著作権法第22条の2
条文
[編集](上映権)
- 第22条の2
- 著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する。
解説
[編集]著作権の支分権の一つ上映権について規定する。
上映権は著作物を公に上映する権利をいい、著作者が専有する。ここで、上映とは、著作物を映写幕その他の物に映写することをいう。上映する著作物が映画の著作物であれば、当該著作物において固定されている音を再生することが上映に含まれる(2条1項17号)。 上映といえば、通常映画の上映を思い浮かべるであろうが、条文から明らかなように映写幕に映写することに限られておらず、パソコンのディスプレイへの表示やプロジェクションマッピングの手法によるものも上映の概念に含まれる。
また、著作物の種類も映画に限定されておらず[1]、絵画や写真を含めすべての著作物に上映権が認められるようになっていると説明されている。 しかし、パックマン事件(東京地方裁判所、昭和59年9月28日判決)は映画の著作物の表現方法の要件として『「影像が動きをもつて見えるという効果を生じさせること」が必須であ』るとし、平成11年改正で上映権の対象が拡大されたことを考慮しても、直接的に視覚的効果が生じない音楽の著作物の場合は上映することができず、上映権の対象とはならないと解すべきであろう。もっとも、他の著作物と結合させれば上映権の対象になりうることまで反対するものではない。
また、映画を上映する場面を想像して、拡大投影する場合にのみ上映権が認められるということもない。
本条違反の場合は、民事的には、差止請求権(112条)、損害賠償請求権(民法709条)、不当利得返還請求権(民法703, 704条)、名誉回復措置請求(115条)に服する。また刑事的には、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金に処され、もしくはこれらが併科される(119条1項)。両罰規定の対象でもある(124条)。
なお、上映から公衆送信によるものが除かれているが(2条1項17号かっこ書)、この場合は公衆送信権(23条)で処理される。
参照条文
[編集]脚注
[編集]- ^ 平成11年改正前は26条で頒布権と共に規定されており、映画の著作物(2条3項)にのみ上映権が認められていた。しかし、映画以外の著作物についても容易に上映の形式により著作物を利用できるようになったことから、上映権を映画以外の著作物についても及ぼすこととした。この点、著作権審議会第1小委員会審議のまとめの「2「公衆への伝達権」について」も参照されたい。
判例
[編集]- 著作権侵害差止等請求事件 (最高裁判例 平成13年3月2日) 著作権法第22条,著作権法第7章権利侵害,民法第709条,民法第719条
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