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労働組合法第1条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

コンメンタール労働組合法

条文

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(目的)

第1条
  1. この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。
  2. 刑法(明治40年法律第45号)第35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。

解説

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参照条文

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判例

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  1. 脅迫(最高裁判決 昭和24年5月18日 昭和22年(れ)第39号)刑法第37条,刑法第35条,刑法第38条第1項,憲法第28条
    1. 憲法第28条にいわゆる団結権の意義と大衆運動の合法性の限界
      憲法第28条はこの趣旨において、企業者対勤労者すなわち使用者対被用者というような関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権乃至団体行動権を保障したものに外ならないそれ故、この団結権に関する憲法の保障を勤労者以外の団体又は個人の単なる集合に過ぎないものに対してまで拡張せんとする論旨の見解にはにわかに賛同することはできないのである、もとり一般民衆が法規その他公序良俗に反しない限度において、所謂大衆運動なるものを行い得べきことは、何人も異論のないところであらうけれど、その大衆運動なるの一事から苟くもその運動に関する行為である限り常にこれを正当行為なりとして刑法第35条に從い刑罰法令の適用を排除すべきであると結論することはできない。
    2. 刑法第37条の緊急避難の意義
      緊急避難とは「自己又ハ他人ノ生命身体自由若クハ財産ニ対スル現在ノ危難ヲ避クル為メ己ムコトヲ得ザルニ出デタル行為」というのであり、右所謂「現在ノ危難」とは現に危難の切迫していることを意味し又「己ムコトヲ得ザルニ出デタル」というのは当該避難行為をする以外には他に方法がなく、かゝる行動に出たことが条理上肯定し得る場合を意味するのである。
    3. 自救行為の意義
      自救行為とは一定の権利を有するものが、これを保全するため官憲の手を待つに遑なく自ら直ちに必要の限度において適当なる行為をすること例えば盜犯の現場において被害者が賍物を取還すが如きをいうのである。
    4. 食糧その他の生活必需物資が缺乏している状況下において国民の各自又は任意の集団が、隱退藏物資の交付を保管者に対し要求し得べき権利の有無
      所論は本件被告事件の發生当時わが国内における食糧事情が、その他の生活必需物資を含め缺乏を告げ国民生活の上に危機迫らんとする虞ある状況にあつた旨、並びにかかる状況下において、不当に隱退藏せられている生活必需物資が存在するならば須らくこれを摘發して国民一般の需要に充つべきである旨主張するものであるが、假りに所論の通りであるとしても、他に法律上の事由の存在しない限り、これがために直ちに国民の各自又は任意の集団がそれぞれ自己のために直接該物資の保管者に対しこれが交付を要求し得べき権利ありとすることはできない。
    5. 労働組合法第1条第2項の法意
      労働組合法第1条第2項の規定は、同条第1項の目的達成のためにした正当な行為についてのみ、刑法第35条の適用を認めたに過ぎず、勤労者の団体交渉においても、刑法所定の暴行罪又は脅迫罪にあたる行為が行われた場合にまで、その適用があることを定めたものではない。
  2. 窃盜(最高裁判決 昭和25年11月15日)労働関係調整法第7条,刑法第235条,刑法第252条,刑法第35条,憲法第12条,憲法第28条,憲法第29条
    1. 労働関係調整法第7条と正当争議行為
      労働関係調整法第7条は、争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為の正当性は別個の観点から判断すべきものである。
    2. 生産管理開始のときから占有していた物を後に領得した行為の擬律
      被告人等が本件生産管理開始のときから判示鉄板を占有していたとしても、それは違法の占有であるから、後にこれを領得しても横領罪とはならず窃盗罪となる。
    3. 労働組合法第1条第2項と刑法第35条―争議行為の正当性
