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民法第154条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)

条文

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第154条
第148条第1項各号又は第149条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第148条又は第149条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。

改正経緯

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2017年改正により、以下のとおり本条に定められていた「差押え、仮差押え及び仮処分」の取り消し又は取り下げの時効への効果の趣旨は、第147条に吸収され、それに代え、旧第155条を受けて、各種民事執行(強制執行等、仮差押え及び仮処分)の通知が、時効の利益を受ける者に通知をした後でなければ、時効障害の効果を生じない旨を定めた。

差押え仮差押え及び仮処分
第154条
差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない。
第155条
差押え仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

解説

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第153条において、時効障害の相対効が定められるが、本条はその例外を定める。
物上保証人は、時効により利益を受けるが、担保物件に対する民事執行がなされたことを知らないまま、時効障害が生ずると、何らの対抗の機会を与えられないまま時効完成の期待を失い、公平を欠くことから定められた。

参照条文

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判例

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  1. 所有権移転登記抹消登記手続請求(最高裁判決 昭和50年11月21日)民法第147条民法第148条民事訴訟法第204条競売法第25条競売法第27条
    物上保証人に対する抵当権の実行による競売開始決定が債務者に告知された場合と被担保債権の消滅時効の中断
    物上保証人に対する抵当権の実行により、競売裁判所が競売開始決定をし、これを債務者に告知した場合には、被担保債権についての消滅時効は中断する。
  2. 保証債務金(最高裁判決  平成7年09月05日) 民法第147条民法第148条民事訴訟法第172条民事訴訟法第173条民事執行法第45条2項,民事執行法第188条
    物上保証人に対する不動産競売の開始決定の債務者への送達がいわゆる付郵便送達によりされた場合における被担保債権の消滅時効の中断
    物上保証人に対する不動産競売において、開始決定の債務者への送達がいわゆる付郵便送達によりされた場合には、決定正本が郵便に付して発送されたことによっては被担保債権の消滅時効の中断の効力を生ぜず、右正本の到達によって初めて時効中断の効力を生ずる。
  3. 根抵当権設定登記抹消登記手続(最高裁判決  平成8年07月12日) 民法第147条民法第148条民事執行法第45条2項,民事執行法第188条
    物上保証人に対する不動産競売において被担保債権の時効中断の効力が生ずる時期
    物上保証人に対する不動産競売において、被担保債権の時効中断の効力は、競売開始決定正本が債務者に送達された時に生ずる。
  4. 貸金等(最高裁判決  平成8年09月27日) 民法第147条民法第148条民法第149条民法第153条民法第434条民法第458条民事執行法第45条2項,民事執行法第188条
    連帯保証債務の物上保証人に対する抵当権の実行と主債務の消滅時効の中断
    甲の債務者乙の連帯保証人である丙の債務を担保するため、丁が物上保証人となった場合において、甲が丁に対して競売を申し立て、その手続が進行することは、乙の主債務の消滅時効の中断事由に該当しない。
  5. 競売手続一部取消及び停止決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件(最高裁判決 平成14年10月25日) 民法第147条民事訴訟法第110条1項,民事訴訟法第111条民事訴訟法第113条民事執行法第45条2項,民事執行法第188条
    物上保証人所有の不動産を目的とする競売の開始決定の債務者への送達が債務者の所在が不明であるため公示送達によりされた場合における被担保債権の消滅時効の中断
    物上保証人所有の不動産を目的とする競売手続において,債務者の所在が不明であるため,開始決定の債務者への送達が公示送達によりされた場合には,民訴法111条の規定による掲示を始めた日から2週間を経過した時に,被担保債権について消滅時効の中断の効力を生ずる。
  6. 平成18年11月14日(最高裁判決  平成18年11月14日) 民法第147条民法第501条民事執行規則第171条
    物上保証人に対する不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に保証人が代位弁済をした上で差押債権者の承継を執行裁判所に申し出たが承継の申出について民法155条所定の通知がされなかった場合における保証人の主債務者に対する求償権の消滅時効の中断の有無
    債権者が物上保証人に対して申し立てた不動産競売の開始決定正本が主債務者に送達された後に,主債務者から保証の委託を受けていた保証人が,代位弁済をした上で,債権者から物上保証人に対する担保権の移転の付記登記を受け,差押債権者の承継を執行裁判所に申し出た場合には,上記承継の申出について主債務者に対して民法155条所定の通知がされなくても,上記代位弁済によって保証人が主債務者に対して取得する求償権の消滅時効は,上記承継の申出の時から上記不動産競売の手続の終了に至るまで中断する。

前条:
民法第153条
(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)
民法
第1編 総則

第7章 時効

第1節 総則
次条:
民法第155条
<削除>

民法第158条
(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
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