刑法第246条
表示
(詐欺罪 から転送)
条文
[編集](詐欺)
- 第246条
- 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。
- 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
改正経緯
[編集]2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。
- (改正前)懲役
- (改正後)拘禁刑
解説
[編集]- 詐欺罪の構造
- 以下の行為等が定型的因果関係を持ってなされること。
- ③と④は、あわせて「騙取」とも言う。
- ①詐欺行為(欺罔)→②相手方の錯誤→③相手方の交付行為→④財産的利得の取得
- ①の段階で、実行の着手はあり、④が完了して既遂罪となる。
- 以下の行為等が定型的因果関係を持ってなされること。
- 個別分析
- 詐欺行為(欺罔)
- 本行為が「実行の着手」とされ、犯行者が利得を取得できなかったとしても、未遂罪が成立している。
- 相手方の錯誤
- 詐欺行為に対して、相手方が錯誤しない場合、詐欺は成立しない。すなわち、「犯人の言っていることは真実と異なる」ということを相手方が認識した上で、例えば憐憫の情を催したり、関係を早急に断ち切りたいなどの理由で交付を行う場合、詐欺罪の既遂とはならない(後者は、状況により恐喝罪が成立する可能性もある)。
- 相手方の交付行為
- 財産的利得の取得
- 詐欺行為(欺罔)
参照条文
[編集]- 第250条(未遂罪)
- 未遂は、罰する。
判例
[編集]- 恐喝(最高裁判決昭和24年2月8日)
- 警察官を装うて他人の所持する盜品を取上げる行爲と恐喝罪
- 他人が窃取した綿糸を運搬して來るところを、被告人が警察官を装うて之を畏怖させその綿糸を交付させた行爲は、恐喝罪をもつて問擬すべきである。被告人の施用した手段の中に虚僞の部分即ち警察官と稱した部分があつても、その部分も相手方に畏怖の念を生ぜしめる一材料となり、その畏怖の結果として相手方が財物を交付するに至つた場合は詐欺罪ではなく、恐喝罪となるのである。
- 詐欺(最高裁判決昭和24年2月15日)
- 私人の所持を禁ぜられている物に對する詐欺罪の成立
- 原判決の認定した本件被害物件は元軍用アルコールであつて、かりにこれはいわゆる隠匿物資であるために、私人の所持を禁ぜられているものであるとしても、それがために所論のごとく詐欺罪の目的となり得ないものではない。刑法における財物取罪の規定は人の財物に對する事實上の所持を保持せんとするものであつて、これを所持するものが、法律上正當にこれを所持する權限を有するかどうかを問はず、たとい刑法上その所持を禁ぜられている場合でも現實にこれを所持している事實がある以上社會の法的秩序を維持する必要からして、物の所持という事實上の状態それ自體が獨立の法益として保護せられみだりに不正の手段によつて、これを侵すことを許さぬとする趣意である。
- 詐欺の被害者と被告にとの間における親族關係の有無につき判斷明示の要否
- 被告人と(詐欺の)被害者との間における親族關係の存在は、單に、法律上刑の免除の原由たるに過ぎないのであるから、原審において、特に、被告人側から、その存在を主張した事實のない本件においては判決においてその関係の存在しないことを明示しなかつたからといつて、これを違法ということはできない。
- 私人の所持を禁ぜられている物に對する詐欺罪の成立
- 有印私文書偽造、同行使、有印公文書偽造、同行使、詐欺、背任、公正証書原本不実記載、同行使、業務上横領(最高裁決定昭和42年8月28日)刑法第45条,刑法第54条第1項,刑法第157条第1項,刑法第158条第1項
- 公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との関係
- 甲から金員を騙取するため、乙名義の偽造の委任状等を登録官吏に提出し、乙の不動産の登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使するとともに、甲にその登録済権利証を示して、抵当権設定登録を経由した旨誤信させ、同人から借用金名下に金員を騙取したときは、公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との牽連犯となる。
- 詐欺被告事件(最高裁決定平成15年3月12日)民法第666条
- 誤った振込みがあることを知った受取人がその情を秘して預金の払戻しを受けた場合と詐欺罪の成否
- 誤った振込みがあることを知った受取人が,その情を秘して預金の払戻しを請求し,その払戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立する。
- 誤った振込みがあることを知った受取人が,その情を秘して預金の払戻しを請求することは,詐欺罪の欺罔行為に当たり,また,誤った振込みの有無に関する錯誤は同罪の錯誤に当たるというべきであるから,錯誤に陥った銀行窓口係員から受取人が預金の払戻しを受けた場合には,詐欺罪が成立する。
- ※「振り込め詐欺」の詐欺の主犯と詐欺の犯行に関して情を通じていない者が「受け子」として利用され、罪を問われた事件である。概略は以下のとおり(金額等詳細は仮定)。
- ある日、Aに未知のBから「間違って、あなたのC銀行の口座に100万円振り込んでしまった。お礼に、5万円差し上げるので引き出して、××(場所)で渡して欲しい」との電話があり、口座を確認すると、確かに覚えのない100万円が入金されているので、これを引き出して、××に渡し、礼として5万円受け取った。後日、その100万円は、BがDを騙して、Aの口座に振り込ませたものであることがわかった。Aは、口座番号と連絡先をBに知られており「受け子」として利用されたものである。この場合において、Aは、自分の金銭でない100万円を引き出したということで詐欺罪を問われる。なお、詐欺により錯誤・交付した者はC銀行(窓口であれば行員に対して、ATMであれば次条を適用)ということであって、Dに対する罪科(Bの共犯)ということではない。
- 有印私文書偽造、同行使、詐欺、公正証書原本不実記載、同行使被告事件(最高裁判決平成16年11月30日)刑法159条1項,刑法161条1項,民訴法99条,民訴法109条,民訴法第7編督促手続,郵便法(平成14年法律第98号による改正前のもの)66条
- 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人の氏名を冒書する行為と有印私文書偽造罪の成否
- 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人である受送達者本人の氏名を冒書する行為は、同人名義の受領書を偽造したものとして、有印私文書偽造罪を構成する。
- 他人あての送達書類を廃棄するだけの意図で他人を装って受領する行為について詐欺罪における不法領得の意思が認められないとされた事例
- 支払督促の債務者を装い郵便配達員を欺いて支払督促正本を受領することにより、送達が適式にされたものとして支払督促の効力を生じさせ、債務者から督促異議申立ての機会を奪ったまま確定させて、その財産を差し押さえようとしたが、支払督促正本はそのまま廃棄するだけで外に何らかの用途に利用、処分する意思がなかったという判示の事実関係の下では、支払督促正本に対する詐欺罪における不法領得の意思を認めることはできない。
- 郵便送達報告書の受領者の押印又は署名欄に他人の氏名を冒書する行為と有印私文書偽造罪の成否
- 詐欺被告事件(最高裁判決平成26年04月07日)
- 約款で暴力団員からの貯金の新規預入申込みを拒絶する旨定めている銀行の担当者に暴力団員であるのに暴力団員でないことを表明,確約して口座開設等を申し込み通帳等の交付を受けた行為が,詐欺罪に当たるとされた事例
- 暴力団員であるのに暴力団員でないことを表明,確約して銀行の担当者に口座開設等を申し込み,通帳等の交付を受けた行為は,当該銀行において,政府指針を踏まえて暴力団員からの貯金の新規預入申込みを拒絶する旨の約款を定め,申込者に対し暴力団員でないことを確認していたなどの本件事実関係の下では,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。
|
|
