コンテンツにスキップ

日本国憲法第21条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学憲法日本国憲法コンメンタール日本国憲法

条文

[編集]

【集会・結社・表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密】

第21条
  1. 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

解説

[編集]
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディア日本国憲法第21条の記事があります。

表現の自由

[編集]

表現の自由も参照。

検閲の禁止・通信の秘密

[編集]

検閲と事前抑制の禁止も参照。

検閲とは

[編集]
「行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるもの」(『札幌税関検査事件最判昭和59年12月12日)
「表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合」(『北方ジャーナル事件最判昭和61年6月11日
  • 主体: 行政機関
  • 行為: 対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と認めるものの発表を禁止すること/表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制
    「網羅的一般的な審査」
  • 目的: その全部又は一部の発表の禁止/事前規制

参照条文

[編集]

判例

[編集]
  1. 雇傭契約解除無効確認俸給支払請求(最高裁判決 昭和27年02月22日)日本国憲法第19条,日本国憲法第21条
    政治活動をしないことを条件とする雇傭契約と基本的人権の制限
    憲法で保障されたいわゆる基本的人権も絶対のものではなく、自己の自由意思に基く特別な公法関係または私法関係上の義務によつて制限を受けるものであつて、自己の自由意思により、校内において政治活動をしないことを条件として教員として学校に雇われた場合には、その契約は無効ではない。
  2. 昭和25年政令第325号違反(w:平和のこえ事件 最高裁判決 昭和28年7月22日)日本国憲法第39条
    所謂「アカハタ及びその後継紙、同類紙の発行停止に関する指令」についての昭和25年政令第325号違反被告事件は講和条約発効後は免訴すべきか
    所謂「アカハタ及びその後継紙、同類紙の発行停止に関する指令」についての昭和25年政令第325号違反被告事件は、講和条約発効後においては刑の廃止があつたものとして免訴すべきである。
    昭和25年政令325号「占領目的阻害行為処罰令」が憲法第21条に違反するものであるか否かの判断を回避。また、いわゆるポツダム命令)は憲法外における法的効力を有し、違憲判断に馴染まないとした。
  3. 猥褻文書販売チャタレー事件 最高裁判決昭和32年3月13日刑集11巻3号997頁)刑法175条, 刑法38条1項,憲法76条3項,出版法(明治26年法律15号)27条,刑訴法400条
    1. 刑法第175条にいわゆる「猥褻文書」の意味
      刑法第175条にいわゆる「猥褻文書」とは、その内容が徒らに性欲を興奮又は刺戟せしめ、且つ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する文書をいう。
    2. 「猥褻文書」に当るかどうかは事実問題か法律問題か。
      文書が「猥褻文書」に当るかどうかの判断は、当該文書についてなされる事実認定の問題でなく、法解釈の問題である。
    3. 「猥褻文書」に当るかどうかの判断の基準。
      文書が、「猥褻文書」に当るかどうかは、一般社会において行われている良識、すなわち、社会通念に従つて判断すべきものである。
    4. 社会通念とは何か。
      社会通念は、個々人の認識の集合又はその平均値でなく、これを超えた集団意識であり、個々人がこれに反する認識をもつことによつて否定されるものでない。
    5. 刑法第175条にいわゆる「猥褻文書」に当る一事例。
      Aの翻訳にかかる、昭和25年4月2日株式会社小山書店発行の「チヤタレイ夫人の恋人」上、下二巻(ロレンス選集1・2)は、刑法第175条にいわゆる猥褻文書に当る。
    6. 芸術的作品と猥褻性。
      芸術的作品であつても猥褻性を有する場合がある。
    7. 猥褻性の存否と作者の主観的意図。
      猥褻性の存否は、当該作品自体によつて客観的に判断すべきものであつて、作者の主観的意図によつて影響されるものではない。
    8. 刑法第175条に規定する猥褻文書販売罪における犯意。
      刑法第175条に規定する猥褻文書販売罪の犯意がありとするためには、当該記載の存在の認識とこれを頒布、販売することの認識があれば足り、かかる記載のある文書が同条所定の猥褻性を具備するかどうかの認識まで必要とするものではない。
    9. 憲法第21条に保障する表現の自由と公共の福祉。
      憲法第21条の保障する表現の自由といえども絶対無制限のものではなく、公共の福祉に反することは許されない。
    10. 旧出版法第27条と刑法第175条との関係。
      旧出版法第27条と刑法第175条とは特別法と普通法の関係にある。
    11. 憲法第21条第2項による検閲の禁止と猥褻文書販売罪。
      憲法第21条第2項によつて事前の検閲が禁止されたことによつて、猥褻文書の頒布、販売を禁止し得なくなつたものではない。
    12. 憲法第76条第3項にいう裁判官が良心に従うとの意味。
      憲法第76条第3項にいう裁判官が良心に従うとは、裁判官が有形、無形の外部の圧迫ないし誘惑に屈しないで自己の内心の良識と道徳感に従う意味である。
  4. 猥褻文書販売、同所持(悪徳の栄え事件 最高裁判決 昭和44年10月15日)刑法175条憲法23条刑訴法400条
    1. 芸術的思想的価値のある文書と猥褻性
