民法第92条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)民法第92条

条文[編集]

(任意規定と異なる慣習

第92条
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

解説[編集]

任意規定(「法令中の公の秩序に関しない規定」)と慣習の効力の優劣を定めた規定である。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 手数料請求(最高裁判例 昭和43年08月20日)民訴法第185条,宅地建物取引業法(昭和39年法律第286号による改正前のもの)17条1項,愛知県宅地建物取引業者の報酬額に関する規則(昭和27年愛知県規則第59号)2条
    宅地建物取引業者の受ける報酬額についの慣習の認定に審理不尽・理由不備の違法があるとされた事例
    宅地建物取引業者が売買の媒介を行なう場合に受ける報酬について、愛知県宅地建物取引業者の報酬額に関する規則(昭和27年愛知県規則第59号)の定める最高額により授受される慣習が存在するとするためには、これを相当として首肯するに足りる合理的根拠を必要とし、原判決挙示の証拠のみによつてたやすくこれを認定したのは、審理不尽・理由不備の違法がある。
  2. 就業規則の改正無効確認請求(最高裁判例 昭和43年12月25日)労働基準法第89条,労働基準法第93条(2007年改正前の条文、同年制定労働契約法第12条に継承)
    1. 労働者に不利益な労働条件を一方的に課する就業規則の作成または変更の許否
      使用者が、あらたな就業規則の作成または変更によつて、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべきである。
    2. 55歳停年制をあらたに定めた就業規則の改正が有効とされた事例
      従来停年制のなかつた主任以上の職にある被用者に対して、使用者会社がその就業規則であらたに55歳の停年制を定めた場合において、同会社の般職種の被用者の停年が50歳と定められており、また、右改正にかかる規則条項において、被解雇者に対する再雇用の特則が設けられ、同条項を一律に適用することによつて生ずる苛酷な結果を緩和する途が講ぜられている等判示の事情があるときは、右改正条項は、同条項の改正後ただちにその適用によつて解雇されることに上なる被用者に対しても、その同意の有無にかかわらず、効力を有するものと解すべきである。
    3. 就業規則の法的性質
      就業規則は、当該事業場内での社会的規範であるだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、法的規範としての性質を認められるに至つているものと解すべきである。
      • 「就業規則」の法規範性自体は2007年(平成19年)制定労働契約法にて法定された。
  3. 建物収去土地明渡請求(最高裁判例 昭和51年10月01日)借地法第4条,借地法第6条
    宅地賃貸借契約の法定更新に際し賃借人が賃貸人に対し更新料を支払う旨の商慣習又は事実たる慣習の存否
    宅地賃貸借契約の法定更新に際し、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習は存在しない。
  4. 地位確認等請求事件(最高裁判例 平成18年03月17日)民法第2条,民法第90条,民法第263条,民法第294条,日本国憲法第14条1項
    1. 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例
      A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。
    2. 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法第90条の規定により無効とされた事例
      A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法第90条の規定により無効である。

前条:
民法第91条
(任意規定と異なる意思表示)
民法
第1編 総則

第5章 法律行為

第1節 総則
次条:
第2節 意思表示
民法第93条
(心裡留保)
このページ「民法第92条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。