不動産登記法第60条

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条文[編集]

(共同申請)

第60条
権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

解説[編集]

本条の趣旨[編集]

本条は、共同申請の原則について定めたものである。

登記権利者の定義は不動産登記法第2条第12号に、登記義務者の定義は同法第2条第13号に規定がある。

更に詳しい解説は、w:不動産登記#登記権利者と登記義務者を参照。

例外としての単独申請[編集]

登記権利者・登記義務者という構造が存在しないもの[編集]

登記義務者が存在しない場合、登記権利者は「登記申請人」として、単独で権利に関する登記を申請できる。その場合で、主なものは以下のとおりである。

登記権利者又は登記義務者の意思を擬制するもの[編集]

登記権利者又は登記義務者の登記申請意思を、何らかの方法で擬制できる場合、一方のみからの申請により、事実上の単独申請が可能である。その場合で、主なものは以下のとおりである。

仮登記の特則[編集]

仮登記については、共同申請の原則は大幅に緩和されている。仮登記に関する登記で、単独申請が認められているものは、以下のとおりである。

  • 仮登記の登記義務者の承諾があるとき又は仮登記を命ずる処分があるときの、登記権利者から申請する仮登記(不動産登記法第107条
  • 仮登記の登記名義人から申請する、当該仮登記の抹消の登記(同法第110条前段
  • 仮登記の登記名義人の承諾があるときの、当該仮登記の登記上の利害関係人から申請する仮登記の抹消の登記(同法第110条後段
  • 仮登記の登記義務者の承諾があるとき又は仮登記を命ずる処分があるときの、登記権利者から申請する仮登記の変更登記・更正登記(1967年(昭和42年)8月23日民甲2437号回答)

登記義務者・登記権利者という区別が存在しないもの[編集]

登記義務者と登記権利者の厳然たる区別が存在せず、関係する登記名義人が共同して申請するもの(いわゆる合同申請)は、以下のとおりである。

  • 共有物分割禁止の定めに係る権利の変更の登記(不動産登記法第65条
  • 担保物権の順位の変更の登記(同法第89条第1項)
  • 民法第398条の14第1項ただし書の定め(以下「優先弁済の定め」という)の登記(同法第89条第2項)
  • 順位変更の登記を更正する登記(書式解説2-510頁)
  • 順位変更の登記を抹消する登記(1971年(昭和46年)10月4日民甲3230号通達第1-5)
  • 優先弁済の定めの登記を変更する登記(書式解説2-937頁)
  • 優先弁済の定めの登記を更正する登記及び抹消する登記

なお、順位の変更の登記については、不動産登記法第89条第1項の文言からは、抵当権しかできないように読めるが、不動産登記令第8条第1項第6号の文言には質権が含まれており、更に、不動産登記規則第164条においては「担保権」とあることから、登記できる担保物権はすべて順位の変更の登記が可能である。

その他[編集]

登記権利者と登記義務者が同一人である場合(混同による権利の抹消の登記が典型例である)や、登記権利者が登記義務者から登記申請の代理権限を得た場合(登記権利者兼登記義務者代理人となる)及びその逆の場合は、事実上の単独申請が可能である。

参照条文[編集]

参考文献[編集]

  • 香川保一編著 『新不動産登記書式解説(二)』 テイハン、2006年、510頁・937頁、ISBN 978-4860960315

前条:
不動産登記法第59条
(権利に関する登記の登記事項)
不動産登記法
第4章 登記手続

第3節 権利に関する登記

第1款 通則
次条:
不動産登記法第61条
(登記原因証明情報の提供)


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