自然公園法第20条

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条文[編集]

(特別地域)

第20条

  1. 環境大臣は国立公園について、都道府県知事は国定公園について、当該公園の風致を維持するため、公園計画に基づいて、その区域(海域を除く。)内に、特別地域を指定することができる。
  2. 第五条第三項及び第四項の規定は、特別地域の指定及び指定の解除並びにその区域の変更について準用する。この場合において、同条第三項中「環境大臣」とあるのは「環境大臣又は都道府県知事」と、「官報」とあるのは「それぞれ官報又は都道府県の公報」と読み替えるものとする。
  3. 特別地域(特別保護地区を除く。以下この条において同じ。)内においては、次の各号に掲げる行為は、国立公園にあつては環境大臣の、国定公園にあつては都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行う行為又は第三号に掲げる行為で森林の整備及び保全を図るために行うものは、この限りでない。
    工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
    二 木竹を伐採すること。
    三 環境大臣が指定する区域内において木竹を損傷すること。
    鉱物を掘採し、又は土石を採取すること。
    河川湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること。
    六 環境大臣が指定する湖沼又は湿原及びこれらの周辺一キロメートルの区域内において当該湖沼若しくは湿原又はこれらに流水が流入する水域若しくは水路に汚水又は廃水を排水設備を設けて排出すること。
    七 広告物その他これに類する物を掲出し、若しくは設置し、又は広告その他これに類するものを工作物等に表示すること。
    八 屋外において土石その他の環境大臣が指定する物を集積し、又は貯蔵すること。
    九 水面を埋め立て、又は干拓すること。
    十 土地を開墾しその他土地の形状を変更すること。
    十一 高山植物その他の植物で環境大臣が指定するものを採取し、又は損傷すること。
    十二 環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生育地でない植物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを植栽し、又は当該植物の種子をまくこと。
    十三 山岳に生息する動物その他の動物で環境大臣が指定するものを捕獲し、若しくは殺傷し、又は当該動物の卵を採取し、若しくは損傷すること。
    十四 環境大臣が指定する区域内において当該区域が本来の生息地でない動物で、当該区域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがあるものとして環境大臣が指定するものを放つこと(当該指定する動物が家畜である場合における当該家畜である動物の放牧を含む。)。
    十五 屋根、壁面、塀、橋、鉄塔、送水管その他これらに類するものの色彩を変更すること。
    十六 湿原その他これに類する地域のうち環境大臣が指定する区域内へ当該区域ごとに指定する期間内に立ち入ること。
    十七 道路広場牧場及び宅地以外の地域のうち環境大臣が指定する区域内において車馬若しくは動力船を使用し、又は航空機を着陸させること。
    十八 前各号に掲げるもののほか、特別地域における風致の維持に影響を及ぼすおそれがある行為で政令で定めるもの
  4. 環境大臣又は都道府県知事は、前項各号に掲げる行為で環境省令で定める基準に適合しないものについては、同項の許可をしてはならない。
  5. 都道府県知事は、国定公園について第三項の許可をしようとする場合において、当該許可に係る行為が当該国定公園の風致に及ぼす影響その他の事情を考慮して環境省令で定める行為に該当するときは、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。
  6. 第三項の規定により同項各号に掲げる行為が規制されることとなつた時において既に当該行為に着手している者は、同項の規定にかかわらず、引き続き当該行為をすることができる。この場合において、その者は、その規制されることとなつた日から起算して三月以内に、国立公園にあつては環境大臣に、国定公園にあつては都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
  7. 特別地域内において非常災害のために必要な応急措置として第三項各号に掲げる行為をした者は、その行為をした日から起算して十四日以内に、国立公園にあつては環境大臣に、国定公園にあつては都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
  8. 特別地域内において木竹の植栽又は家畜の放牧(第三項第十二号又は第十四号に掲げる行為に該当するものを除く。)をしようとする者は、あらかじめ、国立公園にあつては環境大臣に、国定公園にあつては都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
  9. 次に掲げる行為については、第三項及び前三項の規定は、適用しない。
    一 公園事業の執行として行う行為
    二 認定生態系維持回復事業等(第三十九条第一項又は第四十一条第一項の規定により行われる生態系維持回復事業及び第三十九条第二項若しくは第四十一条第二項の確認又は第三十九条第三項若しくは第四十一条第三項の認定を受けた生態系維持回復事業をいう。以下同じ。)として行う行為
    第四十三条第一項の規定により締結された風景地保護協定に基づいて同項第一号の風景地保護協定区域内で行う行為であつて、同項第二号又は第三号に掲げる事項に従つて行うもの
    四 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であつて、環境省令で定めるもの

   

解説[編集]