      労働組合法第1条第2項は、労働組合の団体交渉その他の行為について無条件に刑法第35条の適用があることを規定しているのではなく唯労働組合法所定の目的達成のために為した正当な行為についてのみ適用を認めているに過ぎない(最高裁昭和24年5月18日判決参照)。如何なる争議行為を以て正当とするかは、具体的に個々の争議につき、争議の目的並びに争議手段としての各個の両面に亘つて、現行法秩序全体との関連において決すべきである。従つて至産管理及び生産管理中の個々の行為が、すべて当然に正当行為であるとの論旨は理由がない。
    4. 生産管理において労働者の団体が工場、設備、資材等を接収してその占有下においた場合には会社側の占有を完全に離脱するか
      原判決が、生産管理においては労働者の団体が工場、設備、資材等一切のものを接収してその占有下におくと判示し、本件においては被告人が既に生産管理に入つたものであることを認めながら、而も他方において判示鉄板は「会社の占有を完全に離脱したものでない」と判示したのは、生産管理開始により労働者の図体が工場、設備、資材等一切のものを自己の支配下におき占有を取得したと言つても、個々の資材物件等については、それが会社構内に存置せられる以上、会社側にもなお占有が存するという趣旨に解すべきである。
    5. 労働者が生産管理中の工場から争議期間中の賃金支払にあてる目的をもつて工場資材を工場外に搬出した行為と窃盗罪の成立
      論旨は、原判決が、本件鉄板は会社の占有を完全に離脱したものではないので被告人等が壇にこれを工場外に搬出した行為は会社の所持を奪つたものであり、窃盗の罪責を免れない、と判示したことを非難し生産管理の下においては占有の所持は労働者側にあり、会社は観念上間接占有を有するに過ぎないから、所持の奪取即ち窃盗はあり得ないい。被告人等には占有奪取の意思もなく、不正領得の意思もなかつたと主張する。しかし労働者側がいわゆる生産管理開始のとき工場、設備、資材等をその占有下においたのは違法の占有であり、判示鉄板についてもそのとき会社側の占有に対して占有の侵奪があつたというべきであるが、原判決はこれを工場外に搬出したとき不法領得の実現行為があつたものと認定したものである。これを証拠に照らし合わせて考えてみても、被告人等が争議期間中の労働者の賃金支払等に充てるために売却する目的を以て、会社側の許可なくしてこれを工場外に運び出し、自己の事実上の支配内に收めた行為は、正に不法領得の意思を以て会社の所持を奪つたものというべきであつて、原判決が窃盗罪にあたるものとしたのは当然である。
    6. 生産管理と同盟罷業との関係―生産管理の違法性
      論旨は生産管理が同盟罷業と性質を異にするものでないということを理由として、生産管理も同盟罷業と同様に違法性を阻却される争議行為であると主張する。しかしわが国現行の法律秩序は私有財産制度を基幹として成り立つており、企業の利益と損失とは資本家に帰する。従つて企業の経営、生産行程の指揮命令は、資本家又はその代理人たる経営担当者の権限に属する。労働者が所論のように企業者と並んで企業の担当者であるとしても、その故に当然に労働者が企業の使用收益権を有するのでもなく、経営権に対する権限を有するものでもないい。従つて労働者側が企業者側の私有財産の基幹を揺がすような争議手段は許されない。なるほど同盟罷業も財産権の侵害を生ずるけれども、それは労働力の給付が積務不履行となるに過ぎない。然るに本件のようないわゆる生産管理に於ては、企業経営の権能を権利者の意思を排除して非権利者が行うのである。それ故に同盟罷業も生産管理も財産権の侵害である点においては同様であるからとて、その相違点を無視するわけにはゆかない。前者において違法性が阻却されるからとて、後者においてもそうだという理由はない。
    7. 憲法と勤労者の争議権―争議行為の正当性の限界
      論旨は、憲法が労働者の争議権を認めたことを論拠として、従来の市民法的個人法的観点を楊棄すべきことを説き、かような立場から労働者が争議によつて使用者たる資本家の意思を抑圧してその要求を貫徹することは不当でもなく違法でもないと主張する。しかし憲法は勤労者に対して団結権、団体交渉権その他の団体行動権を保障すると共に、すべての国民に対して平等権、自由権、財産権等の基本的人権を保障しているのであつて、是等諸々の基本的人権が労働者の争議権の無制限な行使の前に悉く排除されることを認めているのでもなく、後者が前者に対して絶対的優位を有することを認めているのでもない。寧ろこれ等諸々の一般的基本的人権と労働者の権利との調和をこそ期待しているのであつて、この調和を破らないことが、即ち争議権の正当性の限界である。その調和点を何処に求めるべきかは、法律制度の精神を全般的に考察して決すべきである。固より使用者側の自由権や財産権と雖も絶対無制限ではなく、労働者の団体行動権等のためある程度の制限を受けるのは当然であるが、原判決の判示する程度に、使用者側の自由意思を抑圧し、財産に対する支配を阻止することは、許さるべきでないと認められる。それは労働者側の争議権を偏重して使用者側の権利を不当に侵害し、法が求める調和を破るものだからである。
    8. 生産管理と労働関係調整法第7条にいわゆる「その他」の行為
