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ガリア戦記 第3巻

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

ガリア戦記> 第3巻 >注解

 C IVLII CAESARIS COMMENTARIORVM BELLI GALLICI 

 LIBER TERTIVS 

ガリア戦記 第3巻の情勢図(BC56年)。
黄色の領域がローマ領。桃色が同盟部族領。
ガリア戦記 第3巻 目次

アルプス・オクトードゥールスの戦い:
大西洋岸ウェネティー族の造反:

大西洋岸ウネッリー族の造反:
クラッススのアクィーターニア遠征:

モリニー族・メナピイー族への遠征:

01節 | 02節 | 03節 | 04節 | 05節 | 06節
07節 | 08節 | 09節 | 10節
11節 | 12節 | 13節 | 14節 | 15節 | 16節
17節 | 18節 | 19節
20節
21節 | 22節 | 23節 | 24節 | 25節 | 26節 | 27節
28節 | 29節



はじめに

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前巻(ガリア戦記 第2巻)の終わりで述べられたように、カエサルによってガッリアはほぼ平定されたと思われて、首都ローマで感謝祭が催されたほどであった。このため、本巻(第3巻)ではカエサル自身の遠征として記す内容はとても少ない。

本巻の#1節#6節で言及される#アルプス・オクトードゥールスの戦いは、BC57年秋頃に起こったと考えられるので、本来なら第2巻に含められるべきであるが、そうなると第3巻が20節ほどの非常に短い巻になってしまうので、第3巻の冒頭に置いたとも考えられる。

本巻(第3巻)の年(BC56年)の春には、ガッリア遠征の遂行上きわめて重要なルカ会談があったので、以下に補足する。

コラム「ルカ会談」

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Luca Conference(英語記事)などを参照。
伝記作家プルータルコスによれば[1]、カエサルはベルガエ人との戦いを成し遂げると、前年に続いてパドゥス川Padus ポー川〕流域で越冬しながら、ローマ政界への政治工作を続けた。例えば、カエサルを後援者とする選挙の立候補者たちが有権者を買収するための金銭をばらまいていた。ガッリア人捕虜を奴隷商人に売り払って得た莫大な金銭で。その結果、カエサルの金銭で当選した者たちの尽力で、属州総督カエサルへの新たな資金の支給が可決されるという具合であった。

そのうち、多くの名門貴族たちがカエサルに面会するためにルカLuca)の街へやって来た。
こうした中、BC56年の4月に、カエサルと非公式の盟約(三頭政治)を結んでいたクラッススポンペイウスもルカを訪れて、三者による会談が行われた。

首都ローマでは、三頭政治を後ろ盾とする平民派クロディウスPublius Clodius Pulcher)が民衆に暴動をけしかけ、門閥派のミロ(Titus Annius Milo)と激しく抗争するなど、騒然としていた。このクロディウスの暴力的な手法は、クラッススとポンペイウスの関係を傷つけた。また、カエサルのガッリアでの輝かしい勝利に、二人とも不満を感じていた。このように三頭政治は綻び出していたのだ。

三人は三頭政治を延長することで合意した。カエサルは、クラッススとポンペイウスが翌年(BC55年)の執政官に立候補すること、3属州の総督であるカエサルの任期がさらに5年間延長されること、などを求めた。

会談の結果、任期が大幅に延長されたカエサルの野望は、ガッリアに止まらず、ゲルマーニアブリタンニアの征服へと向かっていく。一方、再び執政官になった二人は、パルティアを攻略するためにクラッススがシリア総督になることを決めるが、これはクラッススの命運とともに三頭政治の瓦解、カエサルとポンペイウスの関係悪化を招来することになる。

後に三頭政治Triumviratus)と呼ばれることになる非公式な盟約を結んでいた、左からカエサルクラッススポンペイウス
3人は、第3巻の戦いが始まる前に、ルカ会談で三頭政治の延長を決めた。

アルプス・オクトードゥールスの戦い

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Battle of Octodurus(英語記事)Bataille d'Octodure(仏語記事)などを参照。

1節

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現在のスイスの帝制ローマ時代の地図。左下の三日月形のレマン湖の下方に、ALLOBROGES, NANTUATES, VERAGRI, SEDUNI の部族名が見える。
現在のグラン・サン・ベルナール峠。ラテン語では Porta Magni Sancti Bernardi という。
スイスを縦断する欧州自動車道路 E27レマン湖からこの峠を通ってイタリアのアオスタへ至る。

ガルバとローマ第12軍団が、ロダヌス川渓谷のオクトードゥールスにて冬営する

   カエサルが、ガルバと軍団・騎兵をアルプス地方へ派兵
  • Cum in Italiam proficisceretur Caesar,
  • Servium Galbam cum legione duodecima(XII.) et parte equitatus
  • in Nantuates, Veragros Sedunosque misit,
    • ナントゥアーテース族・ウェラーグリー族・セドゥーニー族(の領土)に派遣した。
  • qui a finibus Allobrogum et lacu Lemanno et flumine Rhodano ad summas Alpes pertinent.
  • Causa mittendi fuit,
    • 派遣の理由は(以下のこと)であった:
  • quod iter per Alpes,
    • アルプスを通る道は、
  • quo magno cum periculo magnisque cum portoriis mercatores ire consuerant,
    • 大きな危険と多額の関税を伴って商人たちが旅することが常であったので、
  • patefieri volebat.
  • Huic permisit, si opus esse arbitraretur, uti in his locis legionem hiemandi causa conlocaret.
    • 彼〔ガルバ〕に、もし必要と思われるならば、この地に軍団を冬営するために宿営させることを許可した。
セルウィウス・スルピキウス・ガルバの横顔が刻まれた貨幣。ガルバはBC54年ガリア戦記 第5巻の年)に法務官に任官。内戦期もカエサルに従うが、暗殺計画に参画する。
ネロ帝とともにユリウス家の王朝が途絶えると、ガルバの曽孫が四皇帝の一人目のガルバ帝となった。このためスエートーニウス『ローマ皇帝伝』の「ガルバ伝」にガルバへの言及がある[2]


   ガルバが、諸部族を攻略して、軍団の冬営を決める
  • Galba, secundis aliquot proeliis factis
    • ガルバは、いくつかの優勢な戦いをして、
  • castellisque compluribus eorum expugnatis,
    • 彼ら〔ガッリア諸部族〕の多くの砦が攻略されると、
  • missis ad eum undique legatis
    • 彼〔ガルバ〕のもとへ四方八方から(諸部族の)使節たちが遣わされ、
  • obsidibusque datis et pace facta,
    • 人質が供出されて、講和がなされたので、
  • constituit
    • (ガルバは、以下のことを)決めた。
  • cohortes duas in Nantuatibus conlocare
    • 2個歩兵大隊コホルスをナントゥアーテース族(の領土)に宿営させること、
  • et ipse cum reliquis eius legionis cohortibus
    • (ガルバ)自身はその軍団の残りの歩兵大隊コホルスとともに、
  • in vico Veragrorum, qui appellatur Octodurus, hiemare;
    • オクトードゥールスと呼ばれているウェラーグリー族の村に冬営することを。
      (訳注:オクトードゥールス(Octodurus)は現在のマルティニー市。)


   ウェラーグリー族のオクトードゥールス村
  • qui vicus positus in valle, non magna adiecta planitie,
    • その村は、さほど大きくない平地に付随した渓谷の中に位置し、
  • altissimis montibus undique continetur.
    • とても高い山々で四方八方を囲まれている。
  • Cum hic in duas partes flumine divideretur,
    • これ〔村〕は川によって二つの部分に分け隔てられているので、
      (訳注:現在のマルティニーの街中を、ローヌ川の支流であるドランス川(Drance)が貫流している。)
  • alteram partem eius vici Gallis [ad hiemandum] concessit,
    • その村の一方の部分をガッリア人に [越冬するために] 譲った。
  • alteram vacuam ab his relictam cohortibus attribuit.
    • もう一方の彼ら〔ガッリア人〕により空にされた方を、残りの歩兵大隊コホルスに割り当てた。
  • Eum locum vallo fossaque munivit.
    • その地を堡塁と塹壕で守りを固めた。
かつてウェラーグリー族のオクトードゥールス村(Octodurus)があった所は、現在ではスイスマルティニーMartigny)市となっている。ローヌ川が屈曲して流れる渓谷地帯にある。

コラム「ガルバの派遣とカティリーナ事件」

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関連記事:Catilinae coniuratio, Second Catilinarian conspiracy
 セルウィウス・スルピキウス・ガルバにアルプス派兵を指揮させた理由について、カエサルは記していない。

 BC63年BC62年に、ローマの高官だったルーキウス・セルギウス・カティリーナLucius Sergius Catilina)がクーデタを企てるという大事件があった。キケローが『カティリナ弾劾演説』で糾弾し、カエサルが事件の黒幕ではないかと取り沙汰された(スエートニウス[3])。
 BC63年の法務官ガーイウス・ポンプティーヌスがキケローを助けて事件を捜査し、アッロブロゲース族からカティリーナへ宛てた手紙を調べた。BC62年にポンプティーヌスは前法務官としてガッリア総督となり、事件に関与していたアッロブロゲース族を平定した。このとき、副官としてポンプティーヌスを助けてアッロブロゲース族を攻めたのがガルバであった。総督がカエサルに替わっても、ガルバは副官として留任し、アッロブロゲース族の近隣部族の鎮定に努めていたわけである。
 ポンプティーヌスは、一部の元老院議員の反対で、戦勝将軍の権利である凱旋式ができなかった。これを不満に思っていたガルバは、BC54年に法務官になると尽力して、その年にポンプティーヌスの凱旋式を行なうことに成功した。
カティリーナの誓いLe Serment de Catiline
ジョゼフ=マリー・ヴィアン画(1809年)。
カティリーナと共謀者たちは、人間の血を混ぜたワインを飲んで誓いを立てる儀式を行なったと伝えられている。
カティリーナの遺骸の発見
Il ritrovamento del corpo di Catilina
Alcide Segoni 画(1871年)
アッロブロゲース族のいるガッリアへ向かおうとしていたカティリーナは、ピストリアPistoria)の戦い(Battle of Pistoia)で戦死した。

2節

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ガッリア人が再び挙兵して周囲の高峰を押さえ、第12軍団の冬営地を包囲

  • Cum dies hibernorum complures transissent frumentumque eo comportari iussisset,
    • 冬営の多くの日々が過ぎ去って、穀物がそこに運び集められることを(ガルバが)命じていたときに、
  • subito per exploratores certior factus est
    • 突然に(以下のことが)偵察隊により報告された。
  • ex ea parte vici, quam Gallis concesserat, omnes noctu discessisse
    • ガッリア人たちに譲っていた村の一部から、皆が夜に立ち退いており、
  • montesque, qui impenderent, a maxima multitudine Sedunorum et Veragrorum teneri.
    • そそり立つ山々がセドゥーニー族とウェラーグリー族のかなりの大勢により占拠されたのだ。
      (訳注:ウェラーグリー族は既述のようにオクトードゥールス村 Octodurus〔現在のマルティニー市〕を、
      セドゥーニー族 Seduni はより上流のセドゥヌム Sedunum〔現在のシオン市〕を首邑としていた。)
  • Id aliquot de causis acciderat,
    • いくつかの理由から、起こっていたことには、
  • ut subito Galli belli renovandi legionisque opprimendae consilium caperent:
    • 突如としてガッリア人が、戦争を再開して(ローマ人の)軍団を急襲する作戦計画を立てたのだ。


    第1の理由:ガルバの第12軍団は、兵が割かれていて寡勢である
  • primum, quod legionem neque eam plenissimam detractis cohortibus duabus
    • というのも、第一に、総員がそろっていない軍団を ──2個歩兵大隊コホルスが引き抜かれていて、
      (訳注:前節で既述のように、2個歩兵大隊をナントゥアーテース族のところに宿営させていたが、これはレマンヌス湖〔レマン湖〕に近いより下流の地域で、離れていたようだ。)
  • et compluribus singillatim, qui commeatus petendi causa missi erant, absentibus,
    • 多くの者たちが一人ずつ、糧食を求めるために派遣されていて不在である、──
  • propter paucitatem despiciebant;
    • (その第12軍団を)少数であるゆえに、見下していたからだ。