      芸術的・思想的価値のある文書であつても、これを猥褻性を有するものとすることはさしつかえない。
    2. 文書の部分についての猥褻性と文書全体との関係
      文書の個々の章句の部分の猥褻性の有無は、文書全体との関連において判断されなければならない。
    3. 憲法21条・23条と公共の福祉
      憲法21条の表現の自由や同法23条の学問の自由は、絶対無制限なものではなく、公共の福祉の制限の下に立つものである。
  5. 取材フイルム提出命令に対する抗告棄却決定に対する特別抗告(最高裁決定 昭和44年11月26日)刑訴法99条刑訴法262条刑訴法265条
    1. 報道および取材の自由と憲法21条
      報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにあり、報道のための取材の自由も、同条の精神に照らし、十分尊重に値いするものといわなければならない。
    2. 報道機関の取材フイルムに対する提出命令の許容される限度
      報道機関の取材フイルムに対する提出命令が許容されるか否かは、審判の対象とされている犯罪の性質、態様、軽重および取材したものの証拠としての価値、公正な刑事裁判を実現するにあたつての必要性の有無を考慮するとともに、これによつて報道機関の取材の自由が妨げられる程度、これが報道の自由に及ぼす影響の度合その他諸般の事情を比較衡量して決せられるべきであり、これを刑事裁判の証拠として使用することがやむを得ないと認められる場合でも、それによつて受ける報道機関の不利益が必要な限度をこえないように配慮されなければならない。
  6. 在留期間更新不許可処分取消(マクリーン事件 最高裁判決 昭和45年06月24日)
    憲法第10条判例節参照
  7. 職業安定法違反(全農林警職法事件 最高裁判決 昭和48年4月25日 刑集12巻7号1351頁)憲法28条憲法18条憲法31条、国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)98条5項(現・国家公務員法第98条第2項)、110条1項17号(現・国家公務員法第111条の2第1号)
    • 国家公務員法第98条第2項
      職員は、政府が代表する使用者としての公衆に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
    • 国家公務員法第111条の2
      次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
      1. 何人たるを問わず第98条第2項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、唆し、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者
    1. 国家公務員法98条5項、110条1項17号の合憲性
      国家公務員法98条5項、110条1項17号は憲法28条に、国家公務員法110条1項17号は憲法18条、21条、31条に違反しない。
    2. 国家公務員法110条1項17号にいう「あおり」および「企て」の意義
      国家公務員法110条1項17号にいう「あおり」とは、同法98条5項前段に規定する違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、または、すでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいい、「企て」とは、右違法行為を共謀し、そそのかし、または、あおる行為の遂行を計画準備することであつて、違法行為発生の危険性が具体的に生じたと認めうる状態に達したものをいう。
    3. 国家公務員法98条5項、110条1項17号の法意
      国家公務員法98条5項、110条1項17号は、公務員の争議行為のうち同法によつて違法とされるものとされないものとを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものとを区別したうえ、刑事制裁を科さるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものとし、あるいは、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして争議行為自体と同一視し、これを刑事制裁の対象から除くものとする趣旨ではない。
    4. 政治的目的のための争議行為と憲法28条
      私企業の労働者であると、公務員を含むその他の勤労者であるとを問わず、使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係のない警察官職務執行法の改正に対する反対のような政治的目的のために争議行為を行なうことは、憲法28条とは無関係なものである。
  8. 国家公務員法違反(猿払事件 最高裁判決 昭和49年11月6日)
    1. 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法21条
      国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止は、憲法21条に違反しない。
      • 国公法102条1項及び規則による政治的行為の禁止は、もとより国民一般に対して向けられているものではなく、公務員のみに対して向けられているものである。ところで、国民の信託による国政が国民全体への奉仕を旨として行われなければならないことは当然の理であるが、「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」とする憲法15条2項の規定からもまた、公務が国民の一部に対する奉仕としてではなく、その全体に対する奉仕として運営されるべきものであることを理解することができる。公務のうちでも行政の分野におけるそれは、憲法の定める統治組織の構造に照らし、議会制民主主義に基づく政治過程を経て決定された政策の忠実な遂行を期し、もつぱら国民全体に対する奉仕を旨とし、政治的偏向を排して運営されなければならないものと解されるのであつて、そのためには、個々の公務員が、政治的に、一党一派に偏することなく、厳に中立の立場を堅持して、その職務の遂行にあたることが必要となるのである。すなわち、行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益にほかならないというべきである。したがつて、公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で 必要やむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならない。
