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民法第150条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法コンメンタール民法第1編 総則 (コンメンタール民法)

条文

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催告による時効の完成猶予)

第150条
  1. 催告があったときは、その時から6箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
  2. 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。

改正経緯

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2017年改正により、旧第150条に定められていた「支払督促」による時効中断の趣旨は、第147条に吸収され、それに代え旧第153条に規定されていた「催告」による効果を定めた。

支払督促
旧第150条
支払督促は、債権者が民事訴訟法第392条 に規定する期間内に仮執行の宣言の申立てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。
(催告)
旧第153条
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

解説

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「催告」とは、裁判外で行われる請求を指す。一般には、請求の証拠を残すため「内容証明郵便」等により行う。6ヶ月の完成猶予と効果は極めて弱いが、簡便な手続きであるので、訴訟の前提として実務上よく行われる。なお、催告から6ヶ月の間に、さらに催告を行っても効果は生じない。

参照条文

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判例

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  1. 約束手形金請求(最高裁判決  昭和36年07月20日) 民法第147条1号,手形法第38条1項,手形法第39条1項
    手形の呈示を伴わない催告による時効中断の効力の有無。
    手形の呈示を伴わない催告には、手形債権の時効を中断する効力がない。→次最高裁判決により判例変更
  2. 約束手形金請求(最高裁判決  昭和38年01月30日)民法第147条1号,手形法第38条1項,手形法第9条1項
    手形の呈示を伴わない催告による時効中断の効力の有無。
    手形の呈示を伴わない催告にも、手形債権の時効を中断する効力がある。
    • 時効中断の事由としての催告は、債権者の当該債権についての催告の意思通知が債務者に到達するを以つて足り、必ずしもこれによつて債務者を遅滞の責に任ぜしめる効力を有するものと同一であることを要しない
  3. 株券返還請求(最高裁判決 昭和38年10月30日)民法第147条1号,民法第300条
    訴訟上の留置権の抗弁と被担保債権の消滅時効の中断。
    留置権の抗弁は、被担保債権の債務者が原告である訴訟において提出された場合には、当該債権について消滅時効中断の効力があり、かつ、その効力は、右抗弁の撤回されてないかぎり、その訴訟継続中存続するものと解すべきである。
  4. 留置料請求(最高裁判決  昭和43年02月09日)
    裁判外の催告を受けた者が請求権の存否調査のため猶予を求めた場合と時効中断の効力
    裁判外で債務履行の催告を受けた者が請求権の存否について調査するため猶予を求めた場合には、民法第153条所定の六箇月の期間は、その者から何分の回答がされるまで進行しない。
  5. 滞納処分取消請求(最高裁判決  昭和43年06月27日) 旧国税徴収法(明治30年法律第21号)1条,旧国税徴収法(明治30年法律第21号)10条,会計法第31条民法第147条
    国税徴収権の消滅時効の中断と民法第153条の準用の有無
    徴税機関が、未納国税額につき納付を催告し、その後六箇月内に差押等の手段をとつたときは、民法第153条の準用により、国税徴収権の消滅時効は中断されるものと解すべきである。
  6. 貸金請求(最高裁判決  昭和45年09月10日)民法第147条民法第149条,破産法第132条
    破産宣告手続における申立債権者の権利行使意思の表示による時効中断の効力と破産申立の取下
    破産の申立債権者の破産宣告手続における権利行使意思の表示は、破産の申立が取り下げられた場合においても、債務者に対する催告として時効中断の効力を有し、右債権者は、取下の時から六か月内に訴を提起することにより、当該債権の消滅時効を確定的に中断することができる。
  7. 転付金請求(最高裁判決  昭和48年10月30日) 商法第504条商法第522条民法第147条民法第148条
    商法504条但書に基づき相手方が債権者として本人または代理人を選択しうる場合における本人の請求と代理人の債権についての消滅時効の中断
    代理人がした商行為による債権につき本人が提起した債権請求訴訟の係属中に、相手方が商法504条但書に基づき債権者として代理人を選択したときは、本人の請求は、右訴訟が係属している間代理人の債権につき催告に準じた時効中断の効力を及ぼすものと解するのが相当である。
  8. 求償金(最高裁判決  昭和53年03月17日) 会計法第32条
    国が私人から承継取得した私法上の債権についての納入の告知と会計法32条
    国が私人から承継取得した私法上の債権についてされる納入の告知についても会計法32条の適用がある。
  9. 貸金等(最高裁判決  平成8年09月27日)民法第147条民法第148条民法第149条民法第155条民法第434条民法第458条民事執行法第45条2項,民事執行法第188条
    連帯保証債務の物上保証人に対する抵当権の実行と主債務の消滅時効の中断
    甲の債務者乙の連帯保証人である丙の債務を担保するため、丁が物上保証人となった場合において、甲が丁に対して競売を申し立て、その手続が進行することは、乙の主債務の消滅時効の中断事由に該当しない。

前条:
民法第149条
(仮差押え等による時効の完成猶予)
民法
第1編 総則

第7章 時効

第1節 総則
次条:
民法第151条
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
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