コンテンツにスキップ

民法第1046条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法民法コンメンタール民法第5編 相続 (コンメンタール民法)

条文[編集]

(遺留分侵害額の請求)

第1046条
  1. 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。
  2. 遺留分侵害額は、第1042条の規定による遺留分から第1号及び第2号に掲げる額を控除し、これに第3号に掲げる額を加算して算定する。
    1.  遺留分権利者が受けた遺贈又は第903条第1項に規定する贈与の価額
    2.  第900条から第902条まで、第903条及び第904条の規定により算定した相続分に応じて遺留分権利者が取得すべき遺産の価額
    3.  被相続人が相続開始の時において有した債務のうち、第899条の規定により遺留分権利者が承継する債務(次条第3項において「遺留分権利者承継債務」という。)の額

改正経緯[編集]

2018年改正により、以下の第1031条及び第1032条の趣旨を継承し、「遺留分侵害額の請求」と再構成された。

  • 2018年改正前・第1031条
    遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。
  • 2018年改正前・第1032条
    条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利を贈与又は遺贈の目的とした場合において、その贈与又は遺贈の一部を減殺すべきときは、遺留分権利者は、第1029条第2項の規定により定めた価格に従い、直ちにその残部の価額を受贈者又は受遺者に給付しなければならない。
(改正前第1031条解説)
遺留分減殺請求権の規定。遺留分権利者(及びその承継人)の法的に認められた遺留分を保護するための制度である。明治民法第1134条及び第1135条を継承。
遺留分減殺請求権の法的性質は、形成権であると考えられている。すなわち、相手方に対する一方的な意思表示によって行使することができる。
ただし、遺留分減殺請求権には期間制限がある。「遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間」または、「相続開始の時から十年」で時効消滅する(旧・第1042条)。

解説[編集]

2018年改正により、改正前は遺留分については、遺産分割の一環と構成していたものから、相続すべき財産の侵害とし、これを金銭の支払いで解決することとなった(本条第1項)。従って、相続物の転得や相続物からの果実などを概念する必要がなくなった。

参照条文[編集]

判例[編集]

(改正前第1031条関係判例)

  1. 所有権移転登記手続請求(最高裁判決昭和41年07月14日)
    権利の行使は受贈者または受遺者に対する意思表示によつてなせば足り、必ずしも裁判上の請求による必要はない。
  2. 遺留分減殺(最高裁判決 平成8年01月26日)民法第898条民法第907条民法第964条
    遺言者の財産全部の包括遺贈に対して遺留分権利者が減殺請求権を行使した場合に遺留分権利者に帰属する権利は、遺産分割の対象となる相続財産としての性質を有しない。そこで、分割手続は物権法上の共有物分割手続(訴訟手続)である。
  3. 遺留分減殺請求に基づく持分権確認並びに持分権移転登記手続(最高裁判決 平成8年11月26日)民法第1029条
    被相続人が相続開始時に債務を有していた場合における遺留分の侵害額の算定
    被相続人が相続開始時に債務を有していた場合における遺留分の侵害額は、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額にその贈与した財産の価額を加え、その中から債務の全額を控除して遺留分算定の基礎となる財産額を確定し、それに法定の遺留分の割合を乗じるなどして算定した遺留分の額から遺留分権利者が相続によって得た財産の額を控除し、同人が負担すべき相続債務の額を加算して算定する。
  4. 共有持分売却代金(最高裁判決 平成10年03月10日)民法第1040条
    遺留分減殺請求を受けるよりも前に遺贈の目的を譲渡した受遺者が遺留分権利者に対してすべき価額弁償の額の算定
    遺留物減殺請求を受けるよりも前に遺贈の目的を譲渡した受遺者が遺留分権利者に対して価額弁償すべき額は、譲渡の価額がその当時において客観的に相当と認められるべきものであったときは、右価額を基準として算定すべきである。
  5. 遺留分減殺、土地建物所有権確認(最高裁判決 平成10年06月11日)
    遺産分割協議の申入れに遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべき場合
    被相続人の全財産が相続人の一部の者に遺贈された場合において、遺留分減殺請求権を有する相続人が、遺贈の効力を争うことなく、遺産分割協議の申入れをしたときは、特段の事情のない限り、その申入れには遺留分減殺の意思表示が含まれていると解すべきである。
  6. 第三者異議事件(最高裁判決 平成13年11月22日)民法第423条1項
    遺留分減殺請求権を債権者代位の目的とすることの可否
    遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、これを第三者に譲渡するなど、権利行使の確定的意思を有することを外部に表明したと認められる特段の事情がある場合を除き、債権者代位の目的とすることができない。
  7. 死亡保険金支払請求権確認請求事件(最高裁判決 平成14年11月05日)商法第675条1項
    自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為と民法1031条に規定する遺贈又は贈与
    自己を被保険者とする生命保険契約の契約者が死亡保険金の受取人を変更する行為は、民法1031条に規定する遺贈又は贈与に当たるものではなく、これに準ずるものということもできない。
    • 死亡保険金請求権は、指定された保険金受取人が自己の固有の権利として取得するのであって、保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく、これらの者の相続財産を構成するものではない。
    • 死亡保険金請求権は、被保険者の死亡時に初めて発生するものであり、保険契約者の払い込んだ保険料と等価の関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであって、死亡保険金請求権が実質的に保険契約者又は被保険者の財産に属していたものとみることもできない。

参考[編集]

  1. 明治民法において、本条には財産分離時における物上代位の規定の準用に関する準用規定があった。戦後民法では、第946条に継承された。
    第三百四条ノ規定ハ財産分離ノ場合ニ之ヲ準用ス
  2. 民法第1134条
    遺留分権利者及ヒ其承継人ハ遺留分ヲ保全スルニ必要ナル限度ニ於テ遺贈及ヒ前条ニ掲ケタル贈与ノ減殺ヲ請求スルコトヲ得
  3. 民法第1135条
    条件附権利又ハ存続期間ノ不確定ナル権利ヲ以テ贈与又ハ遺贈ノ目的ト為シタル場合ニ於テ其贈与又ハ遺贈ノ一部ヲ減殺スヘキトキハ遺留分権利者ハ第千百三十二条第二項ノ規定ニ依リテ定メタル価格ニ従ヒ直チニ其残部ノ価額ヲ受贈者又ハ受遺者ニ給付スルコトヲ要ス

前条:
民法第1045条
民法
第5編 相続
第8章 遺留分
次条:
民法第1047条
(受遺者又は受贈者の負担額)
このページ「民法第1046条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。