      • 公務員に対する政治的行為の禁止が 右の合理的で必要やむをえない限度にとどまるものか否かを判断するにあたつては、禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討することが必要である。
        • 行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであつて、その目的は正当なものというべきである。
        • 公務員の政治的中立性の毀損に起因する弊害の発生を防止するため、公務員の政治的中立性を損うおそれがあると認められる政治的行為を禁止することは、禁止目的との間に合理的な関連性があるものと認められる。
        • 意見表明の自由が制約されることにはなるが、それは、単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎず、かつ、国公法102条1項及び規則の定める行動類型以外の行為により意見を表明する自由までをも制約するものではなく、他面、禁止により得られる利益は、公務員の政治的中立性を維持し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するという国民全体の共同利益なのであるから、得られる利益は、失われる利益に比してさらに重要なものというべきであり、その禁止は利益の均衡を失するものではない。
    2. 国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法31条
      国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法31条に違反しない。
    3. 国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法21条
      国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法21条に違反しない。
      • 公務員の政治的行為の禁止が国民全体の共同利益を擁護する見地からされたものであつて、その違反行為が刑罰の対象となる違法性を帯びることが認められ、かつ、その禁止が、憲法21条に違反するものではないと判断される以上、その違反行為を構成要件として罰則を法定しても、そのことが憲法21条に違反することとなる道理は、ありえない。
      「より制限的でない他の選びうる手段」の法理について
      原判決は、さらに、規制の目的を達成しうる、より制限的でない他の選びうる手段があるときは、広い規制手段は違憲となるとしたうえ、被告人の本件行為に対する制裁としては懲戒処分をもつて足り、罰則までも法定することは合理的にして必要最小限度を超え、違憲となる旨を判示し、第一審判決もまた、外国の立法例をあげたうえ、被告人の本件行為のような公務員の政治的行為の禁止の違反に対して罰則を法定することは違憲である旨を判示する。
      しかしながら、各国の憲法の規定に共通するところがあるとしても、それぞれの国の歴史的経験と伝統はまちまちであり、国民の権利意識や自由感覚にもまた差異があるのであつて、基本的人権に対して加えられる規制の合理性についての判断基準は、およそ、その国の社会的基盤を離れて成り立つものではない。外国の立法例は、一つの重要な参考資料ではあるが、社会的諸条件を無視して、それをそのままわが国にあてはめることは、決して正しい憲法判断の態度ということはできない。
    4. 国家公務員法102条1項における人事院規則への委任の合憲性
      国家公務員法102条1項における人事院規則への委任は、同法82条による懲戒処分及び同法110条1項19号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に人事院規則に委任しているからといって、憲法に違反する立法の委任ということはできない。
    5. 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号の禁止に違反する文書の掲示又は配布に同法110条1項19号の罰則を適用することが憲法21条、31条に違反しないとされた事例
      公務員法の罰則は、一般的な身分犯と言えるか、それとも、公務員としての職務の内容・勤務時間の内外・職務に応じた施設の利用の有無等を考慮すべきか。
      国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号の禁止に違反する本件の文書の掲示又は配布に同法110条1項19号の罰則を適用することは、たとえその掲示又は配布が、非管理職の現業公務員であって、その職務内容が機械的労務の提供にとどまるものにより、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、職務を利用せず又はその公正を害する意図なく、かつ、労働組合活動の一環として行われた場合であつても、憲法21条、31条に違反しない。
      公務員法の罰則は、公務員の身分があれば適用されるものであり、行為時の事情等によらない。
      • 政治的行為が公務員によつてされる場合には、当該公務員の管理職・非管理職の別、現業・非現業の別、裁量権の範囲の広狭などは、公務員の政治的中立性を維持することにより行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保しようとする法の目的を阻害する点に、差異をもたらすものではない。