    第2の理由:渓谷にいるローマ人は、山から攻め降りて来るガッリア人の飛道具を受け止められまい
  • tum etiam, quod propter iniquitatem loci,
    • それからさらに(ローマ勢が冬営している渓谷の)地の利の無さゆえ、
  • cum ipsi ex montibus in vallem decurrerent et tela conicerent,
    • (ガッリア勢)自身が山々から谷間に駆け下りて飛道具を投じたときに、
  • ne primum quidem impetum suum posse sustineri existimabant.
    • 自分たちの最初の襲撃を(ローマ勢が)持ちこたえることができない、と判断していたので。


    第3の理由:人質を取られて、属州に併合される前にローマ人を討て
  • Accedebat, quod suos ab se liberos abstractos obsidum nomine dolebant,
    • 加えて、人質の名目で自分たちから引き離されている自分の子供たちのことを嘆き悲しんでいたので、
  • et Romanos non solum itinerum causa, sed etiam perpetuae possessionis
    • かつ、ローマ人たちは道(の開通)のためだけでなく、永続的な領有のためにさえも
  • culmina Alpium occupare conari
    • アルプスの頂上を占領すること、
  • et ea loca finitimae provinciae adiungere
    • および(ローマの)属州に隣接する当地を併合することを企てている
  • sibi persuasum habebant.
    • と(ガッリア人たちは)確信していたのである。

3節

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ガルバが軍議を召集し、策を募る

  • His nuntiis acceptis Galba,
    • ガルバは、これらの報告を受け取ると、
  • cum neque opus hibernorum munitionesque plene essent perfectae
    • 冬営の普請や防塁構築も十分に完成していなかったし、
  • neque de frumento reliquoque commeatu satis esset provisum,
    • 穀物や他の糧秣も十分に調達されていなかったので
  • quod deditione facta obsidibusque acceptis
    • ── というのも、降伏がなされて、人質が受け取られ、
  • nihil de bello timendum existimaverat,
    • 戦争について恐れるべきことは何もない、と判断していたためであるが、──
  • consilio celeriter convocato sententias exquirere coepit.
    • 軍議を速やかに召集して、意見を求め始めた。


軍議
  • Quo in consilio,
    • その軍議において、
  • cum tantum repentini periculi praeter opinionem accidisset
    • これほどの不意の危険が、予想に反して起こっていたので、
  • ac iam omnia fere superiora loca multitudine armatorum completa conspicerentur
    • かつ、すでにほぼすべてのより高い場所が、武装した大勢の者たちで満たされていることが、見られていたので、
  • neque subsidio veniri
    • 救援のために(援軍が)来られることもなかったし、
  • neque commeatus supportari interclusis itineribus possent,
    • 糧秣が運び込まれることも、道が遮断されているので、できなかったので
  • prope iam desperata salute non nullae eius modi sententiae dicebantur,
    • すでにほぼ身の安全に絶望していた幾人かの者たちの以下のような意見が述べられていた。
  • ut impedimentis relictis eruptione facta
    • 輜重を残して、出撃して、
  • isdem itineribus quibus eo pervenissent ad salutem contenderent.
    • そこへやって来たのと同じ道によって、安全なところへ急ぐように、と。
      (訳注:レマンヌス〔レマン湖〕湖畔を通ってアッロブロゲース族領へ撤収することであろう。)
  • Maiori tamen parti placuit,
    • しかしながら、大部分の者が賛成したのは、
  • hoc reservato ad extremum consilio
    • この考え(計画)を最後まで保持しておいて、
  • interim rei eventum experiri et castra defendere.
    • その間に、事の結果を吟味して、陣営を守備すること、であった。

4節

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ガッリア勢がガルバの陣営を急襲し、寡兵のローマ勢は劣勢に陥る

  • Brevi spatio interiecto,
    • (敵の来襲まで)短い間が介在しただけだったので、
  • vix ut iis rebus quas constituissent conlocandis atque administrandis tempus daretur,
    • 決めておいた物事を配置したり遂行するための時間が、ほとんど与えられないほどであった。
  • hostes ex omnibus partibus signo dato decurrere,
    • 敵方〔ガッリア勢〕があらゆる方向から、号令が出されて、駆け下りて来て、
  • lapides gaesaque in vallum conicere.
    • 石や投槍を堡塁の中に投げ込んだ。
  • Nostri primo integris viribus fortiter propugnare
    • 我が方〔ローマ勢〕は、当初、体力が損なわれていないうちは勇敢に応戦して、
  • neque ullum frustra telum ex loco superiore mittere,
    • 高所から、いかなる飛道具も無駄に投げることはなかった。
  • et quaecumque pars castrorum nudata defensoribus premi videbatur,
    • 陣営のどの部分であれ、防戦者たちがはがされて押され気味であることと思われれば、
  • eo occurrere et auxilium ferre,
    • (ローマ勢が)そこへ駆け付けて、支援した。


  兵の多寡が、ローマ勢を追い込む
  • sed hoc superari
    • しかし、以下のことにより(ローマ勢は)打ち破られた。
  • quod diuturnitate pugnae hostes defessi proelio excedebant,
    • ──戦いが長引いたことにより、疲れ切った敵たちは戦闘から離脱して、
  • alii integris viribus succedebant;
    • 体力が損なわれていない他の者たちが交代していたのだ。──
  • quarum rerum a nostris propter paucitatem fieri nihil poterat,
    • 我が方〔ローマ勢〕は少数であるゆえに、このような事〔兵の交代〕は何らなされ得なかった。
  • ac non modo defesso ex pugna excedendi,
    • 疲弊した者にとっての戦いから離脱することの(機会)のみならず、
  • sed ne saucio quidem eius loci ubi constiterat relinquendi ac sui recipiendi facultas dabatur.
    • 負傷した者にとってさえも、その持ち場を放棄することや(体力を)回復することの機会も与えられなかったのだ。

5節

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最後の土壇場で説得されたガルバが、疲労回復後の突撃に命運を賭ける

  • Cum iam amplius horis sex continenter pugnaretur,
    • すでに6時間より多く引き続いて戦われており、
      (訳注:古代ローマの不定時法では、冬の日中の半日ほどである)
  • ac non solum vires sed etiam tela nostros deficerent,
    • 活力だけでなく飛道具さえも我が方〔ローマ勢〕には不足していたし、
  • atque hostes acrius instarent
    • 敵方〔ガッリア勢〕はより激しく攻め立てていて、
  • languidioribusque nostris
    • 我が方〔ローマ勢〕が弱り切っており、
  • vallum scindere et fossas complere coepissent,
    • (ガッリア勢は)防柵を破却したり、塹壕を埋め立てたりし始めていたし、
  • resque esset iam ad extremum perducta casum,
    • 戦況はすでに最後の土壇場に陥っていたので


  二人の軍団首脳バクルスとウォルセーヌスが、ガルバに敵中突破を説く
  • P. Sextius Baculus, primi pili centurio,
  • quem Nervico proelio compluribus confectum vulneribus diximus,
  • et item C. Volusenus, tribunus militum, vir et consilii magni et virtutis,
    • および 兵士長官トリブヌス・ミリトゥム ガーイウス・ウォルセーヌス ──卓越した判断力と武勇を持つ男──(の2人)は、
      (訳注:Gaius Volusenus は、この後、第4巻21節23節でブリタンニアへ遣わされ、
          さらに、第6巻41節、第8巻23節(s)、48節(s)でも活躍する。)
  • ad Galbam accurrunt
    • ガルバのもとへ急いで来て、
  • atque unam esse spem salutis docent, si eruptione facta extremum auxilium experirentur.
    • 身の安全のただ一つの希望は、出撃をして最後の救済策を試みるかどうかだ、と説く。
  • Itaque convocatis centurionibus
    • こうして、百人隊長ケントゥリオーたちが召集されて、
  • celeriter milites certiores facit,
    • (ガルバが以下のことを)速やかに兵士たちに通達する。
  • paulisper intermitterent proelium
    • しばらく戦いを中断して
  • ac tantummodo tela missa exciperent seque ex labore reficerent,
    • ただ投げられた飛道具を遮るだけとし、疲労から(体力を)回復するようにと、
  • post dato signo ex castris erumperent,
    • 与えられた号令の後に陣営から出撃するように、
  • atque omnem spem salutis in virtute ponerent.
    • 身の安全のすべての希望を武勇に賭けるように、と。

6節

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第12軍団がガッリア勢を破るが、ガルバはオクトードゥールスでの冬営を断念する

  • Quod iussi sunt faciunt,
    • (ローマ兵たちは)命じられたことをなして、
  • ac subito omnibus portis eruptione facta
    • 突然に(陣営の)すべての門から出撃がなされ、
  • neque cognoscendi quid fieret
    • 何が生じたのかを知ることの(機会)も
  • neque sui colligendi hostibus facultatem relinquunt.
    • (自軍の兵力を)集中することの機会も、敵方に残さない。
  • Ita commutata fortuna
    • こうして武運が変転して、
  • eos qui in spem potiundorum castrorum venerant undique circumventos intercipiunt,
    • (ローマ人の)陣営を占領することを期待してやって来ていた者たちを、至る所で包囲してほふる。
  • et ex hominum milibus amplius XXX{triginta},
    • 3万より多い人間が
  • quem numerum barbarorum ad castra venisse constabat,
    • それだけの数の蛮族が(ローマ)陣営のところへ来ていたのは、確実であったが、
  • plus tertia parte interfecta
    • 3分の1より多く(の者)が殺戮さつりくされて、
  • reliquos perterritos in fugam coiciunt
    • (ローマ勢は)残りの者たちを怖気づかせて敗走に追いやり、
  • ac ne in locis quidem superioribus consistere patiuntur.
    • (ガッリア勢は)より高い場所にさえ留まることさえ許されない。
  • Sic omnibus hostium copiis fusis armisque exutis
    • そのように敵方の全軍勢が撃破されて、武器が放棄されて、
  • se intra munitiones suas recipiunt.
    • (ローマ勢は)自分たちの防塁の内側に撤収する。


  ガルバがオクトードゥールスでの冬営を断念して、同盟部族領に撤退する
  • Quo proelio facto,
    • この戦いが果たされると、
  • quod saepius fortunam temptare Galba nolebat
    • ──ガルバは、よりたびたび武運を試すことを欲していなかったし、
  • atque alio se in hiberna consilio venisse meminerat,
    • 冬営に他の計画のために来ていたことを思い出していたが、
  • aliis occurrisse rebus videbat,
    • 別の事態に遭遇したのを見ていたので、──
  • maxime frumenti commeatusque inopia permotus
    • とりわけ穀物や糧秣の欠乏に揺り動かされて、
  • postero die omnibus eius vici aedificiis incensis
    • 翌日にその村のすべての建物が焼き討ちされて、
  • in provinciam reverti contendit,
  • ac nullo hoste prohibente aut iter demorante
    • いかなる敵によって妨げられることも、あるいは行軍が遅滞させられることもなく、
  • incolumem legionem in Nantuates,
    • 軍団を無傷なままでナントゥアーテース族(の領土)に(連れて行き)、
      (訳注:ナントゥアーテース族 Nantuates は、レマンヌス湖〔レマン湖〕の南東を領有していた部族。
          #1節で、軍団のうち2個歩兵大隊コホルスを宿営させたことが述べられた。)
  • inde in Allobroges perduxit ibique hiemavit.
    • そこから、アッロブロゲース族(の領土)に連れて行き、そこで冬営した。
オクトードゥールス(Octodurus)、すなわち現在のマルティニー市に遺る帝制ローマ時代の円形競技場。オクトードゥールスは、Forum Claudii Vallensium と改称され、クラウディウス帝によって円形競技場が建てられた。
Amphithéâtre de Martigny 等の記事を参照。)

大西洋岸ウェネティー族の造反

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関連記事:モルビアン湾の海戦fr:Guerre des Vénètes 等を参照せよ。

7節

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新たな戦争の勃発

  • His rebus gestis
    • これらの戦役が遂げられて、
  • cum omnibus de causis Caesar pacatam Galliam existimaret,
    • カエサルが、あらゆる状況についてガッリアは平定された、と判断していたときに、
  • superatis Belgis,
    • (すなわち)ベルガエ人は征服され、
      (訳注:第2巻で述べられたこと)
  • expulsis Germanis,
  • victis in Alpibus Sedunis,
    • アルペース〔アルプス〕においてセドゥーニー族は打ち負かされて、
      (訳注:#1節#6節で述べられたこと)
  • atque ita inita hieme in Illyricum profectus esset,
  • quod eas quoque nationes adire et regiones cognoscere volebat,
    • ──というのは、これら各部族を訪れて諸地方を知ることを欲していたからであるが、──
      (訳注:属州総督の職務として、巡回裁判を行う必要があったためであろう)
  • subitum bellum in Gallia coortum est.
    • 突然の戦争がガッリアで勃発したのである。


   戦争の背景
  • Eius belli haec fuit causa:
    • その戦争の原因は、以下の通りであった。
  • P. Crassus adulescens cum legione septima(VII.)
  • proximus mare Oceanum in Andibus hiemarat.
    • 大洋〔大西洋オーケアヌスに最も近いアンデース族(の領土)で冬営していた。
      (訳注:アンデース族 Andes は、アンデカーウィー族 Andecavi, Andecavi と呼ばれることが多い。
          実際には大西洋岸から内陸側に寄っていたと考えられている。)
  • Is, quod in his locis inopia frumenti erat,
    • 彼〔クラッスス〕は、これらの場所においては穀物の欠乏があったので、
  • praefectos tribunosque militum complures in finitimas civitates
    • 支援軍の)指揮官プラエフェクトゥスたちや兵士長官トリブヌス・ミリトゥムたちのかなりの数を、近隣諸部族のところへ
  • frumenti (commeatusque petendi) causa dimisit;
    • 穀物や糧食を求めるために送り出した。
  • quo in numero est T. Terrasidius missus in Esuvios,
    • その人員のうち、ティトゥス・テッラシディウスは、エスウィイー族のところに遣わされ、
      (訳注:テッラシディウスは騎士階級の将校。Terrasidius 参照。)
      (訳注:エスウィイー族 Esuvii は、現在のオルヌ川盆地のオルヌ県セーエムの辺りにいたらしい。)
  • M. Trebius Gallus in Coriosolităs,
  • Q. Velanius cum T. Sillio in Venetos.

