日本国憲法第31条
表示
条文
[編集]【法定手続の補償】
- 第31条
- 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
解説
[編集]刑事手続は法定の適正手続によること(デュー・プロセス・オブ・ロー)を定める。
罪刑法定主義の一局面としての明確性の理論
[編集]- 表現の自由など精神的自由を規制する立法は明確でなければならないとする憲法上の要請(違憲判断の基準)である「明確性の基準」を罪刑法定主義の観点から刑罰法規に適用した法理論。法文が漠然不明確な法令は違憲であって無効になる(漠然性ゆえに無効)。法文は一応明確でも、規制の範囲があまりにも後半で違憲的に適用される可能性のある法令も同様に違憲無効とされる(過度の広汎性ゆえに無効)。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 有毒飲食物等取締令違法(最高裁判決昭和23年11月17日)憲法37条,憲法38条,憲法76条,裁判所法施行令1条,刑訴応急措置法12条1項,刑訴応急措置法12条,刑訴応急措置法17条,刑訴応急措置法10条,刑訴法337条
- 判決における適用法規の名称の誤記と憲法第31条
- 有毒飮食物等取締令という勅令は有効に実施せられており、而して同名の法律は存在していないのであるから、第二審判決が右勅令を昭和21年勅令第52号と表示すべきところを、昭和21年法律第52号と誤つて表示したのであることが明らかである。而して第二審裁判所が右勅令の第1条及び第4条を適用したのであるから、論旨のように罪刑法定主義の原則に反せず、従つて原判決は憲法第31条に違反するものではない。
- 上告審における刑訴応急措置法第12条第1項但書の適用の有無と憲法第31条
- 刑訴応急措置法第12条の規定は裁判所が事実認定をするに当り証拠として採否を定める基準に関するものであつて、その性質上当然事実審のみに適用ある規定である。されば原上告審が証拠調をしない以上、所論の第12条但書を適用しなかつたのは誠に当然であつて、憲法第31条違反の問題を生じない。
- 刑訴応急措置法12条
- 証人その他の者(被告人を除く。)の供述を録取した書類又はこれに代わるべき書類は、被告人の請求があるときは、その供述者又は作成者を公判期日において訊問する機会を被告人に与えなければ、これを証拠とすることができない。但し、その機会を与えることができず、又は著しく困難な場合には、裁判所はこれらの書類についての制限及び被告人の憲法上の権利を適当に考慮して、これを証拠とすることができる。
- 刑事訴訟法第343条(旧法)の規定は、これを適用しない。
- 刑訴応急措置法12条
- 刑訴応急措置法第12条の規定は裁判所が事実認定をするに当り証拠として採否を定める基準に関するものであつて、その性質上当然事実審のみに適用ある規定である。されば原上告審が証拠調をしない以上、所論の第12条但書を適用しなかつたのは誠に当然であつて、憲法第31条違反の問題を生じない。
- 公判廷における否認の供述あるに拘わらず検事に対する被告人の肯定の供述を証拠に採ることの可否と憲法第31条
- 被告人の検事に対する肯定の供述と、公判廷における否認の供述とは各別個の供述であつて、所論のように、否定という一個の觀念を構成する不可分のものではないから、肯定の供述をとり否認の供述をとらなかつたとしても違法ではない。従つて憲法第31条に反するものではない。
- 判決における適用法規の名称の誤記と憲法第31条
- 臨時物資需給調整法違反(最高裁判決 昭和26年2月27日)日本国憲法第73条
- 農林省令第27号附則所定の「…規則廃止前にした行為に対する罰則の適用については…なお従前の例による」とした規則の趣旨と憲法第31条・第73条第6号
- 所論昭和25年3月27日農林省令第27号附則の趣旨は加工水産物配給規則廃止前に行われた違反行為に対しては同規則廃止後も廃止前に行われた違反行為の罰則に関する範囲においては、これを廃止しない趣旨であつて、一旦廃止して更に罰則を設けるという趣旨でない故所論違憲論は前提を欠き採用できない。
- 強盗殺人、死体遺棄等(最高裁判決 昭和31年12月25日)
- 無期懲役刑の合憲性
- 無期懲役刑は憲法第13条・第31条に違反しない。
- 昭和23年最高裁大法廷判決により、死刑すら「残虐な刑罰」とされていないのであるから、無期懲役を残虐な刑罰ということはできない。
- 大阪市条例第68号違反(最高裁判決 昭和37年5月30日)日本国憲法第73条
- 憲法第31条の趣旨―刑罰はすべて法律そのもので定めなければならないか
- 憲法31条はかならずしも刑罰がすべて法律そのもので定められなければならないとするものでなく、法律の授権によつてそれ以下の法令によつて定めることもできると解すべきで、このことは憲法73条6号但書によつても明らかである。
- 地方自治法第14条第5項およびこれに基づく昭和25年大阪市条例第68号第2条第1項の合憲性
- 地方自治法第14条第5項およびこれに基づく昭和25年大阪市条例第68号「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」第2条第1項は、憲法第31条に違反しない。