        • その業務の性質上、機械的労務が重い比重を占めるからといつて、そのことのゆえに、その種の業務に従事する現業公務員を公務員の政治的中立性について例外視する理由はない。
        • 公務員の政治的行為の禁止の趣旨からすれば、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無、職務利用の有無などは、その政治的行為の禁止の合憲性を判断するうえにおいては、必ずしも重要な意味をもつものではない。
        • 政治的行為が労働組合活動の一環としてなされたとしても、そのことが組合員である個々の公務員の政治的行為を正当化する理由となるものではなく、また、個々の公務員に対して禁止されている政治的行為が組合活動として行われるときは、組合員に対して統制力をもつ労働組合の組織を通じて計画的に広汎に行われ、その弊害は一層増大することとなるのであつて、その禁止が解除されるべきいわれは少しもない。
  9. 異議申出棄却決定取消(札幌税関検査事件 最高裁判決 昭和59年12月12日)
    1. 憲法21条2項前段の検閲禁止の趣旨
      憲法21条2項前段の検閲禁止は、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨と解すべきである。
    2. 憲法21条2項にいう「検閲」
      憲法21条2項にいう「検閲」とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。
    3. 関税定率法21条2項3号所定の物件に関する税関検査と憲法21条2項にいう「検閲」
      関税定率法21条1項3号所定の物件に関し、輸入手続において税関職員が行う検査は、憲法21条2項にいう「検閲」にあたらない。
      1. 輸入が禁止される表現物は、一般に、国外においては既に発表済みのものであつて、その輸入を禁止したからといつて、それは、当該表現物につき、事前に発表そのものを一切禁止するというものではない。また、当該表現物は、輸入が禁止されるだけであつて、税関により没収、廃棄されるわけではないから、発表の機会が全面的に奪われてしまうというわけのものでもない。
      2. 税関検査は、関税徴収手続の一環として、これに付随して行われるもので、思想内容等の表現物に限らず、広く輸入される貨物及び輸入される郵便物中の信書以外の物の全般を対象とし、三号物件についても、右のような付随的手続の中で容易に判定し得る限りにおいて審査しようとするものにすぎず、思想内容等それ自体を網羅的に審査し規制することを目的とするものではない。
      3. 税関は、関税の確定及び徴収を本来の職務内容とする機関であつて、特に思想内容等を対象としてこれを規制することを独自の使命とするものではなく、また、思想内容等の表現物につき税関長の通知がされたときは司法審査の機会が与えられているのであつて、行政権の判断が最終的なものとされるわけではない。
    4. 関税定率法21条2項3号の規定による猥褻表現物の輸入規制と憲法21条1項
      関税定率法21条1項3号の規定による猥褻表現物の輸入規制は、憲法21条1項に違反しない。
      • 表現の自由は、憲法の保障する基本的人権の中でも特に重要視されるべきものであるが、さりとて絶対無制限なものではなく、公共の福祉による制限の下にあることは、いうまでもない。また、性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持することは公共の福祉の内容をなすものであつて、猥褻文書の頒布等は公共の福祉に反するものであり、これを処罰の対象とすることが表現の自由に関する憲法21条1項の規定に違反するものでないことも、明らかである(最高裁昭和32年3月18日大法廷判決最高裁昭和44年10月15日大法廷判決参照)。そして、わが国内における健全な性的風俗を維持確保する見地からするときは、猥褻表現物がみだりに国外から流入することを阻止することは、公共の福祉に合致するものであり、猥褻刊行物ノ流布及取引ノ禁止ノ為ノ国際条約(昭和11年条約第3号)1条の規定が締約国に頒布等を目的とする猥褻な物品の輸入行為等を処罰することを義務づけていることをも併せ考えると、表現の自由に関する憲法の保障も、その限りにおいて制約を受ける。
    5. 表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許される場合
      表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また、一般国民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものでなければならない。
      • 限定解釈をすることが許されるためには以下の二つの要件を満たす必要がある。
        1. その解釈により,規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され,かつ,合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合であること。
        2. 一般国民の理解において,具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものであること。
    6. 関税定率法21条2項3号の「風俗を害すべき書籍、図画」等との規定の意義及びその合憲性
      関税定率法21条1項3号の「風俗を害すべき書籍、図画」等とは、猥褻な書籍、図画等を指すものと解すべきであり、右規定は広汎又は不明確の故に憲法21条1項に違反するものではない。
      • 伊藤正己裁判官他4裁判官による反対意見(過度に広汎性ゆえ無効の法理
