日本国憲法第37条

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条文[編集]

【刑事被告人の諸権利】

第37条
  1. すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。
  2. 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。
  3. 刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。

解説[編集]

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参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 公文書偽造、収賄(最高裁判決昭和23年5月5日)刑法60条
    1. 刑事訴訟法第360条第2項(現刑事訴訟法第335条第2項)の法意
      刑事訴訟法第360条第2項にいう法律上犯罪の成立を阻却すべき原由とは例へば刑法第35条乃至第37条【刑法第35条第36条第37条】所定の事由の如き刑法第2編各條所定の罪の構成要件は一応これを具備して居ながら尚罪の成立を阻却する事由をいうので所論の様な罪の構成要件を欠く旨の主張は前記法条所定の主張に該当しない。
    2. 控訴の唯一の理由とこれに対する判断の要否
      控訴の唯一の理由であればどんな主張でも必ずこれに對する判断を判文中に明示しなければならないという法規も法理も存在しない。されば控訴審が罪の成立に何等影響の無い事柄に付き判断を示さなかつたことは仮令それが控訴の唯一の理由であつたとしても少しも違法ではない、無論違憲などいう問題ではない。
    3. 憲法第37条第1項にいう「公平な裁判所の裁判」の意義
      憲法第37条の「公平な裁判所の裁判」というのは構成其他において偏頗の惧なき裁判所の裁判という意味である。かかる裁判所の裁判である以上個々の事件において法律の誤解又は事実の誤認等により偶々被告人に不利益な裁判がなされてもそれが一々同条に触れる違憲の裁判になるというものではない。されば本件判決裁判所が構成其他において偏頗の惧ある裁判所であつたことが主張立証せられない限り仮令原判決に所論の様な法律の誤解、事実の誤認又は記録調査の不充分等があつたと仮定しても同条違反の裁判とはいえない。
  2. 有毒飲食物等取締令違法(最高裁判決昭和23年11月17日)憲法31条憲法38条憲法76条,裁判所法施行令1条,刑訴応急措置法12条1項,刑訴応急措置法12条,刑訴応急措置法17条,刑訴応急措置法10条,刑訴法337条
    1. 関係人に対する検事の聴取書中の被告人の否認する部分の供述記載を証拠に採ることの可否と憲法第37条及び刑訴応急措置法第12条
      検事の関係人に対する聴取書における事実を被告人が否認をしていても、裁判所は被告人の右供述を採用しないで、他の証拠を綜合して事実を認定できることは、寧ろ採証法上の原則であつて、弾劾主義に反するものでないことは固より憲法第37条の趣旨並びに刑訴応急措置法第12条の規定に毫も抵触するものではない。
    2. 証拠の取捨選択の自由と憲法第37条第1項及び第76条第3項
      論旨は、被告人がその犯意を否定するに足る事実を公判廷で供述したのを第二審が採用しなかつたことを原上告審に対して強調したのにもかからず、原上告審は右主張を無視したのは第二審の肩を持ちすぎたものであつて、憲法第37条第1項の公平な裁判所ということができないし又憲法第76条第3項にいう良心に従つて裁判をしたということができぬと云うのである。しかし憲法第37条第1項の公平な裁判所の裁判というのは、構成その他において偏頗の惧のない裁判所の裁判という意味であり、又憲法第76条第3項の裁判官が良心に従うというのは、裁判官が有形無形の外部の圧迫乃至誘惑に屈しないで自己内心の良識と道徳感に従うの意味である。されば原上告審が、証拠の取捨選択に事実審の専検に属するものとして第二審の事実認定を是認したのは当然であつて強いて公平を缺き且良心に従はないで裁判をしたと論難することはできない。
  3. 窃盗(最高裁判所判決昭和23年12月22日)憲法第38条
    裁判が迅速を欠き憲法第37条第1項に違反する場合と上告理由
    裁判が迅速を欠き憲法第37条第1項に違反したとしても、それは判決に影響を及ぼさないことが明らかであるから、上告の理由とすることができない。
  4. 偽造公文書行使、公文書偽造、詐欺(最高裁判所判決昭和24年11月30日)憲法第34条
    1. 裁判が迅速を欠いたことと上告理由
      裁判が迅速を欠いたかどうかということは場合によつては係官の責任の問題を生ずるかも知れないけれども、そのため判決破毀の理由となるものではないこと当裁判所の判例とするところである。(昭和23年(れ)第1071号事件昭和23年12月22日大法廷言渡判決
    2. 憲法第34条前段及び同法第37条第3項前段所定の弁護人に依頼する権利と裁判所検察官等の義務憲法第37条第3項と同条項後段の事由を告知すべき義務
      所論憲法上の権利は被告人が自ら行使すべきもので裁判所、検察官等は被告人がこの権利を行使する機会を与え、その行使を妨げなければいいのである。記録を精査すると被告人は逮捕された日(昭和22年9月30日)に司法警察官の訊問を受けその際「今回の事件で弁護人を選任することができる」旨を告げられており更に同年10月2日附検事の訊問調書に論旨摘録の如き問答があるばかりでなく、判事の勾留訊問の際にも弁護人を選任し得ることが告げられている。されば被告人は逮捕直後勾留前に弁護人を依頼する機会を十分与えられたことを認むるに足り裁判所がこれを妨げた事実は亳も認められないし、被告人から国選弁護人選任の請求があつた事跡もない。しかして法は所論のようなことを特に被告人に告げる義務を裁判所に負わせているものではないから原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。