- 法律の授権が不特定な一般的の白紙委任的なものであつてはならないが、これらの事項【旧地方自治法第2条第3項第7号等に規定する事項】は相当に具体的な内容のものであるし、同法14条5項【現地方自治法第14条第3項相当】による罰則の範囲も限定されている。しかも、条例は、法律以下の法令といつても、上述のように、公選の議員をもつて組織する地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であつて、行政府の制定する命令等とは性質を異にし、むしろ国民の公選した議員をもつて組織する国会の議決を経て制定される法律に類するものであるから、条例によつて刑罰を定める場合には、法律の授権が相当な程度に具体的であり、限定されておればたりると解するのが正当である。地方自治法2条3項7号及び1号のように相当に具体的な内容の事項につき、同法14条5項のように限定された刑罰の範囲内において、条例をもつて罰則を定めることができるとしたのは、憲法31条の意味において法律の定める手続によつて刑罰を科するものということができるのであつて、同条に違反するとはいえない。
- 地方自治法第14条第5項およびこれに基づく昭和25年大阪市条例第68号「街路等における売春勧誘行為等の取締条例」第2条第1項は、憲法第31条に違反しない。
- 憲法第31条の趣旨―刑罰はすべて法律そのもので定めなければならないか
- 第三者所有物没収事件(最高裁大法廷判決 昭和37年11月28日 2件)日本国憲法第29条
- 旧関税法第83条第1項/関税法第118条第1項により第三者の所有物を没収することは、、憲法第31条、第29条に違反するか
- 旧関税法第83条第1項/関税法第118条第1項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第31条、第29条に違反する。
- 第三者の所有物を没収する場合において、その没収に関して当該所有者に対し、何ら告知、弁解、防禦の機会を与えることなく、その所有権を奪うことは、著しく不合理であつて、憲法の容認しないところである。
- 旧関税法第83条第1項/関税法第118条第1項の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第31条、第29条に違反する。
- 第三者所有物の没収の違憲を理由として上告することができるか
- 前項の場合、没収に言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、これを違憲であるとして上告をすることができる。
- かかる没収の言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、被告人に対する附加刑である以上、没収の裁判の違憲を理由として上告をなしうることは、当然である。のみならず、被告人としても没収に係る物の占有権を剥奪され、またはこれが使用、収益をなしえない状態におかれ、更には所有権を剥奪された第三者から賠償請求権等を行使される危険に曝される等、利害関係を有することが明らかであるから、上告によりこれが救済を求めることができるものと解すべき。
- 前項の場合、没収に言渡を受けた被告人は、たとえ第三者の所有物に関する場合であつても、これを違憲であるとして上告をすることができる。
- 旧関税法第83条第1項/関税法第118条第1項により第三者の所有物を没収することは、、憲法第31条、第29条に違反するか
- 道路交通法違反(最高裁判決 昭和39年9月18日)日本国憲法第73条
- 犯罪の構成要件はすべて法律そのもので定められなければならないか。
- 犯罪の構成要件は、すべて法律そのもので定められなければならないものではなく、法律の授権によつて、その一部を公安委員会規則によつて定めることもできることは、当裁判所の判例(昭和27年(あ)第4533号同33年7月9日大法廷判決、刑集12巻11号2407頁・昭和31年(あ)第4289号同37年5月30日大法廷判決、裁判集142巻847頁)の趣旨とするところである。
- 収賄(最高裁判決 昭和40年4月28日)日本国憲法第29条
- 刑法(昭和33年法律第107号による改正前のもの)第197条の4により第三者に対し追徴を命ずることは憲法第31条、第29条に違反するか。
- 刑法(昭和33年法律第107号による改正前のもの)第197条の4(現行法:刑法第197条の5)により第三者に対し追徴を命ずることは憲法第31条、第29条に違反する。
- 第三者に対する追徴は、被告人に対する刑と共に言渡されるものであるが、没収に代わる処分として直接に第三者に対し一定額の金員の納付を命ずるものであるから、当該第三者に対し告知せず、弁解、防禦の機会を与えないで追徴を命ずることは、適正な法律手続によらないで財産権を侵害する制裁を科するものであつて、憲法の右規定に違反するものといわなければならない。
