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労働基準法第39条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学労働法個別的労働関係法労働基準法

条文

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(年次有給休暇)

第39条  
  1. 使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
  2. 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者に対しては、雇入れの日から起算して6箇月を超えて継続勤務する日(以下「6箇月経過日」という。)から起算した継続勤務年数1年ごとに、前項の日数に、次の表の上欄に掲げる1箇月経過日から起算した継続勤務年数の区分に応じ同表の下欄に掲げる労働日を加算した有給休暇を与えなければならない。ただし、継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の8割未満である者に対しては、当該初日以後の1年間においては有給休暇を与えることを要しない。
    6箇月経過日から起算した継続勤務年数 労働日
    1年 1労働日
    2年 2労働日
    3年 4労働日
    4年 6労働日
    5年 8労働日
    6年以上 10労働日
  3. 次に掲げる労働者(1週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く。)の有給休暇の日数については、前2項の規定にかかわらず、これらの規定による有給休暇の日数を基準とし、通常の労働者の1週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数(第1号において「通常の労働者の週所定労働日数」という。)と当該労働者の1週間の所定労働日数又は1週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数とする。
    1. 1週間の所定労働日数が通常の労働者の週所定労働日数に比し相当程度少ないものとして厚生労働省令で定める日数以下の労働者
    2. 週以外の期間によつて所定労働日数が定められている労働者については、1年間の所定労働日数が、前号の厚生労働省令で定める日数に1日を加えた日数を1週間の所定労働日数とする労働者の1年間の所定労働日数その他の事情を考慮して厚生労働省令で定める日数以下の労働者
  4. 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めた場合において、第1号に掲げる労働者の範囲に属する労働者が有給休暇を時間を単位として請求したときは、前三項の規定による有給休暇の日数のうち第2号に掲げる日数については、これらの規定にかかわらず、当該協定で定めるところにより時間を単位として有給休暇を与えることができる。
    1. 時間を単位として有給休暇を与えることができることとされる労働者の範囲
    2. 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇の日数(5日以内に限る。)
    3. その他厚生労働省令で定める事項
  5. 使用者は、前3項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
  6. 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、第1項から第3項までの規定による有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、これらの規定による有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。
  7. 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が10労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち5日については、基準日(継続勤務した期間を6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第1項から第3項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
  8. 前項の規定にかかわらず、第5項又は第6項の規定により第1項から第3項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
  9. 使用者は、第1項から第3項までの規定による有給休暇の期間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)第99条第1項 に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。
  10. 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条第1号 に規定する育児休業又は同条第2号 に規定する介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業した期間は、第1項及び第2項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす。

改正経緯

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  • 2018年改正において、第7項及び第8項を追加。それに伴い、旧第7項及び第8項の項番を繰り下げ第9項及び第10項とした。