        • 表現の自由を規制する法律の規定は、それ自体明確な基準を示すものでなければならない。殊に、表現の自由の規制が事前のものである場合には、その規定は、立法上可能な限り明確な基準を示すものであることが必要である。それ故、表現の自由を規制する法律の規定が、国民に対し何が規制の対象となるのかについて適正な告知をする機能を果たし得ず、また、規制機関の恣意的な適用を許す余地がある程に不明確な場合には、その規定は憲法21条1項に違反し、無効であると判断されなければならない。
        • 表現の自由を規制する法律の規定の適用範囲が広汎に過ぎ、右規定が本来規制の許されるべきでない場合にまで適用される可能性を無視し得ない場合には、やはり憲法21条1項によつて違憲無効と判断されなければならない。
        • 同号の「風俗を害すべき書籍、図画」等という規定は、不明確であると同時に広汎に過ぎるものであり、かつ、それが本来規制の許されるべきでない場合にも適用される可能性を無視し得ないと考えられるから、憲法21条1項に違反し、無効であるといわなければならない。
          「風俗」という用語の意味内容は性的風俗、社会的風俗、宗教的風俗等多義にわたるものであり、これを多数意見のいうように性的風俗に限定し、「風俗を害すべき書籍、図画」等を猥褻表現物に限ると解すべき根拠はない。現在の税関検査の実務においては、被上告人の自陳する如く、右の書籍、図画等を猥褻物に限定する取扱いがされているとしても、その文言自体からみれば、右規定が猥褻物以外の物に適用される可能性を否定することはできない。
  10. 損害賠償(北方ジャーナル事件 最高裁判決 昭和61年6月11日 民集40巻4号872頁)憲法13条
    1. 出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めと憲法21条2項前段にいう検閲
      雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、憲法21条2項前段にいう検閲に当たらない。
      • 一定の記事を掲載した雑誌その他の出版物の印刷、製本、販売、頒布等の仮処分による事前差止めは、裁判の形式によるとはいえ、口頭弁論ないし債務者の審尋を必要的とせず、立証についても疎明で足りるとされているなど簡略な手続によるものであり、また、いわゆる満足的仮処分として争いのある権利関係を暫定的に規律するものであつて、非訟的な要素を有することを否定することはできないが、仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであつて、右判示にいう「検閲」には当たらないものというべきである。
    2. 名誉侵害と侵害行為の差止請求権
      名誉侵害の被害者は、人格権としての名誉権に基づき、加害者に対して、現に行われている侵害行為を排除し、又は将来生ずべき侵害を予防するため、侵害行為の差止めを求めることができる。
    3. 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関する出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めの許否
      人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、右出版物が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときに限り、例外的に許される。
    4. 公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合と口頭弁論又は債務者審尋
      公共の利害に関する事項についての表現行為の事前差止めを仮処分によつて命ずる場合には、原則として口頭弁論又は債務者の審尋を経ることを要するが、債権者の提出した資料によつて、表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経なくても憲法21条の趣旨に反するものとはいえない。
  11. 損害賠償(家永教科書裁判 最高裁判決平成5年3月16日 民集第47巻5号3483頁)学校教育法21条1項(昭和45年法律第48号による改正前のもの),学校教育法51条(昭和49年法律第70号による改正前のもの),旧教科用図書検定規則(昭和23年文部省令第4号)1ないし3条,憲法23条憲法26条教育基本法10条国家賠償法1条1項
    教科書検定は検閲に当たるか。
    教科書検定は検閲に当たらない。
    • 憲法21条2項にいう検閲とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的とし、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを特質として備えるものを指すと解すべきである。本件検定は、一般図書としての発行を何ら妨げるものではなく、発表禁止目的や発表前の審査などの特質がないから、検閲に当たらず、憲法21条2項前段の規定に違反するものではない。
  12. 損害賠償(最高裁判決平成7年03月07日)地方自治法第244条,市立泉佐野市民会館条例(昭和38年泉佐野市条例第27号)7条
    1. 公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例7条1号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」の意義と憲法21条、地方自治法244条
      公の施設である市民会館の使用を許可してはならない事由として市立泉佐野市民会館条例7条1号の定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは、右会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、右会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であり、そう解する限り、このような規制は、憲法21条地方自治法244条に違反しない。