- 情を知つた第三者の収受した賄賂の全部又は一部を没収することができないときはその価額を追徴する旨を規定しながら、その追徴を命ぜられる第三者に対する告知の手続及び弁解、防禦の機会を与える手続に関しては刑訴法その他の法令になんら規定するところがなく、本件においても、第三者たるBは単に証人として第一審裁判所及び原審裁判所において取調べられているのに過ぎないのであるから、右手続を履むことなく刑法の右規定によつて同人から賄賂に代わる価額を追徴することは、憲法31条、29条に違反するものと断ぜざるをえない。
- 窃盗(最高裁判決 昭和42年7月5日)日本国憲法第38条
- 起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮したことが憲法第31条・第38条第3項に違反するとされた事例
- 起訴されていない犯罪事実で、被告人の捜査官に対する自白のほかに証拠のないものを、いわゆる余罪として認定し、これをも実質上処罰する趣旨のもとに重い刑を科することは、憲法第31条・第38条第3項に違反する。
- 原判決の憲法違反が判決に影響を及ぼさないとして上告が棄却された事例
- 右のような憲法違反を犯している第一審判決を違法ではないとして認容した違憲が原判決にあつても、原判決が、結論において、第一審判決の量刑を不当としてこれを破棄し、自判する際に、余罪を犯罪事実として認定しこれを処罰する趣旨を含めて量刑したものとは認められないときは、右違憲は判決に影響を及ぼさない。
- 原審における過誤は、上訴審において治癒されている。
- 右のような憲法違反を犯している第一審判決を違法ではないとして認容した違憲が原判決にあつても、原判決が、結論において、第一審判決の量刑を不当としてこれを破棄し、自判する際に、余罪を犯罪事実として認定しこれを処罰する趣旨を含めて量刑したものとは認められないときは、右違憲は判決に影響を及ぼさない。
- 起訴されていない犯罪事実を量刑の資料として考慮したことが憲法第31条・第38条第3項に違反するとされた事例
- 職業安定法違反(全農林警職法事件 最高裁判決 昭和48年4月25日 刑集12巻7号1351頁)憲法28条、憲法18条、憲法21条、国家公務員法(昭和40年法律第69号による改正前のもの)98条5項、110条1項17号
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号の合憲性
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号は憲法28条に、国家公務員法110条1項17号は憲法18条、21条、31条に違反しない。
- 国家公務員法110条1項17号にいう「あおり」および「企て」の意義
- 国家公務員法110条1項17号にいう「あおり」とは、同法98条5項前段に規定する違法行為を実行させる目的をもつて、他人に対し、その行為を実行する決意を生じさせるような、または、すでに生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与えることをいい、「企て」とは、右違法行為を共謀し、そそのかし、または、あおる行為の遂行を計画準備することであつて、違法行為発生の危険性が具体的に生じたと認めうる状態に達したものをいう。
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号の法意
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号は、公務員の争議行為のうち同法によつて違法とされるものとされないものとを区別し、さらに違法とされる争議行為についても違法性の強いものと弱いものとを区別したうえ、刑事制裁を科さるのはそのうち違法性の強い争議行為に限るものとし、あるいは、あおり行為等につき、争議行為の企画、共謀、説得、慫慂、指令等を争議行為にいわゆる通常随伴するものとして争議行為自体と同一視し、これを刑事制裁の対象から除くものとする趣旨ではない。
- 政治的目的のための争議行為と憲法28条
- 私企業の労働者であると、公務員を含むその他の勤労者であるとを問わず、使用者に対する経済的地位の向上の要請とは直接関係のない警察官職務執行法の改正に対する反対のような政治的目的のために争議行為を行なうことは、憲法28条とは無関係なものである。
- 国家公務員法98条5項、110条1項17号の合憲性
- 国家公務員法違反(猿払事件 最高裁判決 昭和49年11月6日)
- 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法21条
- 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止は、憲法21条に違反しない。
- 国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法31条
- 国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法31条に違反しない。
- 国公法102条1項及び規則による公務員の政治的行為の禁止は、公務員の政治的中立性を維持することにより、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するという国民全体の重要な共同利益を擁護するためのものである。