  5. 建造物侵入(最高裁判決 昭和25年9月27日)憲法28条刑法130条刑法35条刑法36条刑法37条,旧刑訴法69条1項
    弁護人の氏名を判決書に記載することの要否
    憲法第37条第3項は、刑事被告人は、いかなる場合にも資格を有する弁護人を依頼することができること、及び被告人が自らこれを依頼することができないときは国でこれを附する旨を規定しただけであつて、判決書に公判に立会つた弁護人の氏名を記載すべき旨を規定したものではない。そして旧刑訴法第69条第2項は判決書に関与した検察官の官氏名を記載すべき旨を規定しているが、公判に立会つた弁護人の氏名を記載すべき旨を規定していない。されば原判決書には、本件公判に立会つた弁護人の氏名を記載していないことは所論のとおりであるが、しかしその為何等旧刑訴法の条規に反するところはなく、また憲法第37条第3項に反するものでもない。そして判決書に公判に立会つた弁護人の氏名を記載しないからとて所論のように裁判の公正を疑わしめるものではない。
  6. 窃盗(最高裁判決 昭和25年9月27日)
    憲法第37条2項と被告人に反対訊問の機会を与えないで作成された被害始末書等の証拠能力
    憲法第37条第2項は、被告人に反対訊問の機会を与えないで作成された被害始末書等の証拠書類を証拠とすることを、絶対に禁止するものではない。
  7. 業務上過失傷害(最高裁判決 昭和45年9月24日)刑訴法388条憲法32条憲法37条
    1. 刑訴法40条の合憲性
      被告人が刑訴法40条に準拠して書類、証拠物の閲覧謄写ができないとしても、これは立法政策の問題であつて、右規定が憲法32条、37条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和22年(れ)第171号同23年5月5日大法廷判決刑集2巻5号447頁昭和23年(れ)第281号同25年2月1日大法廷判決刑集4巻2号88頁昭和23年(れ)第512号同24年3月23日大法廷判決刑集3巻3号352頁)の趣旨に徴して明らかである。
    2. 刑訴法388条の合憲性
      被告人が刑訴法388条により控訴審では弁論能力を制限されているとしても、これは立法政策の問題であつて、右規定が憲法32条、37条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和22年(れ)第171号同23年5月5日大法廷判決刑集2巻5号447頁昭和23年(れ)第281号同25年2月1日大法廷判決刑集4巻2号88頁昭和23年(れ)第512号同24年3月23日大法廷判決刑集3巻3号352頁)の趣旨に徴して明らかである。
  8. 騒擾附和随行、騒擾助勢、騒擾指揮、騒擾首魁、外国人登録法違反、放火未遂、暴力行為等処罰に関する法律違反、外国人登録令違反(最高裁決定昭和53年9月4日)刑法第106条, 刑事訴訟法第1条
    憲法37条1項の迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態が生じていないものとされた事例
    被告人らに対する審理が、第一審において約16年ないし17年3か月、控訴審において約5年4か月を要し、今日では最初の起訴から約26年もの長期間が経過しているとしても、右審理長期化の原因が、事案の複雑困難、証拠の厖大、被告人の多数ということのほかに、被告人らにおいて執拗ないわゆる法廷闘争を展開したことにもあると認められる本件においては、いまだ憲法37条1項に定める迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態に立ち至つたものとはいえない。
  9. 業務上過失致死、同傷害(最高裁決定 昭和63年02月29日) 刑法第54条1項,刑訴法第250条,刑訴法第253条1項
    迅速な裁判の保障との関係で公訴提起の遅延がいまだ著しいとまでは認められないとされた事例
    公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされたとしても、複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつてその解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情があるときは、迅速な裁判の保障との関係において、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまではいえない。
    • 憲法37条1項違反をいう点は、本件公訴提起が事件発生から相当の長年月を経過した後になされていることは所論指摘のとおりであるが、本件が複雑な過程を経て発生した未曾有の公害事犯であつて、事案の解明に格別の困難があつたこと等の特殊事情に照らすと、いまだ公訴提起の遅延が著しいとまでは認められない。
      理由が正当でない公訴提起の著しい遅延は憲法37条1項違反を問われうる。

前条:
日本国憲法第36条
【拷問・残虐刑の禁止】
日本国憲法
第3章 国民の権利及び義務
次条:
日本国憲法第38条
【不利益供述の不強要、自白の証拠能力】
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