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民法第802条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第4編 親族 (コンメンタール民法)

条文

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(縁組の無効)

第802条
縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。
  1. 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。
  2. 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第799条において準用する第739条第2項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。

解説

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無効である養子縁組について定める。婚姻同様、届出が受理されない限り縁組の効果は生じないが、逆に、届出が受理される(≒戸籍が書き換えられる)と縁組が成立していることとなる。縁組の無効は、この場合であっても、「取消しうる縁組」と異なり、縁組の効果を生じさせない制度である。戦後の民法改正においても、明治民法の規定(旧・民法第851条)がそのまま受け継がれている。
「婚姻の無効」との類推が作用する規律であり要件・効果等については、第742条を参照。

参照条文

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判例

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  1. 養子縁組無効確認請求(最高裁判決 昭和23年12月23日)民法第93条
    1. 旧民法第851条第1号(新民法第802条第1号)の意義
      旧民法第851条第1号(新民法第802条第1号)にいわゆる「当事者間に縁組をする意思がないとき」とは、当事者間において真に養親子関係の設定を欲する効果意思を有しない場合を指し、たとえ養子縁組の届出自体については当事者間に意思の一致があつたとしても、それが単に他の目的を達するための便法として仮託されたものに過ぎないときは、養子縁組は、効力を生じない。
    2. 養子縁組の無効と民法第93条但書
      養子関係の設定を欲する効果意思のないことによる養子縁組の無効は、絶対的のものであつて民法第93条但書の適用をまつてはじめて無効となるのではない。
  2. 離婚届出無効確認請求(最高裁判決 昭和34年08月07日)民法第742条民法第763条民法第764条
    協議離婚届出書作成後の飜意と届出の効力。
    合意により協議離婚届書を作成した一方の当事者が、届出を相手方に委託した後、協議離婚を飜意し、右飜意を市役所戸籍係員に表示しており、相手方によつて届出がなされた当時、離婚の意思を有しないことが明確であるときは、相手方に対する飜意の表示または届出委託の解除の事実がなくとも、協議離婚届出が無効でないとはいえない。
    協議離婚の届出に関する判例の準用
  3. 相続回復、所有権更正登記手続請求 (最高裁判決 昭和50年04月08日)民法第739条民法第799条
    虚偽の嫡出子出生届と養子縁組の成否
    養子とする意図で他人の子を嫡出子として出生届をしても、右出生届をもつて養子縁組届とみなし、有効に養子縁組が成立したものとすることはできない。
  4. 養子縁組無効確認請求事件 (最高裁判決 平成29年1月31日)
    • Aに子B,C,Dがあって、相続人一人あたりの基礎控除額を増やす目的で、Bの子EをAの養子としたことで、相続割合の減ったC,Dが「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たり無効と訴えた事例
    専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合と民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」
    専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても,直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
    • 養子縁組は,嫡出親子関係を創設するものであり,養子は養親の相続人となるところ,養子縁組をすることによる相続税の節税効果は,相続人の数が増加することに伴い,遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは,このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず,相続税の節税の動機と縁組をする意思とは,併存し得るものである。

参考

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明治民法において、本条には夫の妻の財産の処分に関する以下の規定があったが、戦後改正において継承なく廃止された。

夫カ妻ノ為メニ借財ヲ為シ、妻ノ財産ヲ譲渡シ、之ヲ担保ニ供シ又ハ第六百二条ノ期間ヲ超エテ其賃貸ヲ為スニハ妻ノ承諾ヲ得ルコトヲ要ス但管理ノ目的ヲ以テ果実ヲ処分スルハ此限ニ在ラス

前条:
民法第801条
(外国に在る日本人間の縁組の方式)
民法
第4編 親族

第3章 親子

第2節 養子
次条:
民法第803条
(縁組の取消し)
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