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民法第295条

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法学民事法民法コンメンタール民法第2編 物権 (コンメンタール民法)

条文[編集]

留置権の内容)

第295条
  1. 他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
  2. 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

解説[編集]

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ウィキペディア留置権の記事があります。
留置権(いわゆる民事留置権)の成立要件について定めた規定である。
「他人の物の占有者」とは、留置権者が目的物を占有することである。留置権者が目的物を占有することで、債権者が債務者に対して履行を促す狙いがある。不動産も目的物にすることができ、このとき占有の継続さえすればよいから留置権を登記する必要は無い(そもそも不動産登記法に留置権の登記制度がない)。
「その物に関して生じた債権を有する」とは、債権が目的物をきっかけにして発生したことを指し、目的物と債権との間に牽連性があるということである。なお商法では牽連性が一部緩和されている。
「その債権が弁済期にないときは、この限りでない」とは、債権回収のために担保物権を行使するのであるから、留置権の行使も債権が弁済期にあることが要求される。
「不法行為」の解釈については諸説あるが、他人の物の占有が不法行為によって始まった場合は、留置権の成立を認められない。
商法における留置権のような明文の規定はないが、特約で留置権発生の可能性を排除することができる(通説)。
留置権者は「他人の物の占有」と、目的物と被担保債権との牽連性とを主張立証すればよい。
債務者が留置権を否定して目的物を取り戻すには、債権が弁済期にないこと、窃盗など不法行為によって占有が始まったこと、または占有者と債務者間でその物について留置権を主張しない特約を結んでいたことを立証すればよい。これに失敗したときは、留置権者の義務違反、留置権の消滅を主張して目的物を取り戻すことになる。

参照条文[編集]

  • 民法第709条(不法行為による損害賠償)
  • 商事留置権
  • 民事執行法第195条(留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)
  • 倒産法制
    • 破産法第66条(留置権の取扱い)
      1. 破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する商法又は会社法の規定による留置権は、破産財団に対しては特別の先取特権とみなす。
      2. 第1項に規定するものを除き、破産手続開始の時において破産財団に属する財産につき存する留置権は、破産財団に対してはその効力を失う。
    • 会社更生法第29条(更生手続開始前における商事留置権の消滅請求)
      1. 開始前会社の財産につき商法又は会社法の規定による留置権がある場合において、当該財産が開始前会社の事業の継続に欠くことのできないものであるときは、開始前会社(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)は、更生手続開始の申立てにつき決定があるまでの間、留置権者に対して、当該留置権の消滅を請求することができる。
    • 民事再生法 - 民法と異なる取り扱いは規定されていない。

判例[編集]

