日本国憲法第24条
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条文
[編集]【家族生活における個人の尊厳、両性の平等】
- 第24条
- 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
- 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
解説
[編集]- 明治憲法体制において、家族生活は「家」を中心に構成され、主たる財産は家督の形で、原則は男性である家長が管理・支配し相続された。その法制度の下、婚姻は成立・解消(離婚)とも、家長の合意を要した。また、未成年の場合は勿論、成人であるにもかかわらず[1]、一定の年齢(男性30歳、女性25歳)までは、父母等の合意も要した[2]。第1項における『合意のみ』の趣旨は、これらを明確に否定するものである。
- 第1項
- 第2項
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- 観点:婚姻及び家族に関する事項の社会状況変化に対する応答性
- 婚姻及び家族に関する事項は、国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ、それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断を行うことによって定められるべきものであり、その内容の詳細については、憲法が一義的に定めるのではなく、法律によってこれを具体化することがふさわしい※。
- 立法の裁量と限界
- 婚姻及び家族に関する事項について、具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに、その立法に当たっては、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請、指針を示すことによって、その裁量の限界を画したものといえる※。
- 観点:婚姻及び家族に関する事項の社会状況変化に対する応答性
参照条文
[編集]判例
[編集]- 所得税審査決定取消事件(最高裁判決 昭和36年9月6日)民法762条1項、所得税法1条1項、所得税法9条1項本文
- 民法第762条第1項の憲法第24条適否。
- 民法第762条第1項は憲法第24条に違反しない。
- 憲法24条の法意は、民主主義の基本原理である個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および家族の関係について定めたものであり、男女両性は本質的に平等であるから、夫と妻との間に、夫たり妻たるの故をもつて権利の享有に不平等な扱いをすることを禁じたものであつて、結局、継続的な夫婦関係を全体として観察した上で、婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を享有することを期待した趣旨の規定と解すべく、個々具体の法律関係において、常に必らず同一の権利を有すべきものであるというまでの要請を包含するものではない。
- 民法762条1項の規定をみると、夫婦の一方が婚姻中の自己の名で得た財産はその特有財産とすると定められ、この規定は夫と妻の双方に平等に適用されるものであるばかりでなく、所論のいうように夫婦は一心同体であり一の協力体であつて、配偶者の一方の財産取得に対しては他方が常に協力寄与するものであるとしても、民法には、別に財産分与請求権、相続権ないし扶養請求権等の権利が規定されており、右夫婦相互の協力、寄与に対しては、これらの権利を行使することにより、結局において夫婦間に実質上の不平等が生じないよう立法上の配慮がなされている。
- 民法第762条第1項は憲法第24条に違反しない。
- 所得税法が夫婦の所得を合算切半して計算することにしていないことの憲法第24条適否。
- 所得税法が夫婦の所得を合算切半して計算することにしていないからといつて憲法第24条に違反しない。
- 所得税法が、生計を一にする夫婦の所得の計算について、民法762条1項によるいわゆる別産主義に依拠しているものであるとしても、上記のとおり民法第762条1項が憲法第24条に違反していないのであるから所得税法同条項が憲法24条に違反するものといえない。
- 所得税法が夫婦の所得を合算切半して計算することにしていないからといつて憲法第24条に違反しない。
- 民法第762条第1項の憲法第24条適否。
- 損害賠償請求事件(最高裁大法廷判決平成27年12月16日 「平成27年判決」)憲法14条、民法733条、民法772条、国家賠償法1条1項
- 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
- 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は憲法14条1項、24条2項に違反しない。
- 民法772条2項は、「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定して、出産の時期から逆算して懐胎の時期を推定し、その結果婚姻中に懐胎したものと推定される子について、同条1項が「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」と規定している。そうすると、女性の再婚後に生まれる子については、計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって、父性の推定の重複が回避されることになる。
- 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は憲法14条1項、24条2項に違反しない。
- 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
- 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は、平成20年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていた。
- 本件規定のうち100日超過部分は、遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには、婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして、その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される。
- 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は、平成20年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていた。
- 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
- 損害賠償請求事件(夫婦別姓を求めたもの 最高裁判決 平成27年12月16日 民集第69巻8号2586頁)憲法13条1項、憲法14条1項、民法第750条
- 民法750条と憲法24条
- 民法750条は憲法24条に違反しない。
- 氏は、家族の呼称としての意義があるところ、現行の民法の下においても、家族は社会の自然かつ基礎的な集団単位と捉えられ、その呼称を一つに定めることには合理性が認められる。
- 夫婦が同一の氏を称することは、家族という一つの集団を構成する一員であることを、対外的に公示し、識別する機能を有している。特に、嫡出子であることを示すために子が両親双方と同氏である仕組みを確保することにも一定の意義がある。夫婦同氏制の下においては、子の立場として、いずれの親とも等しく氏を同じくすることによる利益を享受しやすい。
- 本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではなく、夫婦がいずれの氏を称するかは、夫婦となろうとする者の間の協議による自由な選択に委ねられている。
- 婚姻によって氏を改める者にとって、そのことによりいわゆるアイデンティティの喪失感を抱いたり、婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用、評価、名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合があることは否定できない。そして、氏の選択に関し、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば、妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる。しかし、夫婦同氏制は、婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく、近時、婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ、上記の不利益は、このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得る。
- 上記のような状況の下で直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはできない。
- 民法750条は憲法24条に違反しない。
- 民法750条と憲法24条
- 市町村長処分不服申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件(最高裁決定 令和3年6月23日)民法第751条、戸籍法第74条
- 民法750条及び戸籍法74条1号と憲法24条
- 民法750条及び戸籍法74条1号は憲法24条に違反しない。(補足意見、意見及び反対意見あり)
- 損害賠償請求事件(最高裁決定 令和4年3月22日)民法第751条、戸籍法第74条
- 立法不作為の違法を理由とする国家賠償請求訴訟において、民法750条及び戸籍法74条1号は憲法24条に違反するとの意見が付された事例
脚注
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