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刑法第106条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

条文

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(騒乱)

第106条
多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
  1. 首謀者は、1年以上10年以下の拘禁刑に処する。
  2. 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、6月以上7年以下の拘禁刑に処する。
  3. 付和随行した者は、10万円以下の罰金に処する。

改正経緯

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2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役又は禁錮
(改正後)拘禁刑

解説

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現代語化改正前は騒擾(そうじょう)と呼称されていた。
Wikipedia
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ウィキペディア騒乱罪の記事があります。

参照条文

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判例

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  1. 大審院判決大正2年10月3日刑録19-910
    多衆」とは、一地方における静謐を害するに足りる暴行・脅迫を行うのに適当な多人数を言う。
  2. 住居侵入、殺人未遂、騒擾、傷害、銃砲等所持禁止令違反(最高裁判決昭和28年5月21日)刑法199条刑法204条,旧刑訴法403条(現.刑訴法402条
    1. 騒擾罪(現行:騒乱罪)の成立には多衆の暴行脅迫が群集の暴動に発展し社会の治安を動揺せしめる危険または社会の治安に不安動揺を生ぜしめた事実を必要とするか
      騒擾罪の成立には多衆の暴行脅迫が群集の暴動に発展し社会の治安を動揺せしめる危険または社会の治安に不安動揺を生ぜしめた事実を必要としない。
    2. 刑法第106条にいわゆる「多衆」の意義
      刑法第106条にいわゆる多衆は、互に意思連絡のない不特定多数人であることを必要としない。
    3. 騒擾罪にあたる殺傷行為が特定の一個人に対するものである場合と騒擾罪の成否
      騒擾罪にあたる殺傷行為が特定の一個人に対するものであつても騒擾罪の成立に影響をおよばさない。
      • 30名余の者が共謀の上(刑法106条にいわゆる多衆は、本来互に意思連絡のない不特定多数人であることを必要とするものでないことはいうまでもない。)、判示場所において判示殺傷行為(その動機目的が所論のごとく特定の個人の殺傷にあり、又その殺傷行為が特定の一個人に対するものであつても騒擾罪の成立に影響を及ぼすものでない。
    4. 騒擾罪の首魁(現行:首謀者)の意義
      騒擾罪の首魁とは主動者となり首唱劃策し、多衆をしてその合同力により暴行または脅迫を為すに至らしめる者を謂い、必ずしも暴行脅迫を共にし、もしくは現場に在つて総括指揮することを必要としない。
    5. 騒擾罪の判示方法
      騒擾罪にあたる事実を判示するには、多衆が集合して暴行または脅迫の行為をしたことを明らかにすれば足り、特にその行為が地方の静謐を害し又は公共の平和を害する虞のあることを判示する必要はない。
  3. 騒擾指揮助勢、逮捕監禁致傷、騒擾附和随行、監禁、監禁致傷、傷害(最高裁判決昭和29年7月16日)刑事訴訟法第181条, 刑事訴訟法第185条
    騒擾罪の成立と地方の静謐との関係
    騒擾罪は多衆が集合して暴行または脅迫をなすことによつて成立し、その地方の静謐を害することを要件とするものではない
  4. 騒擾、建造物侵入、職務強要、銃砲等所持禁止令違反、公務執行妨害、傷害、外国人登録法違反平事件 最高裁判決昭和35年12月8日)刑法第54条
    1. 騒擾罪の成立と共同意思
      騒擾罪は、多衆が集合して暴行または脅迫をなすによつて成立するが、その暴行または脅迫は、集合した多衆の共同意思に出たものであることを要する。
    2. 騒擾罪における多衆の意義
      右多衆であるためには一地方における公共の平和、静謐を害するに足る暴行、脅迫をなすに適当な多人数であることを要する。
    3. 右共同意思の意義
