日本国憲法第28条
表示
条文
[編集]【労働基本権】
- 第28条
- 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
解説
[編集]参照条文
[編集]判例
[編集]- 脅迫(最高裁判決 昭和24年5月18日)刑法37条,刑法35条,刑法38条1項,労働組合法1条2項
- 憲法第28条にいわゆる団結権の意義と大衆運動の合法性の限界
- 憲法第28条はこの趣旨において、企業者対勤労者すなわち使用者対被用者というような関係に立つものの間において、経済上の弱者である勤労者のために団結権乃至団体行動権を保障したものに外ならないそれ故、この団結権に関する憲法の保障を勤労者以外の団体又は個人の単なる集合に過ぎないものに対してまで拡張せんとする論旨の見解にはにわかに賛同することはできないのである、もとり一般民衆が法規その他公序良俗に反しない限度において、所謂大衆運動なるものを行い得べきことは、何人も異論のないところであらうけれど、その大衆運動なるの一事から苟くもその運動に関する行爲である限り常にこれを正当行為なりとして刑法第35条に従い刑罰法令の適用を排除すべきであると結論することはできない。
- 建造物侵入(最高裁判決 昭和25年9月27日)憲法37条3項,刑法130条,刑法35条,刑法36条,刑法37条,旧刑訴法69条1項
- 憲法第28条にいわゆる「保障」は勤労者以外の団体又は個人の単なる集合に及ぶか
- 憲法第28条の保障は、勤労者以外の団体又は個人の単なる集合に過ぎないものの行動に対してまで及ぼすものではない。(昭和22年(れ)第319号昭和24年5月18日大法廷判決參照)
- 暴力行為等処罰に関する法第律違反・業務妨害、建造物侵入、窃盗(最高裁判決 昭和26年07月18日)
- 暴力行為を等処罰に関する法律第1条第1項の合憲性
- 暴力行為等処罰に関する法律第1条第1項の規定は、憲法第28条,憲法第98条に違反しない。
- 被告人等の本件行為当時においては、もはや争議なるものは存在せず、しかも被告人等の業務妨害行為は脅迫と認定されているのであるから、勤労者が憲法28条に基ずき団結権ないし団体行動権を保障されているとしても、被告人等の行為を正当な争議行為として適法視する余地はない(昭和24年5月18日大法廷判決)。従つてこれと反する見解に立脚する論旨は到底採用するを得ない。しかも原判決の挙示する証拠とその説明に徴し、被告人等が判示の如く、W等会社の従業員が強いて工場に入らんとするにおいては、多衆の威力により、右W等の身体自由に害を加うべき旨を暗示して同人等を畏怖せしめ、W等はこれに脅えて入場を断念したという事実を肯認することができるのであるから、脅迫罪の成立あるは当然である。そして原判決が右の脅迫行為に適用した暴力行為等処罰に関する法律の規定が所論の如く憲法の条規に違反し無效なものと認むべき根拠はない。しかも右違憲の論旨は本件行為が争議行為であるとの前提に立つ議論であるが前記の如く、被告人等の行為は争議行為といい得ないものであるから、論旨はその前提を欠くものである。故にこの点の論旨も採用するを得ない。
- 昭和23年政令第201号違反(最高裁判決 昭和28年4月8日) w:政令201号(公務員の労働権制限)
- 昭和23年政令第201号と憲法第28条。
- 昭和23年政令第201号は憲法第28条に違反しない。
- 国民の権利はすべて公共の福祉に反しない限りにおいて立法その他の国政の上で最大の尊重をすることを必要とするのであるから、憲法28条が保障する勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利も公共の福祉のために制限を受けるのは已を得ないところである。殊に国家公務員は、国民全体の奉仕者として(憲法15条)公共の利益のために勤務し、且つ職務の遂行に当つては全力を挙げてこれに専念しなければならない(国家公務員法96条1項)性質のものであるから、団結権団体交渉権等についても、一般の勤労者とは違つて特別の取扱を受けることがあるのは当然である。従来の労働組合法又は労働関係調整法において非現業官吏が争議行為を禁止され、又警察官等が労働組合結成権を認められなかつたのはこの故である。同じ理由により、本件政令第201号が公務員の争議を禁止したからとて、これを以て憲法28条に違反するものということはできない。
- 電車顛覆致死、偽証(三鷹事件 最高裁判決 昭和30年06月22日)刑法第126条、刑法第127条
- 日本国有鉄道職員の争議禁止は憲法第28条に違反するか
- 日本国有鉄道職員が公共企業体労働関係法第17条により争議行為を禁止されても、憲法第28条に違反しない。
- 国鉄職員が国家公務員であつた当時において、その争議行為の禁止が憲法28条に違反するものでなかつたことは、当裁判所の既に判示したところである(最高裁判決昭和28年4月8日)。その後本件犯罪の発生前、国鉄職員は法制上国家公務員とはならなくなつたが、しかしなお、法令により公務に従事する者とみなされるものであり(日本国有鉄道法34条)、また国鉄の資本金は全額政府の出資にかかり(同法五条)、その性格は公法上の法人であつて(同法2条)、その事業経営の実質及び条件は従前と殆んど異なるところはないのである。すなわち、かかる公共企業体の国民経済と公共の福祉に対する重要性にかんがみ、その職員が争議行為禁止の制限を受けてもこれが憲法28条に違反するものでない