8節

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ウェネティー族らの動き

   沿海地方を主導するウェネティー族
  • Huius est civitatis longe amplissima auctoritas omnis orae maritimae regionum earum,
    • この部族〔ウェネティー族〕の影響力アウクトーリタースは、海岸のその全地方の中でずば抜けて大きい。
  • quod et naves habent Veneti plurimas,
  • quibus in Britanniam navigare consuerunt,
  • et scientia atque usu rerum nauticarum ceteros antecedunt
    • かつ海事の知識と経験において他の者たち〔諸部族〕をしのいでおり、
  • et in magno impetu maris atque aperto <Oceano>
    • かつ海のたいへんな荒々しさと開けた<大洋〔大西洋オーケアヌス>において、
      (訳注:<Oceano> は写本になく、挿入提案された修正読み)
      (訳注:大陸棚が広がるビスケー湾は、世界最大12mの大きな干満差と、
          北西風による激しい嵐で知られる[4]。)
  • paucis portibus interiectis,
    • わずかの港が介在していて、
  • quos tenent ipsi,
    • 彼ら自身〔ウェネティー族〕がそれら〔港湾〕を制していて、
  • omnes fere qui eo mari uti consuerunt, habent vectigales.
    • その海を利用するのが常であった者たち〔部族〕ほぼすべてを、貢税者としていたのだ。──


   ウェネティー族が、クラッススの使節たちを抑留する
  • Ab his fit initium retinendi Sillii atque Velanii,
    • 彼ら〔ウェネティー族〕によって、シーッリウスとウェラーニウスを拘束することが皮切りとなる。
      (訳注:2人は、前節(#7節)でウェネティー族への派遣が述べられた使節)
  • et si quos intercipere potuerunt
    • 何らかの者たちを捕えることができたのではないか、と。
      (訳注:下線部は、β系写本だけの記述で、α系写本にはない。)
  • quod per eos suos se obsides, quos Crasso dedissent, recuperaturos existimabant.
    • というのは、彼らを介して、クラッススに差し出されていた己の人質たちを取り戻すことができると考えていたのである。


  • Horum auctoritate finitimi adducti,
    • 彼ら〔ウェネティー族〕の影響力によって、近隣の者たち〔諸部族〕が動かされて、
  • ut sunt Gallorum subita et repentina consilia,
    • ──ガッリア人の判断力というものは、思いがけなく性急なものであるが、──
  • eadem de causa Trebium Terrasidiumque retinent
    • 同じ理由によりトレビウスとテッラシディウスを拘束する。
      (訳注:トレビウスは、前節でコリオソリテース族に派遣された。
          テッラシディウスは、前節でエスウィイー族に派遣された。)
  • et celeriter missis legatis
    • そして速やかに使節が遣わされて、
  • per suos principes inter se coniurant
    • 自分らの領袖たちを通して互いに誓約する。
  • nihil nisi communi consilio acturos eundemque omnes fortunae exitum esse laturos,
    • 合同の軍議なしには何も実施しないであろうし、皆が命運の同じ結果に耐えるであろう、と。
  • reliquasque civitates sollicitant,
    • 残りの諸部族を扇動する。
  • ut in ea libertate quam a maioribus acceperint, permanere quam Romanorum servitutem perferre malint.
    • ローマ人への隷属を辛抱することより、むしろ先祖から引き継いでいた自由に留まることを欲すべし、と。


  • Omni ora maritima celeriter ad suam sententiam perducta
    • すべての海岸(の諸部族)が速やかに自分たち〔ウェネティー族〕の見解に引き込まれると、
  • communem legationem ad Publium Crassum mittunt,
  • si velit suos recuperare, obsides sibi remittat.
    • もし味方の者たち〔ローマ人〕を取り戻すことを望むならば、自分たち〔諸部族〕の人質たちを返すように、と。

9節

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カエサル到着、ウェネティー族らの作戦と開戦準備

   カエサルが、海戦の準備を手配してから、沿岸地域に急ぐ
  • Quibus de rebus Caesar a Crasso certior factus,
    • 以上の事について、カエサルはクラッススにより報知されると、
  • quod ipse aberat longius,
    • (カエサル)自身は非常に遠くに離れていたので、
      (訳注:#ルカ会談などローマへの政界工作のために属州にいたと考えられている。)
  • naves interim longas aedificari in flumine Ligeri, quod influit in Oceanum,
    • その間に軍船大洋〔大西洋オーケアヌスに流れ込むリゲル川〔ロワール川〕にて建造されること、
      (訳注:艦隊 classis の主力として戦うガレー船は「長船」navis longa と呼ばれていた。
          これに対して、軍需物資を運搬する輸送船は navis actuaria と呼ばれていた。)
  • remiges ex provincia institui,
  • nautas gubernatoresque comparari iubet.
    • 水夫ナウタ操舵手グベルナートルが徴募されること、を命じる。
      (訳注:船尾の「かじ」が発明されたのは漢代の中国であって、古代西洋の船にかじはない。
          船の操舵手は「舵櫂かじかい」(steering oar) というの一種を用いて操船したらしい。)


  • His rebus celeriter administratis ipse,
    • これらの事柄が速やかに処理されると、(カエサル)自身は
  • cum primum per anni tempus potuit, ad exercitum contendit.
    • 年のできるだけ早い時季に、軍隊のもとへ急いだ。


   ウェネティー族らが、使節団拘留の重大さを勘案して、海戦の準備を進める
  • Veneti reliquaeque item civitates cognito Caesaris adventu
  • <et de recipiendis obsidibus spem se fefellise> certiores facti,
    • <かつ人質を取り戻すという希望に惑わされたことを> 知らされて、
  • simul quod quantum in se facinus admisissent intellegebant,
    • 同時に、どれほど大それた行為を自分たちが侵していたかを判断していたので、
  • [legatos, quod nomen ad omnes nationes sanctum inviolatumque semper fuisset,
    • ──(すなわち)あらゆる種族のもとでその名が神聖かつ不可侵の、使節たちが
  • retentos ab se et in vincula coniectos,]
    • 自分たちによって拘束され、鎖につながれていたわけだが、──
  • pro magnitudine periculi bellum parare
    • 危機の重大さに見合う戦争を準備すること、
  • et maxime ea quae ad usum navium pertinent providere instituunt,
    • とりわけ船団を運用するために役立つところのものを調達すること、を着手する。
  • hoc maiore spe quod multum natura loci confidebant.
    • 地勢を大いに信じていた点に大きな期待をして。


  • Pedestria esse itinera concisa aestuariis,
    • (ローマ勢の)歩兵の行軍路は入江で遮断されるし、
  • navigationem impeditam propter inscientiam locorum paucitatemque portuum sciebant,
    • 土地の不案内と港の少なさのゆえに航行が妨げられることを(ウェネティー族らは)知っていた。
  • neque nostros exercitus propter inopiam frumenti diutius apud se morari posse confidebant;
    • 穀物の欠乏のゆえに、我が軍〔ローマ軍〕がより長く彼らのもとに留まることができないと(ウェネティー族らは)信じ切っていた。


  • ac iam ut omnia contra opinionem acciderent,
    • やがて、すべてのことが予想に反して生じたとしても、
  • tamen se plurimum navibus posse, quam Romanos neque ullam facultatem habere navium,
    • けれども自分たち〔ウェネティー族ら〕は艦船において、艦船の備えを何ら持たないローマ人よりも大いに優勢であり、
  • neque eorum locorum, ubi bellum gesturi essent, vada, portus, insulas novisse;
    • 戦争を遂行しようとしているところの浅瀬・港・島に(ローマ人は)不案内であった(と信じ切っていた)。


  • ac longe aliam esse navigationem in concluso mari atque in vastissimo atque apertissimo Oceano perspiciebant.
    • 閉ざされた海〔地中海〕と非常に広大で開けた大洋〔大西洋オーケアヌスにおける航行はまったく別物であると見通していた。


  • His initis consiliis
    • この作戦計画が決められると、
  • oppida muniunt,
  • frumenta ex agris in oppida comportant,
    • 穀物を耕地から城塞都市オッピドゥムに運び込み、
  • naves in Venetiam, ubi Caesarem primum (esse) bellum gesturum constabat, quam plurimas possunt, cogunt.
    • カエサルが最初の戦争を遂行するであろうことが明白であったところのウェネティー族領に、ありったけの艦船を集める。


  • Socios sibi ad id bellum
    • この戦争のために(ウェネティー族は)自分たちのもとへ同盟者として
  • Osismos, Lexovios, Namnetes, Ambiliatos, Morinos, Diablintes, Menapios adsciscunt;
    • オスィスミー族・レクソウィイー族・ナムネーテース族・アンビリアーティー族・モリニー族・ディアブリンテース族・メナピイー族 を引き入れる。
      (訳注:アンビリアーティー族 ➡ プリニウスは「アンビラトリー族」 Ambilatri と記す。
          ディアブリンテース族 ➡ プリニウスは「ディアブリンティー族」 Diablinti と記す。
                      この部族は、アウレルキー族 Aulerci の支族。)
  • auxilia ex Britannia, quae contra eas regiones posita est, arcessunt.
    • 援軍を、この地域の向かい側に位置するブリタンニアから呼び寄せた。
      (訳注:援軍を出したという口実のもと、翌年カエサルがブリタンニアに侵攻することになる。)
アルモリカArmorica )の部族分布図。

10節

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カエサルの開戦への大義名分

  • Erant hae difficultates belli gerendi, quas supra ostendimus,
    • 上で指摘したような、戦争を遂行することの困難さがあった。
  • sed tamen multa Caesarem ad id bellum incitabant:
    • にもかかわらず、多くのことがカエサルをその戦争へと駆り立てていたのだ。
  • iniuria retentorum equitum Romanorum,
    • ①ローマ人の騎士〔騎士階級の者〕たちが拘束されることの無法さ、
  • rebellio facta post deditionem,
    • ②降伏の後でなされた造反、
  • defectio datis obsidibus,
    • ③人質を供出しての謀反、
  • tot civitatum coniuratio,
    • ④これほど多くの部族の共謀、
  • in primis ne hac parte neglecta reliquae nationes sibi idem licere arbitrarentur.
    • ⑤何よりも第一に、この地方をなおざりにして、残りの種族が自分たちも同じことを許容されると思い込まないように。
  • Itaque cum intellegeret
    • そこで、(カエサルは以下のように)認識していたので、
  • omnes fere Gallos novis rebus studere et ad bellum mobiliter celeriterque excitari,
    • ①ほぼすべてのガリア人が政変を熱望して、戦争へ簡単に速やかに奮い立たせられていること、
  • omnes autem homines natura libertati studere incitari et condicionem servitutis odisse,
    • ②他方ですべての人間は本来的に自由を熱望することに扇動され、隷属の状態を嫌っていること、
  • prius quam plures civitates conspirarent,
    • 多くの部族が共謀するより前に、
  • partiendum sibi ac latius distribuendum exercitum putavit.
    • (カエサルは)自分にとって軍隊が分けられるべき、より広範に割り振られるべきであると考えた。