    2. 「関西新空港反対全国総決起集会」開催のための市民会館の使用許可の申請に対し市立泉佐野市民会館条例7条1号が使用を許可してはならない事由として定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとして不許可とした処分が憲法21条、地方自治法244条に違反しないとされた事例
      「E委員会」による「関西新空港反対全国総決起集会」開催のための市民会館の使用許可の申請に対し、市立泉佐野市民会館条例7条1号が使用を許可してはならない事由として定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとして不許可とした処分は、当時、右集会の実質上の主催者と目されるグループが、関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を繰り返し、対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきており、右集会が右会館で開かれたならば、右会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、右会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害される事態を生ずることが客観的事実によって具体的に明らかに予見されたという判示の事情の下においては、憲法21条、地方自治法244条に違反しない。
  13. 証拠調べ共助事件における証人の証言拒絶についての決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(最高裁決定 平成18年10月3日)民事訴訟法第197条
    1. 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかを判断する基準
      民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきである。
      • 民訴法は,公正な民事裁判の実現を目的として,何人も,証人として証言をすべき義務を負い(同法190条),一定の事由がある場合に限って例外的に証言を拒絶することができる旨定めている(同法196条197条)。そして,同法197条1項3号は,「職業の秘密に関する事項について尋問を受ける場合」には,証人は,証言を拒むことができると規定している。ここにいう「職業の秘密」とは,その事項が公開されると,当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいうと解される(最高裁平成11年(許)第20号同12年3月10日第一小法廷決定・民集54巻3号1073頁参照)。もっとも,ある秘密が上記の意味での職業の秘密に当たる場合においても,そのことから直ちに証言拒絶が認められるものではなく,そのうち保護に値する秘密についてのみ証言拒絶が認められると解すべきである。そして,保護に値する秘密であるかどうかは,秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるというべきである。報道関係者の取材源は,一般に,それがみだりに開示されると,報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ,将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることとなり,報道機関の業務に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になると解されるので,取材源の秘密は職業の秘密に当たるというべきである。そして,当該取材源の秘密が保護に値する秘密であるかどうかは,当該報道の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該取材の態様,将来における同種の取材活動が妨げられることによって生ずる不利益の内容,程度等と,当該民事事件の内容,性質,その持つ社会的な意義・価値,当該民事事件において当該証言を必要とする程度,代替証拠の有無等の諸事情を比較衡量して決すべきことになる。
    2. 民事事件において証人となった報道関係者が民訴法197条1項3号に基づいて取材源に係る証言を拒絶することができる場合
      民事事件において証人となった報道関係者は,当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段,方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,民訴法197条1項3号に基づき,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができる。
      • 報道機関の報道は,民主主義社会において,国民が国政に関与するにつき,重要な判断の資料を提供し,国民の知る権利に奉仕するものである。したがって,思想の表明の自由と並んで,事実報道の自由は,表現の自由を規定した憲法21条の保障の下にあることはいうまでもない。また,このような報道機関の報道が正しい内容を持つためには,報道の自由とともに,報道のための取材の自由も,憲法21条の精神に照らし,十分尊重に値するものといわなければならない(最高裁昭和44年(し)第68号同年11月26日大法廷決定・刑集23巻11号1490頁参照)。取材の自由の持つ上記のような意義に照らして考えれば,取材源の秘密は,取材の自由を確保するために必要なものとして,重要な社会的価値を有するというべきである。
      • 当該報道が公共の利益に関するものであって,その取材の手段,方法が一般の刑罰法令に触れるとか,取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく,しかも,当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため,当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く,そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には,当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり,証人は,原則として,当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。
