強盗罪

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法学刑事法刑法刑法各論個人的法益に対する罪財産に対する罪強盗罪

強盗罪[編集]

強盗罪総説[編集]

  • 強盗罪(236条)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。


各文言の意義[編集]

  • 暴行」:人に向けられる有形力の行使であり、かつ、その反抗を抑圧するに足る強度者であること、いわゆる「最狭義の暴行(→暴行罪#暴行概念)」
  • 脅迫」:害悪の告知により恐怖心を起こさせること
「強取」の手段であれば、相手方の反抗を抑圧する程度で足り、その判断基準は社会通念上一般的なものにより、被害者の主観に寄らない(最判昭和24年2月8日刑集3巻2号75号)。なお、その程度に達しない脅迫であれば、恐喝罪を構成することがある。
「強取」の手段として用いられる以上、必ずしも所有者・占有者に対して加えられる必要はない(判例)。


  • 強取」:暴行・脅迫により被害者の意思に反して財物を自己の占有に移すこと。
奪取である必要はなく、被害者による交付や、被害者の不知のうちに領得しても強取したことになる。
  • 財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた」:二項犯罪を参照。

強盗の罪数[編集]

  • 財物詐取後の暴行・脅迫の場合
    • 1項詐欺罪+暴行罪/脅迫罪併合罪
      • 神戸地判昭和34年9月25日下刑集1巻9号2069頁
    • 1項詐欺罪+2項強盗罪併合罪
      • 大分地判昭和52年9月26日判時879号161頁
    • 1項詐欺罪+2項強盗罪→2項強盗罪包括一罪
  • 財物窃取後の暴行・脅迫の場合
    • 窃盗罪+2 項強盗罪→2 項強盗罪包括一罪
    • 窃盗罪の共罰的事後行為/不可罰的事後行為

暴行後財物奪取の犯意を生じた場合[編集]

  1. 暴行罪(傷害を生じていれば傷害罪)と窃盗罪併合罪(判例通説)
    • 東京高判昭和48年3月26日
    (論拠)
    • 強盗罪の構成要件は「暴行・脅迫によって」財物を奪取していること
    • 強盗罪には強姦罪における刑法178条にあたる条項が存在しない
    → 不真性不作為犯類似の構成は、強盗罪の定形を不明瞭にする。従って、強盗罪は不成立。
  2. 強盗罪説(藤木
    自己の惹起した抗拒不能状態を積極的に利用して財物を取得する行為は、一種の不真性不作為犯であり暴行を手段として財物を奪取したと同一の評価をすることができる。

強盗の予備及び未遂[編集]

  • 強盗予備罪(237条)
強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。
  • 強盗未遂罪(243条)
第二百三十五条から第二百三十六条まで及び第二百三十八条から第二百四十一条までの罪の未遂は、罰する。


事後強盗[編集]

事後強盗[編集]

  • 事後強盗罪(238条)
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。

各文言の意義[編集]

窃盗
窃盗犯人のこと。窃盗の着手をした者とされる。「財物を得てこれを取り返されることを防」ぐ目的で行われた場合、既遂犯が対象であるが、「逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するためになされる場合は、既遂・未遂を問わない。

論点[編集]

  • 暴行・脅迫
    • 福岡地判昭和62 年2 月9 日判時1233 号157頁
    • 窃盗の機会の継続
      • 肯定例
        • 広島高判昭和28 年5 月27 日判特31 号15 頁
        • 最決昭和34年3月23日刑集13巻3号391頁
        • 最決平成14年2月14日刑集56巻2号240頁
      • 否定例
        • 京都地判昭和51 年10 月15 日刑裁月報8 巻9=10 号431頁
  • 未遂および既遂
    • 最判昭和24年7月9日刑集3巻8号1188頁
  • 予備
    • 肯定説
      • 最決昭和54 年11 月19 日刑集33 巻7 号710 頁
    • 否定説
  • 共犯
    • 構成的身分犯説
      • 大阪高判昭和62 年7 月17 日判時1253 号141頁
    • 加減的身分犯説
      • 新潟地判昭和42 年12 月5 日判時509 号77 頁
      • 東京地判昭和60 年3 月19 日判時1172 号155 頁
    • 結合犯説(非身分犯説)
      • 承継的共同正犯肯定説
      • 承継的共同正犯否定説
  • 窃盗罪との関係
    • 居直り強盗→強盗罪
    • 窃盗既遂の後に、さらに暴行・脅迫により財物を強取した場合
      • 高松高判昭和28 年7 月27 日高刑集6 巻11 号1442 頁
    • 窃盗既遂の後に、強盗の犯意で暴行・脅迫を行ったが、逮捕されそうになったため、暴行・脅迫により逃走した場合
      • 窃盗既遂罪+強盗未遂罪包括一罪
      • 事後強盗既遂罪一罪
        • 広島高判昭和32年9月25日高刑集10巻9号701頁