11節

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ラビエーヌス、クラッスス、サビーヌス、ブルートゥスを前線へ派兵する

   副官ラビエーヌスをトレウェリー族のもとへ遣わす
  • Itaque T. Labienum legatum in Treveros, qui proximi flumini Rheno sunt, cum equitatu mittit.
  • Huic mandat,
    • 彼に(以下のように)命じる。
  • Remos reliquosque Belgas adeat atque in officio contineat
    • ①レーミー族やほかのベルガエ人を訪れて、忠実さオッフィキウムに留めるように、
      (訳注:Remi は、ローマの同盟部族で、第2巻3節以降で言及された。)
  • Germanosque, qui auxilio a Gallis arcessiti dicebantur,
  • si per vim navibus flumen transire conentur, prohibeat.
    • (彼らが)もし力ずくで船で川を渡ることを試みるならば、防ぐように、と。


   クラッスス青年をアクィーターニアに派遣する
  • P. Crassum cum cohortibus legionariis XII(duodecim) et magno numero equitatus in Aquitaniam proficisci iubet,
  • ne ex his nationibus auxilia in Galliam mittantur ac tantae nationes coniungantur.
    • これらの種族から援兵がガッリアに派遣され、これほど多くの諸部族が結託することがないように。


   副官サビーヌスを3個軍団とともにアルモリカ北部へ派兵する


   ブルートゥス青年をウェネティー族領へ派兵する
  • D. Brutum adulescentem classi Gallicisque navibus,
  • quas ex Pictonibus et Santonis reliquisque pacatis regionibus convenire iusserat,
    • ──これら(船団)はピクトネース族・サントニー族やほかの平定された地方から集まるように命じていたものであるが、──
  • praeficit et, cum primum possit, in Venetos proficisci iubet.
    • (ブルートゥスに船団を)指揮させて、できるだけ早くウェネティー族(の領土)に出発することを命じる。


  • Ipse eo pedestribus copiis contendit.
    • (カエサル)自身は、そこへ歩兵の軍勢とともに急ぐ。

12節

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ウェネティー族の城塞都市の地勢、海洋民の機動性

ウェネティー族の城塞都市があったブルターニュ半島の突き出た地形
  • Erant eiusmodi fere situs oppidorum,
  • ut posita in extremis lingulis promunturiisque
    • 砂嘴リングラの先端部に位置しているので、
      (訳注:lingulalingua terrae (舌状地) ≒ 砂嘴さし(くちばし状の砂地)。)
  • neque pedibus aditum haberent, cum ex alto se aestus incitavisset,
    • 沖合から潮 汐アエトゥスが押し寄せて来たとき〔満潮〕に、徒歩での接近路アプローチを持っていなかった。
  • quod bis accidit semper horarum XII(duodenarum) spatio,
    • というのは(満潮が毎日)2度、常に12時間の間隔で起こるためである。
ある日(24時間)の潮位予測グラフの例(2012年、オランダ北海沿岸のエイマイデン)。
満潮や干潮は、約12時間の周期で繰り返されることが多いため、たいてい1日2回ずつ生じる。
  • neque navibus,
    • 船で(のアプローチ)もなく、
  • quod rursus minuente aestu naves in vadis adflictarentur.
    • というのは、潮が再び減ると〔干潮〕、船団が浅瀬で損傷してしまうためである。
  • Ita utraque re oppidorum oppugnatio impediebatur;
    • このように(陸路・海路)どちらの状況においても、城塞都市オッピドゥムの攻略は妨げられていた。



  • ac si quando magnitudine operis forte superati,
    • あるとき、期せずして(ウェネティー族がローマ人の)構造物オプスの大きさに圧倒されて、
  • extruso mari aggere ac molibus
    • (ローマ人が建造した)土手アッゲル防波堤モーレースにより海水が押し出され、
  • atque his oppidi moenibus adaequatis,
    • これら〔堡塁〕城塞都市オッピドゥムの城壁と(高さにおいて)等しくされ、
  • suis fortunis desperare coeperant,
    • (ウェネティー族らが)自分たちの命運に絶望し始めていたとしても、
  • magno numero navium adpulso,
    • 船の多数を接岸して、
  • cuius rei summam facultatem habebant,
    • それら〔船〕の供給に最大の備えを持っていたので、
  • omnia sua deportabant seque in proxima oppida recipiebant;
    • 自分たちの一切合財オムニアを運び去って、最も近い城塞都市オッピドゥムに撤収していた。
  • ibi se rursus isdem opportunitatibus loci defendebant.
    • そこにおいて再び同じような地の利によって防戦していたのだ。



  • Haec eo facilius magnam partem aestatis faciebant,
    • 以上のことが、夏の大部分を(ウェネティー族にとって)より容易にしていた。
  • quod nostrae naves tempestatibus detinebantur,
    • なぜなら、我が方〔ローマ人〕の船団は嵐により(航行を)阻まれており、
  • summaque erat
    • (航行することの困難さが)非常に大きかった。
  • vasto atque aperto mari,
    • 海は広大で開けており、
  • magnis aestibus,
    • 潮流アエトゥスが激しく、
  • raris ac prope nullis portibus
    • 港はまばらでほとんどないので、
  • difficultas navigandi.
    • 航行することの困難さが(非常に大きかった)

13節

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ウェネティー族の帆船の特徴

ウェネティー族の船の再現画(左下に兵士の大きさが示されている)  
古代ローマの軍船(ガレー船)の構成
一つの帆をもつ帆船の例
二つの帆をもつ帆船の例
  • Namque ipsorum naves ad hunc modum factae armataeque erant:
 竜骨
  • carinae aliquanto planiores quam nostrarum navium,
    • 竜 骨カリーナは、我が方〔ローマ人〕の船のものよりも、いくらか平らで、
      (訳注:竜骨は、船底に突き出た背骨部分で、帆船が風で横滑りしないように造られていた。)
  • quo facilius vada ac decessum aestus excipere possent;
    • それによって、より容易に浅瀬 や が退くこと〔干潮〕を持ち応えることができた。
 船首と船尾
  • prorae admodum erectae atque item puppes,
    • 船 首プローラはまったく直立しており、船 尾プッピスも同様で、
  • ad magnitudinem fluctuum tempestatumque adcommodatae;
    • 波 浪フルークトゥス暴風雨テンペスタース の激しさに適応していた。
 船体の材質
  • naves totae factae ex robore ad quamvis vim et contumeliam perferendam;
    • 船は、どんな力や衝撃にも耐えるために、全体としてオーク材で造られていた。
      (訳注:roburoak と英訳され、と訳されることが多いが、
          「カシ」は常緑樹であり、西洋では落葉樹である「ナラ」が多い。
           学名 Quercus robur は「ヨーロッパナラ」と訳される。)
 横梁
  • transtra ex pedalibus in altitudinem trabibus, confixa clavis ferreis digiti pollicis crassitudine;
    • 横梁(横木)トラーンストルムは、1ペースの幅の材木トラプスからなり、親指の太さほどの鉄製ので固定されていた。
      (訳注:1ペースは約29.6cm。)
      (訳注:transtra は、帆柱マストmalus)を船に固定するための横梁(横木)クロスビームとも考えられる。)
 錨(いかり)の索具
  • ancorae pro funibus ferreis catenis revinctae;
    • アンコラは、縄 索フーニスの代わりに鉄製のでつながれていた。
ancora ()(古代ローマ)
funis (綱のロープ)
catena ()


 帆の材質
  • pelles pro velis alutaeque tenuiter confectae,
    • 帆 布ウェールムの代わりに毛皮ペッリスや、薄く作製されたなめし皮アルータが(用いられた)。
      (訳注:pellisなめしていない生皮、alutaなめした皮革 corium のこと。)
亜麻布リネン帆布
pellis (毛皮)
aluta (なめし皮)
  • [hae] sive propter inopiam lini atque eius usus inscientiam,
    • [これは] あるいは、亜麻リーヌムの不足ゆえや、その利用に無知であるゆえか、
      (訳注:ローマ人には、亜麻布 (リネン)で帆を作る慣習があった。)
  • sive eo, quod est magis veri simile,
    • あるいは、この方がより真実に近いのだろうが、
  • quod tantas tempestates Oceani tantosque impetus ventorum sustineri
    • 大洋大西洋オーケアヌスのあれほどの嵐や、風のあれほどの激しさに持ち応えること、
  • ac tanta onera navium regi
    • 船のあれほどの重さを制御することは、
  • velis non satis commode posse arbitrabantur.
    • 帆 布ウェールムにとって十分に具合良くできないと、(ウェネティー族は)考えていたためであろう。



  ウェネティー船団とローマ艦隊の優劣
  • Cum his navibus nostrae classi eiusmodi congressus erat,
    • 彼ら〔ウェネティー族〕の船団と、我が方〔ローマ軍〕の艦隊は、以下のように交戦していた。
  • ut una celeritate et pulsu remorum praestaret,
    • 迅速さと(かい)レームスぐのだけは(ローマ艦隊が)よりまさっていたのだが、
  • reliqua pro loci natura, pro vi tempestatum
    • そのほかのことは、地勢や嵐の勢いを考慮すると、
  • illis essent aptiora et adcommodatiora.
    • 彼ら〔ウェネティー族〕にとってより適しており、より好都合であった。
  • Neque enim his nostrae rostro nocere poterant
    • なぜなら、我が方〔ローマ艦隊〕衝  角ローストルムによって彼ら(の船)に対して損壊することができず、
  • ── tanta in iis erat firmitudo ──,
    • ──それら〔ウェネティー族の船〕においては(船体の)それほどの頑丈さがあったのだが──
  • neque propter altitudinem facile telum adigebatur,
    • (ウェネティー族の船体の)高さのゆえに、飛道具がたやすく投げ込まれなかったし、
  • et eadem de causa minus commode copulis continebantur.
    • 同じ理由から、あまり都合よく 鉤縄かぎなわ(敵船が)つなぎ止められなかった。
      (訳注:下線部は、古い写本では scopulis「岩礁」だが、
          後代の写本で修正され「鉤縄」と解釈されている。下図参照。)
海戦において敵船に接舷するために用いられていた、多数のかぎを備えたもりの一種(英語 grappling hook)。
『内乱記』第1巻57節第2巻6節においても、D.ブルートゥスによるマッシリア攻囲の海戦の場面で、同様の鉤について言及される。
  • Accedebat ut,
    • さらに加えて、
  • cum [saevire ventus coepisset et] se vento dedissent,
    • [風が荒々しく吹き始めて] 風に身を委ねて(航行して)いたときに、
      (訳注:β系写本では [  ] 部分を欠く。)
  • et tempestatem ferrent facilius
    • (ウェネティー族の船団は)嵐により容易に耐えていたし、
  • et in vadis consisterent tutius
    • 浅瀬により安全に停留して、
  • et ab aestu relictae
    • 潮に取り残されても、
  • nihil saxa et cautes timerent;
    • 岩石やごつごつした石を何ら恐れることがなかった。
  • quarum rerum omnium nostris navibus casus erant extimescendi.
    • それらのすべての事が、我が〔ローマ人の〕船団にとっては、恐怖すべき危険であったのだ。
      (訳注:ウェネティー族の船は竜骨がローマ人の船より平たいため、
          浅瀬や引き潮を容易に持ち応えられた。本節の冒頭を参照。)

14節

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カエサル待望のブルートゥスの艦隊が来航し、ウェネティー族との海戦が始まる

  • Compluribus expugnatis oppidis
    • いくつもの(ウェネティー族の)城塞都市オッピドゥムが攻略されると、
  • Caesar ubi intellexit frustra tantum laborem sumi
    • カエサルは、これほどの労苦が無駄に費やされること(を知り)、
  • neque hostium fugam captis oppidis reprimi
    • (すなわち)城塞都市オッピドゥムが占領されても、敵の逃亡が阻まれないし、
  • neque iis noceri posse,
    • 彼ら〔ウェネティー族〕に損害が与えられることも不可能であると知るや否や
  • statuit exspectandam classem.
    • 艦隊(の到着)を待つことを決意した。
      (訳注:ローマの軍船がリゲル川〔ロワール川〕で建造されていることが9節で述べられた。)


