高等学校数学>高等学校理数数学
高等学校理数科で扱われている科目。
理数数学I、理数数学II、理数数学特論の三科目に分かれる。(理数数学I、IIが必修科目)
高等学校普通科数学の単元を履修順を入れ替えて再構成し、発展事項を追加した上で学ぶ。(なお、普通科であっても進学校ならば扱う発展事項も含む。)
学習指導要領における性格づけ[1]
科目とその性格
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含まれる単元とその内容(括弧内は対応する普通科数学の単元)
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備考など
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理数数学I
- 事象を数学的に考察し表現する基礎的な能力を養い、知識や技能などを的確に活用する態度を育てることをねらいとし、中学校数学の学習内容を踏まえつつ「理数数学II」及び「理数数学特論」の履修への基礎を築くものである。
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- 数と式(数学I「数と式」)
- 図形と計量(数学A「図形の性質」、数学I「図形と計量」)
- 二次関数(数学I「二次関数」、数学III「極限」内「分数関数・無理関数」)
- 二次関数とそのグラフ
- 関数の表記f(x)
- 二次関数
- 二次関数のグラフと平行移動・対称移動
- 二次関数の値の変化
- 二次不等式
- 分数関数・無理関数
- 指数関数・対数関数(数学II「指数関数・対数関数」)
- データの分析(数学I「データの分析」、数学B「数学と社会生活」内「回帰分析」)
- データの散らばり
- データの相関
- 仮説検定の考え方
- 回帰分析
- 場合の数と確率(数学A「場合の数と確率」)
- 場合の数
- 確率
- 確率とその基本的な法則
- 独立な試行と確率
- 条件付き確率
- 期待値
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(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
- 「数と式」において、真理値表を用いて「」の否定が「」であることを扱う。
- 「図形と計量」において、三角形の垂心・傍心[注釈 1]、ヘロンの公式[注釈 1]を扱う。
- 「二次関数」において、二次不等式の解析的解法と代数的解法を比較しそれぞれの利点を理解することを扱う他、「理数物理」と関連した内容(電気抵抗の並列接続、単振子など)も触れる。
- 「指数関数・対数関数」において、「理数化学」と関連した内容(水素イオン指数)に触れる。
- 「場合の数と確率」において、3つ以上の集合の交わり[注釈 2]や重複組合せ[注釈 1]を扱う。
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理数数学II
- 事象を数学的に考察し表現する能力を伸ばし、知識及び技能などを積極的に活用する態度を育てることをねらいとし、「理数数学I」の基礎の上に立って、理数に関する学科の特色が生かされるようにしている。
- この科目は複数年次にわたって履修することが考えられるが、その場合は学習の系統性に留意して指導計画の作成にあたることが大切である。
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- いろいろな式(数学II「いろいろな式」)
- 数列(数学B「数列」)
- 三角関数と複素数平面(数学II「三角関数」、数学C「平面上の曲線と複素数平面」内「複素数平面」)
- 角の拡張
- 三角関数
- 三角関数の加法定理
- 複素数平面
- 図形と方程式(数学II「図形と方程式」、数学C「平面上の曲線と複素数平面」内「平面上の曲線」)
- 直線と円
- 軌跡と領域
- 平面上の曲線
- 二次曲線 (直交座標による表示)
- 媒介変数による表示
- 極座標による表示
- 極限(数学III「極限」)
- 数列の極限
- 数列{} の極限
- 無限等比級数の和
- 関数とその極限
- 微分法(数学II「微分・積分の考え」内「微分の考え」、数学III「微分法」)
- 導関数
- 微分係数と導関数
- 関数の和・差・積・商の導関数
- 合成関数・逆関数の導関数
- 三角関数・指数関数・対数関数の導関数
- 導関数の応用
- 接線、関数の値の増減、極大・極小、グラフの凹凸、速度・加速度
- 積分法(数学II「微分・積分の考え」内「積分の考え」、数学III「積分法」)
- 不定積分と定積分
- いろいろな関数の積分
- 積分の応用
- 統計的な推測(数学B「統計的な推測」)
- 確率分布
- 確率変数と確率分布
- 確率変数の平均、分散、標準偏差
- 二項分布
- 正規分布
- 統計的な推測
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(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
- 「いろいろな式」において、三次関数における解と係数の関係[注釈 1]について扱う。
- 「数列」において、隣接三項間漸化式[注釈 1]や分数漸化式[注釈 1]など、様々なタイプの漸化式を扱う。