昏睡強盗[編集]

  • 昏睡強盗罪(239条)
人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。

各文言の意義[編集]

昏睡
睡眠薬や麻酔薬、アルコール等により、人の意識作用に一時的または継続的に障害を生じさせることであるが、意識喪失までは不要とされる(東京高判昭和49 年5 月10 日東高刑時報25 巻5 号37 頁、横浜地判昭和60 年2 月8 日刑裁月報17 巻1=2 号11 頁)

論点[編集]

  • 昏睡状態に乗ずるだけでは足りず、犯人が、暴行・脅迫以外の方法で昏睡させたことを要する。
  • 昏睡強盗罪の予備
    • 肯定説(多数説)
    • 否定説

強盗傷人罪・強盗致死罪[編集]

  • 強盗傷人罪・強盗致死罪(240条)
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
  • 強盗致死傷罪[240 条]の類型
  • 主体
    • 「強盗」=強盗犯人を意味し、強盗未遂犯人を含む
      • 最判昭和23 年6 月12 日刑集2 巻7 号676頁
    • 事後強盗罪、昏睡強盗罪(これらの未遂罪を含む)の犯人をも含む
      • 大判昭和6年7月8日刑集10巻319頁
    • 死傷結果の原因行為
      • 手段説
      • 機会説
    • 肯定例
      • 大判大正6年10月29日刑集10巻511頁
      • 最判昭和24年5月28日刑集3巻6号873頁
      • 最判昭和25 年12 月14 日刑集4 巻12 号2548頁
      • 最判昭和23年3 月9 日刑集2 巻3 号140頁
      • 最判昭和32 年7 月18 日刑集11 巻7 号1861頁
    • 密接関連性説
    • 拡張された手段説
  • 主観的要件=本罪に死傷結果について故意のある場合を含むか?
    • 死亡結果について故意ある場合
      • 殺人罪+強盗致死罪観念的競合
        • 大判明治43 年10 月27 日刑録16 輯1764頁
      • 殺人罪+強盗罪の観念的競合
      • 240 条後段のみ適用
        • 大連判大正11 年12 月22 日刑集1 巻815 頁
        • 最判昭和32 年8 月1 日刑集11 巻8 号2065 頁
        • 最決昭和28年2月19日刑集7巻2号280頁
        • 大阪高判昭和60 年2月6 日判時1149 号165 頁
  • 傷害の程度
    • 非限定説
      • 大判大正4 年5 月24 日刑録21 輯661 頁
      • 東京高判昭和62 年12 月21 日判時1270 号159 頁
    • 限定説
      • 大阪地判昭和54 年6 月21 日判時948 号128 頁
  • 強盗殺人罪と強取の範囲
    • 大判大正2年10月21日刑録19 輯982 頁
    • 東京高判昭和53 年9 月13 日判時916 号104 頁
    • 仙台高判昭和31 年6 月13 日判時916 号104 頁=窃盗罪成立
    • 東京高判昭和57 年1 月21 日刑裁月報14 巻1=2 号1 頁
  • 未遂
    • 結果的加重犯である強盗致傷罪・強盗致死罪の場合
      • 大判昭和4年5月16日刑集8巻251頁
      • 最判昭和23年6月12日刑集2巻7号676頁
    • 強盗傷人罪の場合
    • 強盗殺人罪の場合
      • 大連判大正11 年12 月22 日刑集1 巻815頁

刑法240条の論点は決着済みか


強盗・強制性交等罪[編集]

  • 強盗・強制性交等罪・同致死傷罪(241条)
強盗が人を強姦したときは、無期又は七年以上の懲役に処する。よって人を死亡させたときは、死刑又は無期懲役に処する
  • 強盗・強制性交等罪=強盗罪と強制性交等罪の結合犯
    • 最判昭和30年12月23日刑集9巻14号2957頁
    • 最判昭和24年12月24日刑集3巻12号2114頁)
  • 強盗・強制性交等致死罪
    • 強盗・強制性交等致死罪は死亡結果について故意ある場合を含むか?
      • 消極説
        • 大判昭和10年5月13日刑集14巻514頁
        • 大阪高判昭和42年5月29日高刑集20巻3号330頁
      • 積極説
    • 強盗・強制性交等致死罪の未遂
    • 強盗・強制性交等致傷
      • 強盗・強制性交等罪説
        • 大判昭和8年6月29日刑集12巻1269頁
        • 東京地判平成元年10月31日判時1363号158頁
        • 浦和地判昭和32 年9 月27日判時13 号43頁