解説

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年次有給休暇

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時季変更権

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傷病休暇等

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参照条文

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  • 第136条
    使用者は、第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。
  • 労働基準法施行規則第24条の3
    1. 法第39条第3項の厚生労働省令で定める時間は、30時間とする。
    2. 法第39条第3項の通常の労働者の1週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数は、5.2日とする。
    3. 法第39条第3項の通常の労働者の1週間の所定労働日数として厚生労働省令で定める日数と当該労働者の一週間の所定労働日数又は一週間当たりの平均所定労働日数との比率を考慮して厚生労働省令で定める日数は、同項第1号に掲げる労働者にあつては次の表の上欄の週所定労働日数の区分に応じ、同項第2号に掲げる労働者にあつては同表の中欄の1年間の所定労働日数の区分に応じて、それぞれ同表の下欄に雇入れの日から起算した継続勤務期間の区分ごとに定める日数とする。
      (次表 - 割愛)
    4. 法第39条第3項第1号の厚生労働省令で定める日数は、4日とする。
    5. 法第39条第3項第2号の厚生労働省令で定める日数は、216日とする。
  • 労働基準法施行規則第24条の4
    法第39条第4項第3号の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
    1. 時間を単位として与えることができることとされる有給休暇1日の時間数(1日の所定労働時間数(日によつて所定労働時間数が異なる場合には、1年間における1日平均所定労働時間数。次号において同じ。)を下回らないものとする。)
    2. 1時間以外の時間を単位として有給休暇を与えることとする場合には、その時間数(1日の所定労働時間数に満たないものとする。)
  • 労働基準法施行規則第24条の5
    1. 使用者は、法第39条第7項ただし書の規定により同条第1項から第3項までの規定による10労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、当該有給休暇の日数のうち5日については、基準日(同条第7項の基準日をいう。以下この条において同じ。)より前の日であつて、10労働日以上の有給休暇を与えることとした日(以下この条及び第24条の7において「第一基準日」という。)から1年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければならない。
    2. 前項の規定にかかわらず、使用者が法第39条第1項から第3項までの規定による10労働日以上の有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から1年以内の特定の日(以下この条及び第24条の7において「第二基準日」という。)に新たに10労働日以上の有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間をいう。以下この条において同じ。)の月数を12で除した数に5を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えることができる。
    3. 第1項の期間又は前項の履行期間が経過した場合においては、その経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして法第39条第7項本文の規定を適用する。
    4. 使用者が法第39条第1項から第3項までの規定による有給休暇のうち10労働日未満の日数について基準日以前の日(以下この項において「特定日」という。)に与えることとした場合において、特定日が複数あるときは、当該10労働日未満の日数が合わせて10労働日以上になる日までの間の特定日のうち最も遅い日を第一基準日とみなして前三項の規定を適用する。この場合において、第一基準日とみなされた日より前に、同条第5項又は第6項の規定により与えた有給休暇の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
  • 労働基準法施行規則第24条の6
    1. 使用者は、法第39条第7項の規定により労働者に有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たつては、あらかじめ、同項の規定により当該有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならない。
    2. 使用者は、前項の規定により聴取した意見を尊重するよう努めなければならない。
  • 労働基準法施行規則第24条の7
    使用者は、法第39条第5項から第7項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(第55条の2及び第56条第3項において「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後5年間保存しなければならない。
  • 労働基準法施行規則第25条(有給休暇の期間に支払われる賃金の算定)
    1. 法第39条第9項の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次に定める方法によつて算定した金額とする。
      1. 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
      2. 日によつて定められた賃金については、その金額
      3. 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額
      4. 月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額
      5. 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
      6. 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額
      7. 労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
    2. 法第39条第9項本文の厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金は、平均賃金又は前項の規定により算定した金額をその日の所定労働時間数で除して得た額の賃金とする。
    3. 法第39条第9項ただし書の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額は、健康保険法(大正11年法律第70号)第40条第1項に規定する標準報酬月額の30分の1に相当する金額(その金額に、5円未満の端数があるときは、これを切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは、これを10円に切り上げるものとする。)をその日の所定労働時間数で除して得た金額とする。
  • 労働基準法第106条(法令等の周知義務)
  • 労働基準法第114条(付加金の支払)
  • 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第99条
  • 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第2条(定義)
  • 第65条(産前産後)

