民法第602条

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法学民事法民法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文[編集]

短期賃貸借

第602条
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
  1. 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
  2. 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
  3. 建物の賃貸借 3年
  4. 動産の賃貸借 6箇月

改正経緯[編集]

2017年改正により、以下の部分を改正。

  • 冒頭部「処分につき行為能力の制限を受けた者又は」を削除。
    改正前は、賃貸借期間の制限について、制限能力者の行為も含まれていたが、そもそも、法律行為として未成年者や成年被後見人などのそれぞれの規定で手当てがされており(第13条等)、本条の規定により単独で短期賃貸借を行うことができるとの誤読のおそれがあること等の理由から、削除された。
  • 上記下線部を追加。
    判例で確立されていた、短期賃貸借の期間を超えて締結された賃貸借の効力については法定期間を超える部分のみが無効となることを明記した。

解説[編集]

他人物賃貸の存在期間の制約について規定している。かつて、短期賃貸借がもたらす抵当権者への制約の規定は第2編に存在したが、廃止された。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和36年6月23日)
    民法第602条の期間を超える抵当権物賃貸借の抵当権者兼競落人に対する効力
    民法第602条所定の期間を超える建物賃貸借は、抵当権の登記後に成立したものであるときは、これを登記しても、右期間の範囲内においてもこれをもつて抵当権者兼競落人に対抗し得ない。
  2. 賃貸権確認請求(最高裁判決 昭和38年9月17日)
    民法第602条の期間をこえる土地賃貸借の抵当権者及び競落人に対する効力
    民法第602条の期間をこえる土地賃貸借は、その登記が抵当権設定登記後になされたものである以上、同条所定期間内においても、抵当権者及び競落人に対抗できない。
  3. 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和43年9月27日)
    民法第395条の適用のある期間の定のない建物賃貸借につき解約申入の正当事由が認められた事例
    民法第395条の適用のある期間の定のない建物賃貸借において、その賃貸借が成立後競落人による解約申入に至るまで、−ほとんど7年に及ぶ長期間を経過したものであるときは、他に特段の事情がないかぎり、その解約申入は借家法1条ノ2(現.借地借家法第28条)にいう「正当ノ事由」を具備するものというべきである。
  4. 賃貸借契約解除等(最高裁判決 平成元年6月5日)
    抵当権と併用して賃借権設定仮登記を経由した者の後順位短期賃借権者に対する明渡請求の可否
    抵当権と併用して抵当不動産につき賃借権設定の予約をしその仮登記を経由した者が、予約完結権を行使して賃借権の本登記を経由しても、後順位の短期賃借権者に対し右不動産の明渡を求めることは、右短期賃貸借の解除請求とともにする場合であつてもできない。
  5. 工事妨害禁止等請求事件(札幌地方裁判所判決 平成20年05月30日)建物の区分所有等に関する法律第13条,建物の区分所有等に関する法律第17条,建物の区分所有等に関する法律第26条,民事訴訟法第61条
    携帯電話会社がマンションの管理組合に対し,屋上に携帯電話の基地局を設置するために締結した賃貸借契約に基づき設置工事の妨害禁止等を求めた請求について,契約を締結するのに必要な区分所有者全員の同意を得ていないとして,これを棄却。

前条:
民法第601条
(賃貸借)
民法
第3編 債権

第2章 契約

第7節 賃貸借
次条:
民法第603条
(短期賃貸借の更新)
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