自然環境保全法

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ウィキペディア自然環境保全法の記事があります。

日本の自然環境保全法及び同法に基づく自然環境保全地域等に関する教科書である。

概要[編集]

w:自然環境保全法を参照。所管は環境省である。本法の公布、施行をもって、自然保護法制の体系が形成され、当時の公害・環境法整備が一段落したとされた[1][2]

主な改正として、

  • 1973年施行(昭和48年法律第73号) - 普通地区における着手制限制度(第29条)の創設等[1]
  • 1990年施行(平成2年法律第26号) - 動植物を殺傷し、又は損傷する行為への制限導入等[2] - 参考:w:朝日新聞珊瑚記事捏造事件(契機となった事件)[3]
  • 1993年施行(平成5年法律第92号) - 環境基本法の施行に伴う一部条文(第1条にあった「自然環境の保全の基本理念その他自然環境の保全に関し基本となる事項を定める」という文言、自然環境保全審議会関係等)の同法への移行
  • 2010年施行(平成21年法律第47号) - 海中特別地区→海域特別地区、生態系維持回復事業(第4章第3節)の創設、他[3]

がある。

条文[編集]

構成等を含めてコンメンタール自然環境保全法参照。

目的[編集]

自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって、自然環境を保全することが特に必要な区域等の生物の多様性の確保その他の自然環境の適正な保全を総合的に推進することにより、広く国民が自然環境の恵沢を享受するとともに、将来の国民にこれを継承できるようにし、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること第1条

環境基本法の施行以前は、自然環境の保全に関し基本となる事項を定めるということがあったが、これについては同法に移行した[4]

「自然公園法その他の自然環境の保全を目的とする法律と相まって」については、自然環境の保全に関係する法令は多岐にわたる。#自然公園法との関係、コンメンタール自然環境保全法第1条を参照。

自然公園法との関係[編集]

本法と自然公園法(国立公園法1932年制定、同法を発展解消させた形で1957年公布)は、ともに自然保護に関する目的で、区域を指定して法令で行為への規制をかけるもの(いわゆる自然保護区)であるが、本法の制定時の経緯もあり、両者の重複適用は排除されている。さらに、両法の指定区域間(自然環境保全地域等 - 自然公園)での指定換えも殆ど行われていない。

詳細は「自然公園法と自然環境保全法」を参照。

財産権の尊重及び他の公益との調整[編集]

本法に基づく規制は、財産権、他の公益への影響が大きいため、第3条に、財産権の尊重及び他の公益との調整に関する規定を設けている。

詳細はコンメンタール自然環境保全法第3条を参照。

自然環境保全地域等[編集]

本法は、区域を指定して法令で行為への規制をかけるもので、その規制の適用を受ける地域に、原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域がある(これらを総称して「自然環境保全地域等」という)。

#財産権の尊重及び他の公益との調整で記載しているような問題もあり、指定については地元の要望、理解が薄い現状がある。

詳細は、w:自然環境保全地域を参照。

原生自然環境保全地域[編集]

原生自然環境保全地域とは、

  1. その区域における自然環境が人の活動によって影響を受けることなく原生の状態を維持しており、
  2. かつ、政令で定める面積以上の面積を有する土地の区域であって、国又は地方公共団体が所有するもの(森林法により指定された保安林の区域を原則として除く)

のうち、当該自然環境を保全することが特に必要なもので、環境大臣が指定したものである(第14条)。この国又は地方公共団体が所有する土地に限定される理由に、下記のとおり行為規制と私権との調整が困難なことがある[5]

行為規制[編集]

第17条第1項に「してはならない」行為が列挙されている。自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域と対比すると、「禁止制」とも言える。

例外として、次のものがある。

  1. 環境大臣が学術研究その他公益上の事由により特に必要と認めて許可した場合(同条第1項但し書き)。
  2. 非常災害のために必要な応急措置として行う場合(同条第1項但し書き)。
  3. 原生自然環境保全地域に関する保全事業の執行として行なう行為(同条第5項第1号)。
  4. 通常の管理行為又は軽易な行為のうち、原生自然環境保全地域における自然環境の保全に支障を及ぼすおそれがないもので環境省令で定めるもの(同条第5項第2号)。

違反に対しては、罰則がある(第53条第54条)。

自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域[編集]