      論旨は、原判決を以て、生産管理の本質を誤り、生産管理が争議権行使の一方法であることを否認し、争議権行使の方法を制限した違法あるものとして、非難すると共に、生産管理が労働関係調整法第7条にいわゆる「その他」の行為の中に含まれるということを論拠として、労働者が争議方法として生産管理を行うことには何等の制限を受くべきでないと主張する。しかし右の法条は争議行為の定義を掲げただけであつて、争議行為又はそれに伴う諸々の行為がすべて適法又は正当であると言つているのではない。従つて生産管理が右の「その他」の行為の中に含まれるとしても、そのことだけから、生産管理を行う自由があると即断することはできない。具体的争議行為の適法性の限界については、別個の観点から判断されなければならない。
  3. 威力業務妨害被告事件(最高裁判決 昭和45年06月23日)刑法第35条刑法第234条地方公営企業労働関係法第4条地方公営企業労働関係法第11条1項
    市電の出庫を阻止したピケツテイングが正当な行為とされた事例
    札幌市役所関係労働組合連合会所属の被告人らが、他の約40名とともに、車庫内において市電の前に立ちふさがり、その出庫を阻止して業務を妨害した場合においても、その行為が、市当局の長期間にわたる不当な団体交渉の拒否等に対処し、団体交渉における労使の実質的対等を確保するため、やむなくなされた市電等への乗務拒否を主眼とする同盟罷業中に、これから脱落した組合員が、当局側の業務命令に従つて市電を運転して車庫外に出ようとしたので、組合の団結がみだされ同盟罷業がその実効性を失うのを防ぐ目的で、とつさに市電の前に立ちふさがり、市電を出さないように叫んで翻意を促し、これを腕力で排除しようとした当局側の者ともみ合い、前後約30分間、乗客のいない車庫内で市電の出庫を阻止したものであつて、その間直接暴力に訴えるというようなことがなかつた等の事情があるときは、これを正当な行為ということができる。
  4. 郵便法違反幇助、建造物侵入、公務執行妨害被告事件(最高裁判決 昭和52年05月04日)憲法第28条,刑法第1編第7章,刑法第35条刑法第130条公共企業体等労働関係法第17条1項,労働組合法第3条郵便法第79条1項
    1. 公共企業体等労働関係法第17条第1項と憲法28条
      公共企業体等労働関係法第17条第1項は、憲法28条に違反しない。
    2. 公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為と労働組合法1条2項の適用
      公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為には、労働組合法1条2項の適用はない。
    3. 公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為と刑事法上の処罰阻却
      公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為が犯罪構成要件に該当し、違法性があり、責任がある場合であつても、それが同盟罷業、怠業その他単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであつて、同条項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けることのないようなものであるときには、争議行為の単純参加者に限り、その罰則による処罰を阻却される。
    4. 郵政職員の争議行為に参加を呼びかけた行為が郵便法79条1項の罪の幇助罪による処罰を阻却されないとされた事例
      郵政職員が争議行為として行つた勤務時間内二時間の職場大会に参加を呼びかけた本件行為は、郵便法79条1項の罪の幇助罪による処罰を阻却されない。
    5. 公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為について違法性阻却事由の有無を判断する一般的基準
      公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為について違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が同条項違反の争議行為に際しこれに付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならない。
    6. 公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた建造物侵入行為が刑法上の違法性を欠くものではないとされた事例
      公共企業体等労働関係法第17条第1項違反の争議行為に参加を呼びかけるため行われた本件建造物侵入行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。

前条:
-
労働組合法
第1章 総則
次条:
労働組合法第2条
(労働組合)
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