民法第364条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第2編 物権 (コンメンタール民法)
条文
[編集]- 第364条
- 債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は、第467条の規定に従い、第三債務者に質権の設定を通知し、又は第三債務者がこれを承諾しなければ、これをもって第三債務者その他の第三者に対抗することができない。
改正経緯
[編集]2017年改正により以下のとおり改正。
- (改正前)指名債権を質権の目的としたときは
- (改正後)債権を目的とする質権の設定(現に発生していない債権を目的とするものを含む。)は
同年の改正おいて、指図債権等が「有価証券」概念に包括されたため、それらを除いたかつての「指名債権」は、単に「債権」と概念すれば足りるようになり、一方で、第466条の6に「将来債権」概念が規定され、債権譲渡・権利質等の対象となることが明示されたことに伴う改正。
解説
[編集]権利質の対抗要件について規定。
「第三債務者」が存在し、その弁済行為等について対抗の問題が生じる点において第467条に定める債権譲渡と性質を共有する。
以下に事例を示す。
- AはBから、1500万円を借り入れた。
- その際、Aが有するC銀行に対する預金債権1000万円に関する預金証書・届出印・委任状など、預金を引き出すのに必要な物件一切をBに引き渡し、契約書にも記載し担保の一部とした(権利質の設定)。
- その後、資金繰りが悪くなったAは、C銀行に、「預金証書及び届出印が盗難にあった。身分証明はするので引き出させて欲しい」と言い、当該預金を引き出し行方をくらませた。
- Bは、Aから返済がなかったため、当該預金証書をC銀行に持ち込み引出そうとした。
- C銀行は、当該預金はAに解約された旨、Bに示し、支払いを拒否した。
この場合において、「預金証書」は証拠としての機能しか有さないため、それを占有していたからと言って権利の存在を第三者に対抗はできない。Bが当該預金に対し、質権を有していることは、上記2の時点における、債権者(C銀行)への通知又は債権者の承諾がなければ、第三者(事例の場合、C銀行)に対抗することはできない。
逆に、上記2の時点で、BがAを通してC銀行に質権の設定について有効に通知等していた場合は、上記3は有効な預金の解約とはならず、上記5の支払い拒否は不当なものとなる。なお、一般の銀行預金においては、証書等の質入れは約款等で禁止されており、例外を認める場合には特別な手続きを必要とするので、権利質の設定はかなり困難である。
この規定は、記名ノ国債ヲ目的トスル質権ノ設定ニ関スル法律(明治37年4月1日法律第17号)により記名の国債には、適用されない。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 供託金還付同意(最高裁判決 昭和58年06月30日)民法第467条
- 指名債権に対する質権設定を第三者に対抗しうる要件としての第三債務者に対する通知又はその承諾と質権者特定の要否
- 指名債権に対する質権設定を第三者に対抗しうる要件としての第三債務者に対する通知又はその承諾は、具体的に特定された者に対する質権設定についてされることを要する。
- 敷金返還(最高裁判決 平成8年6月18日)民法第95条,民法第467条,民法第468条
- 敷金返還請求権を目的とする質権設定についての第三債務者の異議をとどめない承諾に要素の錯誤があるとされた事例
- 敷金返還請求権を目的として質権が設定され、第三債務者がこれを承諾した場合において、第三債務者としては敷金から控除される金額の割合を定めた特約の存在について異議をとどめて承諾をするつもりであったのに、その使者がこれと異なった表示をしたため、錯誤により異議をとどめない承諾がされる結果となったものであり、右特約が返還の対象となる敷金の額と密接なかかわりを有する約定であったなど判示の事実関係の下においては、第三債務者の右の錯誤は、承諾をするに至った動機における錯誤ではなく、承諾の内容自体に関する錯誤であって、要素の錯誤に当たるというべきである。