民法第1047条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第5編 相続 (コンメンタール民法)
条文
[編集](受遺者又は受贈者の負担額)
- 第1047条
- 受遺者又は受贈者は、次の各号の定めるところに従い、遺贈(特定財産承継遺言による財産の承継又は相続分の指定による遺産の取得を含む。以下この章において同じ。)又は贈与(遺留分を算定するための財産の価額に算入されるものに限る。以下この章において同じ。)の目的の価額(受遺者又は受贈者が相続人である場合にあっては、当該価額から第1042条の規定による遺留分として当該相続人が受けるべき額を控除した額)を限度として、遺留分侵害額を負担する。
- 受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
- 受遺者が複数あるとき、又は受贈者が複数ある場合においてその贈与が同時にされたものであるときは、受遺者又は受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。
- 受贈者が複数あるとき(前号に規定する場合を除く。)は、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担する。
- 第904条、第1043条第2項及び第1045条の規定は、前項に規定する遺贈又は贈与の目的の価額について準用する。
- 前条第1項の請求を受けた受遺者又は受贈者は、遺留分権利者承継債務について弁済その他の債務を消滅させる行為をしたときは、消滅した債務の額の限度において、遺留分権利者に対する意思表示によって第1項の規定により負担する債務を消滅させることができる。この場合において、当該行為によって遺留分権利者に対して取得した求償権は、消滅した当該債務の額の限度において消滅する。
- 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
- 裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、第1項の規定により負担する債務の全部又は一部の支払につき相当の期限を許与することができる。
解説
[編集]- 遺留分侵害額請求を受けた際の、受遺者及び受贈者の負担について規定する。2018年改正前の第1033条、第1034条及び第1035条を吸収している。
- 負担の順序は以下のとおり。
- 受遺者と受贈者がある場合は、受遺者がまず負担し、残余を受贈者が負担する。
- 受遺者・受贈者(受贈の機会が同一のもの)が複数ある時は、遺贈・贈与の割合によって負担する。
- 贈与が機会を違えてなされた場合は、後になされたものから負担する。
- 遺留分権利者承継債務(被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(民法第1046条))について、受遺者と受贈者が消滅させていた場合は、遺留分侵害額請求分と相殺する。
- 受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。即ち、受遺者又は受贈者において連帯債務とはならない。
参照条文
[編集]- 第904条(特別受益者の相続分)
- 前条に規定する贈与の価額は、受贈者の行為によって、その目的である財産が滅失し、又はその価格の増減があったときであっても、相続開始の時においてなお原状のままであるものとみなしてこれを定める。
- 第1043条第2項
- 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
- 第1045条
- 負担付贈与がされた場合における第1043条第1項に規定する贈与した財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額とする。
- 不相当な対価をもってした有償行為は、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなす。
判例
[編集]参考
[編集]明治民法において、本条には財産分離における相続債権者及び受遺者に対する弁済に関する以下の規定があった。趣旨は、民法第947条に継承された。
- 相続人ハ第千四十一条第一項及ヒ第二項ノ期間満了前ニハ相続債権者及ヒ受遺者ニ対シテ弁済ヲ拒ムコトヲ得
- 財産分離ノ請求アリタルトキハ相続人ハ第千四十一条第二項ノ期間満了ノ後相続財産ヲ以テ財産分離ノ請求又ハ配当加入ノ申出ヲ為シタル債権者及ヒ受遺者ニ各其債権ノ割合ニ応シテ弁済ヲ為スコトヲ要ス但優先権ヲ有スル債権者ノ権利ヲ害スルコトヲ得ス
- 第千三十二条乃至第千三十六条ノ規定ハ前項ノ場合ニ之ヲ準用ス
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