  14. 広島市暴走族追放条例違反被告事件(広島市暴走族追放条例事件 最高裁判決平成19年9月18日 刑集第61巻6号601頁)憲法31条,広島市暴走族追放条例(平成14年広島市条例第39号)16条1項1号,17条,19条
    • 広島市暴走族追放条例16条1項
      何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
      1.公共の場所において、当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会を行うこと。
    広島市暴走族追放条例16条1項1号,17条,19条の規定を限定解釈により憲法21条1項,31条に違反しないとした事例
    • 事案
      指定暴力団の関係者で暴走族である組織Aのリーダーをしていた被告人が,判示の広場において,引退式と称する集会を強行して暴走族の存在を誇示しようと考え,組織Aなどの暴走族構成員約40名と共謀し,所属する暴走族のグループ名を刺しゅうした「特攻服」と呼ばれる服を着用し,顔面の全部又は一部を覆い隠し,円陣を組み,旗を立てる等の威勢を示して,公衆に不安又は恐怖を覚えさせるような集会を行い,市長からの中止・退去命令が出されたのに,これに従わなかった。
    • 論点
      広島市暴走族追放条例116条1項1号,17条,19条の規定の文言からすれば,その適用範囲が広範に過ぎ、「過度に広汎性ゆえ無効」か否か。
    広島市暴走族追放条例16条1項1号にいう「集会」は,暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外,服装,旗,言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団によって行われるものに限定されると解され,このように解釈すれば,同条例16条1項1号,17条,19条は,憲法21条1項,31条に違反しない。
    • 本条例の全体から読み取ることができる趣旨,さらには本条例施行規則の規定等を総合すれば,本条例が規制の対象としている「暴走族」は,本条例2条7号の定義にもかかわらず,暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には,服装,旗,言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られるものと解され,したがって,市長において本条例による中止・退去命令を発し得る対象も,被告人に適用されている「集会」との関係では,本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が,本条例16条1項1号,17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。このように限定的に解釈すれば,本条例16条1項1号,17条,19条の規定による規制は,広島市内の公共の場所における暴走族による集会等が公衆の平穏を害してきたこと,規制に係る集会であっても,これを行うことを直ちに犯罪として処罰するのではなく,市長による中止命令等の対象とするにとどめ,この命令に違反した場合に初めて処罰すべきものとするという事後的かつ段階的規制によっていること等にかんがみると,その弊害を防止しようとする規制目的の正当性,弊害防止手段としての合理性,この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし,いまだ憲法21条1項,31条に違反するとまではいえない。
      藤田宙靖裁判官及び田原睦夫裁判官の反対意見
      • 表現の刑罰規制の場面では、必ずしも法律に明るくない一般人が辞書的な率直な解釈をしたときに、当該条項から萎縮的効果(Chilling Effect)を受けるのであれば、文面違憲もしくは(適用審査の上)法令違憲で臨むべき。
  15. 助成金不交付決定処分取消請求事件(最高裁判決令和5年11月17日)独立行政法人日本芸術文化振興会法第3条,第14条
    独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長がした、劇映画の製作活動に対する助成金を交付しない旨の決定が、上記理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとされた事例
    • 芸術的な観点からは助成の対象とすることが相当といえる活動につき、本件助成金を交付すると当該活動に係る表現行為の内容に照らして一般的な公益が害されることを理由とする交付の拒否が広く行われるとすれば、公益がそもそも抽象的な概念であって助成対象活動の選別の基準が不明確にならざるを得ないことから、助成を必要とする者による交付の申請や助成を得ようとする者の表現行為の内容に萎縮的な影響が及ぶ可能性がある。このような事態は、本件助成金の趣旨ないし被上告人の目的を害するのみならず、芸術家等の自主性や創造性をも損なうものであり、憲法21条1項による表現の自由の保障の趣旨に照らしても、看過し難いものということができる。
    • 助成金の交付に係る判断において、これを交付するとその対象とする活動に係る表現行為の内容に照らして一般的な公益が害されるということを消極的な考慮事情として重視し得るのは、当該公益が重要なものであり、かつ、当該公益が害される具体的な危険がある場合に限られるものと解するのが相当である。

前条:
日本国憲法第20条
【信教の自由・政教分離】
日本国憲法
第3章 国民の権利及び義務
次条:
日本国憲法第22条
【居住・移転・職業選択の自由、外国移住・国籍離脱の自由】
このページ「日本国憲法第21条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。