- ひとしく公務員であつても、国家公務員の場合は、地方公務員の場合と異なり、その政治的行為の禁止に対する違反が行政の中立的運営に及ぼす弊害に逕庭があることからして、罰則を存置することの必要性が、国民の代表機関である国会により、わが国の現実の社会的基盤に照らして、承認されてきたものとみることができる。
- その保護法益の重要性にかんがみるときは、罰則制定の要否及び法定刑についての立法機関の決定がその裁量の範囲を著しく逸脱しているものであるとは認められない。特に、本件において問題とされる政治的行為は、特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布であつて、前述したとおり、政治的行為の中でも党派的偏向の強い行動類型に属するものであり、公務員の政治的中立性を損うおそれが大きく、このような違法性の強い行為に対して国公法の定める程度の刑罰を法定したとしても、決して不合理とはいえない。
- 国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法31条に違反しない。
- 国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法21条
- 国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法21条に違反しない。
- 国家公務員法102条1項における人事院規則への委任の合憲性
- 国家公務員法102条1項における人事院規則への委任は、同法82条による懲戒処分及び同法110条1項19号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に人事院規則に委任しているからといって、憲法に違反する立法の委任ということはできない。
- 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号の禁止に違反する文書の掲示又は配布に同法110条1項19号の罰則を適用することが憲法21条、31条に違反しないとされた事例
- 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号の禁止に違反する本件の文書の掲示又は配布(判文参照)に同法110条1項19号の罰則を適用することは、たとえその掲示又は配布が、非管理職の現業公務員であって、その職務内容が機械的労務の提供にとどまるものにより、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、職務を利用せず又はその公正を害する意図なく、かつ、労働組合活動の一環として行われた場合であつても、憲法21条、31条に違反しない。
- 国家公務員法102条1項、人事院規則14―7・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法21条
- 集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例違反、道路交通法違反(徳島市公安条例事件 最高裁判決 昭和50年9月10日) 昭和27年徳島市条例3号(集団行進及び集団示威運動に関する条例 ;以下「集団行進等に関する徳島県条例」と記す)3条3号,集団行進等に関する徳島県条例5条, 道路交通法77条1項4号,道路交通法77条3項,道路交通法119条1項13号,徳島県道路交通施行細則(昭和47年徳島県公安委員会規則1号による改正前のもの)11条3号,
- 刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するかどうかの判断基準
- 刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうかによってこれを決定すべきである。(「過度の広汎性ゆえに無効」の理論)
- 集団行進等に関する徳島県条例3条3号の「交通秩序を維持すること」の意義とその犯罪構成要件としての明確性
- 集団行進等に関する徳島県条例3条3号が、集団行進等についての遵守事項の一として「交通秩序を維持すること」を掲げているのは、道路における集団行進等が一般的に秩序正しく平穏に行われる場合にこれに随伴する交通秩序阻害の程度を超えた、殊更な交通秩序の阻害をもたらすような行為を避止すべきことを命じているものと解され、このように解釈した場合、右規定は右条例5条の犯罪構成要件の内容をなすものとして憲法31条に違反するような不明確性を有するものではない。
- 刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法31条に違反するかどうかの判断基準
- 現住建造物等放火未遂、火炎びん使用等の処罰に関する法律違反、傷害、爆発物取締罰則違反、非現住建造物等放火(最高裁判決 昭和53年10月20日)
- 爆発物取締罰則に関する違憲主張が排斥された事例
