労働基準法第24条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

法学コンメンタール労働基準法

条文[編集]

(賃金の支払)

第24条  
  1. 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
  2. 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

解説[編集]

  • 第89条(作成及び届出の義務)

参照条文[編集]

判例[編集]

  • 給料等請求(最高裁判決 昭和31年11月02日)民法第505条
    賃金債権に対する相殺の許否
    使用者は、労働者の賃金債権に対しては、損害賠償債権をもつて相殺をすることも許されない。
  • 破産債権確定請求(最高裁判決  昭和36年05月31日)労働基準法第17条民法第505条民法第509条
    労働者の賃金債権に対し不法行為を原因とする債権をもつてする相殺の許否。
    労働者の賃金債権に対しては、使用者は、労働者に対して有する不法行為を原因とする債権をもつても相殺することは許されない。
  • 解雇無効確認等請求(最高裁判決 昭和37年07月20日)民法第536条2項,労働基準法第26条
    使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することの可否およびその限度。
    使用者の責に帰すべき事由によつて解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た場合、使用者が、労働者に解雇期間中の賃金を支払うにあたり、右利得金額を賃金額から控除することはできるが、その限度は、平均賃金の四割の範囲内にとどめるべきである。
  • 退職金請求(最高裁判決 昭和43年03月12日) 国家公務員等退職手当法第2条,労働基準法第11条,労働基準法第120条,民法第466条
    1. 国家公務員等退職手当法に基づく退職手当の支払と労働基準法第24条1項の適用または準用の有無
      国家公務員等退職手当法に基づいて支給される一般の退職手当は、労働基準法第11条所定の賃金に該当し、その支払については、性質の許すかぎり、同法第24条第一項本文の規定が適用または準用される。
    2. 右退職手当の受給権を譲り受けた者が国または公社に対し直接支払を求めることの許否
      右退職手当の支給前に、退職者またはその予定者が退職手当の受給権を他に譲渡した場合において、譲受人が直接国または公社に対してその支払を求めることは許されない。
  • 給与支払請求(最高裁判決  昭和44年12月18日)民法第505条1項,地方公務員法第25条1項
    1. 賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺と労働基準法24条1項
      賃金過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる賃金の支払請求権を受働債権としてする相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、かつ、あらかじめ労働者に予告されるとかその額が多額にわたらない等労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのないものであるときは、労働基準法24条1項の規定に違反しない。
    2. 公立中学校の教員につき、給与過払による不当利得返還請求権を自働債権とし、その後に支払われる給与の支払請求権を受働債権としてした相殺が労働基準法24条1項の規定に違反しないとされた事例
      公立中学校の教員に対して昭和33年12月15日に支給された勤勉手当中に940円の過払があつた場合において、昭和34年1月20日頃右教員に対し過払金の返納を求め、この求めに応じないときは翌月分の給与から過払額を減額する旨通知したうえ、過払金の返還請求権を自働債権とし、同年3月21日に支給される同月分の給料および暫定手当合計22,960円の支払請求権を受働債権としてした原判示の相殺は、労働基準法24条1項の規定に違反しない。
  • 退職金請求(最高裁判決  昭和48年01月19日)労働基準法第11条民法第91条民法第519条
    1. 賃金にあたる退職金債権放棄の効力
      賃金にあたる退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、有効である。
    2. 賃金にあたる退職金債権の放棄が労働者の自由な意思に基づくものとして有効とされた事例
      甲会社の被用者で西日本における総責任者の地位にある乙が、退職に際し、賃金にあたる退職金債権を放棄する旨の意思表示をした場合において、乙が退職後ただちに競争会社に就職することが甲に判明しており、また、乙の在職中における経費の使用につき書面上つじつまの合わない点から甲が疑惑をいだいて、その疑惑にかかる損害の一部を填補させる趣旨で退職金債権の放棄を求めた等判示の事情があるときは、右退職金債権放棄の意思表示は、乙の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものとして、有効とすべきである。
  • 退職金返還(最高裁判決 昭和52年08月09日)労働基準法第3条,労働基準法第16条,民法第90条
    同業他社への転職者に対する退職金の支給額を一般の退職の場合の半額と定めた退職金規定の効力
    原審確定の事実関係のもとにおいては、会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限し、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給する退職金の額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることは、労働基準法3条16条24条及び民法90条に違反しない。
  • 上野学園事務職員解雇(東京高等裁判所判例 昭和55年03月26日)労働基準法第26条
  • 雇用関係存在確認等(最高裁判決 昭和62年04月02日)民法第536条2項,労働基準法第12条1項,労働基準法第12条4項,労働基準法第26条
    使用者がその責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合の労働基準法12条4項所定の賃金と労働者が解雇期間中他の職に就いて得た利益額の控除
    使用者が、その責めに帰すべき事由による解雇期間中の賃金を労働者に支払う場合、労働基準法12条4項所定の賃金については、その全額を対象として、右賃金の支給対象期間と時期的に対応する期間内に労働者が他の職に就いて得た利益の額を控除することができる。
  • 退職金等、同請求参加(最高裁判決  平成2年11月26日 )民法第91条民法第505条1項,破産法第72条破産法第98条
    1. 使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺と労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条・1項本文
      使用者が労働者の同意を得て労働者の退職金債権に対してする相殺は、右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、労働基準法(昭和62年法律第99号による改正前のもの)24条・1項本文に違反しない。
    2. 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してした相殺が有効とされた事例
      甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をし、甲会社が、乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつて乙の有する退職金債権等と相殺した場合において、右返済に関する手続を乙が自発的に依頼しており、右貸付けが低利かつ相当長期の挽割弁済の約定の下にされたものであつて、その利子の一部を甲会社が負担する措置が執られるなど判示の事情があるときは、右相殺は、乙の自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在したものとして、有効と解すべきである。
    3. 使用者が労働者の同意の下に労働者の退職金債権等に対してして相殺が否認権行使の対象とならないとされた事例
      甲会社の従業員乙が、銀行等から住宅資金の貸付けを受けるに当たり、退職時には乙の退職金等により融資残債務を一括返済し、甲会社に対しその返済手続を委任する等の約定をした場合において、甲会社が、乙の破産宣告前、右約定の趣旨を確認する旨の乙の同意の下に、右委任に基づく返済費用前払請求権をもつてした乙の有する退職金債権等との相殺は、否認権行使の対象とならない。
  • 損害賠償(最高裁判決  平成5年03月25日) 民法第643条民法第651条1項
    いわゆるチェック・オフと個々の組合員からの委任の要否
    使用者と労働組合との間にいわゆるチェック・オフ協定が締結されている場合であっても、使用者が有効なチェック・オフを行うためには、賃金から控除した組合費相当分を労働組合に支払うことにつき個々の組合員から委任を受けることが必要である。

前条:
労働基準法第23条
(金品の返還)
労働基準法
第3章 賃金
次条:
労働基準法第25条
(非常時払)


このページ「労働基準法第24条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。