- 公職選挙法違反(最高裁判決昭和43年12月4日)憲法第15条,憲法第25条,労働組合法1条1項,労働組合法2条,公職選挙法第10条,公職選挙法第225条1号,公職選挙法225条3号
- 労働組合の統制権と憲法第28条
- 労働組合は、憲法第28条による労働者の団結権保障の効果として、その目的を達成するために必要であり、かつ、合理的な範囲内においては、その組合員に対する統制権を有する。
- 公職選挙への立候補の自由と憲法第15条第1項
- 公職の選挙に立候補する自由は、憲法第15条第1項の保障する重要な基本的人権の一つと解すべきである。
- 労働組合の統制権と組合員の立候補の自由
- 労働組合が、地方議会議員の選挙にあたり、いわゆる統一候補を決定し、組合を挙げて選挙運動を推進している場合において、統一候補の選にもれた組合員が、組合の方針に反して立候補しようとするときは、これを断念するよう勧告または説得することは許されるが、その域を超えて、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に統制違反者として処分することは、組合の統制権の限界を超えるものとして許されない。
- 労働組合の統制権と憲法第28条
- 職業安定法違反(全農林警職法事件 最高裁判決 昭和48年4月25日 刑集12巻7号1351頁)憲法18条、憲法21条、憲法31条、国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)98条5項、110条1項17号
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号の合憲性
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号は憲法28条に、国家公務員法110条1項17号は憲法18条、21条、31条に違反しない。
- 国家公務員法110条1項17号にいう「あおり」および「企て」の意義
- 国家公務員法110条1項17号にいう「あおり」とは、同法98条5項前段に規定する違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、または、すでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいい、「企て」とは、右違法行為を共謀し、そそのかし、または、あおる行為の遂行を計画準備することであつて、違法行為発生の危険性が具体的に生じたと認めうる状態に達したものをいう。
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号の法意
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号は、公務員の争議行為のうち同法によつて違法とされるものとされないものとを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものとを区別したうえ、刑事制裁を科さるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものとし、あるいは、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして争議行為自体と同一視し、これを刑事制裁の対象から除くものとする趣旨ではない。
- 政治的目的のための争議行為と憲法28条
- 私企業の労働者であると、公務員を含むその他の勤労者であるとを問わず、使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係のない警察官職務執行法の改正に対する反対のような政治的目的のために争議行為を行なうことは、憲法28条とは無関係なものである。
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号の合憲性
- 賃金(最高裁判決 平成元年12月14日)労働基準法第39条, 労働基準法第65条, 労働基準法第66条, 労働基準法第67条, 労働基準法第68条, 労働基準法第76条, 労働組合法第2章, 労働組合法第14条, 労働組合法第16条, 民法第90条
- 前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
- すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が80パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
|
|