- 所論は、憲法31条、59条1項、73条6項、98条1項違反をいうが、爆発物取締罰則が現行憲法施行後の今日においてもなお法律としての効力を保有しているものであることは、当裁判所の判例とするところであり(昭和23年(れ)第1140号同24年4月6日大法廷判決・刑集3巻4号456頁、昭和32年(あ)第309号同34年7月3日第二小法廷判決・刑集13巻7号1075頁、昭和46年(あ)第2179号同47年3月9日第一小法廷判決・刑集26巻2号151頁参照)、所論は理由がない。
- 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反(石油価格カルテル刑事事件 最高裁判例 昭和59年02月24日)
- 独禁法85条3号の規定と憲法14条1項、31条、32条
- 独禁法89条から91条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法85条3号の規定は、憲法14条1項、31条、32条に違反しない。
- 福岡県青少年保護育成条例違反(最高裁判決 昭和60年10月23日)
- 本条例は、青少年の健全な育成を図るため青少年を保護することを目的として定められ(1条1項)、他の法令により成年者と同一の能力を有する者を除き、小学校就学の始期から満18歳に達するまでの者を青少年と定義した(3条1項)上で、「何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつの行為をしてはならない。」(10条1項)と規定し、その違反者に対しては2年以下の懲役又は10万円以下の罰金を科し(16条1項)、違反者が青少年であるときは、これに対して罰則を適用しない(17条)こととしている。
- (参考)
- 福岡県青少年保護育成条例10条1項、16条1項の規定と憲法31条
- 18歳未満の青少年に対する「淫行」を禁止処罰する福岡県青少年保護育成条例10条1項、16条1項の規定は、憲法31条に違反しない。
- 以下の2.に示す解訳は通常の判断能力を有する一般人の理解にも適うものであり、「淫行」の意義を以下のように解釈するときは、同規定につき処罰の範囲が不当に広過ぎるとも不明確であるともいえないから、本件各規定が憲法31条の規定に違反するものとはいえない。
- 18歳未満の青少年に対する「淫行」を禁止処罰する福岡県青少年保護育成条例10条1項、16条1項の規定は、憲法31条に違反しない。
- 福岡県青少年保護育成条例10条1項の規定にいう「淫行」の意義
- 福岡県青少年保護育成条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解すべきである。
- 「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、「淫らな」性行為を指す「淫行」の用語自体の意義に添わないばかりでなく、例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等、社会通念上およそ処罰の対象として考え難いものをも含むこととなつて、その解釈は広きに失することが明らかであり、また、「淫行」を目して単に反倫理的あるいは不純な性行為と解するのでは、犯罪の構成要件として不明確であるとの批判を免れないのであつて、前記の規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内で、前叙のように限定して解するのを相当とする。
- 福岡県青少年保護育成条例10条1項の規定にいう「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解すべきである。
- 強盗殺人被告事件(最高裁判決 平成27年12月3日)日本国憲法第39条, 刑訴法250条1項
- 公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置を定めた同法附則3条2項と憲法39条,31条
- 公訴時効を廃止するなどした「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(平成22年法律第26号)の経過措置として,同改正法律施行の際公訴時効が完成していない罪について改正後の刑訴法250条1項を適用する旨を定めた同改正法律附則3条2項は,憲法39条,31条に違反せず,それらの趣旨にも反しない。
- 公訴時効制度の趣旨は,時の経過に応じて公訴権を制限する訴訟法規を通じて処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにある。本法は,その趣旨を実現するため,人を死亡させた罪であって,死刑に当たるものについて公訴時効を廃止し,懲役又は禁錮の刑に当たるものについて公訴時効期間を延長したにすぎず,行為時点における違法性の評価や責任の重さを遡って変更するものではない。そして,本法附則3条2項は,本法施行の際公訴時効が完成していない罪について本法による改正後の刑訴法250条1項を適用するとしたものであるから,被疑者・被告人となり得る者につき既に生じていた法律上の地位を著しく不安定にするようなものでもない。
|
|