会社法第27条
表示
(商法第166条 から転送)
法学>民事法>商法>会社法>コンメンタール会社法>第2編 株式会社>第1章 設立
条文
[編集](定款の記載又は記録事項)
- 第27条
- 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
解説
[編集]株式会社の定款の必要的記載事項の規定である。
会社の目的
[編集]- 会社は法人であるので、民法第34条に覊束され定款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う(ウルトラ・ヴィーレスの法理 (ultra vires doctrine))。
- しかしながら、目的遂行のための行動は、極めて多岐にわたるため、一見目的との関係を見出せない(法律)行為であっても、全く目的外行為と判断することは困難である。例えば、目的に記載されていない現在の事業と全く異なる分野への研究開発やマーケティングは「目的としている事業のノウハウなどを利用し収益機会を拡大」と解されるし、会社が行う社会貢献活動は、一見、会社の収益などへの貢献を見出しがたいが、会社が社会的構成員であることを意識し社会的役割を果たすことにより、目的達成に資すると解することもできる。判例は、会社の行為を広く目的に沿った行為と認めており、政治献金など政治活動についてもこれを認めている(最判昭和45年06月24日 八幡製鉄事件 )
- また、定款記載の目的内行為か否かは、取引相手など会社外の第三者にとって意識されるべきものでもなく、目的外行為であることをもってその効力の有効性を争うのは難しい。
- 一方で、会社の組織内部規律としては依然有効であって、会社の行為に対しては株主などが、執行機関の行為に対しては取締役など監督機関が、目的との適合性を問いただしうる。
- このため、定款作成においては、目的事項を列挙した後に「上記各号に附帯関連する一切の事業」という一般条項(「バスケット条項」)を入れることが通常の慣習になっている。また、近年においては、解釈による争いを回避するため、想定される関係事業をできる限り列挙する傾向にある。
- 目的とする事業が公の許認可を要するものである場合は、これを記載する。上記の解釈で、それを営めないものではないが、許認可事業の場合、定款の提出を求められ目的に記載されていない場合、不受理の理由となりかねないためである。
設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
[編集]- 設立時に存在する資本金をさだめる。
- 流通が可能である邦貨(日本円)であれば、金額に制限はなく[1]、1円であっても構わない[2]。一方、払込が不可能な額を設定すると、資本金が払い込まれない場合、登記が受理されず会社は成立しないため、発起人や募集された引受人が支払える金額を設定する。
関連条文
[編集]- 会社法第4条(住所)
- 会社法第5条(商行為)
- 会社法第6条(商号)
- 会社法第26条(定款の作成)
- 会社法第28条(定款の記載又は記録事項)
- 会社法第29条(定款の記載又は記録事項)
- 会社法第32条(設立時発行株式に関する事項の決定)
- 会社法第59条(設立時募集株式の申込み)
- 会社法第814条(株式会社の設立の特則)
判例
[編集]- 建物収去土地明渡請求(最高裁判決 昭和30年10月28日)
- 会社の目的の範囲内の行為と認めるべき一事例
- 定款所定の目的が「一、一般木工品の製造、二、船舶用器具の製造、三、埋木の発掘並に加工、四、和用家具類の製造並に販売、五、生糸の製造並に加工販売、六、統制外物資の斡旋、七、関係事業に対する投資、八、前各号に附帯する一切の事業」である株式会社が、他人の借地契約上の債務について連帯保証契約をすることは、特段の反証のない限り、会社の目的遂行に必要な事項であつて、会社の目的の範囲内に属する行為と認めるべきである。
- 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和38年10月3日)
- 金員貸付行為と相互銀行の目的の範囲
- 定款所定の目的そのものに該当しない金員貸付行為であつても、これが客観的、抽象的にみて、右の目的遂行に必要な行為であると解されるかぎり、相互銀行の目的の範囲内の行為というを妨げない。
- 取締役の責任追及請求(八幡製鉄事件 最高裁判決 昭和45年06月24日)民法第43条(削除廃止),商法第166条1項1号(現・本条1号),商法第254条ノ2(現・会社法第331条),商法第254条3項(現・会社法第330条),憲法第3章
- 政治資金の寄附と会社の権利能力
- 会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。
註
[編集]
|
|