民法第555条
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法学>民事法>民法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集](売買)
- 第555条
- 売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
解説
[編集]売買契約の要件と効果について定めている。
要件
[編集]契約は法律行為であるから、総則の意思表示の規定が適用される。 すなわち、効果が発生するには以下の要件を満たす必要がある。
- 成立要件
- 有効要件
- 効果帰属要件
- 効果発生要件
効果
[編集]発生する債務
[編集]- 双務契約
- 売買契約は双務契約であり、売主と買主の双方に債務が発生する。
- 売主
- 売主には財産権移転義務が発生する。動産であれば目的物引渡義務、不動産の場合はこれに加えて登記移転義務が発生する。なお、通説は売買契約と同時に所有権移転を目的とする契約が成立すると解する。
- また、他人の物の売買も契約としては有効に成立する(561条)。
- 買主
- 買主には代金支払義務が発生する。
- 同時履行
- 売主の財産権移転義務と買主の代金支払義務は、特約のない限り、同時履行の関係に立つと推定される(第573条)。
売主の契約適合責任
[編集]売買契約においては、売主は契約に適合する状態で目的物を引渡す義務を負っていると解される。このため、契約に適合しない場合の責任に関する規定が置かれており、概ね、以下のプロセスとなる。
- 契約適合物を引き渡すべき請求(追完請求権)に応じる(第562条)。
- 目的物を売主の負担で補修したり、契約適合物と交換する等の責任
- 履行の追完がなされない場合、代金を減額する(第563条)。
- 履行の追完が十分になされず契約に適合しない場合、売買契約の解除に応じる(第564条→第541条、第542条)。
- 上記において、買主に損害が発生した場合、損害賠償に応じる(第564条→第415条)。
参照条文
[編集]- 第1款 総則
- 第2款 売買の効力
- 第560条(権利移転の対抗要件に係る売主の義務)
- 第561条(他人の権利の売買における売主の義務)
- 第562条(買主の追完請求権)
- 第563条(買主の代金減額請求権)
- 第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
- 第565条(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
- 第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
- 第567条(目的物の滅失等についての危険の移転)
- 第568条(競売における担保責任等)
- 第569条(債権の売主の担保責任)
- 第570条(抵当権等がある場合の買主による費用の償還請求)
- 第572条(担保責任を負わない旨の特約)
- 第573条(代金の支払期限)
- 第574条(代金の支払場所)
- 第575条(果実の帰属及び代金の利息の支払)
- 第576条(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主 による代金の支払の拒絶)
- 第577条(抵当権等の登記がある場合の買主による代金の支払の拒絶)
- 第578条(売主による代金の供託の請求)
- 第3款 買戻し
- 第579条(買戻しの特約)
- 第580条(買戻しの期間)
- 第581条(買戻しの特約の対抗力)
- 第582条(買戻権の代位行使)
- 第583条(買戻しの実行)
- 第584条(共有持分の買戻特約付売買)
- 第585条(同上)
判例
[編集]- 第三者異議(最高裁判決 昭和40年11月19日) 民法第176条,民法第560条
- 特定物の売買後売主が物件の所有権を取得したときと買主への所有権移転の時期・方法。
- 売主が第三者所有の特定物を売り渡した後右物件の所有権を取得した場合には、買主への所有権移転の時期・方法について特段の約定がないかぎり、右物件の所有権は、なんらの意思表示がなくても、売主の所有権取得と同時に買主に移転する。
- 貸金請求(最高裁判決 昭和44年11月4日) 民法第388条,民法第249条,土地区画整理法第99条,土地区画整理法第85条,土地区画整理法第98条
- 仮換地上の建物の競落と法定地上権
- 従前の土地の所有者の所有する仮換地上の建物が抵当権の実行により競落されたときは、従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は、右法定地上権に基づいて仮換地の使用収益が許されるものと解するのが相当である。
- 仮換地の一部分につき売買契約を締結した場合と仮換地の使用収益権
- 土地の売買契約が仮換地につきその一部分を特定して締結され従前の土地そのものにつき買受部分を特定してされたものでないときは、特段の事情のないかぎり、仮換地全体の地積に対する当該特定部分の地積の比率に応じた従前の土地の共有持分について売買契約が締結され、買主と売主とは従前の土地の共有者となるとともに、仮換地上に準共有関係として従前の土地の持分の割合に応じた使用収益権を取得するものと解するのが相当である。
- 従前の土地の共有者の一人の所有する仮換地上建物が競落された場合に法定地上権の成立が認められた事例
- 前項の場合において、売主と買主との協議により、仮換地上の買受部分を買主の所有とする旨の合意が成立していたときは、買主が買受土地上に建築所有する建物につき設定された抵当権の実行により、右建物の競落人のため従前の土地について法定地上権が成立し、競落人は右法定地上権に基づいて仮換地上の建物敷地を占有しうべき権原を取得するものと解するのが相当である。
- 仮換地上の建物の競落により法定地上権が成立した場合において土地区画整理事業施行者から使用収益部分の指定を受けない間における競落人の建物所有による敷地の占有と不法占有の成否
- 仮換地上の建物が競落されたことにより従前の土地に法定地上権が成立したときは、右法定地上権について土地区画整理事業施行者から仮換地上に使用収益すべき部分の指定を受けない間においても、競落人の建物所有による敷地の占有は、抵当権設定者たる仮換地使用収益権者との関係では不法占有とならない。
- 仮換地上の建物の競落と法定地上権
- 建物収去土地明渡(最高裁判決 昭和57年6月17日)民法第206条, 民法第249条, 民法第252条
- 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例
- 一筆の土地の一部分の売買契約において、売却部分の面積が60坪となるよう右土地の南端から8メートル余の地点で東西に線を引くと楠の根がかかることになり、また、その西側部分については、後日、東西の市道からの進入路を拡幅するために必要な部分を買主において提供することが予定されていたので、売買契約書上では約60坪と表示し、分筆・移転登記の際の正確な測量に基づいて売り渡すべき土地の範囲を確定することにしたときは、売買の対象である土地部分が具体的に特定しているとはいえない。
- 多数持分権者との間の売買契約に基づいて共有地の一部分の引渡を受けた者に対する少数持分権者からの返還請求ができないとされた事例
- 多数持分権者が、共有地の一部分についての売買契約を締結し、具体的な土地の範囲を確定しないまま、おおよその部分を買主に引き渡してこれを占有使用させているときは、右占有使用の承認が共有者の協議を経ないものであつても、少数持分権者は、当然には買主に対して右土地部分の返還を請求することができない。
- 一筆の土地の一部分の売買契約においてその対象である土地部分が具体的に特定していないとされた事例
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