会社法第25条
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法学>民事法>商法>会社法>コンメンタール会社法>第2編 株式会社 (コンメンタール会社法)>第2編第1章 設立 (コンメンタール会社法)
条文
[編集](総則)
- 第25条
- 株式会社は、次に掲げるいずれかの方法により設立することができる。
- 各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない。
解説
[編集]発起人
[編集]- 会社の設立手続きは、発起人によってなされる。
- 発起人は自然人に限らず、会社他法人でも良い。法人が発起人である場合、その意思表示は代表取締役など代表者によるが、一般的には委任状を発行された代理人による[1]。
- 発起人は1人でも良い[2]。発起人が複数ある場合は、相互間で会社の設立を目的とする組合契約(民法第667条)が締結されていると解される(発起人組合)。発起人の合議は、発起人間で定めた方式によるが、出資の履行(第34条)後は出資比率に応じた議決権が概念できるため、以降の意思決定は議決権による。
- 株式会社の設立に際して発行される株式(設立時発行株式)を発起人は1株以上引き受けなければならない(本条第2項)、すなわち、会社成立時において発起人は必ず株主となっている。
発起人の役割
[編集]- 会社設立にあたっては、以下の事項の実施が必要とされる。
- 会社の設立とそれ自体を目的とする行為
- 定款の作成
- 社員(創立時株主)の確定
- 機関の具備
- 会社設立のために必要な行為
- (例)設立事務所の確保、創立総会の運営(招集通知、参考書類の作成・発送、会場の確保)
- 会社の事業を開始する準備行為(開業準備行為)
発起人の報酬
[編集]- 発起人がその職務に関し、設立する会社から報酬を受けようとする場合は、その旨を定款に記載しなければならない(第28条第3項)。
発起人の責任
[編集]株式会社の設立方法
[編集]- 会社設立は、発起人が設立後の資本金を全額支払う「発起設立」と、発起人が一部を支払い、発起人以外に出資を募る「募集設立」がある
- 会社法制定以前、商法においては、1990年(平成2年)改正までは、発起設立の場合、発起人の出資の履行に関して、現物出資等同様検査役を選任し検査させる必要があったため(商法第170条、商法第173条)、発起設立は回避され、子会社設立等の場合であっても、募集設立の形態が仮装されたが、法改正及び会社法制定によって、この制限が撤廃され、発起設立が簡便になった一方で、資本の充当自身は、設立後、増資などの手段によることもできるため、設立時に複雑な手続きを伴う募集設立を避ける傾向にある。
株式会社の設立の流れ
[編集]概ね以下の流れとなる。
- 発起設立
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- 定款の作成
- 出資の履行
- 設立時取締役他設立時役員の選任
- 設立時代表取締役の選任
- 会社登記
- 募集設立
-
- 定款の作成
- 発起人による出資の履行
- 出資の募集と募集引受人による出資の履行
- 創立総会の実施
- 設立時取締役他設立時役員の選任
- 設立時代表取締役の選任
- 会社登記
株式会社設立の全体図
[編集]発起設立 | 募集設立 第9節 募集による設立の適用 |
規定事項・解説等 | |
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定款の作成・変更 | 第2節 定款の作成 ・第26条 定款の作成 ・第27条 定款の記載又は記録事項 ・第28条 変態設立事項等 ・第29条 定款の必須及び有効記載事項 ・第30条 定款の公証人による認証、会社成立(登記完了)まで定款変更の原則禁止。 ・第31条 本店における備置等 |
会社設立にあたっては、法定事項他設立後会社を規律する定款を作成し、発起人全員が合意しなければならない。 設立に際して現物出資など変態設立事項等については、設立時の定款に記載しなければならない。 定款は、資格を有する公証人による認証を要する。 公証人による認証後、会社が成立するまで定款変更は原則禁止される(会社成立後、株主総会のみがその権能を持つ)。 定款は本店において備え置かれ、閲覧に供される。 | |
出資 | 第3節 出資 ・第32条 設立時発行株式に関する事項 ・第33条 定款の記載又は記録事項に関する検査役の選任 ・第34条 出資の履行 ・第35条 設立時発行株式の株主となる権利の譲渡 ・第36条 設立時発行株式の株主となる権利の喪失 ・第37条 発行可能株式総数の定め等 |
・設立時発行株式に関する事項 ・変態設立事項に関する検査人検査 ・出資の履行 ・設立時株主となる権利の譲渡及び喪失 ・発行可能株式総数の定め等 募集設立 発起人以外に、出資者(引受人)を募集し、資本を拡充した上で、開業することができる、 | |
発起人が全額を払い込み、それで資本の充当は完了する。 | 第1款 設立時発行株式を引き受ける者の募集 ・第57条 設立時発行株式を引き受ける者の募集 ・第58条 設立時募集株式に関する事項の決定 ・第59条 設立時募集株式の申込み ・第60条 設立時募集株式の割当て ・第61条 申込み及び割当てに関する特則 ・第62条 設立時募集株式の引受け ・第63条 設立時募集株式の払込金額の払込み ・第64条 払込金の保管証明 |
