民法第470条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集](併存的債務引受の要件及び効果)
- 第470条
- 併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。
- 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる。
- 併存的債務引受は、債務者と引受人となる者との契約によってもすることができる。この場合において、併存的債務引受は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に、その効力を生ずる。
- 前項の規定によってする併存的債務引受は、第三者のためにする契約に関する規定に従う。
改正経緯
[編集]2017年改正前の条項は以下のとおり。有価証券概念が整理され、「指図債権」は「指図証券」として規定され、旧本条の趣旨は必要な改正を加え、民法第520条の10に継承された。 (指図債権の債務者の調査の権利等)
- 指図債権の債務者は、その証書の所持人並びにその署名及び押印の真偽を調査する権利を有するが、その義務を負わない。ただし、債務者に悪意又は重大な過失があるときは、その弁済は、無効とする。
解説
[編集]債務引受概説
[編集]2017年改正までは、債権譲渡と呼応した「債務引受」についての規定はなかったが、それまでも、社会的必要性(借金の肩代わり、担保権のついた物件を譲り受け被担保債務を引き受ける、債務の引受で債務の履行に替える、等)があり、実際に行われた。その結果、訴訟にもあがり、判例の蓄積がなされ、学説上でも、肯定的に確立された。それらを、2017年改正で取り込み、「第五節 債務の引受け」を設けた。
債務引受には、以下の3種があるとされ、本改正においては「併存的債務引受」及び「免責的債務引受」が法制化された。
- 履行引受
- 債務の履行負担のみを引き受けるもの。 引受人と原債務者の内部関係でのみ引受けが行われ、債務者が債務を負担しつづけ、引受人は債権者に対して債務を負担しない。引受人が履行を怠った場合でも、債権者に対し債務不履行責任を負うのは履行を引き受けさせた債務者自身であり、引受人は債権者に対して何らの責任も負担しない。
- 併存的債務引受(本条及び第471条に規定)
- 引受人が、債権者に対して、原則として原債務者と同じ内容の債務を負担し、債務者は同一の責任を負い続けるもの。
- 免責的債務引受(第472条ないし第472条の4に規定)
- 引受人が、債権者に対して、原債務者の負っていた債務をそのまま負担し、原債務者は債務を逃れるもの。狭義には、これのみを「債務引受」という。
併存的債務引受
[編集]- 併存的債務引受は、引受人が、債権者に対して、原則として原債務者と同じ内容の債務を負担し、債務者は同一の責任を負い続けるものをいう。債権者や原債務について担保を提供していた者においては、原債務者に対する責任は変わらず追及できる一方、履行の相手方は単純に増加するため(連帯債務となる。判例(最判昭和41年12月20日民集20・10・2139)の取り込み、改正前は本判例に対して批判があったが、改正により連帯債務の相対的効力の原則が強化されたことによりその要因は解消された)、債権者や担保提供者の利益を害することはない。
- 債権者と引受人となる者との契約(債務者の合意も通知も不要、債務者の意思に反していても良い(判例 大判大正15年3月25日民集5・219))でも、債務者と引受人となる者との契約(効力は、債権者への通知等の後、承諾を得ることを要する)でも良い。
- 債務者と引受人となる者との契約は、債権者を第三者とする「第三者のためにする契約」であるので、当該条項が適用される。
参照条文
[編集]- 第5節 債務の引受け
- 第三者のためにする契約
判例
[編集]- 貸金請求(最高裁判決 昭和41年12月20日)
- 重畳的債務引受によつて連帯債務関係を生ずるか
- 重畳的債務引受があつた場合には、特段の事情のないかぎり、原債務者と債務引受人との間に連帯債務関係が生ずるものと解するのが相当である。
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