自然環境保全地域とは、

  1. 高山性植生又は亜高山性植生が相当部分を占める森林又は草原の区域でその面積が政令で定める面積等以上のもの
  2. 優れた天然林が相当部分を占める森林の区域(これと一体となって自然環境を形成している土地の区域を含む。)でその面積が政令で定める面積以上のもの
  3. 地形若しくは地質が特異であり、又は特異な自然の現象が生じている土地の区域及びこれと一体となって自然環境を形成している土地の区域でその面積が政令で定める面積以上のもの
  4. その区域内に生存する動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海岸、湖沼湿原又は河川の区域でその面積が政令で定める面積以上のもの
  5. その海域内に生存する熱帯魚、さんご、海藻その他の動植物を含む自然環境が優れた状態を維持している海域でその面積が政令で定める面積以上のもの
  6. 植物の自生地、野生動物の生息地その他の政令で定める土地の区域でその区域における自然環境が前各号に掲げる区域における自然環境に相当する程度を維持しているもののうち、その面積が政令で定める面積以上のもの

のうち、自然的社会的諸条件からみてその区域における自然環境を保全することが特に必要なもので、環境大臣が指定したものである(第22条)。

都道府県自然環境保全地域とは、

  1. その区域における自然環境が自然環境保全地域に準ずる土地の区域で、その区域の周辺の自然的社会的諸条件からみて当該自然環境を保全することが特に必要なもの

で、都道府県が条例により指定するものである(第45条)。

自然環境保全地域、都道府県自然環境保全地域とも、さらに、特別地区、海域特別地区(自然環境保全地域のみ)、普通地区に区分される。

さらなる区分
原生自然環境保全地域
自然環境保全地域 特別地区
海域特別地区
普通地区
都道府県自然環境保全地域 特別地区
普通地区

行為規制[編集]

  • 自然環境保全地域と自然公園の区域(地域)分け対比
自然環境保全地域 特別地区(自然環境保全法第25条
一定の行為についての許可制
海域特別地区(自然環境保全法第27条
一定の行為についての許可制
普通地区(自然環境保全法第28条
一定の行為についての届出制
自然公園 特別地域(自然公園法第20条
特別保護地区、利用調整地区の指定も可
一定の行為についての許可制
海域公園地区(自然公園法第22条
利用調整地区の指定も可
一定の行為についての許可制
普通地域(自然公園法第33条
一定の行為についての届出制

自然環境保全地域、自然公園とも、右に記載のいずれかの地区・地域に含まれる。


特別地区における許可制、普通地区における届出制がある。

自然環境保全地域における違反に対しては、本法に罰則がある(第53条、第54条、第55条第56条)。

生態系維持回復事業[編集]

自然環境保全地域に関する保全計画に基づいて行う事業であって、当該地域における生態系の維持又は回復を図るものをいう(第30条の2)。これは、自然公園法にも類似の規定がある。

関係条例[編集]

各都道府県の都道府県自然環境保全地域について規定する条例を掲載する。なお、リンク設定の制約から例規集ページへのリンクとなっているものもあり、その場合は条例名等でさらに検索することが必要となる。

脚注[編集]

  1. ^ 『自然環境保全法の解説』推薦のことば(頁番号なし)
  2. ^ 大塚『環境法』有斐閣12頁
  3. ^ 朝日新聞1990年4月9日 夕刊2頁
  4. ^ 環境省EICネット
  5. ^ 有斐閣『環境法』280頁

参考文献[編集]

文献の整備状況[編集]

本法の適用される自然環境保全地域等は、利用する目的の地域ではなく、社会一般にはなじみが薄くなりがちとなる。本法を専門的に扱う文献は決して多くないのが現状である。国立国会図書館蔵書検索・申込システムでタイトルに「自然環境保全法」を入力して検索しても、ヒット数点である。タイトルに「自然環境保全地域」を入力して検索しても個別の地域の調査資料が数十点ヒットする程度である。

市販の書籍では、環境法全般を扱ったものの中で触れられているという程度以上のものを見つけることは困難である。

その背景[編集]

本法について直接報道される機会は多くなく、日本経済新聞者などの新聞記事データベースで「自然環境保全法」で検索しても数多くヒットするわけではない。

土地取引でも、宅地建物取引業法に基づく重要事項説明において、国土交通省などの説明書様式にある、利用制限に係る法令の一覧表示に本法は掲載されてなく[1]、本法の適用される土地が取引の対象となることの少なさが窺える。

  1. ^ 国土交通省(社)不動産流通経営協会6頁(いずれも自然公園法は掲載されている)- 取引対象の土地が自然環境保全地域等に該当する場合は、重要事項説明において、法令上の利用制限としてそのことを説明することとなる。