判例

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  1. 未払賃金請求事件(仙台高等裁判所判決 昭和41年05月18日)
    1. 労基法第39条の年次有給休暇請求権の性格
      労基法第39条の有給休暇が何時取らるべきかは、同条3項の事由とこの事由に基づく使用者の拒否がない限り、労働者の指定によつて決定され、その外更に使用者の承認を得ることは必要でないと解するのが相当である。
    2. 右有給休暇請求権の行使と休暇使用目的との関係
      右有給休暇請求権の行使と当該休暇の使用目的とは、次元を異にする別個の事項であるから、休暇使用の目的が他官署における違法な大衆交渉に参加しその闘争を支援することにあつたとして、そのことによつて右請求権の行使は妨げられない。
    3. 労基法第39条第3項但書の「事業の正常な運営を妨げる場合」に該らないとされた事例
      1. 本件有給休暇の請求がなされた昭和33年12月初旬頃、白石営林署長が職員からの有給休暇請求を不承認としたのは被控訴人からの本件請求事案だけでそのほかはいずれも承認となつていることは控訴人の自認するところであり、成立に争いのない《各種証拠・証言》によれば、Bは昭和31年12月16日から昭和34年12月15日まで3年間に亘つて白石営林署長の職に在つたのであるが、この間職員からの有給休暇請求を不承認としたのは本件のほか一、二度他の時期に変更させたことがある丈で他は全部承認としていること、白石営林署では昭和33年12月中だけでも被控訴人のほか、《各種事例》が夫々有給休暇を請求しており、更に被控訴人においても本件請求以外に同月1-3日(2日間)、16日(3時間)、19日(1日間)の有給休暇を請求しているが、これ等はいずれも承認となり、時季変更権の行使はなされていないのであつて、不承認となつたのは本件の請求だけであることが認められる。また、前記《各種証拠・証言》によれば、白石営林署で被控訴人が本件有給休暇の請求をした12月10、11日の両日のうちに有給休暇の請求をしたのはほかに事業課所属のO(10日の1日間)がある丈で、それ以外に有給休暇を請求していた者はないことが認められる。以上の事実に従つて、年次有給休暇の制度が法によつて保障されている以上労働者の誰かが有給休暇をとることがあるということは事業を運営する上に本来予定されているべきであることを考慮に入れながら、白石営林署殊に被控訴人の所属していた経営課の業務、人員、被控訴人の配置、経験、熟練の度合、担当業務の内容、作業の繁閑、代行者による作業の能否、時期を同じくして有給休暇を請求した者の有無、人数等諸般の事情を綜合すると、本件有給休暇の請求がなされた昭和33年12月10、11日当時、白石営林署、特に被控訴人所属の経営課では通常の業務の上に臨時の業務が重つてかなり多忙であつたとは認められるけれども、それだからと言つて被控訴人の本件有給休暇をとることが、控訴人の事業の正常な運営を妨げる場合であつたとまでは認め難いのであり、他にこの事実を証明すべき証拠はない。
      2. 控訴人は、更に当時被控訴人所属課が多忙であつた許りでなく、この繁忙期において本件のように処分撤回闘争参加という職員としては許されない行動に出るための有給休暇を承認することは、他の職員の士気に悪影響を与え、ひいては職場全体の秩序ある正常な運営を害するものであつたと主張する。しかしながら、被控訴人所属の課が多忙であつたと言つてもそれによつて労基法第39条第3項但書にいう事業の正常な運営を妨げる場合であつたとまで認め難いことは右に判示のとおりであり、本件有給休暇請求の目的が処分撤回闘争の参加という職員として許されない行動に出ることにあつたとしても、そのような休暇利用の目的如何によつて有給休暇請求権行使の能否が左右さるべきものでないこと並びに然らずとしてもその事実の認め難いことは前示記載のとおりであるから、本件有給休暇の請求は労基法の定める適法な権利行使に過ぎないものというべく、従つてこれを容認することこそが法の期待する正常な秩序というものであり、譬えそれによつて他の職員に何等かの精神的影響を与えることがあるとしても、それをもつて控訴人の主張のように職場全体の秩序ある正常な運営を妨げるものであるというのは当らない。 
  2. 未払賃金請求(通称 林野庁白石営林署賃金カット)(最高裁判決 昭和48年03月02日)
    1. 労働基準法39条3項にいう「労働者の請求する時季」の意義
      労働基準法39条3項にいう「労働者の請求する時季」とは、労働者の指定する時季にほかならず、そこにいう「時季」とは、季節をも含めた時期を意味するものと解すべきである。
    2. 始期と終期を特定してされた年次有給休暇の時季指定の法的効果
      労働基準法39条に基づき、労働者が、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で、始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、客観的に同条3項但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権の行使をしないかぎり、右の指定によつて年次有給休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解すべきである。
  3. 賃金請求(通称 国鉄郡山工場賃金カット)(最高裁判決 昭和48年03月02日)
    1. 年次有給休暇制度と休暇の利用目的
      年次有給休暇における休暇の利用目的は労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であると解すべきである。