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創立総会 | <開催不要> | 第2款 創立総会等 ・第65条 創立総会の招集 ・第66条 創立総会の権限 ・第67条 創立総会の招集の決定 ・第68条 創立総会の招集の通知 ・第69条 招集手続の省略 ・第70条 参考書類及び議決権行使書面の交付等 ・第71条 電磁的方法による書類・書面の交付 ・第72条 議決権の数 ・第73条 創立総会の決議 ・第74条 議決権の代理行使 ・第75条 書面による議決権の行使 ・第76条 電磁的方法による議決権の行使 ・第77条 議決権の不統一行使 ・第78条 発起人の説明義務 ・第79条 議長の権限 ・第80条 延期又は続行の決議 ・第81条 議事録 ・第82条 創立総会の決議の省略 ・第83条 創立総会への報告の省略 種類創立総会 ・第84条 種類創立総会の開催 ・第85条 種類創立総会の招集及び決議 ・第86条 創立総会に関する規定の準用 第3款 設立に関する事項の報告 ・第87条 |
「募集設立」の場合、会社成立にあたって「創立総会」を開催する必要がある。 「創立総会」の開催方法等については「株主総会」の規定に準ずる。 設立に際して種類株式を発行する場合、会社成立後、種類株主総会の決議を必要とする旨の定めがある場合は、「種類創立総会」を開かなければならない。 発起人は、株式会社の設立に関する事項を創立総会に報告しなければならない。 |
設立時役員等の選解任 | 第4節 設立時役員等の選任及び解任 出資の履行をした発起人によって設立時役員等の選解任はなされる。 ・第38条 設立時役員等の選任 ・第39条 設立時役員等の選任 ・第40条 選任の方法 ・第41条 選任の方法の特則 ・第42条 設立時役員等の解任 ・第43条 解任の方法 ・第44条 解任の効力の特則 ・第45条 選解任の効力の特則 |
第4款 設立時取締役等の選任及び解任 創立総会の決議により選解任する。 ・第88条 設立時取締役等の選任 ・第89条 累積投票による選任 ・第90条 種類創立総会の決議による選任 ・第91条 設立時取締役等の解任 ・第92条 種類創立総会選出設立時取締役等の解任 |
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設立時取締役等による調査 | 第5節 設立時取締役等による調査 ・第46条 |
第5款 設立時取締役等による調査 ・第93条 設立時取締役等による調査 ・第94条 設立時取締役等が発起人である場合の特則 |
現物出資等変態設立事項に関して、少額であるなどの理由による条件を満たす場合は資本充実の危惧が限定的であるとして検査役調査を要さないとされているが(第33条第10項)、募集設立の場合、相当性について設立時取締役又は設立時監査役は、選任後調査を行い発起設立の場合は発起人等に通知、募集設立の場合は創立総会においてその結果を報告しなければならない。 |
会社成立前の定款変更 | ー 定款の公証人による認証後、会社成立(登記完了)まで変更は原則として禁止である(第30条)。 |
第6款 定款の変更 募集設立の場合、第30条にかかわらず、創立総会において定款を変更できる。 ・第95条 発起人による定款の変更の禁止 ・第96条 創立総会における定款の変更 ・第97条 設立時発行株式の引受けの取消し ・第98条 総会決議による発行可能株式総数の定め ・第99条 定款の変更の手続の特則 ・第100条 種類株式発行会社の特則 ・第101条 種類株式発行会社の特則 | |
設立時代表取締役等の選定等 | 第6節 設立時代表取締役等の選定等 ・第47条 設立時代表取締役の選定等 ・第48条 設立時委員の選定等 |
設立時取締役は、会社成立までに合議により、設立時代表取締役、設立時委員等を選定する。 設立時取締役は、会社成立までに合議により、これら役員等を解任することができる。 | |
株式会社の成立 | 第7節 株式会社の成立 ・第49条 株式会社の成立 ・第50条 株式の引受人の権利 ・第51条 引受けの無効又は取消しの制限 |
法務局にて登記され株式会社は成立する。 会社成立(登記受理)後は、授権資本の変更など定款変更・取締役等役員の選解任などは株主総会の決議によるなど、設立後の株式会社の手続きによる。 会社成立後は、引受に関する、瑕疵ある意思表示などを理由に会社に対抗することはできず、それらを原因として、会社の成立はもちろん出資の払込の取消などはできず、当事者においては損害賠償等で解決される。 | |
出資発起人等の責任 | 第8節 発起人等の責任 ・第52条 出資された財産等の価額が不足する場合の責任 ・第52条の2 出資の履行を仮装した場合の責任等 ・第53条 発起人等の損害賠償責任 ・第54条 発起人等の連帯責任 ・第55条 責任の免除 ・第56条 株式会社不成立の場合の責任 |
現物出資等で、出資財産の価格が不足していた場合、発起人は不足分について充当責任を負う。 | |
- | 第7款 設立手続等の特則等 ・第102条 設立手続等の特則 ・第102条の2 払込みを仮装した設立時募集株式の引受人の責任 ・第103条 発起人の責任等 |
関連条文
[編集]- 会社法第467条(事業譲渡等の承認等)
註
[編集]- ^ 大規模な会社であれば、職務分掌等により、関連する使用人である従業員が、分掌された職務に従い代表しても、法的にも有効性が疑われることは稀だが、しばしば、代表者の委任状が発行される。
- ^ 会社法制定以前、商法においては、1990年(平成2年)改正までは、7名の発起人が必要であった(商法第165条)。
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