  1. 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和29年01月14日)借家法第5条(現・借地借家法第33条
    借家法第5条による造作買取代金債権は建物に関して生じた債権か
    借家法第5条による造作買取代金債権は、造作に関して生じた債権であつて、建物に関して生じた債権ではなので、建物を留置できない。
  2. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和29年07月22日)借家法第5条(現・借地借家法第33条),民法第533条
    造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係――留置権または同時履行抗弁権の成否
    借家法第5条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。
  3. 船舶引渡等請求(最高裁判決 昭和30年03月04日) 民法第196条民法第298条
    民法第298条第2項但書にいわゆる留置物の保存に必要な使用
    木造帆船の買主が、売買契約解除前支出した修繕費の償還請求権につき右船を留置する場合において、これを遠方に航行せしめて運送業務のため使用することは、たとえ解除前と同一の使用状態を継続するにすぎないとしても、留置物の保存に必要な使用をなすものとはいえない。
  4. 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和33年01月17日)民法第298条民法第299条
    留置物の使用が物の保存に必要な範囲を超えた場合の必要費、有益費の支出とその償還請求権に基く留置権発生の有無
    留置権者が留置物について必要費、有益費を支出しその償還請求権を有するときは、物の保存に必要な範囲を超えた使用に基く場合であつたとしても、その償還請求権につき留置権の発生を妨げない。
  5. 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和33年03月13日)借家法第5条(現・借地借家法第33条
    1. 債務不履行その他背信行為による賃貸借の解除と借家法第5条の適用の有無
    2. 借家法第5条は、賃貸借が賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため解除された場合には、その適用がないものと解すべきである。
    3. 物の引渡を求める訴訟において留置権の抗弁を認容する場合と判決主文
      物の引渡を求める訴訟において、被告の留置権の抗弁を認容する場合には、原告の請求を全面的に棄却することなく、その物に関して生じた債権の弁済と引換に物の引渡を命ずべきものと解するを相当とする。
  6. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和34年09月03日)
    売渡担保に供した不動産の返還義務不履行による損害賠償債権をもつてその不動産を留置し得るか。
    不動産を売渡担保に供した者は、担保権者が約に反して担保不動産を他に譲渡したことにより担保権者に対して取得した担保物返還義務不履行による損害賠償債権をもつて、右譲受人からの転々譲渡により右不動産の所有権を取得した者の明渡請求に対し、留置権を主張することは許されない。
  7. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和41年03月03日)
    建物の売買契約解除後の不法占有と民法第295条第2項
    建物の売買契約によりその引渡を受けた買主が、右売買契約の合意解除後売主所有の右建物を権原のないことを知りながら不法に占有中、右建物につき必要費、有益費を支出したとしても、買主は、民法第295条第2項の類推適用により、当該費用の償還請求権に基づく右建物の留置権を主張できない
  8. 家屋明渡請求(最高裁判決 昭和43年11月21日)
    不動産の二重売買の場合の履行不能を理由とする損害賠償債権をもつてする留置権の主張の許否
    不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。
  9. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和44年11月06日)民法第608条
    借地上の家屋に関する費用償還請求権とその敷地の留置権
    借地上の家屋に関する費用償還請求権は、その家屋の敷地自体に関して生じた債権でもなければ、その敷地の所有者に対して取得した債権でもないから、右請求権を有する者であつても、その家屋の敷地を留置する権利は有しない。
  10. 家屋明渡等請求(最高裁判決 昭和46年07月16日)
    建物賃貸借契約解除後の不法占有と民法295条2項の類推適用
    建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原のないことを知りながら右建物を不法に占有する間に有益費を支出しても、その者は、民法295条2項の類推適用により、右費用の償還請求権に基づいて右建物に留置権を行使することはできない。
  11. 建物明渡請求(最高裁判決 昭和47年11月16日)民訴法186条
    1. 甲所有の物を買受けた乙が売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合における丙の甲に対する物の引渡請求と甲の留置権の抗弁
      甲所有の物を買受けた乙が、売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には、甲は、丙からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。
    2. 物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合においてその被担保債権の支払義務者が第三者であるときの判決主文
      物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合において、その物に関して生じた債務の支払義務を負う者が、原告ではなく第三者であるときは、被告に対し、その第三者から右債務の支払を受けるのと引換えに物の引渡をすることを命ずるべきである。
  12. 所有権移転登記抹消等請求(最高裁判決 昭和51年06月17日)
    農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により失効した場合と被売渡人から右土地を買い受けた者の有益費償還請求権に基づく土地留置権の行使
    農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により当初にさかのぼつて効力を失つた場合において、被売渡人から右土地を買い受けた者が土地につき有益費を支出していても、その支出をした当時、買主が被買収者から買収・売渡処分の無効を理由として所有権に基づく土地返還請求訴訟を提起されており、買主において買収・売渡処分が効力を失うかもしれないことを疑わなかつたことにつき過失があるときには、買主は、右有益費償還請求権に基づく土地の留置権を行使することができない。
  13. 建物収去土地明渡等本訴、不当利益返還反訴(最高裁判決  昭和58年03月31日)民法第482条仮登記担保契約に関する法律第3条1項
    清算金の支払のないまま仮登記担保権者から目的不動産の所有権を取得した第三者の債務者に対する右不動産の明渡請求と債務者の留置権の抗弁
    清算金の支払のないまま仮登記担保権者から第三者が目的不動産の所有権を取得した場合には、債務者は、右第三者からの右不動産の明渡請求に対し、仮登記担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。
  14. 建物所有権移転登記抹消登記手続、建物明渡(最高裁判決  平成9年04月11日)民法第369条(譲渡担保)
    譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者の譲渡担保権設定者に対する明渡請求と譲渡担保権設定者の留置権の主張の可否
    譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。

前条:
民法第294条
(共有の性質を有しない入会権)
民法
第2編 物権
第7章 留置権
次条:
民法第296条
(留置権の不可分性)
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