刑事訴訟法第400条
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法学>コンメンタール>コンメンタール刑事訴訟法=コンメンタール刑事訴訟法/改訂
条文
[編集](破棄差戻移送・自判)
- 第400条
- 前二条【第398条、第399条】に規定する理由以外の理由によって原判決を破棄するときは、判決で、事件を原裁判所に差し戻し、又は原裁判所と同等の他の裁判所に移送しなければならない。但し、控訴裁判所は、訴訟記録並びに原裁判所及び控訴裁判所において取り調べた証拠によって、直ちに判決をすることができるものと認めるときは、被告事件について更に判決をすることができる。
解説
[編集]参照条文
[編集]判例
[編集]- 賍物牙保(最高裁決定昭和29年11月4日)裁判所法第4条
- 差戻判決と差戻前の訴訟手続の効力
- 差戻前の訴訟手続は、差戻判決の破棄の理由となつた限度においてその効力を失い、破棄の理由とならない訴訟手続が全部その効力を失うものではない。
- 賍物運搬(最高裁判決昭和30年11月30日)裁判所法第4条
- 差戻判決の拘束力と差戻後の第一審の訴訟追行の方法
- 控訴審が第一審の訴訟手続の法令違反を理由として第一審判決を破棄差戻した場合において、第一審裁判所が審理するにあたつては、控訴審の右判断部分に拘束され、訴訟手続上これと抵触することは許されないけれも、その他は自由に審理を進めることができるのであつて差戻前の訴訟手続をひとまず追つた後でなければその後の手続を行い得ないものではない。
- 猥褻文書販売(チャタレー事件 最高裁判決昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁)刑法175条, 刑法38条1項,憲法21条,憲法76条3項,出版法(明治26年法律15号)27条
- 刑訴法第400条但書に違反しない一事例。
- 本件第一審判決がその判示のごとき理由で被告人に無罪の言渡をしても控訴裁判所において「右判決は法令の解釈を誤りひいては事実を誤認したものとして」これを破棄し、自ら何ら事実の取調をすることなく、訴訟記録及び第一審裁判所で取り調べた証拠のみによつて、直ちに被告事件について、犯罪事実を認定し有罪の判決をしたからといつて、必ずしも刑訴第400条但書の許さないところではない。
- 物価統制令違反(最高裁決定昭和32年12月5日)裁判所法第4条,刑訴法第397条
- 破棄差戻判決の拘束力
- 第一審裁判所が公訴事実はこれを認めるに足る証拠がないとして無罪の判決を言い渡したのに対し、原審裁判所のした破棄差戻判決における破棄の理由として示された判断が、第一審裁判所の無罪判決には事実の誤認および訴訟法の違反があり、そのために有罪を宣告すべきにかかわらず、無罪を宣告しているのであるから、右の誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるというにある場合には、差し戻しを受けた第一審裁判所は、第一審判決に事実誤認、訴訟法違反があり、その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるとの原判決の判断の範囲内において更に審理すべき拘束を受けるに止まり、必ず有罪の宣告をしなければならないというごとき拘束を受けるものではない。
- 猥褻文書販売、同所持(悪徳の栄え事件 最高裁判決 昭和44年10月15日)刑法175条,憲法21条,憲法23条
- 法律判断で無罪を言い渡した第一審判決を事実の取調をすることなく破棄し控訴裁判所がみずから有罪の判決をすることと刑訴法400条但書
- 第一審裁判所が法律判断の対象となる事実を認定し、法律判断だけで無罪を言い渡した場合には、控訴裁判所は、改めて事実の取調をすることなく、刑訴法400条但書によつて、みずから有罪の判決をすることができる。
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