- 「三角関数と複素数平面」において、和↔︎積の公式[注釈 1]を扱う他、「理数物理」に関連した内容(音の合成など)に触れたり複素関数(一次関数・分数関数に限る)について扱う。
- 「図形と方程式」において、2円の共有点の座標や共通接線、共有点を通る曲線等[注釈 1]について扱う他、「理数物理」に関連した内容(二次曲線における反射の法則など)について触れる。
- 「極限」において、無限級数で定義される関数(など)について扱う。
- 「微分法」において、一次と二次の近似式[注釈 1]を扱う他、逆三角関数や双曲線関数・逆双曲線関数などを扱う。
- 「積分法」において、微分方程式[注釈 1]や台形公式、シンプソンの公式を扱う。
- 「統計的な推測」において、一様分布や検定、検定を扱う。
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理数数学特論
- より広い数学の分野にわたって事象を数学的に考察し表現する能力を伸ばし、知識や技能などを積極的に活用する態度を育てることをねらいとしている。
- 生徒の特性や学校の実態、単位数等に応じて内容を適宜選択して履修させる科目である。
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- ベクトル(数学C「ベクトル」)
- 行列とその応用(数学C「数学的な表現の工夫」内「行列による表現とその演算」、旧々課程数学C「行列とその応用」内「行列の応用」)
- 行列による表現とその演算
- 行列による表現
- 行列の和と差、実数倍
- 行列の積
- 逆行列
- 行列の応用
- 離散グラフ(数学C「数学的な表現の工夫」内「離散グラフによる表現」)
- 一筆書き
- 最短経路
- 隣接行列
- 経路の数え上げと行列の累乗
- 数学と生活や社会との関わり(数学A「数学と人間の活動」、数学B「数学と社会生活[注釈 3]」)
- 数量や図形と人間の活動
- 約数と倍数・ユークリッドの互除法・記数法
- 平面や空間における座標・2点間の距離
- 数学と文化
- 数学的と社会生活
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(普通科数学にない発展・拡充事項の例)
- 「ベクトル」において、空間における直線の方程式[注釈 1]や、平面の方程式[注釈 1]を扱う他、それらの位置関係を考察したり、交点・交線の方程式を求めることを扱う。
- 「行列」において、普通科の新課程で復活しなかった「行列の応用」の内容を扱う。また、行列がベクトルの拡張であることについて触れる。
- 「離散グラフ」において、完全グラフや四色問題、ラムゼーの定理などを扱う。
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数学C「数学的な表現方法の工夫」内「データの表現方法の工夫」(パレート図、バブルチャート等を用いたデータの表現)のみ対応する単元が存在しない。
以下、このページでは普通科数学で扱わない発展事項について記載していく。
その他普通科でも扱う内容については上の表から各自参照すること。
※数の最大公約数・最小公倍数については理数数学特論及び普通科数学Aの内容であることに留意。
整式が整式で割り切れるとき、をの約数、をの倍数という。
2つ以上の整式の共通の約数を、それらの公約数、共通の倍数を公倍数といい、公約数のうち次数の最も高いものを最大公約数といい、公倍数のうち次数の最も低いものを最小公倍数という。
(注意)普通、整式の約数、倍数では単なる数の因数を考えない。
の最大公約数と最小公倍数を求めよ。
よって、最大公約数は、最小公倍数は
2つの整式が、数の因数以外に共通の因数を持たないとき、これらの整式は互いに素であるという。
とは互いに素である。
2つの整式と、その最大公約数、最小公倍数との間の関係について考える。例えば
の最大公約数を、最小公倍数をとすると
である。
このとき、をで割った商をそれぞれとすると
となり、は互いに素である。
であるから、が成り立つ。
最大公約数と最小公倍数
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整式の最大公約数を、最小公倍数をとし、をで割った商をそれぞれとすると
1
2は互いに素
3
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2つの円
の共有点の座標を求めよ。
2つの方程式から、を消去して
- ……(1)
(1)をに代入し整理すると
ゆえに
(1)から
のとき、のとき
よって、求める共有点の座標は
sin、cos、tanとその逆数csc、sec、cotの逆関数をまとめて逆三角関数という。逆三角関数を表記するとき、元の関数に接頭辞arcをつける。(「arc」は「arcus(弓)」の略。)
三角関数の逆関数をそのまま考えようとすると、一つの入力に対して複数出力されてしまうため、定義域を制限して考える。
逆三角関数の定義域はそれぞれ、
- arcsin:
- arccos:
- arctan:
である。
例)より、定義域に注意すると である。
各関数のグラフは右図のようになる。
逆三角関数の微分
arccosも同様。
未知関数を含む方程式を関数方程式という。
未知関数の導関数を含む関数方程式を微分方程式といい、「微分方程式を解く」とは微分方程式を満たす全ての関数を求めることである。
(例)
両辺をxについて積分すると、
(Cは任意の定数)
これがこの微分方程式の解である。