    2. 労働基準法39条3項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断基準
      労働基準法39条3項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かは、当該労働者の所属する事業場を基準として判断すべきである。
  4. 給料(最高裁判決 昭和57年03月18日)
    1. 労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちにされた使用者の時季変更権行使の効力
      労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちに使用者が時季変更権を行使した場合であつても、労働者の右休暇の請求がその指定した期間の始期にきわめて接近してされたため使用者において時季変更権を行使するか否かを事前に判断する時間的余裕がなかつたようなときには、客観的に右時季変更権を行使しうる事由があり、かつ、その行使が遅滞なくされたものであれば、適法な時季変更権の行使があつたものとしてその効力を認めるのが相当である。
    2. 労働者の指定した年次有給休暇の期間が開始し又は経過したのちにされた使用者の時季変更権行使の効力が認められた事例
      使用者の年次有給休暇時季変更権の行使が、労働者の指定した休暇の期間が開始し又は経過したのちにされたものであつても、労働者の右休暇の請求が1日又は午前中2時間の期間につき当日の朝宿直員を通じてされたため事前に時季変更権を行使する時間的余裕がなかつたものであり、また、右休暇の請求は事業の正常な運営を妨げるおそれがあつたが、使用者において、労働者が休暇を必要とする事情のいかんによつてはこれを認めるのを妥当とする場合があると考えて休暇の理由を聴取するため時季変更権の行使を差し控え、その後労働者がこれを明らかにすることを拒んだため右のような考慮をする余地がないことが確定的になつた時点に至つてはじめて、かつ、遅滞なく時季変更権の行使をしたなど、判示の事情のもとにおいては、右時季変更権の行使は適法にされたものとしてその効力を認めるのが相当である。
  5. 行政処分取消(最高裁判決 昭和58年09月30日)
    郵政事業職員の年次有給休暇のうち所属長が年度の初頭に職員の請求により各人別に決定した休暇付与計画による休暇についての年度の途中における時季変更権行使の要件
    郵政事業に勤務する職員の年次有給休暇のうち、所属長が年度の初頭において職員の請求により業務の繁閑等をしんしゃくして各人別に決定した休暇付与計画による休暇についての年度の途中における時季変更権の行使は、計画決定時には予測できなかつた事態発生の可能性が生じた場合において、かつ、右事態発生の予測が可能になつてから合理的期間内に限り、許される。
  6. 懲戒処分取消(最高裁判決 昭和61年12月18日)地方公務員法第32条地方公務員法第35条地方公務員法第37条
    公立高校の教諭らが教職員組合の動員指示に従つて年次休暇権を行使して集会等に参加した行動が同盟罷業に当たらないとされた事例
    公立高校の教諭らが、教職員組合の三割動員の指示に従い、授業予定日の半日につき年次休暇の時季指定をして地区労主催の集会等に参加した場合であつても、右動員指示が、適法な時季変更権の行使を無視することまで指示したものではなく、各事業場における業務の正常な運営の阻害を目的としたものでないときは、右教諭らの行動は、年次休暇に名を籍りた同盟罷業ということはできない。
  7. 懲戒処分無効確認等(最高裁判決 昭和62年07月10日)
    勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割変更の配慮をせずに時季変更権を行使することの許否
    勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合であつても、使用者が、通常の配慮をすれば勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるときに、休暇の利用目的を考慮して勤務割変更のための配慮をせずに時季変更権を行使することは、許されない。
  8. 懲戒処分無効確認等(最高裁判決 昭和62年09月22日)
    勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合に休暇の利用目的を考慮して勤務割変更の配慮をせずに時季変更権を行使することの許否
    勤務割における勤務予定日につき年次休暇の時季指定がされた場合であつても、使用者が、通常の配慮をすれば勤務割を変更して代替勤務者を配置することが可能であるときに、休暇の利用目的を考慮して勤務割変更のための配慮をせずに時季変更権を行使することは、許されない。
  9. 賃金(最高裁判決 平成元年12月14日)民法第90条,労働基準法第65条,労働基準法第66条,労働基準法第67条,労働基準法第68条,労働基準法第76条,労働組合法第2章,労働組合法第14条,労働組合法第16条,日本国憲法第28条
    前年の稼働率によって従業員を翌年度の賃金引上げ対象者から除外する旨の労働協約条項の一部が公序に反し無効とされた事例
    すべての原因による不就労を基礎として算出した前年の稼働率が80パーセント以下の従業員を翌年度のベースアップを含む賃金引上げの対象者から除外する旨の労働協約条項は、そのうち労働基準法又は労働組合法上の権利に基づくもの以外の不就労を稼働率算定の基礎とする部分は有効であるが、右各権利に基づく不就労を稼働率算定の基礎とする部分は公序に反し無効である。
  10. 賃金(最高裁判決 平成3年11月19日)労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)39条
