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民法第561条/他人物売買

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

契約の時点において、売主に属していない財産権(主に所有権)を売買の対象物とすることを民法は認めており、2017年改正までは、第560条から第564条まで詳細な条項が存在したが、同改正により基本的な規律を維持しつつ本条に集約し、個別の事項については、広範に認められるようになった「解除権」の行使などによることとした。

現行条文

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(他人の権利の売買における売主の義務)

第561条
他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。

改正前条文と現行法令への当てはめ

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  • 第560条(他人の権利の売買における売主の義務)
    他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
    (改正後の当てはめ)
    第561条に継承。
  • 第561条(他人の権利の売買における売主の担保責任)
    前条の場合において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の時においてその権利が売主に属しないことを知っていたときは、損害賠償の請求をすることができない。
    (改正後の当てはめ)
    1. 買主の解除権
    2. 買主の損害賠償請求権
  • 第562条(他人の権利の売買における善意の売主の解除権)
    1. 売主が契約の時においてその売却した権利が自己に属しないことを知らなかった場合において、その権利を取得して買主に移転することができないときは、売主は、損害を賠償して、契約の解除をすることができる。
    2. 前項の場合において、買主が契約の時においてその買い受けた権利が売主に属しないことを知っていたときは、売主は、買主に対し、単にその売却した権利を移転することができない旨を通知して、契約の解除をすることができる。
    (改正後の当てはめ)
    売主の解除権
  • 第563条(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)
    1. 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。
    2. 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。
    3. 代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。
    (改正前規定に関する解説)
    他人の権利の一部売買について、売主が負担する担保責任についての規定。この場合の担保責任の内容としては代金減額請求権、解除権(善意の買主のみ)、損害賠償請求権(善意の買主のみ)となっていた。
    第2項は「残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったとき」のみに無催告の解除権を認めている。それ以外の場合には代金減額請求権がある。つまり代金減額請求とは契約の一部解除だともとらえられた。
    悪意の買主にも代金減額請求権が認められたのは、将来売主が権利者からその権利を全て譲り受けることを買主に信頼させたからだと考えられた。
    (改正後の当てはめ)
    1. 第561条に包含して継承。
    2. 買主の解除権
      民法第542条第1項第3号の適用による解除。
    3. 買主の代金減額請求権
    4. 買主の損害賠償請求権
  • 第564条(権利の一部が他人に属する場合における売主の担保責任)
    前条の規定による権利は、買主が善意であったときは事実を知った時から、悪意であったときは契約の時から、それぞれ一年以内に行使しなければならない。
    (改正後の当てはめ)
    除斥期間とすることを排除し、時効制度を適用。

改正前の判例

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