  ローマ艦隊が来航すると、約220隻のウェネティー船団が迎え撃とうとする
  • Quae ubi convenit ac primum ab hostibus visa est,
    • それ〔ローマ艦隊〕が集結して敵方により目撃されるや否や、
  • circiter CCXX(ducentae viginti) naves eorum paratissimae
    • 約220隻の彼ら〔ウェネティー族〕の船団が準備万端を整え、
  • atque omni genere armorum ornatissimae
    • あらゆる種類の武器で完全武装された状態で
  • ex portu profectae nostris adversae constiterunt;
    • 港から出航して、我が方〔ローマ艦隊〕と向かい合って停止した。
BC56年に現在のモルビアン県沿いのキブロン湾で戦われたと考えられている、ウェネティー族D. ブルートゥス率いる艦隊との海戦、いわゆる「モルビアン湾の海戦」の海戦図。
上図の説では、ウェネティー族の帆船(緑色/約220隻)ブルートゥス率いるローマのガレー船(赤色/約100隻)キブロン湾で対峙し、カエサルと1個軍団(赤色)が沿岸を占領している。
  • neque satis Bruto, qui classi praeerat,
    • 艦隊を統率していたブルートゥスには十分(明らか)ではなかった。
      (訳注:デキムス・ブルートゥス Decimus Brutus に艦隊を指揮させることが11節で述べられた。)
  • vel tribunis militum centurionibusque, quibus singulae naves erant attributae,
    • あるいは、個々の船が割り当てられていた 兵士長官トリブヌス・ミリトゥム百人隊長ケントゥリオー にとってさえも、
  • constabat quid agerent aut quam rationem pugnae insisterent.
    • 何をすべきなのか、どのような戦法に取り掛かるべきなのか、明らかではなかった。
  • Rostro enim noceri non posse cognoverant;
    • なぜなら、衝 角ローストルムにとって(敵船に)損害を与えることができないことを知っていたからだ。
      (訳注:前節で、ウェネティー族の船体が頑丈であるため、と述べられた。)
  • turribus autem excitatis tamen has altitudo puppium ex barbaris navibus superabat,
    • 他方で、が築かれたにもかかわらず、蛮族の船の 船尾プッピス の高さがそれら(の高さ)を上回っていた。
      (訳注:ローマの軍船の甲板上には、投槍などの飛道具を投げるために櫓が設けられていた。)
  • ut neque ex inferiore loco satis commode tela adigi possent
    • その結果、より低い場所から十分に具合良く(敵船に)飛道具テールムが投げ込まれることは不可能で、
  • et missa a Gallis gravius acciderent.
    • ガッリア人により放られたものがより激しく降ってきていた。


  ローマ艦隊の切り札
  • Una erat magno usui res praeparata a nostris,
    • ただ一つの大いに役立つ物が、我が方〔ローマ艦隊〕によって準備されていた。
  • falces praeacutae insertae adfixaeque longuriis,
    • (それは)先の尖った長い竿ロングリウス に挿入されて固定されたもので、
  • non absimili forma muralium falcium.
    • (攻城用の)破城の鎌ファルクス・ムーラーリス に形が似ていなくもない。
      (訳注:「破城の鎌」falx muralis に似たもので、falx navalis とも呼ばれている。)
破城鎌の復元画の例
帆柱・帆桁や帆・綱具などが描かれたローマ時代のモザイク画[5]オデュッセウスセイレーン
チュニスバルド国立博物館
  • His cum funes qui antemnas ad malos destinabant, comprehensi adductique erant,
    • これによって、帆 桁アンテムナ帆 柱マールス に縛り付けていた 綱具フーニス が捕捉されて引っ張られた状態で、
  • navigio remis incitato praerumpebantur.
    • 艦艇ナーウィギウムによってすばやく推進されると、(綱具が)引き裂かれていた。
  • Quibus abscisis antemnae necessario concidebant,
    • それら〔綱具〕が切断されると、帆 桁アンテムナ は必然的に倒れてしまっていた。
  • ut, cum omnis Gallicis navibus spes in velis armamentisque consisteret,
    • その結果、ガッリア人の船団にとって、すべての期待は帆と索具に依拠していたので、
      (訳注:armamentum (英 rigging)⇒「索具」:帆柱を支える綱や器具など。)
  • his ereptis omnis usus navium uno tempore eriperetur.
    • これらが引き裂かれると、船のすべての運用能力も一時いちどきに奪い取られていた。
  • Reliquum erat certamen positum in virtute,
    • 残りの争闘は、武勇いかんにかっており、
  • qua nostri milites facile superabant,
    • その点では我が方〔ローマ勢〕の兵士たちが容易に上回っていた。


  沿岸はカエサルとローマ軍によって占領されていた
  • atque eo magis quod in conspectu Caesaris atque omnis exercitus res gerebatur,
    • 海戦がカエサルと全陸軍の眼前において遂行されていたので、それだけますます
      (訳注:classis が艦隊(海軍)を指すのに対して、exercitus は重装歩兵を主体とする陸軍部隊を指す。)
      (訳注:eo magis quod ~ 「~だけ、ますます」)
  • ut nullum paulo fortius factum latere posset;
    • (普通より)より少し勇敢ならどんな行動も知らずにはおかないほどであった。
  • omnes enim colles ac loca superiora, unde erat propinquus despectus in mare, ab exercitu tenebantur.
    • なぜなら、そこから海への眺望が近いところのすべての丘や高地は、(ローマ人の)軍隊によって占領されていたのである。

15節

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接舷戦でローマ艦隊がウェネティー船団を圧倒し、わずかな船だけが逃げ帰る

  • Deiectis, ut diximus, antemnis,
    • 上述したように(ウェネティー族の船の)帆 桁アンテムナが奪い取られると、
  • cum singulas binae ac ternae naves circumsteterant,
    • (ウェネティー族の)船1隻ずつを(ローマの)2隻ずつや3隻ずつが取り囲んでいたときに、
      (訳注:ローマのガレー船は、多数の漕ぎ手を乗せるため、兵士を大勢乗せることができなかった。
          それゆえ、接舷戦では、敵の1隻に対して多くの船を当てる必要があったのであろう。)
  • milites summa vi transcendere in hostium naves contendebant.
    • (ローマの)兵士たちはあらん限りの力で敵の船団に乗り移ることに努めていた。
  • Quod postquam barbari fieri animadverterunt,
    • そのことが行なわれていることに蛮族たちが気付いた後で、
  • expugnatis compluribus navibus,
    • かなり多くの(ウェネティー族の)船が拿捕だほされて、
  • cum ei rei nullum reperiretur auxilium,
    • その戦況に対して何ら救援が見出されなかったので、
  • fuga salutem petere contenderunt.
    • 逃亡に身の安全を求めることに努めた。
  • Ac iam conversis in eam partem navibus quo ventus ferebat,
    • すでに風が運んでいた方角へ船団の向きが変えられていたが、
  • tanta subito malacia ac tranquillitas exstitit,
    • 突如としてあれほどのなぎや静けさが生じたので、
  • ut se ex loco movere non possent.
    • (ウェネティー族の船団が)その場所から動くことができないほどであった。
      (訳注:このビスケー湾海域は、風や潮の勢いが強いため、
          ウェネティー族は漕ぎ手を使わない帆船を用いていたのだろう。
          風力のみに頼る帆船は、無風時には進むことができない。)
  • Quae quidem res ad negotium conficiendum maximae fuit oportunitati:
    • このような事態はまさに(ローマ艦隊が)軍務を遂行するために最大の機会であった。
  • nam singulas nostri consectati expugnaverunt,
    • 実際、(ウェネティー族の船)1隻ずつを我が方(ローマ艦隊)が追跡して攻略したので、
  • ut perpaucae ex omni numero noctis interventu ad terram pervenirent,
    • その結果(ウェネティー族の船の)総数のうちごく少数が、夜のとばりに包まれて、陸地に達しただけであった。
  • cum ab hora fere IIII.(quarta) usque ad solis occasum pugnaretur.
    • (海戦が)ほぼ第四時から日が没するまで戦われていたけれども。
      (訳注:第四時は、古代ローマの不定時法で日の出から3~4時間後。
          フランスの6月頃なら、日の出が午前6時頃で、第四時は午前10時近くと思われる。
               6月頃なら、日の入は午後10時近くとかなり遅い。)

16節

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ウェネティー族らがカエサルに降伏するが、・・・

  • Quo proelio bellum Venetorum totiusque orae maritimae confectum est.
    • 以上の戦闘で、ウェネティー族およびすべての沿海部との戦争が完遂された。
      (訳注:正確には、次節以降でウネッリー族ら残りの沿海部族との戦いが述べられるので「すべて」ではない。)
  • Nam cum omnis iuventus, omnes etiam gravioris aetatis,
    • なぜなら、すべての青年はもとより、すべての年長の者たちさえも、
  • in quibus aliquid consilii aut dignitatis fuit eo convenerant,
    • 何らかの思慮分別のある者、あるいは地位のある者たちは、そこ(戦場)へ集結していたから。
  • tum navium quod ubique fuerat in unum locum coegerant;
    • そればかりか、至る所にあった船をもまた一つの場所に集めておいたからだ。
      (訳注:cumtum 「~のみならず、・・・もまた」[6]
  • quibus amissis reliqui
    • それらを喪失すると、生き残った者たちは、
  • neque quo se reciperent
    • どこへ退却するべきなのかも、
  • neque quem ad modum oppida defenderent habebant.
    • どのような方法で城塞都市オッピドゥムを防衛するべきなのかも、わからなかった。


  ウェネティー族らが降伏する
  • Itaque se suaque omnia Caesari dediderunt.
    • こうして、(ウェネティー族らは)自らとその一切合財をカエサルに委ねた〔降伏した〕
  • In quos eo gravius Caesar vindicandum statuit
    • カエサルは、これらの者たちはより厳重に処罰されるべきである、と決定した。
  • quo diligentius in reliquum tempus a barbaris ius legatorum conservaretur.
    • そのことにより、今後、蛮族によって(ローマの)使節たちの権利がいっそう保たれるように。
  • Itaque omni senatu necato
    • こうして、評議会の全員が誅殺されると、
      (訳注:部族国家の合議制統治機関もローマの元老院に倣って senātus と呼ばれるが、ここでは「評議会」と訳す。第2巻5節28節を参照。)
  • reliquos sub corona vendidit.
    • 残りの者たちに葉冠をかぶせて〔奴隷として競売で〕売却した。
      (訳注:sub corona vendere 「葉冠のもとに売る=奴隷として競売で売る」)
葉冠を頭にかぶせられ、ローマの奴隷市場で競売に懸けられる女性奴隷。
フランスの画家ジャン=レオン・ジェロームが1884年に描いた歴史画「ローマの奴隷売却」(Vente d'esclaves à Rome)の一部分。

大西洋岸ウネッリー族の造反

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17節

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ウィリドウィークス率いるウネッリー族らの背反。対するサビーヌスの作戦

  • Dum haec in Venetis geruntur,
  • Quintus Titurius Sabinus cum iis copiis, quas a Caesare acceperat
  • in fines Unellorum(Venellorum) pervenit.
    • ウネッリー族の領土に到着した。
      (訳注:ウネッリー族 Unelli または ウェネッリー族 Venelli というが、
          後者がガリア語に近いようだ。)
  • His praeerat Viridovix
    • 彼ら〔ウネッリー族〕を統率していたのはウィリドウィークスで、
  • ac summam imperii tenebat earum omnium civitatum, quae defecerant,
    • (ローマの支配に)背いていた全部族の最高司令権を保持していた。
  • ex quibus exercitum [magnasque copias] coegerat;
    • (ウィリドウィークスは)これら(の部族国家)から大軍勢を駆り集めていた。
ウネッリー族・レクソウィイー族への遠征経路。
アルモリカArmorica )の部族分布図(再掲)。
   アウレルキー=エブロウィーケース族とレクソウィイー族の籠城
  • atque his paucis diebus Aulerci Eburovices Lexoviique,
    • それからこの数日内に、アウレルキー=エブロウィーケース族とレクソウィイー族は、
      (訳注:アウレルキー族 Aulerci はいくつもの支族から成り、
          エブロウィーケース族 Eburovices は四つの主要な支族の一つ。)
  • senatu suo interfecto, quod auctores belli esse nolebant,
    • 自分たちの評議会(の議員たち)を、戦争の首謀者になることを欲していなかったという理由で、殺害し、
      (訳注:部族国家の合議制統治機関もローマの元老院に倣って senātus と呼ばれるが、ここでは「評議会」と訳す。第2巻5節28節16節を参照。)
  • portas clauserunt
    • (ローマ人の襲来に備えて)城門を閉じて、
  • seseque cum Viridovice coniunxerunt;
    • (ウネッリー族の)ウィリドウィークスと結託していた。
  • magnaque praeterea multitudo undique ex Gallia perditorum hominum latronumque convenerat,
    • そのうえに、ガッリアの至る所から大勢の無頼漢や略奪者が集まって来ていた。
  • quos spes praedandi studiumque bellandi ab agri cultura et cotidiano labore revocabat.
    • これらの者たちを、略奪への期待と戦争への熱望が、農耕や毎日の労働から呼び戻していたのだ。


