民法第723条

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法学民事法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文[編集]

名誉毀損における原状回復)

第723条
他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

解説[編集]

名誉毀損の場合における原状回復措置を定めている。金銭賠償の原則の例外を定めた規定である。「名誉を回復するのに適当な処分」の具体例としては、謝罪広告などがある。

アクセス権・反論権[編集]

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 謝罪広告請求(最高裁判決  昭和31年7月4日)民訴法733条(現民事執行法第171条),日本国憲法第19条
    1. 謝罪広告を命ずる判決と強制執行
      新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、民訴第733条により代替執行をなし得る
    2. 右判決は憲法第19条に反しないか
      右判決は憲法第19条に反しない。
      原判決の是認した被上告人の本訴請求は、上告人が判示日時に判示放送、又は新聞紙において公表した客観的事実につき上告人名義を以て被上告人に宛て「右放送及記事は真相に相違しており、貴下の名誉を傷け御迷惑をおかけいたしました。ここに陳謝の意を表します」なる内容のもので、結局上告人をして右公表事実が虚偽且つ不当であつたことを広報機関を通じて発表すべきことを求めるに帰する。されば少くともこの種の謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを命ずる原判決は、上告人に屈辱的若くは苦役的労苦を科し、又は上告人の有する倫理的な意思、良心の自由を侵害することを要求するものとは解せられない。.
  2. 名誉回復並びに損害賠償請求(最高裁判決 昭和41年4月21日)日本国憲法第19条,日本国憲法第21条1項
    新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決の合憲性
    新聞紙に謝罪広告を掲載することを命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明する程度のものにあつては、憲法第19条に違反しないことは当裁判所の大法廷の判決(項番1)の示すところであり、右のごとき判決が憲法第21条第1項に違反しないことは、右判決の趣旨に徴して明らかである(注、本件は新聞紙の発行人に対するものを含み、代替執行できない点が前記大法廷判決と異なることに留意のこと)
  3. 委嘱状不法発送謝罪請求(最高裁判決 昭和45年12月18日)
    民法723条にいう名誉の意義
    民法723条にいう名誉とは、人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価、すなわち社会的名誉を指すものであつて、人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価、すなわち名誉感情は含まないものと解すべきである。
  4. 反論文掲載(最高裁判決 昭和62年4月24日)日本国憲法第21条,民法第1条,民法第709条,民法第710条,刑法第230条ノ2
    人格権又は条理を根拠とするいわゆる反論文掲載請求権の成否
    新聞記事に取り上げられた者は、当該新聞紙を発行する者に対し、その記事の掲載により名誉毀損の不法行為が成立するかどうかとは無関係に、人格権又は条理を根拠として、右記事に対する自己の反論文を当該新聞紙に無修正かつ無料で掲載することを求めることはできない。
  5. 訂正放送等請求事件(最高裁判決 平成16年11月25日)放送法第4条
    放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等が放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利の有無
    放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等は,放送事業者に対し,放送法4条1項の規定に基づく訂正又は取消しの放送を求める私法上の権利を有しない。

前条:
民法第722条
(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
民法
第3編 債権
第5章 不法行為
次条:
民法第724条
(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
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