず、同人らの母は右戦死の事実を知らず、被相続人の所有に属していた係争不動産を甲において相続したものと考え、甲の代理人としてこれを第三者に売り渡す契約を締結した場合において、後日、真の家督相続人である乙が右売買契約を追認したときは、民法第113条、第116条の類推適用によつて、右契約は、その締結の日に遡つて、乙のため効力を生ずるものと解するを相当とする
- 本件追認者はいわゆる無権代理行為における本人ではないが、本来本人たり得べかりし者であり、かゝる地位にある者が自己に属する権利を処分するに帰するその意思表示の効果を阻止すべき何らの理由がない。
- 抵当権設定登記抹消等請求(最高裁判決 昭和37年08月10日)
- 他人の権利の処分と追認
- 他人の権利を自己の権利であるとして処分した場合に、他人がこれを追認したときは、処分は、民法第116条の類推適用により、処分のときに遡つて、他人についてその効力を生ずると解すべきである。
- 養子縁組無効確認請求(最高裁判決 昭和39年09月08日)民法第797条,旧民法843条
- 養子縁組の追認と民法第116条但書の類推適用の有無。
- 養子縁組の追認には、民法第116条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。
- 養子縁組の追認は身分行為であって、第三者の権利を害することがあっても、それを障害事由として追認が無効になることはない。害される第三者の権利の補償については別に議論される。
- 供託金還付請求権確認、供託金還付請求権取立権確認(最高裁判決 平成9年06月05日)民法第466条
- 譲渡禁止の特約のある指名債権の譲渡後にされた債務者の譲渡についての承諾と債権譲渡の第三者に対する効力
- 譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が特約の存在を知り、又は重大な過失により特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が債権の譲渡について承諾を与えたときは、債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法116条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできない。
- 売買代金請求事件(最高裁判決 平成23年10月18日)民法第560条
- 無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合における当該物の所有者の追認の効果
- 無権利者を委託者とする物の販売委託契約が締結された場合に,当該物の所有者が,自己と同契約の受託者との間に同契約に基づく債権債務を発生させる趣旨でこれを追認したとしても,その所有者が同契約に基づく販売代金の引渡請求権を取得すると解することはできない。
- ブナシメジを所有する被上告人が,無権利者との間で締結した販売委託契約に基づきこれを販売して代金を受領した上告人に対し,同契約を追認したからその販売代金の引渡請求権が自己に帰属すると主張して,その支払を請求する事案
- (原審)被上告人が,上記の趣旨で本件販売委託契約を追認したのであるから,民法116条の類推適用により,同契約締結の時に遡って,被上告人が同契約を直接締結したのと同様の効果が生ずる。
- ブナシメジを所有する被上告人が,無権利者との間で締結した販売委託契約に基づきこれを販売して代金を受領した上告人に対し,同契約を追認したからその販売代金の引渡請求権が自己に帰属すると主張して,その支払を請求する事案
- 販売委託契約は,無権利者と受託者との間に有効に成立しているのであり,当該物の所有者が同契約を事後的に追認したとしても,同契約に基づく契約当事者の地位が所有者に移転し,同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解する理由はない。
- 追認により,同契約に基づく債権債務が所有者に帰属するに至ると解するならば,上記受託者が無権利者に対して有していた抗弁を主張することができなくなるなど,受託者に不測の不利益を与えることになる。
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