      騒擾罪の成立に必要な共同意思は、多衆全部間における意思の連絡ないし相互認識の交換までは必ずしもこれを必要とせず、事前の謀議、計画、一定の目的があることも、また当初から存在することも必要でなく、多衆集合の結果惹起せられることのあり得べき多衆の合同力による暴行脅迫の事態の発生を予見しながら、あえて騒擾行為に加担する意思があれば足り、必ずしも確定的に具体的な個々の暴行脅迫の認識を要するものではない。
    4. 騒擾罪における暴行の意義
      騒擾罪における暴行は、物に対する有契力の行使を含む。
    5. 騒擾罪と他の罪名に触れる暴行脅迫
      騒擾罪の成立要素である暴行、脅迫は、他の罪名に触れない程度のもので足り、その暴行、脅迫が他の罪名に触れる場合には、その行為は一面騒擾罪を成立せしむると同時に他の罪名に触れるものと解すべきである。
    6. 騒擾罪における暴行又は脅迫と認められる場合
      騒擾罪は、群集による集団犯罪であるから、その暴行又は脅迫は集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴行又は脅迫と認められる場合であることを要するが、その多衆すべての者が現実に暴行脅迫を行うことは必要でなく、群集の集団として暴行脅迫を加えるという認識のあることが必要なのである。
    7. 右罪における共同意思の内容
      右の共同意思は、多衆の合同力を恃んで自ら暴行又は脅迫をなす意思ないしは多衆をしてこれをなさしめる意思と、かかる暴行又は脅迫に同意を表し、その合同力に加わる意思とに分たれ、集合した多衆が前者の意思を有する者と後者の意思を有する物で構成されているときは、その多衆の共同意思があるものとなるのである。
  5. 騒擾附和随行、騒擾助勢、騒擾指揮、騒擾首魁、外国人登録法違反、放火未遂、暴力行為等処罰に関する法律違反、外国人登録令違反大須事件 最高裁決定昭和53年9月4日)日本国憲法第37条第1項, 刑事訴訟法第1条
    1. 騒擾罪の成立に必要な共同意思の要件
      騒擾罪の成立に必要な共同意思が存するといいうるためには、騒擾行為に加担する意思において確定的であることを要するが、多数の合同力による暴行脅迫の事態の発生については、常に必ずしも確定的な認識をまで要するものではなく、その予見をもつて足りる。
    2. 騒擾罪の成立に必要な共同意思が認められるとされた事例
      デモ隊員中の多数の者が抱いていた警官隊との衝突の予想が、漠然とした抽象的なものではなく、具体的で高度の可能性をもつものであり、積極的、攻撃的に警官隊に対して暴行を加えるかも知れないという予想とみられうる本件においては、警官隊との衝突を予想し、これを認容してデモ行進に参加した者についても、騒擾罪の成立に必要な共同意思を認めることができる。
    3. 騒擾の率先助勢の成立要件
      騒擾の率先助勢とは、多衆の合同力を恃んで自ら暴行又は脅迫をなし、もしくは多衆をしてなさしめる意思をもつて、多衆にぬきんでて騒擾を容易ならしめ、その勢を助長、増大する行為をいい、それが現場で行われると事前に行われるとを問わず、また、その行為のときにすでに多衆が集合して共合して暴行又は脅迫を行うべく共同意思を形成していることを必要としない。
    4. 騒擾の率先助勢が成立するとされた事例
      騒擾開始前に、講演会終了後デモが行われデモ隊の一部が警官隊に暴行するかも知れないと予測し、講演会場に行く途中の者に対し、同人らに右デモ隊と共同して暴行させる意思をもつて、判示のような指示激励をしたうえ、プラカードの竹槍2本を2名に交付し、よつて12名ないし13名を騒擾に参加させた行為は、騒擾の率先助勢にあたる。
  6. 騒擾指揮、威力業務妨害、騒擾助勢、公務執行妨害(最高裁決定昭和59年12月21日)刑事訴訟法第320条, 刑事訴訟法第321条
    1. 複数の集団による暴行脅迫と騒擾罪における共同意思
      同一地域内において、構成を異にする複数の集団により時間、場所を異にしてそれぞれ暴行脅迫が行われた場合であつても、先行の集団による暴行脅迫に触発、刺激され、右暴行脅迫の事実を認識、認容しつつこれを承継する形態において、その集団による暴行脅迫に時間的、場所的に近接して、後の集団による暴行脅迫が順次継続的に行われたときは、各集団による暴行脅迫は、全体として同一の共同意思によるものというべきである。
    2. 騒擾罪にいわゆる「一地方」における公共の平和静謐に対する侵害の有無の判断基準
      騒擾罪の成立に必要な暴行脅迫が「一地方」における公共の平和、静謐を害するに足りるものであるか否かを判断するにあたつては、単に暴行脅迫が行われた地域の広狭や居住者の多寡のみではなく、右地域が社会生活において占める重要性や同所を利用する一般市民の動き、同所を職域として勤務する者らの活動状況、当該騒動の様相等をも総合して考察すべきである。

前条:
刑法第105条の2
(証人等威迫)
刑法
第2編 罪
第8章 騒乱の罪
次条:
刑法第107条
(多衆不解散)
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