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民法第96条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
強迫 から転送)

法学民事法民法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)

条文

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詐欺又は強迫

第96条
  1. 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
  2. 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
  3. 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

改正経緯

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2017年改正により、以下のとおり改正された。

  • 第2項
    • (改正前)相手方がその事実を知っていたときに限り
    • (改正後)相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、
  • 第3項
    • (改正前)善意の 第三者に
    • (改正後)善意でかつ過失がない第三者に

解説

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Wikipedia
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ウィキペディア詐欺による意思表示の記事があります。
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ウィキペディア強迫による意思表示の記事があります。
  • 詐欺又は強迫により瑕疵を帯びた法律行為は原則として取り消すことができる旨を規定している。ただし、詐欺の場合においては、欺かれた者の帰責性も大きいため、取り消しに上記の制約が設けられている。なお、取消権者や取消しの効果については、民法第120条に規定がある。
  • 「相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合」の例
    • 債務者が、虚偽の信用情報を与えるなどして保証人を欺いて保証契約を締結させた場合
      この場合、相手方は債権者であり、債権者が、債務者と共謀するなどしてその事実を知っていたか知り得た場合、当該保証人は保証契約を取り消しうる。
  • 解釈上の問題として、取り消しの直接的効果を受ける第三者の範囲は、一般に取消前に登場した人とされ,取消後に登場した第三者は、善意・悪意を問われず民法第177条の対抗要件の問題とされる。
  • 詐欺については,第三者要件として無過失性が必要かという点も論点となっていたが、2017年改正で「かつ過失がない」を加え、過失(慣習上必要とされる確認等の懈怠)がある場合は対抗できないものとした。
  • 第3項の「第三者」は民法第94条2項における善意の第三者と同義であり、当事者及びその包括承継人以外の者で詐欺もしくは強迫によって形成された法律関係の外形を信頼して新たな法律関係に入った者をさす。よって単に反射的利益を得ている者、取消後の第三者は、含まれない。

参照条文

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判例

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  1. 不動産売買予約履行並びに不動産所有権移転登記請求 (最高裁判決 昭和33年07月01日)
    強迫による意思表示と選択の自由
    強迫による意思表示が成立するためには、表意者が畏怖の結果完全に選択の自由を失つたことを要するものではない。
  2. 登記抹消手続等本訴請求、所有権移転登記手続等反訴請求 (最高裁判決 昭和47年09月07日)民法第121条民法第533条民法第546条
    売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務と同時履行
    売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。
  3. 所有権移転登記請求(最高裁判決 昭和49年09月26日)
    民法96条3項にいう第三者にあたる場合
    甲を欺罔してその農地を買い受けた乙が、農地法5条の許可を条件とする所有権移転仮登記を得たうえ、右売買契約上の権利を善意の丙に譲渡して右仮登記移転の附記登記をした場合には、丙は民法96条3項にいう第三者にあたる。
  4. 約束手形金(最高裁判決 平成10年05月26日)民法第537条,民法第587条,民法第703条
    甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消した場合の乙から甲に対する不当利得返還請求につき甲が右給付により利益を受けなかったものとされた事例
    甲が丁の強迫により消費貸借契約の借主となり貸主乙に指示して貸付金を丙に給付させた後に右強迫を理由に契約を取り消したが、甲と丙との間には事前に何らの法律上又は事実上の関係はなく、甲が丁の言うままに乙に対して貸付金を丙に給付するように指示したなど判示の事実関係の下においては、乙から甲に対する不当利得返還請求について、甲が右給付によりその価額に相当する利益を受けたとみることはできない。
  5. 株主総会決議不存在確認,株主権確認請求事件(最高裁判決 平成16年07月08日)民法第95条
    株式会社の代表取締役らが当該会社の全株式を売却したことにつき詐欺による取消し又は錯誤による無効が認められないとした原審の判断に違法があるとされた事例
    株式会社の代表取締役甲らが容易に現金化が可能な約10億円の純資産を有する当該会社の全株式を合計2億円で売却したことにつき,それが不自然ではないといえるような特段の事情が存在しない上,上記売却は,甲らの全面的な信頼を受けて甲らの資産管理を受託していた乙が甲らの財産の保全,増加に必要であるとして提案し,甲らがこれに全面的に従ってされたものであり,乙が,買主である会社の全株式を有しており,その結果,労せずして多額の利益を得たといえるなど判示の事情の下においては,上記売却につき詐欺による取消し又は錯誤による無効が認められないとした原審の判断には,違法がある。

関連項目

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前条:
民法第95条
(錯誤)
民法
第1編 総則

第5章 法律行為

第2節 意思表示
次条:
民法第97条
(意思表示の効力発生時期等)
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