本条は、特別地域に関する規定である。特別保護地区を除く特別地域は、さらに次に区分される(自然公園法施行規則第9条の2)。

  • 第一種特別地域(特別保護地区に準ずる景観を有し、特別地域のうちでは風致を維持する必要性が最も高い地域であって、現在の景観を極力保護することが必要な地域)
  • 第二種特別地域(第一種特別地域及び第三種特別地域以外の地域であって、特に農林漁業活動についてはつとめて調整を図ることが必要な地域)
  • 第三種特別地域(特別地域のうちでは風致を維持する必要性が比較的低い地域であって、特に通常の農林漁業活動については原則として風致の維持に影響を及ぼすおそれが少ない地域)

第1項は、公園計画に基づいて、環境大臣(国立公園)、都道府県知事(国定公園)の区域内(海域を除く)に、特別地域を指定することができるという規定である。

第2項は、特別地域の指定及び指定の解除並びにその区域の変更については、第5条の準用により、官報等での公示により効力が発生することとなる趣旨の規定である。

第3項以下は、許可の対象となる行為に関する規定である。なお、第3項第1号、第4号、第7号は、海域公園地区でも許可の対象とされている(第22条)。第3項への違反には懲役又は罰金に処する罰則がある(第83条第3号)。

  • 自然環境保全地域と自然公園の区域(地域)分け対比
自然環境保全地域 特別地区(自然環境保全法第25条
一定の行為についての許可制
海域特別地区(自然環境保全法第27条
一定の行為についての許可制
普通地区(自然環境保全法第28条
一定の行為についての届出制
自然公園 特別地域(自然公園法第20条
特別保護地区、利用調整地区の指定も可
一定の行為についての許可制
海域公園地区(自然公園法第22条
利用調整地区の指定も可
一定の行為についての許可制
普通地域(自然公園法第33条
一定の行為についての届出制

自然環境保全地域、自然公園とも、右に記載のいずれかの地区・地域に含まれる。



参照条文[編集]

第二十条第三項、第二十一条第三項、第二十二条第三項及び第二十三条第三項第七号の許可には、国立公園又は国定公園の風致又は景観を保護するために必要な限度において、条件を付することができる。

施行規則[編集]

本条に直接関係する環境省令を掲載するが、容量の観点から、ここでは抄録のみにとどめる。

(特別地域、特別保護地区及び海域公園地区内における行為の許可申請書)

第10条

法第二十条第三項 、第二十一条第三項又は第二十二条第三項の規定による許可を受けようとする者は、次の各号に掲げる事項を記載した申請書を、国立公園にあつては環境大臣に、国定公園にあつては都道府県知事に提出しなければならない。

(以下略)

(特別地域、特別保護地区及び海域公園地区内の行為の許可基準)

第11条

法第二十条第三項第一号 、第二十一条第三項第一号及び第二十二条第三項第一号に掲げる行為(仮設の建築物(土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱又は壁を有するものをいい、建築設備(当該工作物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針をいう。第二十条第六号イ(4)において同じ。)を含む。以下同じ。)の新築、改築又は増築に限る。)に係る法第二十条第四項 、第二十一条第四項及び第二十二条第四項の環境省令で定める基準(以下この条において「許可基準」という。)は、次のとおりとする。ただし、既存の建築物の改築、既存の建築物の建替え若しくは災害により滅失した建築物の復旧のための新築(申請に係る建築物の規模が既存の建築物の規模を超えないもの又は既存の建築物が有していた機能を維持するためやむを得ず必要最小限の規模の拡大を行うものに限る。)又は学術研究その他公益上必要であり、かつ、申請に係る場所以外の場所においてはその目的を達成することができないと認められる建築物の新築、改築若しくは増築(以下「既存建築物の改築等」という。)であつて、第一号、第五号及び第六号に掲げる基準に適合するものについては、この限りでない。

(以下略)

(土地所有者等との協議)

第11条の2

法第二十条第三項第十六号 及び第二十一条第三項第一号 (法第二十条第三項第十六号 に係る部分に限る。)の区域の指定に当たつては、その区域内の土地について所有権地上権又は賃借権(臨時設備その他一時使用のため設定されたことが明らかなものを除く。)を有する者(以下「土地所有者等」という。)の財産権を尊重し、土地所有者等と協議すること。

(許可に当たつて環境大臣との協議を要する国定公園の特別地域に係る行為)

第11条の3

法第二十条第五項 に規定する環境省令で定める行為は、次に掲げるものとする。

(以下略)


前条:
自然公園法第19条
(清潔の保持)
自然公園法
第2章 国立公園及び国定公園
第四節 保護及び利用
次条:
自然公園法第21条
(特別保護地区)


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