民法第482条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
代物弁済 から転送)

法学民事法民法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディア代物弁済の記事があります。

条文[編集]

代物弁済

第482条
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

改正経緯[編集]

2017年改正により、以下のとおり改正された。

弁済の主体
  • (改正前)債務者が、
  • (改正後)弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、
代物弁済が可能である条件
  • (改正前)債権者の承諾を得て、
  • (改正後)債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、
弁済の態様
  • (改正前)その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、
  • (改正後)その弁済者が当該(=契約で定めた)他の給付をしたとき

解説[編集]

当初決められていた給付以外の給付でも弁済と同一の効力を得られる場合があることとそのための要件について規定している。
決済に際して、手形・小切手の発行又は既発手形等を裏書き譲渡する行為は、代物弁済と解されている(参考. 民法第513条#改正経緯)。
実際は、債権担保のために不動産を代替物とした、代物弁済の予約・停止条件付代物弁済契約となることが多く、この場合、担保物件法の範疇である。また、そのほとんどは、仮登記担保契約に関する法律で規律されている。

参照条文[編集]

  • 仮登記担保契約に関する法律
    第1条(趣旨)
    この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以下「仮登記担保契約」という。)の効力等に関し、特別の定めをするものとする。
債権の消滅原因
弁済(民法第473条, 民法第492条
弁済以外 代物弁済(民法第482条
供託(民法第494条
相殺(民法第505条
更改(民法第513条
免除(民法第519条
混同(民法第520条
時効(民法第166条

判例[編集]

  1. 土地所有権確認等請求(最高裁判決 昭和27年11月20日)民訴法第258条,民法第90条
    代物弁済の予約が公序良俗に反すると認められる一事例
    代物弁済の予約につき、後記事由(以下に記載)があるときは、公序良俗に反し無効である。
    • 貸主が借主の窮迫に乗じ短期間の弁済期を定め、借主をして期限に弁済しないときは貸金額の数倍の価額を有する不動産を代物弁済とすることを約束せしめたときはその約束は公序良俗に反し無効であるといわねばならない(大阪高判昭和24年3月30日民集6巻10号1034頁)
  2. 貸金請求(最高裁判決 昭和39年11月26日)
    民法第482条にいう「他ノ給付」が不動産の所有権を移転することにある場合と代物弁済成立の要件。
    民法第482条にいう「他の給付」が不動産の所有権を移転することにある場合には、当事者がその意思表示をするだけではたりず、登記その他引渡行為を終了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ、代物弁済は成立しないと解すべきである。
  3. 債務不存在確認等(最高裁判決 昭和40年04月30日)
    不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合における債務消滅の要件。
    不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合の債務消滅の効力は、原則として、単に所有権移転の意思表示をなすのみでは足らず、所有権移転登記手続の完了によつて生ずるものと解すべきである。
  4. 登記抹消請求 (最高裁判決  昭和41年11月18日)
    1. 代物弁済予約上の権利は弁済による代位の目的となるか
      いわゆる代物弁済予約上の権利は、民法第501条本文の「債権ノ担保トシテ債権者カ有セシ権利」にあたり、同条による代位の目的となる。
    2. 第三取得者の取得後に弁済をする保証人と民法第501条第1号所定の代位の附記登記の要否
      担保権の目的である不動産の第三取得者の取得後に当該債務の弁済をする保証人は、民法第501条第1号所定の代位の附記登記をしなくても、右第三取得者に対して債権者に代位する。
  5. 所有権移転登記等請求(最高裁判決 昭和40年12月03日)
    実体関係に符合しないものとして仮登記が無効とされた事例。
    代物弁済の予約をした債権者が、その妻名義で所有権移転請求権保全の仮登記をしたときは、その仮登記は順位保全の効力を有しない。
  6. 貸金請求(最高裁判決 昭和43年11月19日)
    不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合に債務消滅に関する特約が有効とされた事例
    債務者が不動産所有権の譲渡をもつて代物弁済をする場合でも、債権者が右不動産の所有権移転登記手続に必要な一切の書類を債務者から受領しただけでただちに代物弁済による債務消滅の効力を生ぜしめる旨の特約が存するときには、債権者が債務者から右書類を受領した時に、代物弁済による債務消滅の効力が生ずる。
  7. 土地建物所有権移転登記等(最高裁判決 昭和56年07月17日)民法第395条
    債権担保の目的でされた代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記と民法395条
    債権担保の目的でされた代物弁済予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記のある不動産につき設定された短期賃借権には、民法395条の規定は類推適用されない。
    • 2003年(平成15年)改正により短期賃借権保護制度は廃止された。民法第602条

前条:
民法第481条
(差押えを受けた債権の第三債務者の弁済)
民法
第3編 債権

第1章 総則
第6節 債権の消滅

第1款 弁済
次条:
民法第483条
(特定物の現状による引渡し)
このページ「民法第482条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。