裁判所法第4条
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条文
[編集](上級審の裁判の拘束力)
- 第3条
- 上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審の裁判所を拘束する。
解説
[編集]- 原審が破棄差し戻された場合、上級審の判断部分については、下級審はこれに従わなければならない。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 昭和22年政令第62号違反(最高裁判決昭和25年10月25日)
- 下級審がその事件について上級審が示した意見に従つて処理した場合その下級審の判決の適否
- 上級審において下級審判決が破棄され事件の差戻があつた場合には、下級審はその事件を処理するに当り判決破棄の理由となつた上級審の事実上の意見に拘束され、必ずその意見に従いこれに基ずいて事件の審判をしなければならないのであるから、既に下級審が上級審の意見に従つて事件を処理したものである以上、その上級審の意見が客観的に間違つて居ると否とに拘らずその下級審の判決を違法視することはできないのである。
- 賍物運搬(最高裁判決昭和26年11月15日)
- 裁判所法第4条に違反しない一事例
- 理由不備乃至採証法則違反として破棄差戻された後の第二審が証拠を追加して同一事実を認定した場合には、必ずしも上級審の裁判所の裁判における判断と相反する判断をしたことにはならない。
- 強盗、住居侵入(最高裁決定昭和29年8月20日)刑訴法第405条
- 当該事件につき高等裁判所がさきに為した破棄差戻の判決と刑訴法第405条第3号の判例
- 論旨引用の判決は裁判所法第四条の拘束力があるにとどまり、いまだ刑訴405条3号にいわゆる判例には当らない。従つて所論は判例違反をいうけれども、その実質は単なる法令違反の主張に帰し同405条の上告理由に当らない。(本件における破棄差戻判決は審理を尽していないという趣旨のものである)
- 賍物牙保(最高裁決定昭和29年11月4日)刑訴法第400条
- 差戻判決と差戻前の訴訟手続の効力
- 差戻前の訴訟手続は、差戻判決の破棄の理由となつた限度においてその効力を失い、破棄の理由とならない訴訟手続が全部その効力を失うものではない。
- 土地買収無効占有引渡請求(最高裁判決昭和30年9月2日)旧・民事訴訟法第388条(民事訴訟法第307条)、旧・民事訴訟法第407条(民事訴訟法第325条)
- 控訴審における破棄差戻判決の拘束力
- 控訴審における破棄差戻判決に対し上訴が提起されず、右判決が確定したときは、破棄の理由となつた法律上、事実上の判断と異なる主張を上告理由とすることは許されない。
- 賍物運搬(最高裁判決昭和30年11月30日)刑訴法第400条
- 差戻判決の拘束力と差戻後の第一審の訴訟追行の方法
- 控訴審が第一審の訴訟手続の法令違反を理由として第一審判決を破棄差戻した場合において、第一審裁判所が審理するにあたつては、控訴審の右判断部分に拘束され、訴訟手続上これと抵触することは許されないけれも、その他は自由に審理を進めることができるのであつて差戻前の訴訟手続をひとまず追つた後でなければその後の手続を行い得ないものではない。
- 特別公務員暴行陵虐致死(最高裁判決昭和30年12月16日)刑訴法第317条
- 裁判所法第4条に違反しない事例
- 証拠と理由不備の違法を理由として破棄差戻された後の第二審が、証拠を追加し同一事実を認定した場合には、上級審の裁判所の裁判における判断と相反する判断をしたことにはならない。
- 業務上過失致死、業務上過失艦船覆没(最高裁決定昭和31年6月28日)刑訴法第405条
- 海難審判所のなした裁決における判断は地方裁判所を拘束するか
- 海難事件で審判所のなした過失の有無に関する判断は同一事件について地方裁判所を拘束しない。
- 国家公務員法違反(最高裁判決昭和32年10月9日)刑訴法第406条,刑訴法第411条,刑訴法第357条
- 控訴審の差戻判決は上告審を拘束するか
- 第一次の控訴審が第一審判決の法令解釈に誤りがあるとしてこれを破棄、差し戻し、第二次の第一審及び控訴審が右判断に従つた場合においても、上告審たる最高裁判所は右第一次の控訴審の法律判断に拘束されるものではない。
- 物価統制令違反(最高裁決定昭和32年12月5日)刑訴法第397条,刑訴法第400条
- 破棄差戻判決の拘束力
- 第一審裁判所が公訴事実はこれを認めるに足る証拠がないとして無罪の判決を言い渡したのに対し、原審裁判所のした破棄差戻判決における破棄の理由として示された判断が、第一審裁判所の無罪判決には事実の誤認および訴訟法の違反があり、そのために有罪を宣告すべきにかかわらず、無罪を宣告しているのであるから、右の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるというにある場合には、差し戻しを受けた第一審裁判所は、第一審判決に事実誤認、訴訟法違反があり、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとの原判決の判断の範囲内において更に審理すべき拘束を受けるに止まり、必ず有罪の宣告をしなければならないというごとき拘束を受けるものではない。
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