民法第413条
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条文
[編集](受領遅滞)
- 第413条
- 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
- 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないことによって、その履行の費用が増加したときは、その増加額は、債権者の負担とする。
改正経緯
[編集]2017年改正前は以下のとおり。
- 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないときは、その債権者は、履行の提供があった時から遅滞の責任を負う。
解説
[編集]本条は、債権者の受領遅滞について規定している。
- 受領遅滞の法的性質について、債権者の義務をめぐり、債権者は権利者であり義務を持たないとし、法が特に債権者の義務を定めたものとする法定責任説と、債権者にも給付の実現に協力すべき義務があり、義務違反の債務不履行責任を定めたものとする債務不履行説がある。
- 法定責任説が、判例・通説の立場である。
構成
[編集]要件
[編集]- 履行の提供
- 債務者から履行が提供されていること
- いかなる行為をもって「履行の提供」とするか。→第493条(弁済の提供の方法)
- 債務者から履行が提供されていること
- 受領拒絶・受領不能
- 受領拒絶とは
- 受領不能とは
- 履行の提供
効果
[編集]- 債務が特定物の引渡しであるとき、保管責任が軽減される(本条第1項)。
- 自己の財産に対するのと同一の注意となる。故意の毀損ないし通常施される程度に至らない管理でなければ良い。
- 増加した履行費用は債権者の負担となる(本条第2項)。
- 例えば、債権者が引き取らないことにより生ずる倉庫料、自己の倉庫等が保管のために他の用途に用いられないことにより被る機会損失などの費用は債権者が負担する。
- 遅滞期間中、債権者・債務者いずれの責に負わせることのできない事故等の危険負担は債権者の負担となる(第413条の2第2項)。
- 債務が特定物の引渡しであるとき、保管責任が軽減される(本条第1項)。
- ※受領遅滞は、債権者による債務不履行の類ではないので、債務者からの解除は認められない。
参照条文
[編集]- 履行の提供(弁済の提供)
- 履行遅滞
- 民法第567条
- 売買契約において、売主が引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主の受領遅滞により、当事者双方の責めに帰することができない事由によって目的物の滅失等が生じた場合、買主はその目的物に関して、売主に契約不適合の責任を追及することはできない(危険負担が移転する)。
判例
[編集]- 損害賠償請求(最高裁判決 昭和40年12月03日)民法第493条
- 建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶した場合とその後における賃料不払を理由とする契約の解除
- 建物の賃貸人が現実に提供された賃料の受領を拒絶したときは、特段の事情がないかぎり、その後において提供されるべき賃料についても、受領拒絶の意思を明確にしたものと解すべきであり、右賃貸人が賃借人の賃料の不払を理由として契約を解除するためには、単に賃料の支払を催告するだけでは足りず、その前提として、受領拒絶の態度を改め、以後賃料を提供されれば確実にこれを受領すべき旨を表示する等、自己の受領遅滞を解消させるための措置を講じなければならない。
- 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和45年8月20日)民法第541条
- 債務者は債権者の受領遅滞を理由として契約を解除できるか。
- 債務者が債権者の受領遅滞を理由として契約を解除することは、特段の事由のないかぎり、許されない。
- 債務者の債務不履行と債権者の受領遅滞とは、その性質が異なるのであるから、一般に後者に前者と全く同一の効果を認めることは民法の予想していない。
- 受領遅滞に対し債務者のとりうる措置としては、供託・自動売却等の規定を設けている。されば、特段の事由の認められないとき、債権者の受領遅滞を理由として債務者は契約を解除することができない。
- 損害賠償等請求(最高裁判決 昭和46年12月16日)民法第1条、民法第555条
- 硫黄鉱石売買契約の買主に引取義務が認められた事例
- 硫黄鉱区の採掘権を有する甲が鉱石を採掘して乙に売り渡す硫黄鉱石売買契約において、甲は、乙に対し、右契約の存続期間を通じて採掘する鉱石の全量を売り渡す約定があつたなど判示の事情がある場合には、信義則上、乙には、甲が右期間内に採掘した鉱石を引き取る義務があると解すべきである。
- 鉱石売買契約においては、「売主」が右契約期間を通じて採掘する鉱石の全量が売買されるべきものと定められており、「売主」は「買主」に対し右鉱石を継続的に供給すべきものなのであるから、信義則に照らして考察するときは、「売主」は、右約旨に基づいて、その採掘した鉱石全部を順次「買主」に出荷すべく、「買主」はこれを引き取り、かつ、その代金を支払うべき法律関係が存在していたものと解するのが相当である。したがつて、「買主」には、「売主」が採掘し、提供した鉱石を引き取るべき義務があつたものというべきであり、「買主」の前示引取の拒絶は、債務不履行の効果を生ずるものといわなければならない。
- 建物収去土地明渡(最高裁判決 昭和56年3月20日)民法第266条、民法第276条
- 土地所有者が地代の受領を拒絶し又はこれを受領しない意思が明確であるため地上権者において提供をするまでもなく債務不履行の責を免れる事情にある場合と民法266条1項、276条に基づく地上権消滅請求
- 土地所有者が地代の受領を拒絶し又は地上権の存在を否定する等弁済を受領しない意思が明確であるため地上権者が言語上の提供をするまでもなく地代債務の不履行の責を免れるという事情がある場合には、土地所有者は、みずから受領拒絶の態度を改め、以後地代を提供されればこれを確実に受領すべき旨を明らかにしたのち相当期間を経過したか、又は相当期間を定めて催告をしたにもかかわらず地上権者が右期間を徒過した等、自己の受領遅滞又はこれに準ずる事態を解消させる措置を講じたのちでなければ、民法266条1項、276条に基づく地上権消滅請求の意思表示をすることができない。
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