民法第632条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集](請負)
- 第632条
- 請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
解説
[編集]請負契約は諾成契約であるが、債務者(請負人)の債務の内容が「仕事の完成」である点に注意が必要である。
構成
[編集]請負を規定する本款の構成は以下の通り。2017年改正により、担保責任という考え方から、契約不適合責任へと変わったことに伴い改正された。
- 第632条(請負)
- 第633条(報酬の支払時期)
- 第634条(注文者が受ける利益の割合に応じた報酬)
- 第635条:削除
- 第636条(請負人の担保責任の制限)
- 第637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
- 第638条:削除
- 第639条:削除
- 第640条:削除
- 第641条(注文者による契約の解除)
- 第642条(注文者についての破産手続の開始による解除
参照条文
[編集]判例
[編集]- 請負代金請求(最高裁判決 昭和52年02月22日)民法第536条2項
- 文者の責に帰すべき事由により仕事の完成が不能となつた場合における請負人の報酬請求権と利得償還義務
- 請負契約において仕事が完成しない間に注文者の責に帰すべき事由によりその完成が不能となつた場合には、請負人は、自己の残債務を免れるが、民法536条2項により、注文者に請負代金全額を請求することができ、ただ、自己の債務を免れたことにより得た利益を注文者に償還すべきである。
- 請負代金本訴、損害賠償反訴(最高裁判決 昭和60年05月17日) 民法第415条,民法第416条
- 請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合に注文者が残工事に要した費用の賠償を求めうる範囲
- 請負契約が請負人の責に帰すべき事由により中途で終了した場合において、残工事の施工に要した費用として、注文者が請負人に賠償を請求することができるのは、右費用のうち、未施工部分に相当する請負代金額を超える部分に限られる。
- 財団債権(最高裁判決 昭和62年11月26日) 旧・破産法第59条(双務契約:現・破産法第53条)
- 請負人の破産と破産法59条の適用
- 請負人が破産宣告を受けた場合には、当該請負契約の目的である仕事が請負人以外の者において完成することのできない性質のものでない限り、右契約について破産法59条が適用される。
- 建物明渡等(最高裁判決 平成5年10月19日)
- 建物建築工事の注文者と元請負人との間に出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合と一括下請負人が自ら材料を提供して築造した出来形部分の所有権の帰属
- 建物建築工事の注文者と元請負人との間に、請負契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する旨の約定がある場合には、元請負人から一括して当該工事を請け負った下請負人が自ら材料を提供して出来形部分を築造したとしても、注文者と下請負人との間に格別の合意があるなど特段の事情のない限り、右契約が中途で解除された際の出来形部分の所有権は注文者に帰属する。
- 地位確認等請求事件(最高裁判決 平成21年12月18日)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第2条1号,職業安定法第4条6項,民法第623条
- 請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を違法な労働者派遣と解すべき場合に,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえないとされた事例
- 請負人と雇用契約を締結し注文者の工場に派遣されていた労働者が注文者から直接具体的な指揮命令を受けて作業に従事していたために,請負人と注文者の関係がいわゆる偽装請負に当たり,上記の派遣を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」に違反する労働者派遣と解すべき場合において,(1)上記雇用契約は有効に存在していたこと,(2)注文者が請負人による当該労働者の採用に関与していたとは認められないこと,(3)当該労働者が請負人から支給を受けていた給与等の額を注文者が事実上決定していたといえるような事情はうかがわれないこと,(4)請負人が配置を含む当該労働者の具体的な就業態様を一定の限度で決定し得る地位にあったことなど判示の事情の下では,注文者と当該労働者との間に雇用契約関係が黙示的に成立していたとはいえない。
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