のように、第一次導関数までを含む微分方程式を一階微分方程式という。のように、第二次導関数までを含む微分方程式を二階微分方程式という。一般に、第n次導関数までを含む微分方程式をn階微分方程式という。のように、導関数の一次結合で表された微分方程式を線形微分方程式という。線形微分方程式のうち、導関数とは関係ない変数の項の値が0であるものを斉次微分方程式という。微分方程式のうち、未知関数が一つの変数で表されるものを常微分方程式という。
- 微分方程式の解法
ここでは、変数分離形と呼ばれる常微分方程式のみ扱う。
微分方程式を解け。
与式はと書ける。
- ①のとき
- より与式が成立するので、定数関数はこの微分方程式の解である。
- ②のとき
- は与式を満たさないので
- 形式的に※変形して(変数分離)
- 両辺にインテグラルをつけて
- (C は積分定数)
- とおくと、
- (よりを満たす。)
- ①、②より、この微分方程式の解は(k は任意の実数)である。
※で一つの記号でありとに分離する操作は本来認められていないので、「形式的に」という表現を用いた。
- 問題
- 以下の微分方程式を解け。
一般に、微分方程式の解は任意定数を含むものとなる。このような解を一般解という。微分方程式に含まれる変数に対し何かしらの条件が与えられると、微分方程式の解に含まれる任意定数の値を定めることができる。このような条件を初期条件といい、定数の定まった解を特殊解という。
微分方程式は、物理学で広く用いられている。大学以上の物理は微分方程式を解く学問であると言っても過言ではないだろう。
例えば、等加速度直線運動は(xは変位、tは時間、aは加速度)という二階線形常微分方程式で表される。
- 両辺を一回積分してを得る。は時刻tにおける速度なので、積分定数は運動を始めた時刻での速度(初速度)を表す。
- 両辺をもう一度積分してを得る。xは変位なので、積分定数は運動を始めた時刻での位置(初期位置)を表す。
これで、積分結果が物理基礎で習った等加速度直線運動の公式に一致することを確かめられた。
高校物理の範囲で登場する公式の微分方程式表示の例を以下に示す。
- (円運動・単振動)
- (電流の定義)
- (ファラデーの電磁誘導の法則)
- (自己誘導)
- (相互誘導)
検定
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検定
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1点を通り、ベクトルに垂直な平面の方程式を考える。
点が平面上にあるための必要十分条件は
または
すなわち
となることである。
ここで、とおくと
となる。これは、平面のベクトル方程式である。
ベクトルを成分で表すと、であるから
上の定理から、平面はの1次方程式で表されることがわかる。
平面に垂直な直線をその平面の法線といい、平面に垂直なベクトルをその平面の法線ベクトルという。
次の平面の方程式を求めよ。
(i) 点を通り、を法線ベクトルとする平面
(ii) 2点に対して、点を通り直線を法線とする平面
(i)
(ii) であるから
特別な平面について考えてみよう。
次の方程式はどのような平面を表しているか。
(i)
(ii)
(i) 与えられた方程式を変形すると
よって、点を通り、ベクトルに垂直な平面を表す。
(ii) 与えられた方程式を変形すると
よって、点を通り、z軸に垂直な平面(xy平面に平行な平面)を表す。
点と平面 との距離を求めよう。
点から平面へ下ろした垂線の足をとし、上に1点をとる。
また、の法線ベクトルとのなす角をとすると
ここで
点は上にあるから
よって
点と平面の距離を求めよ。
定点を通り、でないベクトルに平行な直線の方程式を考える。
点が直線上にあるための必要十分条件は、に対応して
となる実数が定まることである。
であるから、とおくと
となる。これを、直線のベクトル方程式という。
このベクトル方程式を成分で表すと
であるから
よって
……(1)
(1)からを消去すると、次のことがいえる。
直線に平行なベクトルを直線の方向ベクトルという。また、(1)を直線の媒介変数表示という。
点を通り、ベクトルに平行な直線の方程式を求めよ。
整理して
2点を通る直線は、ベクトルに平行であるから、次のことがいえる。
直線の方程式(2)
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2点を通る直線の方程式は
|
2点を通る直線の方程式を求めよ。
整理して
特殊な直線の方程式について考えてみよう。
- ……(1)
で、であるときについて考える。
例えば、であるとき
となる。これはxy平面に平行な直線を表している。
また、であるとき
となる。これはx軸に平行な直線を表している。
次の方程式はどのような直線を表すか。
(i)
(ii)
(i)
与えられた方程式から、とおくととなる。
したがって、この直線は点を通る。
方向ベクトルは、であるから、yz平面に平行である。
よって、この方程式は点を通り、に平行な直線(yz平面に平行な直線)を表す。
(ii)
この直線は2平面の交線である。
よって、この方程式は点を通り、z軸に平行な直線を表す。
- ^ 1.00 1.01 1.02 1.03 1.04 1.05 1.06 1.07 1.08 1.09 1.10 1.11 普通科の進学校でも扱う
- ^ 3つの集合までは普通科の進学校でも扱う
- ^ 「回帰分析」は理数数学I「データの分析」の範囲