民法第886条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第5編 相続 (コンメンタール民法)
条文
[編集]- 第886条
- 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
- 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
解説
[編集]- 相続開始時に胎児であれば相続人たりうることを定めた規定(明治民法第993条が準用する旧・民法第968条由来)。
- 相続は、被相続人の死亡によって開始する(882条)。原則として、相続人は相続開始時に権利能力を有していなければならない。相続の開始以前に死亡した者は、相続人になれない(その場合は一定の要件のもとに代襲相続が認められる。887条参照)。
- 権利能力については3条1項に規定がある。すなわち、第3条1項は「私権の享有は、出生に始まる。」と定め、胎児や死者は原則として権利能力を有しない、すなわち権利義務の帰属主体になれないとしている。本条は第721条とともに、この規定の重要な例外とされる(本条の導入経緯については脚注参照)。
- ただし、出生しなかった(流産・死産)の場合、第1項は適用されないため、相続の開始時から存在しなかったものとして扱われる。このことにより、相続人に胎児が存在することは、相続の「停止条件」であるか「解除条件」であるかが、学説などで争われている。
- 停止条件説
- 胎児が生きて生まれてくることを条件として、相続開始のときにさかのぼって相続する権利を取得する。
- 解除条件説
- 胎児が生まれる前であっても相続する権利があり、死産となったときだけ、相続開始のときにさかのぼって相続する権利がなかったとする。
- 停止条件説
- 判例・通説は停止条件説であるが、この説に従うと遺産分割を出生まで待つ必要がある。不動産登記実務では、相続人である胎児名義の登記手続きも認められている。
- また、「人の始期」も重要な論点となる。なぜならば、分娩前後に死亡した場合、胎児として死亡した場合は相続人と解されないが、分娩後に死亡した場合、相続人となり、その相続権はさらに相続されることとなるためである。
参照条文
[編集]参考
[編集]明治民法において、本条には母親が親権者であるときの親権の制限に関する以下の規定があったが、親権行使に父母の差異がなくなったため継承なく廃止された。
- 親権ヲ行フ母カ未成年ノ子ニ代ハリテ左ニ掲ケタル行為ヲ為シ又ハ子ノ之ヲ為スコトニ同意スルニハ親族会ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
- 営業ヲ為スコト
- 借財又ハ保証ヲ為スコト
- 不動産又ハ重要ナル動産ニ関スル権利ノ喪失ヲ目的トスル行為ヲ為スコト
- 不動産又ハ重要ナル動産ニ関スル和解又ハ仲裁契約ヲ為スコト
- 相続ヲ放棄スルコト
- 贈与又ハ遺贈ヲ拒絶スルコト
脚注
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- 梅謙次郎『民法要義』
- 本條ハ胎兒ノ家督相續人タル資格アルコトヲ定メタルモノナリ。蓋シ、第一條ノ原則ニ依レハ「私權ノ享有ハ出生ニ始マル」ヘキモノニシテ、固ヨリ獨立ノ存在ヲ有スル人ニ非サレハ權利ノ主體トナルコト能ハス。故ニ若シ本條ノ規定ナクハ胎兒ニ相續權アルヘキ謂ハレ
爲 シ。然リト雖モ、是レ頗ル舊慣ニ反シ、又人情ニ戾ル所テナリ。故ニ、我邦ニ於テハ勿論、歐米諸國ニ於テモ皆胎兒ノ相續權ヲ認メサルハ爲 シ。舊民法ノ如キハ、歐洲多數ノ例ニナライ胎兒ハ其利益ノ爲メニハ既ニ生マレタルモノト看做セリ。然リト雖モ、是レ汎博ニ失シ、且解釋上一定ノ場合ニ於テ胎兒ヲ生マレタルモノト視ルノ其利益ニ適スヘキヤ否ヤニ付キ、疑問ヲ生スル虞有リ(例ヘハ國籍ニ關スル場合)。故ニ、新民法ニ於テハ胎兒ヲ既ニ生マレタルモノト看做ス場合ハ特ニ之ヲ限定シ、敢テ舊民法ノ如キ槪括的規定ヲ設ケス、第七百二十一條ノ如キハ其一例ナリ而シテ、相續ニ關シ特ニ其必要ヲ視ル是レ本條ノ規定ヲ設ケタル所以ナリ。
- 本條ハ胎兒ノ家督相續人タル資格アルコトヲ定メタルモノナリ。蓋シ、第一條ノ原則ニ依レハ「私權ノ享有ハ出生ニ始マル」ヘキモノニシテ、固ヨリ獨立ノ存在ヲ有スル人ニ非サレハ權利ノ主體トナルコト能ハス。故ニ若シ本條ノ規定ナクハ胎兒ニ相續權アルヘキ謂ハレ
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