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民法第892条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第5編 相続 (コンメンタール民法)

条文

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推定相続人の廃除)

第892条
遺留分を有する推定相続人相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

解説

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Wikipedia
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ウィキペディア相続廃除の記事があります。
廃除とは、被相続人が生前において、相続が開始した場合に相続人となるべき者(推定相続人)を遺留分も含めて相続人の地位を奪う制度であり、現代民法に残る「勘当」の制度である。明治民法においても第998条において定められていた。なお、推定家督相続人の地位を奪う、いわゆる「廃嫡」については、民法第975条以下に規定されていた。
理念としては、明治民法でも同様ではあるが、現代社会においては、親による虐待の事例も少なくないため、その場合などには親に対する廃除もありうる。
廃除の対象は「遺留分を有する推定相続人」であるので、兄弟姉妹などそれ以外の推定相続人には適用されないため、それらを相続から除外するためには、遺言を要する。

要件

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家庭裁判所による審判、又は審判に代わる裁判の判決による。
家庭裁判所に対しては、被相続人のみが審判を請求することができる。ただし、遺言によるものでも良い(第893条)。被相続人が成年後見等の対象者であっても、後見人等によらず本人がなすことができる(家事審判手続法第188条による同法第118条の準用)。
廃除の対象となるのは「遺留分を有する推定相続人」である。兄弟姉妹は遺留分を有さないので(第1028条)、廃除の対象にはならない。
廃除にあたって、対象となる推定相続人には、被相続人に対して、「虐待」「重大な侮辱」「その他著しい非行」などの事実があることが必要とされる。裁判所は、当該推定相続人に対して、申立の認否、否認する場合はその資料等を求め、適否につき審判又は裁判する。
  • 「その他著しい非行」は、重大な刑法犯罪、被相続人の財産の浪費・無断処分、不貞行為、素行不良、長期の音信不通、行方不明など広範に認められうる。ただし、親の介護を他の兄弟姉妹に任せるなどを遺棄として認めうるかは個別事情の判断を要する。

効果

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  • 相続人から除かれる。
    • 遺留分の請求権も喪失する。
    • 遺言の受遺者としての能力は失わない(民法第965条は「欠格」に準用されるが、「廃除」には準用されない)。
      廃除したものに対して遺贈等をなすことは、一種の宥恕とも解されることによる。しかしながら、遺言における取消し(第884条第2項)はなされていないため、相続人としての地位を回復するものではない。
    • 相続開始以後に、廃除が確定した場合、相続開始時に遡って、相続資格を失う。
  • 欠格者に子又はその直系卑属がある場合、欠格者の相続権は代襲される(第887条)。
    即ち、欠格者は相続において死亡したものとみなされているのと同様である。
  • 被相続人は廃除の取消しをいつでも又は遺言によって家庭裁判所に請求できる(第894条)。

参照条文

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判例

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参考

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明治民法において、本条には以下の規定があった。趣旨は、民法第830条に継承された。

  1. 無償ニテ子ニ財産ヲ与フル第三者カ親権ヲ行フ父又ハ母ヲシテ之ヲ管理セシメサル意思ヲ表示シタルトキハ其財産ハ父又ハ母ノ管理ニ属セサルモノトス
  2. 前項ノ場合ニ於テ第三者カ管理者ヲ指定セサリシトキハ裁判所ハ子、其親族又ハ検事ノ請求ニ因リ其管理者ヲ選任ス
  3. 第三者カ管理者ヲ指定セシトキト雖モ其管理者ノ権限カ消滅シ又ハ之ヲ改任スル必要アル場合ニ於テ第三者カ更ニ管理者ヲ指定セサルトキ亦同シ
  4. 第二十七条乃至第二十九条ノ規定ハ前二項ノ場合ニ之ヲ準用ス

前条:
民法第891条
(相続人の欠格事由)
民法
第5編 相続
第2章 相続人
次条:
民法第893条
(遺言による推定相続人の廃除)
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