  サビーヌスが、陣営を設置して、勝機の到来を待つ
  • Sabinus idoneo omnibus rebus loco castris se tenebat,
    • サビーヌスは、陣営にとってあらゆる点で適切な場所を占拠していた。
  • cum Viridovix contra eum duorum milium spatio consedisset
    • ウィリドウィークスは、彼に対抗して2ローママイルの間隔で陣取っていたが、
      (訳注:1ローママイルは約1.48 kmで、2マイルは約3 km)
  • cotidieque productis copiis pugnandi potestatem faceret,
    • 毎日、軍勢を繰り出して、闘う機会を作っていた。
  • ut iam non solum hostibus in contemptionem Sabinus veniret,
    • その結果もはや、サビーヌスは敵方によって軽蔑されるに至ったのみならず、
  • sed etiam nostrorum militum vocibus non nihil carperetur;
    • 我が方〔ローマ勢〕の兵士の少なからぬ者によってさえも、声に出して非難されていたほどであった。
  • tantamque opinionem timoris praebuit,
    • これほどの怖気おじけの評判を呈したので、
  • ut iam ad vallum castrorum hostes accedere auderent.
    • その結果ついには、陣営の堡塁の辺りにまで敵方が敢えて近寄って来るほどであった。
  • Id ea de causa faciebat
    • (サビーヌスが)以上のことをしていたのは、以下の理由による。
  • quod cum tanta multitudine hostium,
    • これほどの多勢の敵と、
  • praesertim eo absente qui summam imperii teneret,
    • とりわけ(ローマ勢の)最高司令権を保持していた者〔カエサル〕が不在のままで、
  • nisi aequo loco aut opportunitate aliqua data
    • 対等な場所、あるいは何らかの好機が与えられない限り、
  • legato dimicandum non existimabat.
    • (最高司令官ならぬ)副 官レガートゥスにとって戦うべきではない、と判断していたのである。

18節

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サビーヌスの計略

  • Hac confirmata opinione timoris
    • このような(サビーヌスについての)怖気おじけの評判が確かめられると、
  • idoneum quendam hominem et callidum delegit Gallum,
    • (サビーヌスは)適任かつ明敏なガッリア人のとある男を選び出す。
  • ex iis quos auxilii causa secum habebat.
    • 支援のために保持していた者たちの内から。
      (訳注:ローマは、同盟部族に騎兵・軽装歩兵・弓兵・投石兵などから成る
          支援部隊 Auxilia を供出させていた。)
  • Huic magnis praemiis pollicitationibusque persuadet uti ad hostes transeat,
    • この者に、多大な報酬を約束して、敵方に渡るように説得し、
  • et quid fieri velit edocet.
    • (サビーヌスが)何がなされんと欲しているのか、説き教える。



  • Qui ubi pro perfuga ad eos venit,
    • その者は、脱走兵として彼ら(ウネッリー族)のところへ来るや否や、
  • timorem Romanorum proponit,
    • ローマ人の怖気おじけを知らせて、
  • quibus angustiis ipse Caesar a Venetis prematur docet,
    • いかなる窮状によって、カエサル自身がウェネティー族により苦戦させられているかを教える。
  • neque longius abesse, quin proxima nocte
    • 遅くとも次の晩には、
  • Sabinus clam ex castris exercitum educat
    • サビーヌスはひそかに陣営から軍隊を導き出して、
  • et ad Caesarem auxilii ferendi causa proficiscatur.
    • カエサルのもとへ支援をもたらすために出発するであろう、と。



  • Quod ubi auditum est, conclamant
    • そのことが聞かれるや否や、(ウネッリー族らは)声を上げる。
  • omnes occasionem negotii bene gerendi amittendam non esse:
    • 事態をうまくやり遂げるためのあらゆる機会を失うべきではない、
  • ad castra iri oportere.
    • (ローマ人の)陣営のもとへ行かねばならぬ、と。
  • Multae res ad hoc consilium Gallos hortabantur:
    • (以下の)多くの事情が、この作戦計画へとガッリア人たちを駆り立てていた。
  • superiorum dierum Sabini cunctatio,
    • 先日来のサビーヌスのためらい、
  • perfugae confirmatio,
    • 脱走兵の確言、
  • inopia cibariorum, cui rei parum diligenter ab iis erat provisum,
    • 彼ら〔ガッリア人〕によって、その供給が注意深く充分に準備されていなかった糧食の欠乏、
  • spes Venetici belli,
  • et quod fere libenter homines id quod volunt credunt.


  • His rebus adducti
    • これらの事態に促されて、
  • non prius Viridovicem reliquosque duces ex concilio dimittunt,
    • (ウネッリー族の者らは)ウィリドウィークスや他の指導者を会議から解散させなかった。
  • quam ab his sit concessum arma uti capiant et ad castra contendant.
    • 彼ら〔指導者たち〕によって、武器を取って(ローマ)陣営へ急行するように承認されるまでは。
      (訳注:nōn priusquam ・・・ 「・・・までは~ない」)
  • Qua re concessa laeti, ut explorata victoria,
    • この事が承認されると、まるで勝利が確実にされたかのように喜んで、
  • sarmentis virgultisque collectis, quibus fossas Romanorum compleant,
    • 小枝や薮を集めて、それらでもってローマ人の塹壕を埋めるべく、
  • ad castra pergunt.
    • (ローマの)陣営のもとへ前進する。

19節

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ウネッリー族らとの決戦

  • Locus erat castrorum editus et paulatim ab imo acclivis circiter passus mille.
    • ローマ陣営の位置は高く、最も下(麓)から緩やかな上り坂で約1000パッスス(約1.5km)のところにあった。
      (訳注:1000パッススは1マイルだから、約1.48 km)
  • Huc magno cursu contenderunt,
    • (ウネッリー勢は)ここへ、大いに駆けて急いで、
  • ut quam minimum spatii ad se colligendos armandosque Romanis daretur,
    • ローマ人にとって集結して武装するための時間ができるだけ与えられないようにして、
  • exanimatique pervenerunt.
    • 息を切らして到着した。


  サビーヌスが、坂の上の陣営から軍勢を繰り出す
  • Sabinus suos hortatus cupientibus signum dat.
    • サビーヌスは、自分の部下たちを励まして、はやる者たちに号令を出す。
  • Impeditis hostibus propter ea quae ferebant onera,
    • 敵方が、彼らが担いでいた重荷のために妨げられていたので、
  • subito duabus portis eruptionem fieri iubet.
    • (サビーヌスは)突然に(左右の)二つの門から出撃がなされることを命じる。


 ローマ勢がウネッリー族らを一蹴して、敗走するところを虐殺する
  • Factum est
    • (ut以下のことが)なされた。
  • opportunitate loci,
    • 地の利の好都合により、
  • hostium inscientia ac defatigatione,
    • 敵方の(武具や戦術の)不案内や疲労により、
  • virtute militum
    • 兵士たちの武勇により、
  • et superiorum pugnarum exercitatione,
    • および先頃の戦いの熟練によって、
  • ut ne primum quidem nostrorum impetum ferrent
    • 我が方〔ローマ勢〕の最初の突撃さえも持ちこたえることなく、
  • ac statim terga verterent.
    • (ウネッリー勢は)すぐさま背を向けた〔敗走した〕
  • Quos impeditos
    • これらの難渋している者たちを、
  • integris viribus milites nostri consecuti
    • 健全な力で我が方〔ローマ勢〕の兵士たちが追跡して、
  • magnum numerum eorum occiderunt;
    • 彼ら〔ウネッリー族ら〕の大多数をたおした。
  • reliquos equites consectati paucos, qui ex fuga evaserant, reliquerunt.
    • 残りの者たちを(ローマ側の)騎兵が追跡したが、逃亡によって逃れたので、見逃した。
  • Sic uno tempore et de navali pugna Sabinus et de Sabini victoria Caesar est certior factus,
    • このようにして一度に、海戦についてサビーヌスが、サビーヌスの勝利についてカエサルが、報告を受けて、
  • civitatesque omnes se statim Titurio dediderunt.
    • (造反していた)全部族がすぐにティトゥーリウス(・サビーヌス)に降伏した。
  • Nam ut ad bella suscipienda Gallorum alacer ac promptus est animus,
    • こうなったのは、ガッリア人は戦争を実行することについては性急で、心は敏捷であるが、
  • sic mollis ac minime resistens ad calamitates ferendas mens eorum est.
    • と同様に柔弱で、災難に耐えるには彼らの心はあまり抵抗しないためである。

クラッススのアクィーターニア遠征

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20節

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クラッススのアウィーターニア遠征の経路。

クラッススのアクィーターニア遠征、ソティアーテース族

  • Eodem fere tempore Publius Crassus, cum in Aquitaniam pervenisset,
  • quae pars, ut ante dictum est, et regionum latitudine et multitudine hominum
    • この地方は、前述されたように、領域の広さと人間の多さの点で
  • ex tertia parte Galliae est aestimanda,
    • ガッリアの第三の地方であると考えられるべきであるが、
      (訳注:前述されたように とは
          第1巻1節の冒頭部および「ガッリアの地理区分について」のくだりであるが、
          少なくとも冒頭部では第二の部分として言及されている。)
  • cum intellegeret in illis locis sibi bellum gerendum,
    • (クラッススは)かの場所で自らにとって戦争がなされるべきであると考えていたので、
  • ubi paucis ante annis Lucius Valerius Praeconinus legatus exercitu pulso interfectus esset
    • そこでほんの数年前に総督副官レーガートゥスルーキウス・ウァレリウス・プラエコーニーヌスが軍隊を撃退されて殺害されており、
      (訳注:プラエコーニーヌス[7]とその敗北についてはカエサルが伝えているだけであり、詳細は不明である。)
  • atque unde Lucius Manlius proconsul impedimentis amissis profugisset,
  • non mediocrem sibi diligentiam adhibendam intellegebat.
    • 己にとって尋常ならざる注意深さが適用されるべきだと考えていたのだ。



  • Itaque re frumentaria provisa,
    • こうして、糧食補給が準備され、
  • auxiliis equitatuque comparato,
  • multis praeterea viris fortibus Tolosa et Carcasone et Narbone,
  • ── quae sunt civitates Galliae provinciae finitimae, ex his regionibus ──
    • ──それらは、この地域に隣接する(ローマの)ガッリア属州の都市であるが、──
      (訳注:ガッリア属州とは、現在の南仏に当たるガッリア・トラーンサルピーナのこと。)
  • nominatim evocatis,
    • 名指しで徴集されると、
  • in Sotiatium fines exercitum introduxit.
    • (クラッススは)ソティアーテース族の領土に軍隊を導き入れた。
      (訳注:ソティアーテース Sotiates は、α系写本では Sontiātēs (複数・属格 Sontiātum) [8] とする。
          なお、大プリーニウス博物誌』第4巻(33章)108節[9][10]では Sottiates とする。)
  • Cuius adventu cognito
    • 〔クラッスス〕の到着を知ると、
  • Sotiates magnis copiis coactis,
    • ソティアーテース族は大軍勢を集めて、
  • equitatuque, quo plurimum valebant, in itinere agmen nostrum adorti
    • それにより彼らが大いに力があったところの騎兵隊で、行軍中の我が方〔ローマ勢〕の隊列を襲撃して、
  • primum equestre proelium commiserunt,
    • はじめに、騎兵戦を戦った。
  • deinde equitatu suo pulso atque insequentibus nostris
    • それから、その(敵の)騎兵隊が撃退され、我が方が追跡したが、
  • subito pedestres copias, quas in convalle in insidiis conlocaverant, ostenderunt.
    • 突如として、峡谷の中に伏兵として配置しておいた歩兵の軍勢が、が現われた。
  • Iis nostros disiectos adorti proelium renovarunt.
    • これら(の軍勢)によって追い散らされた我が方〔ローマ軍〕に襲いかかり、戦いを再び始めた。

