刑法第54条
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条文[編集]
(一個の行為が二個以上の罪名に触れる場合等の処理)
- 第54条
- 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。
- 第49条第2項の規定は、前項の場合にも、適用する。
解説[編集]
本条は、観念的競合や牽連犯の場合について、49条2項による没収の併科を除き、その最も重い刑のみによる処断を定めたものである。
判例[編集]
- 強姦致傷、不法第監禁(最高裁判決 昭和24年07月12日)
- 不法監禁罪と強姦致傷罪とを併合罪として処罰した判決と牽連犯の成否
- 不法監禁罪と強姦致傷罪とは、たまたま手段結果の関係にあるが、通常の場合においては、不法監禁罪は通常強姦罪の手段であるとはいえないから、被告人等の犯した不法監禁罪と強姦致傷罪は、牽連犯ではない。從つて右二罪を併合罪として処断した原判決は、法令の適用を誤つたものではない。
- 強盗殺人未遂、銃砲等保持禁止令違反
- 牽連犯の意義と罪数−銃砲等所持禁止令違反と強盗殺人未遂は牽連犯となるか
- 複数の罪に問われる場合、その罪質が互いに手段や結果の関係にある場合に限り、牽連犯として、それらを一つの罪として処罰することができる。銃砲所持禁止令違反と強盗殺人未遂罪は、必ずしも手段や結果の関係にあるわけではないため、これらの罪が牽連犯になることはない
- 牽連犯は元来数罪の成立があるのであるが、法律がこれを処断上一罪として取扱うこととした所以は、その数罪間にその罪質上通例その一方が他方の手段又は結果となるという關係があり、しかも具体的にも犯人がかゝる關係においてその数罪を実行したような場合にあつてはこれを一罪としてその最も重き罪につき定めた刑を以て処断すれば、それによつて軽き罪に対する処罰をも充し得るのを通例とするから、犯行目的の単一性をも考慮して、もはや数罪としてこれを処断するの必要なきものと認めたことによるものである。従つて数罪が牽連犯となるためには犯人が主観的にその一方を他方の手段又は結果の関係において実行したというだけでは足らず、その数罪間にその罪質上通例手段結果の関係が存在すべきものたることを必要とするのである。然るに所論銃砲等所持禁止令違反の罪と強盗殺人未遂罪とは、必ずしもその罪質上通常手段又は結果の関係あるべきものとは認め得ないのであるから、たとえ、本件において被告人が所論強盗殺人未遂罪実行の手段として匕首不法所持罪を犯したものとしても、その一事だけで右両面の罪を牽連犯とみることはできない。
- 監禁(最高裁判決 昭和28年06月17日)
- 同時に同一場所に数人を監禁した行為と罪数
- 同時に同一場所において別個の人を監禁したときは、一個の行為で被害者の数に応じた数個の監禁の罪名に触れる。(観念的競合)
- 最高裁判所第二小法廷昭和42年8月28日決定
- 甲から金員を騙取するため、乙名義の偽造の委任状等を登記官吏に提出し、乙の不動産の登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使するとともに、甲にその登記済権利証を示して、抵当権設定登記を経由した旨誤信させ、同人から借用金名下に金員を騙取したときは、公正証書原本不実記載罪とその行使罪と詐欺罪との牽連犯となる。
- 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反(徳島市公安条例事件 最高裁判決 昭和50年9月10日) 昭和27年徳島市条例3号(集団行進及び集団示威運動に関する条例 ;以下「集団行進等に関する徳島県条例」と記す)3条3号,集団行進等に関する徳島県条例5条, 道路交通法77条1項4号,道路交通法77条3項,道路交通法119条1項13号,徳島県道路交通施行細則(昭和47年徳島県公安委員会規則1号による改正前のもの)11条3号,憲法31条,刑法54条1項前段
- 集団行進等に関する徳島県条例3条3号、5条の集団行進者に交通秩序の維持に違反する行為をするようにせん動した所為と道路交通法77条1項4号、3項、119条1項13号、徳島県道路交通施行細則11条3号の警察署長の付した道路使用許可条件に違反してだ行進をした所為との罪数
- 被告人が、先頭集団直近の隊列外に位置して、だ行進をしたり、笛を吹いたり、両腕を前後に振って合図する等して、集団行進者にだ行進をさせるよう刺激を与え、集団行進者がだ行進をするようせん動した場合において、集団行進等に関する徳島県条例3条3号、5条の集団行進者が交通秩序の維持に反する行為をするようにせん動した所為と、道路交通法77条1項4号、3項、119条1項13号、徳島県道路交通施行細則11条3号の警察署長の付した道路使用許可条件に違反してだ行進をした所為とは、観念的競合の関係にある。
- 常習累犯窃盗(最高裁判決 昭和55年12月23日)
- 常習累犯窃盗の罪と窃盗の着手に至らない窃盗目的の住居侵入の罪との罪数関係
- 窃盗を目的とする住居侵入の罪は、窃盗の着手にまで至らなかつた場合にも、盗犯等の防止及び処分に関する法第律第3条の常習累犯窃盗の罪と一罪の関係にある。
- みのしろ金目的拐取、拐取者みのしろ金取得等、監禁(最高裁決定 昭和58年09月27日)
- みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が被拐取者を監禁しみのしろ金を要求した場合の罪数関係
- みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪とみのしろ金要求罪とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にある。
- 業務上過失致死、同傷害(最高裁決定 昭和63年02月29日)
- 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合の公訴時効
- 結果の発生時期を異にする各業務上過失致死傷罪が観念的競合の関係にある場合につき公訴時効完成の有無を判定するに当たつては、その全部を一体として観察すべきであり、最終の結果が生じたときから起算して同罪の公訴時効期間が経過していない以上、その全体について公訴時効は未完成である。
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