    労働者が自己の所属する事業場における争議行為に参加する目的をもって職場を離脱した場合と年次有給休暇の成否
    労働者が請求していた年次有給休暇の時季指定日に、たまたまその所属する事業場において予定を繰り上げてストライキが実施されることになり、当該労働者が、右ストライキに参加しその事業場の業務の正常な運営を阻害する目的をもって、右請求を維持して職場を離脱した場合には、右請求に係る時季指定日に年次有給休暇は成立しない。
  11. 賃金等(最高裁判決 平成4年02月18日) 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)39条1項
    就業規則の規定が労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)39条1項に違反し無効であるとされた事例
    国民の祝日、勤務を要しない土曜日等を休日である日曜日とは別の「一般休暇日」と定め、これらが労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)39条1項にいう全労働日に含まれるものとした就業規則の規定は、当該職場における勤務関係においてこれらが休日と実質的に異ならない取扱いがされているときは、同項に違反し無効である。
  12. 懲戒処分無効確認等(最高裁判決 平成4年06月23日) 労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)39条3項
    1. 労働者が始期と終期を特定してした長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定に対する使用者の時季変更権の行使における裁量的判断
      労働者が、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を経ることなく、始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、時季変更権の行使において、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断が認められるが、右判断は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)39条の趣旨に沿う合理的なものであることを要し、使用者が労働者に休暇を取得させるための状況に応じた配慮を欠くなど不合理なものであってはならない。
    2. 通信社の記者が始期と終期を特定して休日等を含め約一箇月の長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し使用者が右休暇の後半部分についてした時季変更権の行使が適法とされた事例
      科学技術庁の記者クラブに単独配置されている通信社の社会部記者が、使用者との事前の十分な調整を経ることなく、始期と終期を特定して休日等を含め約一箇月の長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をしたのに対し、使用者が右休暇の後半部分について時季変更権を行使した場合において、当時、社会部内において専門的知識を要する右記者の担当職務を支障なく代替し得る記者を長期にわたって確保することが困難であり、また、右単独配置は企業経営上のやむを得ない理由によるものであったなど判示の事情があるときは、右時季変更権の行使は適法である。
  13. 未払賃金(最高裁判決 平成5年06月25日)民法第90条,労働基準法第134条,労働基準法第136条
    タクシー会社の乗務員が月ごとの勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合に皆勤手当を支給しない旨の約定が公序に反する無効なものとはいえないとされた事例
    タクシー会社の乗務員に対し、月ごとの勤務予定表どおり勤務した場合には月額3100円ないし4100円の皆勤手当を支給するが、右勤務予定表作成後に年次有給休暇を取得した場合には右手当の全部又は一部を支給しない旨の約定は、右手当の支給が代替要員の手配が困難となり自動車の実働率が低下する事態を避ける配慮をした乗務員に対する報奨としてされ、右手当の額も相対的に大きいものではないなどの判示の事情の下においては、年次有給休暇取得の権利の行使を抑制して労働基準法が労働者に右権利を保障した趣旨を実質的に失わせるものとは認められず、公序に反する無効なものとはいえない。
  14. 譴責処分無効確認等請求事件(最高裁判決 平成12年03月31日)
    1箇月に満たない期間に集中的に高度な知識、技能を修得させることを目的として行われる訓練期間中における年次有給休暇の請求に対する時季変更権の行使
    事業遂行に必要な技術者の養成と能力向上を図るため、各職場の代表者を参加させて、1箇月に満たない比較的短期間に集中的に高度な知識、技能を修得させ、これを職場に持ち帰らせることによって、各職場全体の業務の改善、向上に資することを目的として行われた訓練の期間中に、訓練に参加している労働者から年次有給休暇が請求されたときは、使用者は、当該休暇期間における具体的な訓練の内容がこれを欠席しても予定された知識、技能の修得に不足を生じさせないものであると認められない限り、事業の正常な運営を妨げるものとして時季変更権を行使することができる。

前条:
労働基準法第38条の4
(企画業務型裁量労働制)
労働基準法
第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
次条:
労働基準法第40条
(労働時間及び休憩の特例)
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