21節

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ソティアーテース族の敗勢

  • Pugnatum est diu atque acriter,
    • 長く激しく戦われた。
  • cum Sotiates superioribus victoriis freti
    • というのもソティアーテース族は、かつての(ローマ勢に対する)勝利を信頼しており、
  • in sua virtute totius Aquitaniae salutem positam putarent,
    • 自分たちの武勇の中に全アクィーターニアの安全が立脚していると、みなしていたからだ。
  • nostri autem,
    • 我が方〔ローマ勢〕はそれに対して
  • quid sine imperatore et sine reliquis legionibus adulescentulo duce efficere possent,
    • 将 軍インペラートルもなし、他の軍団もなしに、この若造〔クラッスス〕が指揮官として何を成し得るのか、が
  • perspici cuperent;
    • 注視(吟味)されることを欲していたのだ。
  • tandem confecti vulneribus hostes terga verterunt.
    • ついに負傷で消耗して、敵勢は背を向けた〔敗走し始めた〕
  • Quorum magno numero interfecto
    • これらの者の大多数を殺戮し、
  • Crassus ex itinere oppidum Sotiatium oppugnare coepit.
    • クラッススは行軍中からただちにソティアーテース族の城塞都市オッピドゥムを攻撃し始めた。
  • Quibus fortiter resistentibus
    • これらの勇敢に抵抗している者たちに対して、
  • vineas turresque egit.
    • (ローマ勢は)工兵小屋ウィネア攻城櫓トゥッリスを駆った。
  • Illi alias eruptione temptata,
    • 彼ら〔アクィーターニア人たち〕は、あるときは突撃を試みて、
  • alias cuniculis ad aggerem vineasque actis
    • あるときは土塁工兵小屋ウィネアのもとへ坑道を掘った。
  • ── cuius rei sunt longe peritissimi Aquitani,
    • ── こういった事〔坑道戦術〕に、アクィーターニア人は長らくきわめて熟練している。
  • propterea quod multis locis apud eos aerariae secturaeque sunt ──,
    • というのも、彼らのもとの多くの場所に銅山採石所があることのためである。──
      (訳注:aerāria, -ae [11]は銅の鉱山や精錬所、銅に限らないときは fodīna, -ae という。
          sectūra, -ae [12] は採石場のこと。)
  • ubi diligentia nostrorum nihil his rebus profici posse intellexerunt,
    • 我が方〔ローマ勢〕の注意深さによって こうした事〔坑道〕によっても何ら得られぬと理解するや否や、
  • legatos ad Crassum mittunt,
    • (ソティアーテース族は)使節たちをクラッススのところへ遣わして、
  • seque in deditionem ut recipiat petunt.
    • 自分たちを降伏へと受け入れるように求める。
  • Qua re impetrata arma tradere iussi faciunt.
    • この事が達せられると、武器の引渡しが命じられて、(ソティアーテース族は)実行する。
      (訳注:この一文を、次の22節に含める校訂版もある。)

22節

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ソティアーテース族の領袖アディアトゥアーヌスと従臣たちの突撃

  • Atque in ea re omnium nostrorum intentis animis,
    • この事に我が方〔ローマ勢〕の皆が没頭していると、
  • alia ex parte oppidi Adiatuanus, qui summam imperii tenebat,
    • 城塞都市オッピドゥムの他の方面から、最高司令権を保持していたアディアトゥアーヌスが
      (訳注:この人物の名は α系写本では Adiatunnus で、Adiatuanos, などさまざまな呼び方がある。
          Adiatuanus は当時の貨幣をもとに修正提案された読み。)
  • cum DC(sescentis) devotis, quos illi soldurios appellant,
    • 彼ら〔ガッリア人〕がソルドゥリイー〔従臣〕と呼んでいる600名の献身的な者たちとともに(突撃することを試みた)。
      (訳注:主文の述語動詞は、ソルドゥリイーの状況を説明する部分を挟んだ後に出て来る。)

アディアトゥアーヌスの従臣たち

  • ── quorum haec est condicio,
    • ── これらの者たち〔ソルドゥリイー〕の条件は以下の通りである。
  • uti omnibus in vita commodis una cum iis fruantur quorum se amicitiae dediderint,
    • 人生におけるあらゆる利益を、忠心に身を捧げていた者たちと一緒に享受する。
  • si quid his per vim accĭdat,
    • もし彼ら〔従臣仲間〕に何らかの力ずくの沙汰が起こったら、
  • aut eundem casum una ferant
    • 同じ災厄カーススを一緒に耐え忍ぶか、
  • aut sibi mortem consciscant;
    • あるいは、自決するか、のどちらかである。
      (訳注:sibi mortem consciscere 「自らに死を課す」=「自害する」)
  • neque adhuc hominum memoria repertus est quisquam qui, eo interfecto, cuius se amicitiae devovisset, mortem recusaret ──
    • 忠心に身を捧げていた者が殺されても自決を拒むような何者も、人々の記憶においてこれまでに見出されていない。──
  • cum his Adiatuanus eruptionem facere conatus
    • アディアトゥアーヌスは、この者たち〔ソルドゥリイー〕とともに突撃することを試みた
      (訳注:ソルドゥリイーの状況を説明する部分を挟んで、主語が繰り返されている。)

アディアトゥアーヌスの敗退

  • clamore ab ea parte munitionis sublato
    • 防塁のその方面から雄叫びが上げられて、
  • cum ad arma milites concurrissent vehementerque ibi pugnatum esset,
    • 武器のところへ(ローマ勢の)兵士たちが急ぎ集まって、そこで激しく戦われた状況で、
  • repulsus in oppidum
    • (アディアトゥアーヌスは)城塞都市オッピドゥムの中に撃退された
  • tamen uti eadem deditionis condicione uteretur a Crasso impetravit.
    • けれども(前述のと)同じ降伏条件を用いるように、クラッススによってかなえた。

23節

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ウォカーテース族・タルサーテース族・ヒスパーニア勢とクラッススが対峙する

  • Armis obsidibusque acceptis,
    • (ソティアーテース族から引き渡された)武器と人質を受け取ると、
  • Crassus in fines Vocatium et Tarusatium profectus est.
    • クラッススはウォカーテース族とタルサーテース族の領土に出発した。
      (訳注:カエサルによる Vocātēs [13]大プリニウス[14]により Vasates, Basabocates などとも呼ばれ、
          ボルドー南東のバザス Bazas、バザデース Bazadais などに名を残す。
         カエサルによる Tarusātēs [15] は 大プリニウスにより [14] Latusates となり、
          Aturenses とも呼ばれ、現在のエール=スュル=ラドゥール Aire-sur-l'Adour に名を残す。)
  • Tum vero barbari commoti,
    • だがそのとき、蛮族たちは動揺させられて、
  • quod oppidum et natura loci et manu munitum
    • ── というのも、地勢と部隊で防備された(ソティアーテース族の)城塞都市オッピドゥム
  • paucis diebus, quibus eo ventum erat, expugnatum cognoverant,
    • (ローマ人が)そこへ来てからわずかな日数で攻め落とされたことを知っていたためであるが、──
  • legatos quoque versus dimittere,
    • 使節たちをあらゆる方面に向けて遣わすこと、
      (訳注:quoque versus [16] 「あらゆる方向に向けて」)
  • coniurare,
    • 共謀すること、
  • obsides inter se dare,
    • 互いに人質を供出し合うこと、
  • copias parare coeperunt.
    • 軍勢を召集すること、を始めた。
      (訳注:copias parare 「部隊を集める、召集する」)


  • Mittuntur etiam ad eas civitates legati quae sunt citerioris Hispaniae finitimae Aquitaniae;
BC197年頃のヒスパーニア
オレンジ色の地域が当時のヒスパーニア・キテリオル
BC200年頃のイベリア半島の民族分布。朱色の部分にアクィーターニア人の諸部族が居住していた。
  • inde auxilia ducesque arcessuntur.
    • そこから援兵と指揮官たちが呼び寄せられる。
  • Quorum adventu
    • これらの者たちの到着によって、
  • magna cum auctoritate et magna [cum] hominum multitudine
    • 大きな影響力と、大勢の人間とともに、
  • bellum gerere conantur.
    • 戦争を遂行することを企てる。


  セルトーリウスの乱の残党たち
  • Duces vero ii deliguntur,
    • それから、指揮官には(以下の者たちが)選ばれる。
  • qui una cum Quinto Sertorio omnes annos fuerant
  • summamque scientiam rei militaris habere existimabantur.
  • Hi consuetudine populi Romani
    • この者たちは、ローマ人民の(軍事上の)慣習によって
  • loca capere,
    • (陣営に適した)土地を占拠すること、
  • castra munire,
    • 陣営を防備で固めること、
  • commeatibus nostros intercludere instituunt.
    • 我が方〔クラッスス指揮下のローマ勢〕を軍需物資から遮断すること、を決める。


  クラッススが短期決戦を決意する
  • Quod ubi Crassus animadvertit,
    • クラッスス(以下の事情に)気づくや否や、(すなわち)
  • suas copias propter exiguitatem non facile diduci,
    • 配下の軍勢が寡兵であるために(戦場において)展開するのが容易でないこと、
  • hostem et vagari et vias obsidere et castris satis praesidii relinquere,
    • 敵はうろつき回って道を遮断して、陣営に十分な守備兵を残していること、
  • ob eam causam minus commode frumentum commeatumque sibi supportari,
    • その理由のために糧食や軍需品をあまり都合良く自陣に持ち運べていないこと、
  • in dies hostium numerum augeri,
    • 日に日に敵方の数が増していること、(これらの諸事情に気づくや否や)
  • non cunctandum existimavit quin pugna decertaret.
    • (クラッススは)戦闘で雌雄を決することをためらうべきではないと考えたのだ。
  • Hac re ad consilium delata,
    • この事情が軍議に報告されて、
  • ubi omnes idem sentire intellexit,
    • (クラッススは)皆が同じことを考えていることを知るや否や、
  • posterum diem pugnae constituit.
    • 戦闘を翌日に決めた。

24節

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クラッススが軍勢を繰り出すが、安全策を採るアクィーターニア勢は陣営に留まる

  • Prima luce productis omnibus copiis,
    • (クラッススは)夜明けに(陣営から)全軍勢を出陣させると、
  • duplici acie instituta,
    • 二重の 戦 列アキエース を整列して、
      (訳注:三重の戦列 triplex aciēs とするのが当時の慣行だった。)
  • auxiliis in mediam aciem coniectis,
    • 支援軍アウクシリア戦 列アキエース の中央部に集結し、
      (訳注:同盟部族から供出された部隊である 支援軍アウクシリア は、翼軍アーラ āla とも呼ばれるように、
          戦列の左右両翼の側面に置かれることが多かった。
          この場合は、軍団兵がいるべき二列目の位置に支援軍を配置したということ。)
  • quid hostes consilii caperent exspectabat.
    • 敵方がいかなる作戦計略をとるのか、を待っていた。



  • Illi,
    • 彼ら〔アクィーターニア人〕は、
  • etsi propter multitudinem et veterem belli gloriam paucitatemque nostrorum se tuto dimicaturos existimabant,
    • (味方の)多勢、昔の戦争の栄誉、我が方〔ローマ勢〕の寡勢のために、安全に闘えると考えていたにも拘らず、
  • tamen tutius esse arbitrabantur obsessis viis commeatu intercluso sine ullo vulnere victoria potiri,
    • それでもより安全と思われるのは、道を封鎖して兵站を遮断し、何ら傷なしに勝利をものにすることであり、
  • et si propter inopiam rei frumentariae Romani se recipere coepissent,
    • もし糧食供給の欠乏のためにローマ人が退却し始めたならば、
  • impeditos in agmine et sub sarcinis infirmiores animo
    • (ローマ人が)隊列において背嚢を背負って妨げられて臆病になっているところを、
  • adoriri cogitabant.
    • 襲いかかれると考えていたのだ。
  • Hoc consilio probato ab ducibus,
    • この作戦が指揮官たちによって承認されると、
  • productis Romanorum copiis,
    • ローマ人の軍勢が進撃しても、
  • sese castris tenebant.
    • 彼らは陣営に留まっていた。



  • Hac re perspecta Crassus,
  • cum sua cunctatione atque opinione timidiores hostes
    • (敵)自身のためらいや、評判より臆病な敵方が
  • nostros milites alacriores ad pugnandum effecissent
    • 我が方〔ローマ勢〕の兵士たちを戦うことにおいてやる気にさせていたので、
  • atque omnium voces audirentur exspectari diutius non oportere quin ad castra iretur,
    • かつ(敵の)陣営へ向かうことをこれ以上待つべきではないという皆の声が聞かれたので、
  • cohortatus suos omnibus cupientibus
    • 配下の者たちを励まして、(戦いを)欲する皆で、
  • ad hostium castra contendit.
    • 敵の陣営のもとへ急行する。

25節

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クラッススの軍勢が、アクィーターニア人の陣営へ攻めかかる

