民法第537条
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(第三者のためにする契約 から転送)
法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集]- 第537条
- 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
- 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存在しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
- 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
改正経緯
[編集]2017年改正により、第2項を新設。旧第2項を第3項とし条項の文言を修正。
解説
[編集]「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約」する契約を「第三者のためにする契約」という。
本来契約の当事者でない第三者に、給付(債務の履行)を債務者に対して請求する権利が発生することになるが、その権利の発生時点は、「その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時」(受益の意思表示)と規定されている。
典型として、受取人を指定する生命保険が挙げられる。この場合、被保険者(保険契約者)が要約者、保険会社が諾約者、生命保険金の受取人が受益者という関係に立ち、被保険者が死亡するなどして、保険の条件が成就、受取人が受け取りの意思を示せば、受取人が債権者、保険会社は債務者となる。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 電報送金払渡請求(最高裁判決 昭和43年12月05日) 民法第91条,民法第92条
- 電信送金契約は第三者のためにする契約であるか
- 電信送金契約は、特別の事情のないかぎり、第三者たる送金受取人のためにする契約であるとはいえず、被仕向銀行は、右契約により、仕向銀行に対する関係においては、送金受取人に送金の支払をする義務を負うが、送金受取人本人に対する関係においては、そのような義務を負うものではなく、単に仕向銀行の計算において送金の支払をなしうる権限を取得するにとどまると解すべきである。
- 約束手形金(最高裁判決 平成10年05月26日)民法第96条1項,民法第587条,民法第703条
- 甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消した場合の乙から甲に対する不当利得返還請求につき甲が右給付により利益を受けなかったものとされた事例
- 甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消したが、甲と丙との間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、甲が丁の言うままに乙に対して貸付金を丙に給付するように指示したなど判示の事実関係の下においては、乙から甲に対する不当利得返還請求について、甲が右給付によりその価額に相当する利益を受けたとみることはできない。
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