以下整理中[編集]

      • 強盗罪
        • 財物強盗罪
        • 利益強盗罪
    • 他罪との関係
      • 窃盗罪
      • 恐喝罪

客体[編集]

  • 財物=他人の占有する他人の財物(基本的に235条と同じ)
    • 不動産
      • 学説
        • 肯定説(西田)
        • 否定説(多数説)→利益強盗

(例)暴行脅迫を用いて、不動産の登記名義を取得

  • 財産上の利益
    • 財物(有体物)以外の財産的利益
    • 「財産上不法の利益」とは利益自体が不法であることを意味するものではなく、財産上の利益を不法に移転させることを意味する。
    • 移転性
      • 役務
      • 情報
    • 不法な利益
      • 大阪高判昭和35 年12 月26 日下刑集3 巻3=4 号208 頁:盗品等の対価であることを明らかにして消費寄託の目的とした現金に対する返還請求権
      • 名古屋高判昭和35 年12 月26 日高刑集13 巻10 号781 頁:「白タク」の料金
      • 最決昭和61年11月18日刑集40巻7号523頁:取引を斡旋すると欺罔されて渡した覚せい剤の返還請求権または代金請求権
      • 否定例
        • 広島高判昭和43年12月24日判時548号105頁:売春代金
      • 学説
        • 肯定説
        • 否定説(山口・各論212、中山・口述各論140など)

行為[編集]

  • 強取
    • 手段
      • 暴行・脅迫
        • 被害者の反抗を抑圧するに足りる程度(最判昭和24年2月8日刑集3巻2号75号)
        • 「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧する程度のものであるかどうかと云う客観的基準によって決せされるのであって、具体的事案の被害者の主観を基準としてその被害者の反抗を抑圧する程度であったかどうかと云うことによって決せられるものではない。」(最判昭和24年2月8日刑集3巻2号75頁)
        • 肯定例:東京高判昭和29年10月7日東高刑時報5巻9号380頁
        • 否定例:東京高判昭和37年10月31日東高刑時報13巻10号267頁
      • 大阪地判平成4 年9 月22 日判タ828 号281頁
      • 「ひったくり」
        • 最決昭和45 年12 月22 日刑集24巻13号1882頁
      • 奪取
        • 東京高判昭和42年6月20日東高刑時報18巻6号193頁
        • 名古屋高判昭和32年3月4日高刑裁特報4巻6号116頁
        • 最判昭和23年12月24日刑集2巻14号1883頁
        • 否定例:名古屋高判昭和30年5月4日高刑裁特報2巻11号501頁
      • 財物奪取後の暴行・脅迫
        • 1項強盗罪説(最判昭和24年2月15日刑集3巻2号164頁)
        • 1項強盗罪否定説(最決昭和61年11月18日刑集40巻7号523頁)
      • 暴行・脅迫後の領得意思
        • 新たな暴行・脅迫不要説
          • 大審院昭和19年11月24日刑集23巻252頁
          • 最判昭和24年12月24日刑集3巻12号2114頁
          • 東京高判昭和37年8月30日高刑集15巻6号488頁
          • 東京高判昭和57年8月6日判時1083号150頁
        • 必要説
          • 高松高判昭和34年2月11日高刑集12巻1号18頁
          • 東京高判昭和48年3月26日高刑集26巻1号85頁
          • 札幌高判平成7年6月29日判時1551号142頁
          • 大阪高判平成元年3月3日判タ712号248頁
          • 最判昭和41年4月8日刑集20巻4号207頁
  • 利得行為
    • 処分行為の要否
      • 必要説
        • 大判明治43年6月17日刑録16 輯1210頁
      • 不要説
        • 大判昭和6年5月8日刑集10巻205頁
        • 最判昭和32年9月13日刑集11巻9号2263頁
        • 大阪高判昭和59年11月28 日高刑集37巻3号438頁
      • 相続人による被相続人の殺害
        • 東京高判平成元年2月27日高刑集42巻1号87頁
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