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民法第395条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第2編 物権 (コンメンタール民法)

条文

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(抵当建物使用者の引渡しの猶予)

第395条
  1. 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。
    1. 競売手続の開始前から使用又は収益をする者
    2. 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者
  2. 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその1箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

改正経緯

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2003年(平成15年)改正までは、条文は以下のとおりであり「短期賃貸借保護制度」を規定していた。短期賃貸借保護制度は、抵当権設定後の抵当不動産の賃借利用を一定限度で保障する賃借人の生活の激変を緩和する趣旨の制度であったが、占有屋等による競売執行妨害にこの制度が濫用されるという弊害があったため批判も多く、現行の制度「建物明渡猶予制度」に改正された。

第六百二条ニ定メタル期間ヲ超エサル賃貸借ハ抵当権ノ登記後ニ登記シタルモノト雖モ之ヲ以テ抵当権者ニ対抗スルコトヲ得但其賃貸借カ抵当権者ニ損害ヲ及ホストキハ裁判所ハ抵当権者ノ請求ニ因リ其解除ヲ命スルコトヲ得

解説

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参照条文

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  • 民法第387条(抵当権者の同意の登記がある場合の賃貸借の対抗力) - 抵当権者の同意により賃借権に対抗力を与える制度

判例

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現行判例

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  1. 不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事(最高裁判決 平成30年4月17日)民事執行法83条民事執行法188条
    滞納処分による差押えがされた後に設定された賃借権により担保不動産競売の開始前から建物の使用又は収益をする者の民法395条1項1号に掲げる「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」該当性
    抵当権者に対抗することができない賃借権が設定された建物が担保不動産競売により売却された場合において,その競売手続の開始前から当該賃借権により建物の使用又は収益をする者は,当該賃借権が滞納処分による差押えがされた後に設定されたときであっても,民法395条1項1号に掲げる「競売手続の開始前から使用又は収益をする者」に当たる。

改正前判例

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  1. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和36年6月23日)
    民法第602条の期間を超える抵当権物賃貸借の抵当権者兼競落人に対する効力
    民法第602条所定の期間を超える建物賃貸借は、抵当権の登記後に成立したものであるときは、これを登記しても、右期間の範囲内においてもこれをもつて抵当権者兼競落人に対抗し得ない。
  2. 賃貸権確認請求(最高裁判決 昭和38年9月17日)
    民法第602条の期間をこえる土地賃貸借の抵当権者及び競落人に対する効力
    民法第602条の期間をこえる土地賃貸借は、その登記が抵当権設定登記後になされたものである以上、同条所定期間内においても、抵当権者及び競落人に対抗できない。
  3. 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和43年9月27日)
    民法第395条の適用のある期間の定のない建物賃貸借につき解約申入の正当事由が認められた事例
    民法第395条の適用のある期間の定のない建物賃貸借において、その賃貸借が成立後競落人による解約申入に至るまで、−ほとんど7年に及ぶ長期間を経過したものであるときは、他に特段の事情がないかぎり、その解約申入は借家法1条ノ2にいう「正当ノ事由」を具備するものというべきである。
  4. 土地建物所有権移転登記等(最高裁判決 昭和56年7月17日)民法第482条
    債権担保の目的でされた代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記と民法395条
    債権担保の目的でされた代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記のある不動産につき設定された短期賃借権には、民法395条の規定は類推適用されない。
  5. 賃借権設定仮登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和52年2月17日)民法第369条民法第601条
    競売手続が完結した場合と抵当権と同時に設定された抵当権者自身を権利者とする賃借権の帰すう
    抵当不動産につき、抵当権者自身を権利者とする、賃借権又は抵当債務の不履行を停止条件とする条件付賃借権が設定され、その登記又は仮登記が抵当権設定登記と順位を前後して経由された場合において、競売申立までに対抗要件を具備した短期賃借権者が現われないまま、競落によつて第三者が当該不動産の所有権を取得したときには、特段の事情のない限り、抵当権者の賃借権は、それが短期賃借権であつても消滅する。
  6. 賃貸借契約解除等(最高裁判決 平成元年6月5日)民法第602条,民法第605条
    抵当権と併用して賃借権設定仮登記を経由した者の後順位短期賃借権者に対する明渡請求の可否
    抵当権と併用して抵当不動産につき賃借権設定の予約をしその仮登記を経由した者が、予約完結権を行使して賃借権の本登記を経由しても、後順位の短期賃借権者に対し右不動産の明渡を求めることは、右短期賃貸借の解除請求とともにする場合であつてもできない。
  7. 短期賃貸借契約解除等(最高裁判決 平成3年3月22日)民法第369条,民法第423条
    民法395条ただし書の規定により解除された短期賃貸借ないしこれを基礎とする転貸借に基づき抵当不動産を占有する者に対する抵当権者の明渡請求の可否
    抵当権者は、民法395条ただし書の規定により解除された短期賃貸借ないしこれを基礎とする転貸借に基づき抵当不動産を占有する者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として又は抵当権設定者の所有物返還請求権の代位行使として、その明渡しを求めることはできない。

前条:
民法第394条
(抵当不動産以外の財産からの弁済)
民法
第2編 物権

第10章 抵当権

第2節 抵当権の効力
次条:
民法第396条
(抵当権の消滅時効)
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