  • Ibi cum alii fossas complerent, alii multis telis coniectis
    • そこで(クラッスス配下の)ある者は堀を埋め、ある者は多くの飛道具を投げ込んで、
  • defensores vallo munitionibusque depellerent,
    • (アクィーターニア勢の)守備兵たちを防柵防壁から駆逐した。
  • auxiliares[17]que, quibus ad pugnam non multum Crassus confidebat,
    • 支援軍の者たちといえば、クラッススは戦いのために彼らを大して頼りにしていなかったが、
  • lapidibus telisque subministrandis et ad aggerem caespitibus comportandis
    • 石や飛道具を供給したり、土塁のために芝草を運んだり、
  • speciem atque opinionem pugnantium praeberent,
    • 戦っている者たちの様子や評判を呈していた。
ローマ式陣営castra Romana)の概略図(再掲)。が第10大隊の門(porta decumana)で、陣営の裏門に当たる。
  • cum item ab hostibus constanter ac non timide pugnaretur
    • 敵方〔アクィーターニア勢〕もまたしっかりと臆せずに戦って、
  • telaque ex loco superiore missa non frustra acciderent,
    • より高い所から放られた飛道具は無駄なく落ちてきたので、
  • equites circumitis hostium castris Crasso renuntiaverunt
    • 騎兵は、敵の陣営を巡察してクラッススに報告した。
  • non eadem esse diligentia ab decumana porta castra munita
    • (敵の)陣営は第十の門では(他の門と)同じほどの入念さでは防備されておらず、
      (訳注:「第十の門」は、ローマ人の陣営では第10大隊が守備することになっていた門で、陣営の裏門を指す。右図を参照。)
  • facilemque aditum habere.
    • 容易に接近できると。

26節

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クラッススが、別動隊を迂回させ、敵陣を圧倒する

  • Crassus equitum praefectos
  • cohortatus, ut magnis praemiis pollicitationibusque suos excitarent,
    • かなりの恩賞の約束によって配下の者たちを奮起させるように、促して、
  • quid fieri velit ostendit.
    • 何がなされることを(クラッススが)欲しているか、を指示した。
  • Illi, ut erat imperatum,
    • この者ら〔騎兵の指揮官たち〕は、命じられていたように、
  • eductis iis cohortibus quae praesidio castris relictae intritae ab labore erant,
    • 守備隊として陣営に残されていて、労苦により消耗していなかった歩兵大隊コホルスを連れ出して、
  • et longiore itinere circumductis, ne ex hostium castris conspici possent,
    • 敵の陣営から気づかれないように、より遠回りの道程を巡って、
  • omnium oculis mentibusque ad pugnam intentis
    • (彼我の)皆の目と意識が戦闘に注がれているときに
  • celeriter ad eas quas diximus munitiones pervenerunt atque his prorutis
    • 速やかに、前述した(後門の)防塁のそばに至って、これを倒壊させて、
  • prius in hostium castris constiterunt,
    • 敵の陣営に立ちはだかった。
  • quam plane ab his videri aut quid rei gereretur cognosci posset.
    • 彼ら〔敵勢〕によりはっきりと見られ、あるいはいかなる事が遂行されているかを知られるよりも早くのことだった。
  • Tum vero clamore ab ea parte audito
    • そのときまさにこの方角から雄叫びが聞かれたので、
  • nostri redintegratis viribus,
    • 我が方〔ローマ勢〕は活力を回復し、
  • quod plerumque in spe victoriae accidere consuevit,
    • ── そのことは、たいてい勝利を期待していると生じるのが常であったが、──
  • acrius impugnare coeperunt.
    • より激烈に攻め立て始めたのであった。
  • Hostes undique circumventi desperatis omnibus rebus
    • 敵方は四方八方から攻囲されて、すべての戦況に絶望し、
  • se per munitiones deicere et fuga salutem petere intenderunt.
    • 防塁を越えて飛び降り、敗走によって身の安全を求めることに懸命になった。
  • Quos equitatus apertissimis campis consectatus
    • この者たち〔敵勢〕(ローマ方の)騎兵隊が非常に開けた平原で追撃し、
  • ex milium L(quinquaginta) numero, quae ex Aquitania Cantabrisque convenisse constabat,
    • アクィーターニアとカンタブリアから集結していた(敵勢の)数は5万名がわかっていたが、
      (訳注:カンタブリア Cantabria は、現在のスペイン北部のカンタブリア州の辺りで、
          Cantabri と呼ばれた部族連合は、カエサル死後の征服戦争 Cantabrian Wars まで独立を保った。)
  • vix quarta parte relicta,
    • やっとその四分の一が生き残り、
  • multa nocte se in castra recepit.
    • 夜更けに(ローマ勢は)陣営に撤収した。

27節

[編集]

アクィーターニア諸部族の降伏

  • Hac audita pugna
    • この戦闘(の敗北)を聞いて、
  • maxima pars Aquitaniae sese Crasso dedidit obsidesque ultro misit;
    • アクィーターニアの大部分がクラッススに降伏して、自発的に人質を送った。
  • quo in numero fuerunt
    • その数の中には以下の部族がいた。
  • Tarbelli, Bigerriones, Ptianii, Vocates, Tarusates,
    • タルベッリー族、ビゲッリオーネース族、プティアーニイー族、ウォカーテース族、タルサーテース族、
      (訳注:ビッゲリオーネース Bigerriones は、ビッゲリー Bigerri など表記多数。
  • Elusates, Gates, Ausci, Garunni, Sibuzates, Cocosates:
    • エルサテース族、ガーテース族、アウスキー族、ガルンニー族、シブザーテース族、ココサテース族、である。
  • paucae ultimae nationes
    • 若干の最遠の種族たちは、
  • anni tempore confisae,
    • 時季を頼りにして、
  • quod hiems suberat,
    • というのも冬が迫っていたためであるが、
  • id facere neglexerunt.
    • そのこと(降伏と人質)を怠った。
クラッススのアウィーターニア遠征図(再掲)
Tarbelli, Bigerriones, Tarusates, Elusates, Ausci, Cocosates の名が見える。
アクィーターニアからイベリア半島にかけての部族配置図。
Tarbelli, Bigerrones(Bigerriones), Elusates, Ausci, Sibuzates の名が見える


モリニー族・メナピイー族への遠征

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28節

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カエサル、モリニー族・メナピイー族へ遠征

  • Eodem fere tempore Caesar,
    • (前節までに述べたクラッススのアクィーターニア遠征と)ほぼ同じ時期にカエサルは、
  • etsi prope exacta iam aestas erat,
    • すでに夏はほとんど過ぎ去っていた
  • tamen quod omni Gallia pacata
    • にもかかわらず、全ガッリアが平定されても、
  • Morini Menapiique supererant,
    • モリニー族とメナピイー族は生き残っていて、
  • qui in armis essent,
    • 武装したままであり、
  • neque ad eum umquam legatos de pace misissent,
    • 〔カエサル〕のもとへ決して和平の使節たちを派遣しようとしなかったので
  • arbitratus id bellum celeriter confici posse,
    • (カエサルは、両部族との)その戦争は速やかに完遂できると思って、
  • eo exercitum duxit;
    • そこへ軍隊を率いて行った。
  • qui longe alia ratione ac reliqui Galli bellum gerere instituerunt.
    • 彼ら〔両部族〕は、他のガッリア人とはまったく別の方法で戦争遂行することを決めた。
  • Nam quod intellegebant maximas nationes, quae proelio contendissent, pulsas superatasque esse,
    • なぜなら(ローマと)戦闘を戦った極めて多くの部族が撃退され、征服されていることを知っており、
  • continentesque silvas ac paludes habebant,
    • かつ、(両部族は)絶え間ない森林沼地を持っていたので
  • eo se suaque omnia contulerunt.
    • そこへ自分たちとそのすべての物を運び集めたのだ。
  • Ad quarum initium silvarum cum Caesar pervenisset castraque munire instituisset
    • かかる森の入口のところへカエサルが到着して陣営の防備にとりかかったときに、
  • neque hostis interim visus esset,
    • 敵はその間に現れることはなく、
  • dispersis in opere nostris
    • 工事において分散されている我が方〔ローマ勢〕
  • subito ex omnibus partibus silvae evolaverunt et in nostros impetum fecerunt.
    • 突然に(敵勢が)森のあらゆる方面から飛び出してきて、我が方に襲撃をしかけたのだ。
  • Nostri celeriter arma ceperunt
    • 我が方〔ローマ勢〕は速やかに武器を取って
  • eosque in silvas reppulerunt et compluribus interfectis
    • 彼らを森の中に押し戻して、かなり(の敵勢)を殺傷して
  • longius impeditioribus locis secuti
    • 非常に通りにくい場所を追跡したが、
  • paucos ex suis deperdiderunt.
    • 我が方〔ローマ勢〕のうちで傷を負ったのは少数であった。

29節

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カエサル、むなしく撤退して、軍を冬営させる

  • Reliquis deinceps diebus Caesar silvas caedere instituit,
    • カエサルは、続く(冬が近づくまでの)残りの日々で、森を伐採することを決めた。
  • et ne quis inermibus imprudentibusque militibus ab latere impetus fieri posset,
    • 丸腰で(敵襲を)予期せぬ兵士たちが側面からいかなる襲撃もなされないように、
  • omnem eam materiam quae erat caesa conversam ad hostem conlocabat
    • 伐採されたすべての材木を、敵の方へ向きを変えて配置して、
  • et pro vallo ad utrumque latus exstruebat.
    • 防柵の代わりに、両方の側面に積み上げていた。
      (訳注:伐採に従事する兵士らを不意の敵襲から守るために、防壁代わりに置いていた。)
  • Incredibili celeritate magno spatio paucis diebus confecto,
    • 信じがたいほどの迅速さで、大きな空間(の伐採)が、わずかな日数で完遂されて、
  • cum iam pecus atque extrema impedimenta a nostris tenerentur,
    • すでに家畜輜重の最後端が、我が方〔ローマ勢〕により捕捉されて、
  • ipsi densiores silvas peterent,
    • 自身は(敵が潜んでいる)森の最も密生したところを目指していたときに、
  • eiusmodi sunt tempestates consecutae, uti opus necessario intermitteretur
    • 工事をやむなく中断せざるを得ないほどの、暴風雨が続いて起こり、
  • et continuatione imbrium diutius sub pellibus milites contineri non possent.
    • 大雨が続いて、これ以上は皮〔天幕〕の下に兵士たちを留めることはできなかったほどだった。
  • Itaque vastatis omnibus eorum agris,
    • こうして、彼ら〔モリニー族とメナピイー族〕のすべての畑を荒らして、
  • vicis aedificiisque incensis,
    • 村々や建物を焼き打ちして、
  • Caesar exercitum reduxit
    • カエサルは軍隊を連れ戻して、
  • et in Aulercis Lexoviisque, reliquis item civitatibus quae proxime bellum fecerant,
    • アウレルキー族とレクソウィイー族や、他の同様に最近に戦争をしていた部族たちのところに
  • in hibernis conlocavit.

脚注

[編集]
  1. ^ プルータルコス『対比列伝』の「カエサル」20,21
  2. ^ s:la:De_vita_Caesarum_libri_VIII/Vita_Galbae#III.
  3. ^ s:la:De_vita_Caesarum_libri_VIII/Vita_divi_Iuli#XIV.#XVII. を参照。
  4. ^ ビスケー湾とは - コトバンク
  5. ^ w:en:Roman mosaic
  6. ^ cum … tum - Latin is Simple Online Dictionary 等を参照。
  7. ^ Praeconinus - Ancient Greek (LSJ)
  8. ^ Sontiates - Latein-Deutsch Übersetzung | PONS 等を参照。
  9. ^ ラテン語版ウィキソース s:la:Naturalis_Historia/Liber_IV#XXXIII を参照。
  10. ^ The Latin Library Pliny the Elder: Natural History, Book IV を参照。
  11. ^ aeraria, aerariae (f.) A - Latin is Simple Online Dictionary
  12. ^ sectura, secturae (f.) A - Latin is Simple Online Dictionary
  13. ^ Vocates - Latein-Deutsch Übersetzung (PONS)
  14. ^ 14.0 14.1 s:la:Naturalis_Historia/Liber_IV#XXXIII を参照。
  15. ^ Tarusates - Latein-Deutsch Übersetzung (PONS)
  16. ^ quoqueversum - Latein-Deutsch Übersetzung (PONS)
  17. ^ auxiliaris, auxiliaris (m.) M - Latin is Simple Online Dictionary